7話 サークル活動
大学の正門から寮への道ではセミの鳴き声が響き渡る。もう8月になっていた。
暑い日が続き、外に出るのが辛い季節になっていた。
最近、気になっているのはサークル活動。
ほとんどの同期がどこかのサークルに入っている。
4月にサークルに入ろうと思っていたけど、理恵への嫌がらせで上手く進まない。
私だけが入るのも気が引けたし、理恵と同じことをやり、一緒の時間を過ごしたかった。
そんな中で2次募集がある。一旦サークルには入ったけど合わなかった人も対象とある。
今日は、正門の前で男性達が大勢、勧誘をしていた。
女子大に男性が勧誘? 驚いたけど、どうも、多くのサークルには連携大学があるらしい。
この女子大に閉じない活動なら、理恵へのいじめも減るかもしれない。
私も理恵も、男性には興味がなく、女子大のサークルに入りたいと話していた。
茶道部とか、料理部とかのサークルの勧誘に足を運んでみた。
でも、私たちは、この女子大ではハブられているようで上手くいかない。
理恵を嫌っているあの女性達が悪い噂を流し、なかなか上手く周りに溶け込めない。
挙げ句の果てに、私は淫乱だとか言われて、先輩から入るのは遠慮して欲しいと言われる。
結局、他の大学との合同サークルに入らざるを得なかった。
どうせなら、私はやったことがないものをやってみたかった。
だから、社交ダンスサークルの勧誘に足を運ぶ。
慶早大学と連携していると言っている。
私が男性だったころに在学していた大学。
その頃から、この大学にはいい思い出はない。人と付き合うのは苦手だったから。
誰もが笑顔で溢れ、若い時代を謳歌しているのに、私はいつも1人ぽっちだった。
そんな、遥か昔のことを思い出しつつも、今の私は女性。しかも美しい。
だから、そんな昔の汚名を挽回して、誰からも好かれる人気者になろう。
慶早大学の昔の同級生を見返してやりたい。
体育会と違って、練習は週に1回。
その他にレッスンを受ける真面目な人はいた。
でも大半は適当に練習して、その後の飲み会が楽しみみたい。
最初は、ダンスパーティーで入部を誘われる。
理恵と一緒に参加してみる。男性が優しくリードしてくれた。
彼氏が欲しいということはないけど、男性が優しくしてくれるのは嬉しい。
何が違うのか分からないけど、女性が優しくしてくれるのとは少し違う。
同期の女性達と、どの男性が好みとか話しが盛り上がり、女友達もできる。
それだけでも、このサークルの中で楽しみが増えていく。
高校時代に教室で男性に囲まれていた頃を思い出していた。
だから、なんとなく居心地がいいと思う自分がいる。
男性は昔から、私のことを褒め、お姫様気分にしてくれる。
女性ばかりの社会ではあり得ない。多くの女性が、笑い顔で、足の引っ張り合いをする。
男性は湊くんだけじゃない。もしかしたら、湊くんとの相性が悪かっただけかもしれない。
湊くんがだめでも、男性なんて星の数ぐらいいる。
もしかしたら、女性としての幸せも得られるかもしれない。
いえ、私は理恵の暖かい気持ちに守られている。理恵を大切にしないと。
でも、ふと気づくと男性の優しさに浮かれてしまう自分がいた。
最近、自分の気持ちがよく分からない。
ところで、サークルには、私の大学以外の女子大からも来ていた。
なんか別の女子大の子とは、あまり仲良くなれない。
あなたも男性狙いなんでしょう、好きな先輩を取らないでって敵意を感じた。
なんか女性どうしの関係って難しい。
グループがあるというか、笑顔で攻撃してきたりとか。
女子大に入って、女性の嫌らしい所もいっぱいみてきた。
同性しか好きになれない理恵の方が、よっぽど心が清らか。
