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おじさん、女子高生になる  作者: 一宮 沙耶
第3章 破局へ

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4話 闇の世界へ

弁護士になってから3ヶ月ぐらい経った頃、組織に呼ばれる。

先日会った男性とは違い、体は締まり、突き刺すような目をしている。

実務家で、隙がない感じ。しかも、頭脳を使う武闘派のように見える。

まあ、これだけの大掛かりな組織には優秀な人も多いのだと思う。


「佐久間さん、君のことは優秀だと聞いているよ。検事のことは残念だったね。」

「あなた達が仕組んだんでしょう。よく、そんなことを言えますね。」

「まあ、そんなに怒らないでくださいよ。さて、今日はお願いがあって、来ていただきました。」

「なんですか?」

「我々をサポートしてくれている政治家が、今度の総裁選に出馬する。それで、対抗馬の山本総務会長を失脚させてもらいたいんです。」


また、ハニートラップとかをさせようと企んでいるに違いない。

目の前の男性は、勝ち誇ったように私を見下す。


「弁護士の仕事と関係があるんですか?」

「いや、検事の経験を活かし、問題行為があるというロジックを固め、週刊誌に情報を流してもらいたい。別に失脚すればいいから、シナリオはお任せします。成功すれば3,000万円を渡すから安心してもらいたい。」

「断ったら?」

「帰り道には気をつけてもらうしかないね。」

「断るという選択肢はないんですね。」

「ええ。」


私は誰が総理になってもかまわない。

でも、もうここまで来てしまったら、断ることはできない。

戸籍の主の女性のことが明るみにされても困る。


私は、この山本総務会長には娘がいることを突き止めた。

調べていくと、その娘は私より1歳下で、同じ高校を卒業した女性。

そう、最初にがんを付けていたあの子、凛だった。


そして、偶然に、高校卒業後10年の同窓会の案内が来る。

同窓会に行ってみると、凛はすっかり変わって明るくなっていた。

そう、今はTVのドラマに出る女優で、すぐに男性達に囲まれている。


同窓会の中盤に、男性をかき分け、なんとか話すことができた。

遠くからでも、真っ赤なパーティードレスに身を包み込んだ凛はすぐに分かる。


「あら、山本さんも来ていたのね。」

「佐久間さんじゃないの。」

「なんか山本さんは明るくなったわね。清楚という言葉の方がぴったりかも。」


明るく挨拶しているようで、口元には嫌な奴が来たという表情が滲み出る。

また、男性に囲まれ、楽しく話しているんだから邪魔しないでとも思っているみたい。

でも、同窓会に来たのは仕事のためだから、無理に話しかけるしかない。


ところで、清楚な女性が、あんなに目立つ真っ赤なパーティードレスなんて着てこない。

あのころから性根が腐った女性だと思っていたけど、清楚だとおだてる。

去りそうもないと思ったのか、へりくだった言葉に気をよくしたのか、凛が話しかける。


「あの時はごめんね。すこし荒れていたのよ。若気の至りというか。でも、今は順調というか、のっているの。佐久間さんとも仲良くしたいわ。」

「そうよね。TVでよく見てるわよ。この前も、刑事ドラマだったっけ、まっすぐな女性捜査官の役で光ってたわよね。」

「ありがとう。佐久間さんはどうしているの? 紬衣だったわよね。」

「ええ、弁護士している。地味だけど。」

「そうなんだ。すごいね。あの頃から優等生だったから、どうなるかと思っていたら、弁護士先生なのね。すごい。今度、女優業のために、弁護士先生の仕事を少し聞かせてもらえると嬉しいわ。」

