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おじさん、女子高生になる  作者: 一宮 沙耶
第2章 女子高生へ

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5話 寮生活

理恵が思ってもいないことを言い出す。


「ねえ、紬衣って、スタイルいいね。」

「それほどじゃないよ。」

「彼とかいるの?」

「今はいないかな。」

「そうなんだ。私、なんかぴーんときたんだけど、紬衣って、女の人好きじゃない?」

「いえ・・・・」


私が男性だったことに気づいたのかしら。

疑うような目を理恵が私に向ける。

私は、なぜか朦朧とする中で思考がまとまらず下を向くことしかできない。


「隠さなくてもいいのよ。私もそうだから、なんとなくわかるんだ。今どき、女同士のカップルだっていっぱいいるし。」

「でも、これまでそんなこと・・・。」


バレたわけじゃない。

でも、なぜかろれつが回らない。

これって、お酒に酔っている時と似た感じ。


もしかしたら、理恵がジュースに何か混ぜたのかしら。

オレンジジュースだとジンとかの味は分かりにくいというし。

いえ、初対面でそんなことをして理恵に何の得があるの?


「そんなに、警戒しなくていいって。これまで、自分の気持ちに気づいていなかったのね。いきなり、そんなこと言われて驚くのは、普通のことだと思う。でも、まず、気軽に試してみて、嫌だったら、やめればいいじゃない。同じ部屋になったのも運命だと思うの。私は、紬衣のことタイプよ。初めてみた時に、この人って思ったんだ。」


そう言うと、理恵は私にキスをしてきた。そして、いきなりベットに連れていかれる。

体が宙を舞っているようで自由が効かない。千鳥足でベッドに向かい、ベッドに倒れる。

理恵は、倒れた私の上に乗り、濃厚なキッスを続け、私の体を愛撫し続けた。


男性の時には、もちろん妻とのエッチは経験はあるけど、長い間、してこなかった。

しかも、こんなに深く、長いキスをするとは想像を超えている。

いつの間にか服は自然に脱がされていた。


「理恵、私のジュースにお酒とか入れた?」

「私も少し飲んでるわ。今どき、お酒ぐらい飲むでしょう。その方がお互いに気持ちよく会話もできるし。初めて会ったことへの乾杯よ。」


そうだったんだ。お酒は久しぶりで、今の体にはお酒は早く回る。

キスをされる度に、理恵のバストが私のバストにあたるのは、これまでにない感覚。

このままベッドの奥底に落ちていく感じの中で、理恵に抱きしめられていた。


女性だから女性の急所を知っているのか、男性とのエッチとは違う気持ち良さがある。

男性の時に見た女性の姿はそのままだけど、自分が女性の体という違和感がある。

何か不思議な感覚。


「え、何?」


目の前で、男性の大事な所の形をした物が機械音を出しながらぐるぐると動く。


「びっくりさせちゃって、ごめん。これ、女性どうしでエッチするときに使うおもちゃ。中に入って、動くんだよ。面白いでしょ。初めてかと思うけど、痛かったら、すぐ言ってね。無理しないから。」


どうしていいか分からずに、体を理恵に任せる。

おもちゃを使うのは初めてだけど、愛撫は続いていく。

私はいつの間にかクライマックスを迎えていた。


「よかった? 最初からこんなハードにするとだめかなと思ったんだけど、紬衣だったら、むしろ、最初から、こっちでいった方が、上手くいくんじゃないかと思って。紬衣は女性ホルモン、そんなに嫌じゃないんだよ。多分。」


そう、もともと男性だから、男性ホルモンも少しは残っているのかもしれない。


「結構、近づくだけで気持ち悪いっていう女性もいるし。でも、初めてで、そんなにいっちゃうなんって思わなかった。」

「恥ずかしい。」


これまで訓練もしてきたから、いくことは初めてではない。

でも、そんなことは言えないし、何て言っていいか分からずに下を向く。


「でも、お酒を知らない所で入れるなんて、やりすぎ。お酒は飲んだこともあるけど、自分の意思で飲むから、もう、そんなことはしないで。」

「それはごめんなさい。お酒がないと、私も勇気が出なかったし、紬衣も、急に同性からキスされたら拒絶すると思うし、お酒のせいにできるかと思って。もうしないから、許して。」

