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おじさん、女子高生になる  作者: 一宮 沙耶
第1章 若返り

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5話 闇バイト

「あなたは、やはり若年齢化していますね。」

「どういうことなんですか?」


医師は難しそうな顔をしてデータに目を通している。

男性の体に卵巣と子宮があったことなんて忘れて、女性にしか見ていない。

自分が手術をしたのに。


「調べてみると、半年前と比べて細胞の増殖機能の数値が高まっています。また、活性酸素の量も減っています。これから推測すると、1年で約10歳若返っていることになりますね。あなたが最初にこの病院に来たのは1年6ヶ月前ですから、その時よりもう15歳若返って、今は45歳ぐらいの体年齢だということです。たしかに、45歳だと言われれば、そのぐらいに見えます。」


やっぱり、日頃感じているとおりのことがデータでも検証されたらしい。

肌はつやつやし、昔より潤っている。そのおかげか、ファンデーションのノリもいい。

でも、どこまで若返るのかしら。


「そういうことだと、あと1年経てば35歳、3年経てば15歳になるということですか。赤ちゃんまで若返るなんてことになるのですか?」

「骨はそこまで縮まらないだろうから、赤ちゃんまでにならないとは思いますが、18歳ぐらいにはなるかもしれないですね。というのは、卵巣にとって初潮が何歳だと感じているかは別として、もし一番遅い14歳頃だとしたら、それから4年目の18歳で若返りと同じ歳になる。その時に若返りが終わり、1年毎に普通に1歳年を取り始めるんじゃないかと。単に思いつきですよ。でも、そんな気がします。いずれにしても、初めての症例で、よく分からないです。」


