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おじさん、女子高生になる  作者: 一宮 沙耶
第1章 若返り

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7/25

7話 機密データ搾取

今回は、画期的な新薬を製薬会社が開発したから、その情報を盗めという。

ターゲットは、宮下 啓吾という32歳の男性。

製薬会社の社内インフラ部門のシステムエンジニア。


新薬の情報は厳格な機密管理がされているサーバールームに保存されている。

その男性を通じてサーバールームに入り、USBメモリーを挿すだけでいいらしい。

あとは、そのUSBメモリーにある発信機で情報は組織に送られる。


この男性へのアプローチは任せるとあった。最近の私の活躍が認められた結果だと思う。

ネットで調べると、彼は婚活サイトで結婚相手を探していることが分かる。

男性の頃もITはそれなりに使えていたが、女性になり、再度、勉強し直していた。

最近は、ハッキングも簡単にできるようになっている。


組織は年齢から私が婚活するとは想像もしていないはずだけど、婚活で知り合うのがいい。

今は27歳ぐらいだから、婚活をしていることに違和感もない。彼の年齢とも合う。

でも、婚活サイトなんて使ったことがない。どうしようかしら。


婚活サイトを見てみると、面白いシステムだと分かる。

表面は爽やかだけど、中身は欲望にまみれている。幸せになりたいという。

いろいろな人のアピールを見て、その人達の人生を想像していた。


シナリオを自分で描くのは初めてだけど、人生の違った一面も見れるかも。

私は、婚活サイトに登録し、宮下という男性にアクセスしてみた。

今日は渋谷のカフェで待ち合わせ。


カフェに向かう渋谷の道には若者が溢れている。

27歳ぐらいになっても、私は少し年上の女性という感じ。

でも、誰も違和感を感じていないことに喜びは溢れていた。

こんなに素敵な姿になった私を見てほしい。


カフェに到着する。わざと少し遅れての到着。

女性ばかりのお店で、男性1人で座ってるからすぐに分かった。


「遅れてしまいまして、すみません。家出る時に、土曜日なのに上司から電話がかかってきてしまって。」

「いえいえ、私も今、来たところですよ。土曜日に上司から、とんでもないですね。」

「ええ、訴えてやろうかしら。なんて。」


男性のときには、女性にあまり興味がなかったけど、男性の好みは知っている。

飲み会とかで、同僚の男性から、数え切れないほど聞いたから。

好きな女性のタイプとか。


男性にとって一番大切なことは外見。

性格とかは、おとなしい女性を演じていればどうでもいい。

だから、まずは服装をがんばってみた。


バストは私の武器だから、ニットでシルエットがくっきりでるようにする。

谷間を見せようとも思ったけど、最初は控えめに。

そんなに最初からがっついてはだめ。控えめでも、大きなバストは分かる。

最初は見せずに少しずつ見せていったほうが効果がありそうだもの。


そしてミニのラップスカート。

実はそんなことはないけど、手で開くとショーツが見えるような感じ。

ドキドキさせてみる。


「最近、涼しくなったけど、やっぱり走ると暑いですね。」


最後に、薄手のカーディガンで現れ、目の前で脱ぐ。

そして急に目の前にボディーラインを見せる。

それで、私の姿に心がとらわれるはず。


ショルダートートバッグを椅子にかけ、彼の目をみつめた。


「そうはいっても、少し薄手で来ちゃったかしら。季節感がないなんて思われているかもしれないですね。なんか恥ずかしいかも。」


座った私のバストをずっと見ている。狙い通り。男性って、本当にバカな生き物。

でも、若々しくなっていく自分の姿には、仕方がないと思う。

ミニスカートから出た足に目線は動いていった。


「そんなことないですよ。素敵ですね。お写真より、はるかにお美しい。」

「あら、褒めていただいちゃった。ありがとうございます。」

「まずは座ってください。」

「あ、はい。」


男性の目線って、こんなにバレバレだったのかしら。

話しながらも、私の体しか見ていない。

熱い目線が私の体を上から下に、下から上に。


そうそう、だから、透明なガラスのテーブルのお店を選んだの。

テーブルを通して、ミニスカートから出ている私の素足も見えるでしょう。


ここまで舐めるように見られるのは気持ちが悪い。

でも、これが今の仕事だし、しかたがない。


「どんな仕事してるんですか?」

「商社でチームリーダーのアシスタントをしています。」


嘘だけど、本当に付き合うわけじゃないからバレなければいい。

商社の実態はよく知ってるし。


「商社ですか、すごいですね。給料もいいんでしょうね。」

「いえ、一般職で、アルバイトみたいなものですよ。それより、宮下さんは、どんな仕事しているんですか?」

「僕ですか。製薬会社で社内のITインフラ整備や運用をしています。」

「ITですか。すごい。頭、いいですね。」


ITには精通している私だけど、何も知らないそぶりで話して自尊心をくすぐる。

はにかみながら、時折、下を向いて笑う。

時には、相手の目を見つめる。あなたに興味がありますなんて目で。


「あなたみたいな魅力的な人が、どうして婚活サイトに登録しているんですか?」

「私、引っ込み思案だからか、あまり男性と縁がなくて、この歳になってしまったんです。でも、そろそろ寂しくて、結婚したいと思ったときには周りに誰もいなくなっていて、まずは、できることから始めたという感じですね。でも、1回目にお会いしたのが、宮下さんみたいな素敵な方でよかったわ。だから、間違っていなかったというか、ここのサイト、良かったかも。」


こういう男性は褒めておけば手で転がせる。

恥じらいで下を向く女性からよいしょされて、彼は上機嫌。


「婚活サイト、初めての人が僕だったんですね。僕も、あなたのような人と出会えて、このサイトに感謝です。来週、どこか一緒に出かけませんか。」

「初めて会った人といきなり出かけるなんて恥ずかしいですね。いいのかしら。」

「婚活サイトって、そんなものですよ。で、どうでしょうか?」

「それなら、分かりました。どこがいいですか?」

「ディズニーランドなんてどうですか?」

「あまり行ったことないですけど、いいかもです。」

「女性って、ディズニーランド好きな人が多いのですが、珍しいですね。」


女性とか、なにかのカテゴリーに分けて見るって、くだらない。

でも、ハニートラップで本当に恋するわけじゃないんだからいいか。


「私、さっきも言いましたけど、彼がいたことないし、女友達もあまりいないので、ディズニーランドに行ったことがなかったんです。でも、みんなとっても素敵って言うし、初めてを宮下さんと一緒にできるのは楽しみ。」

