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夜の帳を護りし者達  作者: 苺姫 木苺


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9/20

才能の開花



翌朝雪斗が起きるとクラオカミは消えていて、寝ている間に顕現が解けたみたいだ。

スマホで時間を確認してみると、午前五時十五分を示している。常闇ノ庭の空は朝も夜も真っ黒な為、今の時間が時計を見ないと時間が分からない。

「咲間さん、帰って来てるのかな?」

雪斗は足音を立てないように静かに階段を降りて、一階にあるリビングに行った。テーブルの上には「おはよう。訓練は十一時からするからそれまで自由にしていろ」と咲間さんが書いたであろうメモが置いてあった。メモでも朝の挨拶をしてくれる咲間は、こういうところは大人を感じる。雪斗は両親以外に久しぶりにおはようと言われ、環境が変わったのだなと改めて自覚をした。

「いつ帰って来たんだろう」

咲間が起きた時にすぐご飯を食べられるように雪斗はご飯を作ることにした。寝起きでも食べやすく雪斗はみそ汁に卵焼きと簡単なサラダにおにぎりをパパッと作る。自分のはこれから自主練をするからがっつり系で作りサッと食べ、自主練をすることにした。

雪斗は別に八咫烏になりたいわけではないが、両親の行方を捜すのに八咫烏の方が情報を集めやすいと理解しているので訓練をする。一か月後の試験に合格出来ないと雪斗は宿無しになってしまうから。


ご飯を食べ終えた雪斗は庭に出て、「()でよ、クラオカミ」と言い、クラオカミを顕現させた。昨日喜馬に渡された水球の式札を発動する。

昨日注意されたことを意識し、水球の形と大きさを昨日のようにイメージをする雪斗は思った。昨日より式札が発動しやすいかもしれないと。

式札が発動しやすくなった理由は、霊力が昨日より増えたことと出し方を理解したからだ。人間初めての物を使う時、覚束ないが慣れてくるとスムーズに使えるのと一緒である。雪斗はそれが他人より少しだけ早かった。

「あれ?雪斗君?こんな早い時間から自主練?」と宮木が庭を覆っている塀からひょこっと顔を出す。それに驚いた雪斗の意識はブレ、水球がパシャッと割れた。庭の地面の土は水が垂れたから濡れ色が変わる。

「あ、」

「ご、ごめ~ん!!」

宮木は自分が雪斗の意識をブレさしてしまったから、水球が割れてしまったと分かった。

「大丈夫です。それよりも、声のボリューム下げて下さい」

「あ、はい」

高校生の雪斗に真顔で注意され宮木はシュンとした。宮木は色々な人によく注意されるが、高校生に注意されるとは思わなかった。

「宮木さんは寝ていなくていいんですか?」

「私昨日は非番だったから大丈夫なの。だから、少し運動しよと思ってね」

「そうなんですね」

宮木はパッと笑顔になり「私少しだけど式札に適正あるから教えてあげるよ!」と言った。だが、宮木は雪斗に才能があり自分より式札を使いこなせていることを知らない。

「どうも」

昨日のことを宮木に見られていたから内心雪斗は宮木と距離を置きたいと思っていた。

「じゃあ、やってみて!」

「水球」と唱えると、顔より少し大きい綺麗な丸い水球が雪斗の顔の前に現れる。昨日よりも大きくそして綺麗に水球を発動できた雪斗は内心喜んでいた。

綺麗な丸の水球を見た宮木は驚く。式札を昨日知ったばかりの雪斗が自分より式札を上手く発動するなんて思ってもみなかったから。

「えっと、……え?その足元の白いトカゲって雪斗君が顕現させてるの?」

「え?はい、そうですけど」

「複数同時発動……しかも水球は大きくてちゃんと丸いとかなんなの……雪斗君!!君、超天才だよ!!」と、宮木が歓喜な声を出し雪斗に近寄る。

だが雪斗は自分が天才と言われてもお世辞を言われたとしか思わなかった。不登校の何も取り柄の無い自分が才能があるなんてことないと卑屈な考えしか雪斗には無かった。

「あの、お世辞言わなくていいですよ」

雪斗は他の人がどれくらい式札を扱えるかわからないから、宮木は過剰に自分のことを褒めてくれているんだと思った。

「え?!全然お世辞じゃないよ!!」

急にガラっと二階の窓を開け「そうだぞー、雪斗。宮木の言う通りお前には式札を扱う才能がある。宮木、見せてやれ」と、スウェットを着て寝起きの咲間が庭にいる二人に窓から話しかけた。