「もちろん。」


言ってることは普通だけど、何か一言一言に棘が感じられる。

他人を上から見下すような嫌な性格は変わっていない。

言葉の表面上だけ、明るく振る舞っているだけ。


「ねえ、この会、終わったら、私の行きつけのバーに行かない? 男性ばかりと話していると週刊誌の記事とかに載っちゃいそうだし、女性どうしでさ。」


男性ばかりという言葉に、凛は明らかに迷惑だと顔をする。


「いいわね。じゃあ、朋美と、咲も一緒に行こう。行くわよね。」


朋美、咲という2人の女性は凛の手下という感じ。

2人の女性はびくっとし、暗い表情でうなづいていた。


「じゃあ、同窓会が終わるまで男性達のお姫様の役を立派に演じてね。終わったら、出口で待っているから。」

「分かった。もう、人気者は大変なんだから。じゃあ、また後で。」


凛は、また、男性に囲まれて楽しそうに笑っている。

どうして、男性は、こんな腹黒い、二面性を持っていることに気づかないのだろう。

夏の夜に蛍光灯に群がる虫達のように、次から次へ男性が凛に話そうと集まる。


有名人と知り合いだと自慢したいとか。

あわよくば付き合って、結婚しようとか。

そんな欲望をもって近づいてきているのかもしれない。お互い様。


でも、私には、あんな裏表がある人とは仲良くできない。

高校の時の嫌な思い出が蘇る。吐き気がする。

凛に目をやると、凛の周りはドス黒く、ねっとりした煙が渦巻いているように見えた。


同窓会が終わると、会場の出口で凛を待つ。

凛が、満身の笑顔で手を振り私のもとに駆け寄る。仲のいい友達だと言わんばかりに。

女性は、嫌いな相手でも、こんな仕草は得意なもの。特に、女優の凛は。


3人を、昔行っていた赤坂のカウンターバーに連れて行く。

あの国会議員が連れていってくれたバー。重厚な雰囲気が漂っている。

あの頃と違い、シャンソンがバックで流れていた。


「紬衣はしぶい所知っているのね。高そう。」

「昔の彼によく連れて行ってもらったの。それほど高くはないわよ。」

「そうかしら。渋谷の松濤に家があるお嬢様だし、弁護士先生だからお金に困っていないものね。でも、今日は、久しぶりに紬衣と会えたし、ここの代金は、私が払うわ。パパにお小遣いおねだりすればいいから。」