「そうなんですね。じゃあ、来週土曜日の8時に舞浜駅の改札で待ってます。」

「わかりました。今度は遅れません。楽しみにしています。ところで、改札は一つですか。違うところで待ってたりすると困るし。」

「どうだったかな。たしか、ディズニーランドに行く方だったら一つしかないと思います。念のため、LINE交換しておきましょう。」

「そうですね。」


過去に彼がいないことを喜んでるように見えた。

やっぱり、男性は経験が少ない女性を好む。計画どおりって感じで進んでいる。

いろいろ喋ってくれた昔の同僚に感謝。


次に会った時は、V字のトップスで、バストの谷間を見せつけよう。

まずは、この体を使って、私の虜にするのがいい。


ディズニーランドでは、彼は、ずっと喋り続けていた。

あれは、シンデレラ城で、中に入れるとか。

ホーンテッドマンションで、期間限定で、ホリデーナイトメアをやっているとか。


私を楽しませたいという気持ちでいっぱい。

なんか、私のために、かなり調べてきていたようにも見えた。

もしかしたら、いい人なのかもしれない。


夜、パレードをみようと歩いていると手を握ってきた。

彼の汗で汚れそうで嫌だったけど、嬉しそうな顔で彼を見上げることにする。

それで気をよくしたのか、帰りの電車では肩に手をかけることもあった。

だいぶ、ご機嫌がよさそうだった。本当に男性って単純なのだと今更に思う。


最後の山手線では満員電車だった。

別に狙ったわけじゃないけど、お互い正面をみた形で押し付けられたの。

彼は、上から私のバストを見下ろす。


バストが自分に押し付けられているのを楽しんでいたみたい。

女性になって気づいたんだけど、別に谷間とか見ても何の感情も沸かない。

しかも男性だったからか、バストが男性に触れても、何一つ心に波が立たない。


でもこれは演技だから、恥ずかしそうに見上げ、時々話す。

そして、少し揺れたのを機に、手でバストを抱え込む。

清楚な女性だとアピールするために。


そして品川駅で彼と別れた。

送っていくとは言ってくれたけど、家は教えたくなかったし。


毎週末に会い、1ヶ月ぐらい経った頃かしら。

私達は、彼の認識としては付き合っていたんだと思う。

そんな時、夜レストランで一緒にいる時に話しを振ってみたの。


頼んだのは、安っぽいミートソーススパゲティ。

最近は、肩がはる高級レストランではないカジュアルなお店が増えている。

なんか、釣った魚には餌をやらないみたいな感じ。


「ねえ、宮下さんが働いている職場、見てみたいわ。特に、普通の社員とか入れない部屋に、誰もいない夜に入るなんてことも、宮下さんだったらできるんでしょう。たとえば、TVとかで聞いたことがあるんだけど、特権IDを持っている人しか入れないサーバールームとか。なんかドキドキするじゃないですか。」