そんな中、私は背が高いからか、背が高い男性が声をかけてくれる。
男性に幻滅していたけど、イケメンが私をちやほやしてくれるのは嫌ではなかった。
自分でも不思議だけど、最近は、少しづつ、心が女性になってきているのかもしれない。
とは言っても、男性より、理恵と一緒にいる方が嬉しい気持ちを感じられる。
練習の後の飲み会では、最初、理恵とずっと一緒に話していた。
でも、男性の先輩から、せっかく一緒にいるのだから、男性とも話すべきだと言われる。
多分、理恵とは、とっても仲のいい女友達だと思われているのだと思う。
いえ、恥ずかしくて男性と話せない、うぶな女性達と思われていたのかもしれない。
ある時、社交ダンスで私によく声をかけてくれる先輩男性がやさしく話しかけてくれた。
男性から守れられると女性は安心できると感じ始めている自分がいる。
最近、感覚が少し変わっている感じがする。
理恵もこのサークルに入ってくれる。私と一緒にいる時間を大切にしたい様子だった。
私の気持ちが理恵から少しづつ離れつつあるのが不安だったのかもしれない。
でも、女性としてはそれが自然で、私を責められないと苦しんでいるのかもしれない。
それからも、毎週、先輩たちと飲みに行った。
どうも、あの背の高いイケメンには彼女がいるみたい。
飲み会で、同じ大学で別の学部の女性が彼に声をかけた。
「結城先輩、紬衣のこと、どう思いますか?」
「紬衣さんは可愛いよね。」
私は、何を言っていいか分からずに下を向いていた。
先輩の目線は、これまでの男性と同じで私のバストに向かう。
これまで嫌らしい目線だと嫌いだったけど、不思議に嫌な感じはしなかった。
「紬衣は、結城先輩のこと憧れているようですよ。」
「美羽、やめてよ。誤解されちゃうでしょう。」
そもそも、そんな気がないのに、余計なことを言う。
でも、先輩を正面から見ることができずに下を向いてしまう自分もいた。
どうしてか、顔が真っ赤になり、頭は真っ白になる。
「本当じゃない。ねえ結城先輩、紬衣と付き合っちゃいなさいよ。」
「でも、結城先輩には彼女がいるって聞いたし。」
私は何を言っているのだろう。
彼女がいるとか関係ないし。まるで彼女がいなければ付き合いたいと誤解されてしまう。
知らぬ間に、両手の親指と人差し指を重ね、動かしていた。動揺している。
「そんな噂があって、困っているんだよね。そんな彼女なんていないんだけど。」
「そうなんですね。でも、私、男性と付き合ったことないし。」
どうして、そんなこと言っちゃうんだろう。
男性経験がないって自白して、誘ってるみたいじゃない。
もう、話す度にボロが出てしまう。
「紬衣さんだったら、誰にでも自慢できるよ。どう、今度2人でデートでもしてみない?」
強引に誘われてしまう。
でも、理恵が見ている中で、さすがに2人だけで出かけることはしなかった。
それがはがゆかったのかもしれない。3ヶ月ぐらい経ち、夏休みが訪れた頃だった。
サークルの男性2人、理恵と私の4人で旅行に誘われる。
男性のうち1人があの背が高いイケメンの先輩。
グループなら旅行するのもいいだろうと。
断るとサークルでの雰囲気も悪くなるし、理恵も一緒ならと同意するしかなかった。
そして、結城先輩の親が持っている軽井沢の別荘に向かう。
先輩の別荘は、よく清掃がされていて清潔感が漂う2階建ての一軒家。
埃だらけのログハウスと思っていたけど、先輩は裕福な家庭で育っていることは分かった。
玄関から入ると、荷物だけ置いて、出かけるというので車に再度、乗り込む。
薄手のトップスが揺れ、花柄で短めのスカートを手で抑えて後部座席に座り込む。