会社を定年になり、これからは余生を過ごすだけと思っていた。

でも、もう1度、チャレンジできるチャンスが来たのかもしれない。

しかも、女性としての一番美しい時期を過ごせるのであれば、期待は高まる。


今回も検査を受けて病院を出た。

でも、これから何十年も生きていけるお金はない。

どうしようかしら。


前も考えたけど、普通の企業に就職することはできないと思う。

戸籍も問題だし、年末調整とかで税務署もからむと、45歳ではないことはすぐにバレる。

そんな時に目にとまったのが闇バイト。


単に数人の集団ではなく、教育指導もする、強い組織をもった集団らしい。

仕事は老人の個人宅を襲ったりするのではなく、政治にも影響を及ぼす世直しだという。

世直しと言っても、実際には詐欺でお金を盗むようだから、犯罪なのは間違いない。


私みたいな女性には、ハニートラップの仕事がネットに出ていた。

悪徳政治家や、不当な利益を貪る社長等を騙してお金を奪い取るという仕組み。

詐欺集団と違うのは、組織の幹部層とは会う機会がなく、その存在は秘密だということ。


誰に何をするかは、会ったこともない人からメールで連絡が来る。

失敗して私が捕まっても、組織に警察の手は及ばない。

そういう仕組みだから、闇バイトと呼ばれている。


よく、闇バイトは、家族等に悪影響がでてしまうから逃げられなくなると言われている。

でも、私には家族もいないし、守らなければならない過去もない。

相手も匿名なら、私も匿名で、本当の私に辿り着けないようにする方がいい。


女性としての私は、つい最近のことだから、過去を探り当てるのは困難。

運転免許証もないと伝えているから、辞めると言っても脅される材料はない。

なによりも、履歴を出さなくて済むのは助かる。ちょうど、いいんじゃないかしら。


早速、DMを送った。

ただ、男性と付き合ったこともないし、男性とエッチをしたこともない。

そんな私でもいいかと言葉を添えて。


1時間ぐらいすると、返事が来る。

エッチの件はトレーニングをするから大丈夫だという言葉を添えて。

通常は顔は見せないが、教員が1週間、トレーニングをすると書かれている。


私は、指定された木場のシティーホテルの一室で待つ。

1週間のトレーニングコースと聞いていて、この一室で私は1週間を過ごすことになる。

宿泊費が安く、都心に近いので、ここに決めたらしい。


闇バイトの組織と関係のない一般のシティホテル。

組織のことがバレないように慎重なのだと思う。

教員は、毎朝9時に来て、夜は5時に帰るという健康的な就業時間。

それ以降は、勝手に食事を取って、昼に学んだことを自習するらしい。


今日は、チェックインの関係もあって、15時30分から21時までと変則的。

毎朝、ホテルの朝食もついて、なんか旅行みたい。

温泉の元を持ってきたから、バスタブに入れてスマホでドラマをみよう。


待ち合わせの時間の少し前、ドアにノックの音が響く。

ドアを開けると、俳優のような30歳ぐらいのイケメンの男性が入ってくる。

その男性を顔から足まで、ゆっくり目を向け、この人とエッチをするのかと覚悟する。

まだ、男性とエッチをする気分にはなれないけど、お金のために仕方がない。


「今回の生徒さんは、あなた? 授業料は、バイト料から引かれるのは知っているよね。」

「ええ。」

「わかった。始めるけど、あなたは45歳ぐらい、いや、もう少し若いかな。どうして、こんな年まで男性と肉体関係がなかったの?」


これまで男性だったとは言えない。

そのせいで、男性と肉体関係を持つことは想像もできない。

女性ホルモンで少しは変化していると思うけど、まだ気持ちが追いついていかない。


先日会ったおばさんには離婚したと言った。

でも、闇バイトの関係者に本当の素性を言う必要もない。


「男性と話すのは、それ程苦手というようには見えないな。」

「そうですね。」


お互いに名乗るようなことはしないし、不必要に過去について触れない。

1週間が過ぎれば、お互いに知らない人になるということだと思う。

そちらの方が気が楽。


「まあ、深いところに踏み込まないことにするよ。最近は、1人で過ごすことが好きで、他人と関係を持たない人も増えたというし、まあ、男性がそれ程、魅力的でなくなったということかな。この1週間で、男性を魅了する仕草、騙し方を学ぶけど、僕のやり方は、エッチで男性を知ることが一番、妖艶な女性を作り出すと考えているから、1週間、エッチのトレーニングを半分する。大丈夫だよね。」

「分かっています。」

「まずは、男性器を入れることからだが、処女と聞いていたから、一人エッチを1ヶ月以上するように宿題を出していたが、しっかりとやってきたかな。」

「はい。」

「あと、生理は終わったばかりと指定しているが、それも大丈夫だよね。」

「ええ。」

「じゃあ、早速始めるぞ。」


彼は、いきなり、私の口に自分の口を重ね、服を脱がし始める。

そういえば、60歳を過ぎたおじさんの気分も残り、裸になることに恥じらいがない。

まず、そのことから指摘される。


自分の理想の人が目の前にいると思って、憧れの気持ちで見上げる。

そんな人に抱きしめられたら、恥ずかしいと一旦は引く。

でも、いつまでも引いていないで、受け入れ、時には積極的に誘う。

そんな高校生のような基本から実技で教えられた。


エッチも、最初は入れても何も感じず、やっぱり偽物だとだめなのかと思っていた。

でも、膣は女性のものだし、自然と濡れてきて、そんなことはなかった。

男性の性感帯がある皮はクリストスらしく作り込んだ所に入れてあると医師は言っていた。


だからか、何回もするうちに声が自然にでていて、体はのけぞり、稲妻が身体中を走る。

こんな私でも、男性に抱かれ、感じることを知った。


4日目の朝、彼が訪れて、私が男性をベッドに誘うようにと言われる。

はにかみながら、男性を下から見上げ、目を瞑って口を差し出す。

彼が何もしてこないので、胸元を見えるように彼の目を拗ねたように見つめる。


「だいぶ色気が出てきたな。妖艶な雰囲気を感じる。これなら、多くの男性は騙される。僕は、この指導で組織で一番手なんだぞ。まずは、女としての魅力は合格。」


なんとか、男性が欲しがる女性としては振る舞えるようになったみたい。

でも、本音では、男性にはまだ興味はない。仕事としてできる範囲。


「残りの3日で、、エッチするときの演技や、その時の男性を魅了する表情を学んでもらう。そして、初日から教えている、男性から情報の引き出し方や、騙し方も教えるから、僕が帰ってからも、スマホの動画で自分を撮って、僕が言っていることができているか毎晩、試して習得していって。勉強のお金は節約して、1週間で完璧になろう。」


そもそも男性のことは、自分のことのようによく知っている。

自分が男性だった頃のことを思い出し、こんな仕草には騙されないということも感じた。

逆に、ここまでされると断りきれないと思うこともあった。


「女性はだいたいそうなんだが自己肯定感が低い。男性の方が遥かに自己肯定感が強いと感じたことはないか。そのような男性の方が騙しやすいんだよ。素晴らしい自分に、格下の女性が憧れて寄ってきたと勝手に過信するから。」