「でも、管理が・・・。」

「宮下さんじゃ、ランクが低くてだめってこと? そうか、普通の人じゃ、入れないんだものね。まあ、そんなレベルだったのね・・・。」


なんか、バカにされたという感じで、顔の表情はこわばる。

それと同時に、見返したいという表情も。


「そういうことはなく、僕は、十分な権限を持っているよ。ただ、普通の人を入れないから特権ルームなんだし、管理ルールがあるから・・。」

「だからドキドキするんじゃない。ダメ?」

「いいけど。」


少し得意げな表情に変わった。


「そうよね。頼もしい。ねえ、いつにする?」

「じゃあ、今度の土曜日、夜11時に入ろう。」

「すごいわ。やっぱり、宮下さんは、できる人なのね。」

「それほどでもないけど。」


やっぱり男性は自尊心をくすぐるのがいい。


当日、私達は、彼のオフィスがあるビルの前にいた。

土曜深夜のオフィス街は静寂に包まれる。

このビルは3階の窓からは光が漏れるけど、それ以外の階は真っ暗。


日本橋にある製薬会社の本社ビルは威厳がある。

誰も寄せ付けない要塞のよう。

私が、本当にここから情報を盗めるのかしら。慎重に進めないと。


「まず、オフィスに入る前に、ドキドキ感をより高めるように、帽子とマスクをつけるわね。」

「そんなことしなくてもいいじゃないか?」

「いえいえ、なんか犯罪組織の一員みたいじゃない。盛り上がるし。」

「そんなもんかな。僕は、何もつけないけどいい?」

「同じもの付けてほしいけど、宮下さんの自由だから任せるわ。」

「じゃあ、オフィスに入るね。」

「ええ。」


夜のオフィスには、フラッパーゲートで警備員等に会わずに入れる。

1枚の入館カードで2人はエレベーターからサーバーがある階に入った。


監視カメラらしきものがいくつも見える。

だから、彼が主導で私はついてきただけという演技をした。

そうしながら、乗り気ではない彼を焚き付ける。そのバランスが難しい。


真っ暗なオフィスは怖い。

電気はつけられないから、懐中電灯でオフィスを照らす。

このオフィスは、自動で電気がつく仕組みじゃないみたい。


私たちの足音が部屋中に響き渡る。

2時までは警備員は来ないことは組織から聞いている。

だから、安心してサーバールームに行けるはず。


でも、何が起こるかわからない。

社員が、ふと忘れ物をしたなんて戻って来るかもしれない。


その時、何かが落ちた音がした。

振り返るけど、誰もいない。

気のせいだったのかしら。


神経が過敏になっているのかもしれない。

彼に勘ぐられないように、笑顔、笑顔。

ただの遊びなんだと思わせるために。


「ここが宮下さんのデスクなんですね。資料とかいっぱいあって、できる人のデスクって感じですね。いつも、お疲れさまです。」

「いや、それほどでもないけど。」

「ねえ、宮下さんに、お疲れさまへの感謝で紅茶を持ってきたの。飲みましょうよ。」

「ここでかい? サーバールームに入った後に、どこかで飲みに行こうよ。」

「それはそれ、まずは、サーバールームに入る前にドキドキ感を祝して乾杯って感じ。はい、どうぞ。」

「じゃあ、ありがとう。」


彼は、私の差し出した紅茶を飲み干した。

私のこと、何一つ疑っていない。

紅茶には10分後に眠りに落ちる薬が入れてある。


「じゃあ、ここからサーバールームに入るぞ。」