「約束よ。もうこんなことしないで。私たちが、この部屋で一緒に仲良くしていくためには、2人の間には嘘とか隠し事とかしないことにしよう。これは大切なことだから。」

「わかった。もうお酒も抜けたようね。ごめんなさい。」


昔、私も詐欺のために薬を使ったこともあるけど、理恵には犯罪者の資質があるのかしら。

いえ、少しイタズラという気持ちだったんだと思う。

そんなに悪い人には見えないし、もうこんなことはしないと約束している。


道を踏み外すような気配があれば、私が矯正すればいい。

まだ若いのだから、一時の気の迷いもある。若気の至りというものかもしれない。

もう終わったことなのだから、許すことにする。でも、二度目は許さないからね。


でも、女友達とこういう関係を築いていくのもいいかもしれない。

人生は、全て経験だから。でも、同性どうしでのエッチに違和感を感じない自分も不思議。

お酒が後押ししたのかもしれないけど、まだ心には男性が残っているのかしら。

2人とも何も体に羽織らずにベッドで横に座り、理恵が手を合わせ私に謝る。


今更に理恵を見ると、理恵のバストは小さく、すらっとしたスタイル。

私の上にいた時は理恵のバストを感じたけど、座るとその存在感は薄い。

でも、偽物の私とは違い本当の女性。


「そんなに私のバストを見ないで。恥ずかしいよ。昔からまな板とか言われて、ずっとコンプレックスだったの。紬衣はとっても大きくて、女性らしい。私も谷間が欲しいわ。」

「そんなことないよ。私なんて、大きすぎて下品というか、おばかみたいじゃない。理恵のバストは形がいいし、上品で清楚という感じだよ。気にしない方がいいって。」

「くすぐったい。」


理恵が私のバストを指でつっつく。

無邪気に遊ぶような理恵の顔は眩しかった。

私も、理恵のお腹をくすぐり、2人で大笑いをした。


でも、ごく普通の女性が私のことを本当の女性だと信じ、エッチをしても疑わない。

もうどこから見ても、私は女性になっていると実感した。

何を考えているのかと不安げな表情を見せながら、理恵は話し続ける。


「ところで、女性どおしなら子供ができないから、エッチの気持ちよさに専念できるという人も多いんだってよ。でも、これから、ずっと一緒だね。私って、昔から悩みがあって、男性が好きになれなかったんだ。でも、女性に声をかけても嫌われるんじゃないかって、ありのままの自分で生きてこれなかった。それでも、なんか紬衣にあった途端、この人だったらいけるってビビってきて。今日は突然でごめんね。でも、よかったでしょ。」

