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夜の帳を護りし者達  作者: 苺姫 木苺


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8/20

恐怖と対峙




「……か、も君……な、なんでここに?」

雪斗は加茂を見て条件反射で身体を強張らせた。

「あ”?そんなん、俺も隊員見習いに決まってんだろ」と加茂は雪斗を見下ろしながら言う。

「……そ、うなんだ」

「お前相変わらずイラつく喋り方すんのな」

「淳也~、そいつが景虎様の言ってた奴?」と研究室の出入口から佐々木が加茂に聞いた。加茂は「ああ」と返事をし、掴んでいた雪斗の襟首を突き飛ばすように離す。

「淳也、優奈。人が来たよ」

和田は研究室付近で人が来ないか警戒していた為、この研究室にひとが来ると警告をした。

雪斗は早く宮木が来てくれと切実に願う。実は雪斗は加茂から壮絶ないじめを受けていたのだ。加茂のせいで雪斗は学校に通えなくなり、親以外の人が恐怖の対象になった。いじめは加茂だけがしてきたわけでは無いが、いじめの主犯格は加茂なので原因は加茂という事。

「あれ?雪斗君?その子達は?」と事情の知らない宮木が引き戸から入って来て、雪斗以外がいるとは思わず疑問に思う。だが、宮木は瞬時に地べたに座り青い顔をしている雪斗を見て何かがあったのは気付いた。

「宮木さん、実は俺と会田は友達なんです!会田が隊員見習いになったと知ったので挨拶に来たんです」

加茂は雪斗に向けていた表情とは違い宮木には万人に好かれるような優しい笑顔を向ける。そして、宮木に見えないように真顔で「な?」と加茂は雪斗を脅す。

「そ、そうなんです」と雪斗は手をギュッと強く握り、小さい声で加茂に同調せざるを得なかった。加茂に逆らったら後が怖いのを雪斗は分かっていたので逆らえなかった。

「……そっか。雪斗君は怪我人だからお話は今度にしてもらえる?」

「分かりました!会田!また来るな~」

加茂は佐々木と和田を連れて研究室から出て行く。雪斗は過去の記憶が甦り身体がブルブルと震える。

「雪斗君!来るのが遅くなってごめんね!!あの子達に何されたの?」

宮木がすごく優しく何があったか聞いてくれたが、雪斗は「な、何もさ、れていないです」とぼそぼそと言う。だがかえってこの雪斗の態度から雪斗の身に何かあったと分かる。

震えている雪斗の両手を宮木はそっと握り、「雪斗君、一回大きく私と一緒に深呼吸しよう。吸ってー、吐いてー」と宮木の指示を受けた雪斗は落ち着きだす。

「あの、宮木さん。ありがとう、ございます」

「ううん。私は何もしていないよ」

宮木は続けて「何があったのか私は分からない。でもね、何かがあったのは分かるよ。話してくれないかな?」と優しく聞くが、雪斗は口を固く閉ざした。雪斗は理解していた……さっきのことをだれかに話したら加茂に以前のより酷いことをされることを。

ガラッと研究室が再び開かれ咲間に田中と喜馬が宗主の間から研究室に戻ってきた。

「ん?宮木に雪斗、床に座って何してんだ?」

「な、何でもないです!!」

咲間達には異変を気づかせまいと空元気を三人に見せるが、先ほどのことを見た宮木は渋い顔をする。

「隊長、実は、「何でも無いですから!!」……いえ、何でも無いです」

雪斗は宮木の言葉を遮り話させないようすると、宮木は雪斗には触れられたくないことだと分かり黙っていることにした。

「変な二人だな。雪斗、お腹はどうだ?」

「さっきよりは少しだけ痛み引きました」

咲間は雪斗と宮木が何かを隠したのを気づいていたが、聞かれたくないことなんだと思い聞くことをしなかった。部屋に妙な静けさのせいで壁に掛かっている時計のカチッカチッという音と、緑色の何かの液体をビーカーで茹でているコポコポという音が大きく聴こえる。


「今日は一応激しく身体を動かすのは禁止ねー」と田中はビーカーで茹でていた緑色の液体をビーカーごと取り、飲みながら訓練を激しくするなよと忠告をした。ここで注意をしとかないとまた雪斗が怪我を増やして自分の仕事を増やされたらたまったもんじゃないと思い田中は言ったのだ。そう、田中は雪斗の身を案じたわけではない。