「なんか、ドキドキする。」

「僕は、毎日入っているから普通だけど、そうじゃないとそう思うのかな?」

「宮下さんがすごい人だから、私もラッキー。」

「なんか、眠たくなってきた・・・・。」

「あら、思ったより早く寝ちゃったわね。このPCでいいのかしら。まずは、USBメモリーを刺してっと。あ、画面が動いて、コピーされているわね。宮下さん、少し待っていてね。あなたは、夜2時少し前に目覚め、このオフィスを出ようとする。その時に巡回する警備員に発見され、情報を漏洩させたという罪を背負うことになる。コピーは終わった。じゃあ、私は、これで失礼するわね。」


彼は捕まり、会社をクビになると思う。

会ってる時は、私の情報はできるだけ出さないように気を付けていた。

ディズニーランドでも、一緒の写真は撮っていない。


さっき、このビルに入るときも、監視カメラには十分に気を付けていた。

もちろん、婚活サイトに登録した住所とかは偽物。


でも、床に横たわっている彼が目に入る。

その温もりには、少しだけ罪悪感を感じた。

これまで、私のこと、本当に大事にしてくれたから。


もしかして、このまま付き合っていたら、いい家庭がつくれたかも。

私のことを、ずっと見ていてくれたから。

まじめそうで、浮気とかもしなさそうだったし。


でも、そんなのは無理。若返っていく私に、彼は困惑するはず。

彼と同罪で捕まるのも嫌。

少しセンチメンタルになっていたけど、もともと、彼のことは好きでもない。ただの仕事。


彼は、未練か復讐かわからないけど、私のことを探すかもしれない。

でも、東京には何人の同年齢の女性がいるか知ってる?

背格好とかで絞り込んでも、とても探せる数じゃない。

彼が、何年、刑務所にいるかはわからないけど、私は探せないはず。


これで、ミッションコンプリート。

スパイ映画みたい。


私は、彼のカードを使いビルを出た。

そして、そのカードは自販機横のペットボトルのゴミ箱に捨てる。


そんなとき、ふと、おじさんの時は地道に働いていたなと思い出した。

女性になって何をしてるんだろう。

こんなことをするために女性になったのかしら?


彼も、別に悪人じゃなかった。

データを盗もうなんて考えたこともなかったと思う。

そんな人を騙してしまった。


でも、生きていかないと。

おじさんの時に、地道に働いても会社から捨てられた。

結局、まじめな人は損をする社会。騙される方が悪いと過去の人生が語っている。


そう思って忘れることにした。

罪悪感を打ち消すように、鼻歌を歌いながら家路に着く。


でも、そんな笑顔もひと時にすぎない。家に帰ると静寂と暗闇に包まれる。

そもそも、私は何をするために女性になったのかしら。

こんな犯罪に手を染めるためだったの。


いえ、女性として輝き、みんなにこの素晴らしい体を見せるため。

お金がなければ生きていけないのも事実。

しばらくは、犯罪組織の中で生きていくしかない。


今夜は新月で、私の心を照らす光が見えない。

最近、周期的に落ち込んだり、ハイになったり、心が不安定になる。どうしてかしら。

暗闇の中で、一人寂しくベッドに入り込み、目をつぶる。

次の仕事で大変なことが起こることも知らずに。

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