そう、凛のお父様は政治家。そのために来たのだから、そのぐらい知っている。

でも、マウントを取ろうとする所は、高校の時と全く変わっていないのね。

取り巻きの2人の女性は怯え、自分から話すことはない。

完全にマインドコントロールされている。


「お父様、お金持ちなのね。どんな仕事しているの?」

「政治家なのよ。民自党の総務会長って、わかるかしら。」

「そうなんだ。総務会長って、よく知らないけど、偉いんでしょう?」

「そうね。将来は総理を目指すとか言っていたし。」

「そうなんだ。すごい。凛は、あいかわらずお姫様なのね。」

「それ程でもないけど。」


2人の女性は、最終電車の時間だから帰っていいかと、おそるおそる凛に許可を求める。

凛は、私にマウントを取って気持ちがいいのか、帰れと手を外にふる。

その女性達は、開放されたとほっとして、小走りにお店を出て行った。


凛が、少し酔ったと言い、トイレに化粧直しと言いながら席を立った。

その間に、凛のカクテルに薬を入れる。眠り薬と媚薬を。

これで、あなたの女優生命は終わりだと呟きながら。


トイレから帰った凛は、カクテルを一気に飲み干し、おかわりを頼む。

2杯目の半分を飲んだ頃、凛はカウンターに顔を埋め、寝てしまう。


「凛、こんなに酔っ払っちゃって。帰ろう。」

「ここ何処?」

「カクテルバーだよ。家に帰ろう。」

「わかった。」


私は、凛の肩を抱きかかえ、外の車に乗せた。

そう組織の車に。車の中でもすっかり寝ている。

ぐったりとし、朦朧としているようで、車が揺れるたびにドアにぶつかる。


桜丘あたりの道は渋谷といっても人通りは少ない。

そんな路地に、凛を放りだした。

肌が露出する腕は、アスファルトをこすり、血が滲む。


「ここはどこ?」

「家に着いたわよ。シャワーを浴びて寝ましょう。」

「わかった。ありがとうね。」


ろれつが回らない凛は本当に自宅だと思っているように見える。

シャワーを浴びようと服を脱ぎ始めた。

よろけながら、全て自ら脱ぐ様子を、動画で週刊誌の記者に撮らせる。


何も着ていない姿で、ビルの壁に手をあてている。

電気を付けようとスイッチを探すけど、どこにあるのか分からず、裸で彷徨う。

お風呂に入ったと勘違いをしたのか、シャワーを浴びようと、よろけながら歩き始めた。


3人のガラの悪い若者がニヤニヤしながら凛を取り囲む。山本 凛だと話している。

そして、酔っ払った3人は、抵抗できない凛を壁に押し当て、後ろから犯す。

もちろん、この3人も闇バイト。


その顛末を週刊誌記者は動画で撮っていた。

それだけじゃない。通行人も集まり始め、スマホで動画を撮り始めた。

凛は、お尻を突き出し、派手な喘ぎ声を出していた。後ろから攻める男性に抵抗もせずに。


山本 凛だと人々は話す声も凛は認識できない。

止めないでと大声で叫び、道路に寝転び、足を上げて、おまたを丸出しにしている。

自分の手で穴を広げて、挙げ句の果てに一人エッチを始めた。

それを見て、興奮すると、闇バイトの男性達は大笑いをする。


誰かが警察に連絡したんだと思う。

すぐに警官がやって来て、タオルをかけ凛を守ってあげた。

しかし、3人の男性はどこかに消えて逮捕できない。


翌日、週刊誌には、女優 山本 凛の記事が1面にでていた。

酔っ払って、渋谷の道路で自ら衣服を脱いで裸で男性を誘惑した。

そして、道路でエッチに及んだと。


芸能界で衝撃が走る。

そして、その夜には、凛の父親が民自党の総務会長だと報道された。

凛の父親は、過去に文部大臣もしていたから政治評論家も責め立てる。

こんな大臣のもとに子どもたちは教育されてきたのかと。


ネットでは汚い女だという投稿が絶えなかった。

もともと男性にだらしなかったと。

ドラッグをやってたに違いないとの投稿もあった。


実態は、凛が自ら脱いだものの、周りにいた男性から強姦された。

でも、無責任な観衆は、単純なストーリーに飛びつく。

だから、自ら脱いで男性を誘惑し、エッチに及んだ。

それが真実だと誰もが思っている。


凛の番組、CMは全て中止になり、企業からの多額の損害賠償を受ける。

そして、凛の事務所は倒産する。

それでもデジタルタトゥーは消えることなく、しばらく検索件数1位を維持した。


SNSでも、凛のことを淫らな女性だと批判が続き、凛の心を闇が包み込む。

週刊誌が撮った凛は、昔の面影はどこにもなく、肌が荒れたみすぼらしい姿だった。

ジャージを着て、今にも倒れそうな、髪を振り乱した気が狂った女性に見えた。


悪いことは続く。というより、金の切れ目は縁の切れ目ということかしら。

内輪から、総務会長の不正の告発があった。

そして、総務会長は失脚し、議員辞職、逮捕までの事件に及ぶ。

結局、執行猶予がついて家に帰ったようだったけど。


その後、後味は悪いけど、総務会長、その妻、凛は自殺をした。

ガソリンをかぶり、家に火を付けたとか。

まあ、私にがんをつける嫌な女がいなくなったのは良かったとも言える。


組織をサポートする政治家は、それを契機に総理大臣に上り詰めていく。

私は、組織に問題が起きる都度、解決に向けて動いた。

もう、どこにも自由はなく、息苦しい毎日が続く。

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