車の中では音楽に合わせて、みんなでカラオケをする。
誰もが、学生らしく陽気にはしゃいでいた。
軽井沢は初めて来たけど、思っていたより、おしゃれ。人もいっぱい。
もっと、軽井沢って、山の中でひっそりしていると思っていた。
そういえば男性のときにも軽井沢には来たことがなかったし。
ショッピングをしたり、滝とか自然をみたり。
初めてのテニスもしてみた。先輩は、私に気があるのは明らか。
でも、私は、理恵と別荘で今夜過ごすことが楽しみだった。
夕方になると別荘に戻り、庭でバーベキュー。
別荘は2階建てで、それ程は大きくないけど、部屋はいっぱいある。
まずは理恵と私は、ベットルームに通された。
ドアを閉めて、理恵とは密かに口を重ねる。
「ここからの景色、緑も多くて綺麗ね。今夜は楽しみ。」
「そうね。でも、ベッドの上で声は出せないわね。何やっているのかって、先輩達がこの部屋を覗きに来て、私たちの関係を知られてしまうし。」
下から先輩の声が聞こえた。
「おーい。女性陣、下に降りておいで。バーベキューの用意ができたから。」
「はーい、いま行きまーす。」
2人は笑顔でドアを開け、階段を勢い良く降りていった。
「バーベキューなんて初めて。そもそも、こんなグループで外で旅行なんていうのも初めてだし、楽しいね。」
「うん。紬衣も、いつもよりも輪をかけて楽しそうで良かった。」
庭でバーベキューが始まる。
未成年だけどお酒もいいよねと誘われる。
誰も見ていないし、いいよねという気分。
お肉を取り分けると、先輩からは、そんなことはしなくていいからと言われる。
先輩後輩とか、男女とか関係なく、今を楽しんでと話す。
いつの間にか、甲高い声で大笑いしていた。ああ、楽しい。こんな世界があったんだ。
先輩達は、私と理恵をとても大切に扱い、紳士のような振る舞いをする。
そして、笑わせようと、次々と芸能人の真似を始めた。
お酒も入ったせいか、お嬢様扱いをされているせいか、笑いが止まらない。
いつの間にか、理恵には別の男性が、私には先輩が横に座っている。
私は理恵と一緒に話したいのに。
でも、先輩にずっと横にいて欲しいと思う真逆の自分もいた。
最初は両足をしっかり閉じていたのに、気が緩んだのか、両足は開いている。
スカートが少し乱れていたことにも気づき、慌てて直す。
でも、お酒がなくなり、おかわりを取りに行こうとするときに体がふらつく。
それを見た先輩達は、私たちに声をかけた。
「そろそろ部屋に戻ろう。」
「片付けますね。」
「いや、もう暗いし、片付けは明日の朝にみんなでやろう。今夜は、そんなことより楽しもうよ。」
「それじゃあ、部屋に戻りましょう。」
みんなで向かった先は私達のベッドルームだった。
「あれ、リビングで飲むんじゃないですか?」
「いや、別荘って、部屋で飲んで、疲れたら、その場で寝ちゃえる所がいいんだよ。」
そんなものかしら。2つのシングルベットに4人が座った。
私と結城先輩が1つのベットに。あとの2人が別のベットに。
ベットの横にはシャンパンが置かれている。
私は、おしゃれな雰囲気とお酒に酔っていた。
そして、結城先輩は、私の肩に手をかけ、私を引き寄せる。
別の2人がいるのに。
でも、私は、理恵とは違う、力強い男性の腕の中でずっといたいという気持ちがしていた。
昔みたいに、気持ち悪いという感覚はない。むしろ、体が望んでいるという感じ。
私は、強引な行動の前に、笑顔で下を向いて、どうしてか先輩の胸に顔を埋めていた。
その時だった。
結城先輩は、私の頭を撫でると、いきなり私の手を握り、横の部屋に引っ張っていく。
部屋に入った途端、私の中に舌を入れてきた。