私が男性の頃は、いつも卑屈だったけど、確かにそういう男性はいっぱいいた。

そういう感情を利用すればいい。特に金持ちや地位が高い男性は自分が偉いと思っている。

理詰めで説明する彼は、教員としてとても優秀だった。


騙す時に、自分の気持ちを勘付かれてはいけないことは言うまでもない。

自分に気がある女性だと、自然に思えるように振る舞わなければいけない。

このトレーニングで、自分の体を思い通りに操れるようになっていると感じる。


これまで、女性として、まだまだ不自然というか、無愛想だったことを反省する。

ただ前に進むだけでなく、時には引き、時には罠を張る、そんな駆け引きも必要。

恥ずかしがり、一歩引く方が、男性は追いかけてくる。


それができなければ、ただの人間に過ぎず、周りの人は関心すら持ってくれない。

曝け出さずに引くことで、男性の方が上位だと優越感も与えられる。

男性の少し後ろを歩き、時々、ヨイショをしていれば、男性は満足する。


男性をうまく操るといえばそうだけど、女性は、男性の影で暮らす生き物みたい。

私が男性だった頃に、こんなことを女性や妻に強いていたのかしら。

最近は妻や娘のことを思い出すことも減った。もう遥か昔のことのように霧が立ちこめる。


でも、今回の経験を経て、より女性に近づいたことは大きな成果だった。

今日は最終日、詳しく実技を交えて教えてくれる。

男性をベットに誘う仕草、男性を虜にする目の動き、美しいと思える喘ぎ声の出し方。

終わった後に、抱き続けたいと思わせる言い方、また会いたいと思わせる素振り。


特に、男性の胸元にきて、下から、上目遣いで男性を見上げる。

胸の谷間も見せながら、恥ずかしい振りで、あなたが欲しいと言うと効果があるという。

知らないことばかりで勉強にはなった。


「1週間、お疲れさま。あなたは、本当に熱心で、過去に教えた人の中で一番、成長した。最初会ったときは、大丈夫かと思ったけど、ここまでくればトップで稼げるんじゃないかな。最後に、3つ、アドバイスをする。」


何かしら、最後のアドバイスって。


「一つ目は、日頃から、こんな妖艶な雰囲気を出していたら、逆に、高嶺の花として近寄りがたいと思われるかもしれない。だから、普段は、あどけない女性を演技しつつ、必要があれば、今のように妖艶な女性を演じるというように、意識して切り分けることが重要だ。」


確かに、そのとおり。

愛想のない素振りはこれまでの自分なので難しくない。うまく切り分けよう。


「そうですね。わかりました。それで2つ目とは何ですか?」

「僕が言うことじゃないけど、避妊してないだろう。こんな商売してると、エッチをせざるを得ない時もある。そんな時に、男性によっては、嫌だと言っても、強引に生で入れてくるやつがいるから、自分を守るために、ピルは飲んだ方がいい。」

「それは分かってるんですけど、なんか卵巣に悪そうで。」

「嫌な奴の子供ができて堕すとかなった方が卵巣にはダメージを与える気がするけど。まあ、あなたの問題だから、任せるよ。」


彼は、最初の印象より、優しいのだと思う。

最初は、ただ、女性とエッチしたいだけだと思っていた。


「ありがとうございます。で、3つ目は?」

「あなたは、あんまり男性に恋心を感じないようだから問題はないとは思うけど、騙す相手に、恋をしないこと。恋をしてしまうと、相手を騙すことが苦痛になり、ハニートラップする仮面が崩れ落ちてしまう。」

「そうですね。これからも、心をときめかせる男性はでないと思いますが、気をつけます。」

「僕にも、恋心を抱かないでね。これは1週間の仕事だけの関係だから、このドアから僕が出ていけば、僕らは知らない人になるのだから。」

「分かっています。」


たしかに、1週間、辛いことも含めて一緒に過ごしてきたことに連帯感はある。

でも、この訓練を経ても、まだ男性には興味を持てない。

なんか、会社の男性の同僚に抱かれているようで違和感が残る。


体が、まだ男性を求めていないのだと思う。

でも、その方がハニートラップの仕事にはいい。

私は、組織にDMを送り、仕事の準備ができたと伝えた。

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