「うん。理恵のことよく知らないし、これから、いろいろ教えてね。」


理恵のベッドに潜り込み、一緒にキスをしながら眠りに落ちる。

それから、期待に満ちた女子大生活が始まった。

思っていたより、みんなと笑顔で笑い合う日々が訪れる。


男性の頃に通った大学よりは狭いけど、女性しかいないから女友達を作るのは今しかない。

理恵に限らず、積極的に、周りの人に話しかけ、ランチとかも一緒にしてみた。

理恵も、せっかくの大学生活だから、女友達は積極的に作った方がいいと言う。

最後は、自分の所に戻ってくると自信があるみたい。


でも、理恵とは仲良くなれたけど、なんか女性との会話は難しい。

これまで女性として暮らしてきたけど、女性との会話はほとんどなかったことに気づく。

高校でも女性とあまり接していなかった。


闇バイトをしていた時代はもっと、周囲とは関わっていなかった。

だから、まだ女性に慣れていなかったんだと思う。でも、習うより慣れるしかない。

そのうち、女性は論理だけで会話しているわけではないことに気付いた。


会話で結論を出すことより、気持ちで会話している。

相手との楽しい時間を作り出すことが重要。

少し話しているうちに、そんなことに気付く。


理恵とは心理学科で一緒の授業を受けた。

高校の時の彼氏について理恵に話したら共感してくれる。

理恵にとって、男性とか女性とかではなく、1人の人間として受け止めているのだと思う。


理恵には、私からキスをしたことが別れた原因かもなんて話していない。

そんなこと、分からないし、話しても意味がない。

ただ、彼がひどくて私が被害者になったとごまかすぐらいがいい。


真実が知りたいんじゃなくて、理恵と共感することが目的。

でも、そんな私の嘘も、笑顔で聞いてくれた。

なんか、飾らない理恵は話しやすかった。


心理学科では、これまで触れてこなかった新しいことを学ぶ。

ロジックは目新しいものばかりだったけど、人生経験がある私には容易に想像できる。

授業後に、あれは間違いじゃないのなんて、いつも理恵と話し合っていた。


理恵は、これまで女性に自分のことを言い出せずに、ずっと悩み、一人ぼっちだった。

そんな自分を受け止めてくれた私と話す理恵は、本当に嬉しそう。

私は、そんなに純真な女性ではないのに。

ましてや、昔は男性だったなんて口が裂けても言えない。


誤解したままの関係でいたい。

理恵とは、渋谷のアパレルショップとかにも一緒に行った。

このトップス、理恵に合うんじゃないとか言いながら。

こんな感じはとても楽しかった。


最近は、おじさんだった頃を思い出せない。

そういえば、妻も子供たちもいたけど、顔も思い出せない。

どんな家に住んでいたのか記憶にない。年数からいえば、4年ぐらいだけなのに。


結婚した時、子供が産まれたとき、頭でわかっていても思い出せない。

どんな生活をしていたのかしら。

まあ、結婚なんていうと、もう35年ぐらい前だから、忘れてもおかしくない。


その後も、理恵とは仲良く大学生活をおくり、レストランにも一緒に行ったりした。

ある日、この寮に来て、初めて共同浴場で話した紗奈から温泉旅行に誘われる。


「紬衣、今週、温泉旅行に行くんだけど、1人欠員が出てさ、一緒に行かない?」

「ごめん。あの日だから遠慮しておく。」

「そうなの。じゃあ、また誘うね。」

「ありがとう。」


今日にでも生理が始まると思う。なんか眠いし、イライラする。

これじゃあ温泉旅行とか無理。理恵も、気づいているようで、気遣ってくれる。

ナプキンも、おむつみたいで、肌に優しいらしいけど、ガサガサして本当にいや。


そんな中でもお風呂には行く。湯船には入れないからシャワーを浴びるだけ。

ももにぬるっとした赤い液体が流れていって、汚い感じ。

女性になって一番嫌な時間。


女子大だから、みんな理解はしてくれる。あの日なのねって。

そういえば、周期がわかる便利なアプリがあるから使ってみればって。

そう言うのは勉強になるけど、でも、それだけ。痛いのが軽くなるわけじゃない。


でも、最近、感情の起伏が激しくなっている気がして、生理の周期と関係しているみたい。

だから、そんなアプリがあれば、ああ生理のせいねと少しは気が楽になる。


そして生理が終わると、なんでもできるという気分になる。

これから外に遊びにいくと言い出し、楽しい気持ちに満ち溢れる。


「理恵、今日、一緒にレストランに行かない? この前、この先のイタリアンが美味しいって聞いたから。」

「行こう、行こう。今日はご機嫌だね。」

「そうそう。じゃあ、予約しておくね。」


レストランに着くと、二人の会話は弾む。

何を話しても、本当に楽しい。どんな話しでも、理恵は笑顔で聞いてくれる。

いつの間にか、私だけが話していることに気づき、顔が赤くなる。

何も考えずに、一緒にいる時間が楽しいなんて、昔ではあり得なかったこと。


「部屋で話すのと違って、これはこれでいいね。」

「そうね。そういえば、英語Ⅱの先生、なんか明治時代のおばあさんっていう感じだよね。」

「それ、面白い。確かにそう。もう少し、今時のニュースとか軽やかにレクチャーする方がいいのにね。」

「だから、あの先生の授業には、生徒が少ないんだろうね。私、参加してみたけど、いつも寝ちゃっていたもん。」

「それわかる。先生、やめちゃうべきかもね。」

「それは言い過ぎだよ。そう思うけど・・・。あはは。」


レストランで二人の会話は続き、大笑いしていた。

周りからみれば、普通の仲の良い女友達に見えたのだと思う。普通ではないのに。

また、話しに夢中で気づかなかった。

大学のクラスメートが、悪意をもって私達を見ていたことに。

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