雪斗は師匠である咲間に天才と言われても自分に才能があるわけないと思う。

「え?!隊長?!何で起きてるんですか?」

「宮木の馬鹿でかい声で騒がれて起きないわけないだろ」と二階の窓から咲間は宮木を見下ろし睨む。

「あ、はい」

「早くやれ」

咲間に急かされた宮木は「水球」と唱えると、宮木の顔の前に拳ほどの大きさで少しデコボコした水球が現れた。

「お、今日はかなり丸いほうかも!」

「丸いほうかもじゃねーよ。どう見ても全然丸くないだろ!」

宮木が発動した水球をみた雪斗はキョトンとした。自分よりも小さく決して綺麗な丸とは言えない水球だから。

あくびをしながら眠そうに二階からトントンと足音を立て降りてきた咲間が、リビングの窓から庭に出てきた。「水球……いいか、宮木。これが丸いって言うんだ」と咲間は自身の顔より少し小さい水球を実演して見せる。

「隊長、式札の適正無いって言ってたの嘘だったんですか?!」

「あんま、適正ないから説明すんのが面倒で無いって言ってるだけだ」

「え?ちょ、隊長って式札以外武器の適正あるって噂になってましたけど、全部適正あるとかやばっ!!」と、大声を出した宮木を咲間は瞬時にスパーン!と頭を叩いた。

「まだ六時なの分かってんのか?昨日勤務だった隊員の迷惑になんだろ!」

「女性に暴力とかやばいですよ!隊長!!」

注意されたなおも宮木は大声を出したので咲間はギロッと睨むと、宮木は「す、すみません」と苦笑いして謝る。その一連の流れを見ていた雪斗はクスクスと笑い「仲が良いですね」と二人に言った。

「初めて雪斗の笑った顔見たな」

「確かに!!会った時から思ったんだけど、その邪魔そうな前髪切らない?」

近寄って来る宮木から雪斗は後ずさり「え、い、嫌です!!」と拒否をするが、宮木は雪斗の前髪をパッと上げた。

「雪斗君って、ハーフだったの?!しかも美少年!!」

「え?両親とも日本人ですが……」

「目が薄いオレンジ色だよ?」と宮木が言うと、雪斗は「え?!」と驚いた。昨日まで雪斗の目は黒色だったのに、理由は分からないが目の色が変わっていた。

「確かに薄いオレンジ色だな」

「何で……」

「切るかはさておき、目に髪の毛入るかもだからピンで留めとこ?」

宮木はズボンのポケットからピンを取り出し、雪斗の長い前髪を右に分け留める。

「よし、雪斗はそのまま続けていろ」

「あ、はい」

咲間はリビングに入り、雪斗が作ったご飯をお盆に乗せ咲間は庭に戻って来た。

「こんな朝早くから訓練を見るなんて……あの時ぶりだな……」と、おにぎりをもぐもぐ食べながら咲間は昔を思い出す。八年前に亡くなった弟の訓練をよく見ていたなと、咲間は大事な弟のことを思い出し懐かしんだ。

「雪斗、集中。形が崩れているぞ」

「はい!!」

雪斗は瞳の色が変わったことが気になって水球のイメージが崩れる。

式札を発動させるのに霊力だけでなく、イメージもすごく大事なのだ。

「式札を使うにはイメージが一番大事なんだ」

「え?霊力じゃないんですか?」

「絵を描くときはイメージして描くだろ?霊力はペンで、手はイメージという風な感じだ」とおにぎりを皿に置き、ペンをクルクル回し咲間は雪斗に分かりやすく説明する。

「なるほど……イメージ……丸く丸く」

雪斗が瞳の色のことは後でちゃんと確認しようと決め、水球のイメージを細部まですると先程よりも綺麗な丸の水球が出来上がった。

「そう、それだ。その状態を維持しろ」

雪斗は「はい」と返事をし、目を閉じてイメージに集中をする。

昨日は十分しか水球を維持出来なかったが、今日は水球を一時間も維持を出来ていた。



「雪斗、もういい」

雪斗は咲間から声が掛けられ目を開け、「え?はい」と返事をし水球を解いた。解かれた水球はパシャッとなり地面に小さい水溜りができる。

「次は、水球を左右に動かすイメージだ」

「はい、分かりました!」

咲間と宮木はこの家の周りを変にウロウロしている気配に気づいた。咲間は宮木に目配せをして、自宅の周りをうろついている者を宮木に任せる。

雪斗の水球は僅かにだが左右にゆっくりと動く。水球を動かすことに集中をしている雪斗は、咲間の自宅の周りをうろついている気配には気づいていなかった。だからこそ、咲間と宮木は雪斗に気づかれないように処理をする。



宮木は足に霊力を集めてサッと咲間の家の庭から出た。

咲間の自宅をうろついていた者は、宮木が庭の外に出たことに気づき慌てて逃げる。だが、すぐに宮木に取り押さえられた。

「あれ?君、昨日の……雪斗君の友達?」

そう、咲間の自宅をうろついていたのは加茂だった。加茂は雪斗が一人になった時に過去にしたことをしようと機会を伺っていたのだが……いつまでも一人にならない雪斗に内心腹を立てている。雪斗は何も悪くはないので、加茂は所謂逆ギレをしているだけ。

地面に抑えられている加茂は顔を宮木に向け「み、宮木さん、離してくれませんかね?」と懇願する。

だが、宮木は昨日の現場を途中からとはいえ、雪斗が加茂に恐怖を抱いていたのは気づいていてすぐに離すことはしなかった。

「君、本当に雪斗君の友達?」

「友達です!クラスが一緒なんです」

「それ、嘘だよね?」

嘘を気づかれて加茂は「……会田は多分、俺のことを許していないんだと思います。会田がいじめられているのを見て見ぬふりしたから……」と嘘をつらつらと述べる。

宮木は周りの隊員から馬鹿にされることは多いが、こういう事に気付かないほど馬鹿ではない。

「……はあ、で?君は何しに来たの?」

「会田に謝りに来たんです」

加茂の謝りに来たというのを聞いた宮木は「気配消しの式札を使って?」と睨み冷たい声で言う。

加茂は式札の適正は無いので、柴田を脅し式札の気配消しを掛けさしていたのだ。だが柴田の気配消しはまだまだ拙いもので、宮木と咲間には容易に察知することは出来た。

「謝りに来たのが恥ずかしくて……」

「そんな理由が通るとでも?」

今まで雪斗の監視をしていた相馬は仕方なく加茂に手助けをすることにした。加茂の口から雪斗の邪魔をしろとの命令をされたと言われたら、面倒になることに分かったから相馬は助けることにしたというわけだ。

相馬はスッと宮木の前に音も無く現れ「宮木、うちの者を離せ」と命令をする。

「相馬さん、うちの者とは?」

宮木は急に現れた相馬には驚いていなかった。その理由は咲間から宗主が相馬を雪斗の監視命令を下したというのをきいていたから、相馬がどこか近くにいるのは知っていたから。

「その者は相馬の分家だ」

「……分かりました」と宮木はスッと加茂の上から退いた。

実は宮木も相馬と同じく名家なのだが、名家どうしで揉めるのはまずいと判断し宮木は加茂を離すことに。

「この件は宮木家に抗議させてもらう」

「どうぞ。こちらに一切非はございませんので」

相馬は内心舌打ちをしイライラしながら加茂を連れて宮木の前から去っていく。


相馬と加茂は常闇ノ庭にある林に移動してきていた。

「おい、俺に面倒を掛けるな」

「はい。景虎様、大変申し訳ございませんでした」と加茂は深々と頭を下げ、心の中で雪斗に悪態をつく。自分が景虎様に頭を下げなくてはならなくなった理由は原因は雪斗のせいだと思ったから。

「命令はちゃんと遂行しろ」

相馬は加茂に一瞥も無く去っていった。

「会田……覚えていろよ」

加茂の顔は憎悪に染まり切っていて、非道なことで頭がいっぱいになっている。





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