「隊長、今日は会田君に式札の種類を簡単教えるのと扱いやすい式札を使う練習でいいと思います」

「……そうだな。今日はそれにするか。あ、宮木お前を探している奴がいたぞ」

一瞬ピンと来なかった宮木はハッと約束をしていたことを思い出し、「私もう行きますね!!」と言い残し走って研究室を出ていった。

「そろそろ咲間達どっか行ってほしんだけどー。実験をしたいんだよねー」

「訓練室に行くか」



田中を除いた三人は雪斗の適正を調べた訓練室に移動してきていた。実験の邪魔だからと田中に追い出されたから。

「まず、式札は大まかに分かれている。攻撃系、防御系、特殊系の三つだ」

咲間は雪斗に分かりやすく普段よりもゆっくりと喋り教える。

「攻撃系と防御系はなんとなく分かるんですけど、特殊系はどんなのですか?」

攻撃系は爆発や雷撃といったもので、防御系は結界や風の盾を作り出すといったもの。雪斗は特殊系はどんなのか想像もできなくて頭の中が(はてな)で一杯になっている。

「喜馬、頼む」

「はい。()でよ、九尾(きゅうび)」と赤い旧字体で九尾(きゅうび)と書かれた式札を喜馬は片手で持ち唱えると尻尾が九つの純白の狐がポンと現れた。

「何もない所から狐が!!しかも尻尾が九つもある!!」

「会田君、これが特殊系だよ。どんな生き物でも呼び出すことができるんだ。まあ、これだけが特殊系ってわけではないんだけど分かりやすいのがこの式神なんだ」

喜馬が雪斗に説明をしていると、九尾(きゅうび)が雪斗に擦り寄る。尻尾もゆらゆらとさせ九尾(きゅうび)は何故か雪斗を好意を現した。

雪斗は九尾(きゅうび)が近づいてきたので、そっと雪斗が頭を撫でると「キューン」と九尾(きゅうび)が甘えるような鳴き声を出す。生き物から好かれやすい雪斗は、もふもふの九尾(きゅうび)を撫でられて幸せいっぱいの笑顔を浮かべる。

「え?かなりの人嫌いのこのえが俺以外に近寄ってるなんて触らせるなんて……」

咲間も雪斗が九尾(きゅうび)の頭を触っているのを見て物凄く驚く。式神は呼び出した者以外は自ら近寄ることはないのが常識なのだ。

あまつさえ雪斗は九尾(きゅうび)を犬のようにお腹をわしゃわしゃと撫でている。

「こ、このえ?」と呼ばれた九尾(きゅうび)はハッとし喜馬のもとに戻った。

訓練室にいた者全員がこの場面に驚き固まる。喜馬の九尾(きゅうび)は人嫌いで有名で、人が九尾(きゅうび)の近くに行くだけで尻尾で攻撃をするほど人間を嫌っている。しかも、九尾(きゅうび)は喜馬の式神になるまでに呼び出して者を気に入らず呼び出し拒否までもしていた横暴さを持っていた。

「と、とりあえず会田君にはどの系統が得意が試してみよう」

「はい!」

喜馬は出力の抑えている三系統の式札を雪斗に渡す。渡された雪斗は式札を見てどれが攻撃系、防御系、特殊系か見ても分からずキョトンとする。式札には達筆な旧字体で書かれているため、雪斗は文字が読めず困惑した。

「あ、旧字体も教えないとか……そこは隊長に任せても?」

「ああ、任務に出る前に教えとく」

咲間は雪斗の持っている式札を指差し「まずは、攻撃系からやってみろ」と攻撃系の式札を教えた。

「はい。発動方法って……」

「書かれている字を読むだけだよ。それは発電と発するだけだ」

式札を持って雪斗は「は、発電」と言うとバチバチ!と雷が出る。薄暗い訓練室に雷が出たため、一瞬明るくなった。

「で、出た!!」

「次、防御系……いや、防御系はいい。展開したのを見たことあるから。次は特殊系にしよう」

「はい!」

雪斗は貰った特殊系の式札を持つと急にボーっとし「()でよ、%$#@」と口から勝手に出た。

気付くと雪斗の足の下には手のひらサイズの白いトカゲがちょこんといる。

「あれ?会田君に渡したのは蝶の式神だったはずなんだけど……」と喜馬は雪斗の持っている式札の文字を見てみると、式札には蜥蜴と書いてあった。

「可愛い」

白いトカゲを雪斗は手のひらに乗せて頭を優しくなでなですると翡翠色の瞳を細め「キュルル」と小さく鳴く。喜馬は雪斗の手のひらに上にいる白いトカゲを見てこんなトカゲ見たことないと思った。蝶や鳥などは普通の生き物と似たのしかいないはずなのに、雪斗が呼び出した白いトカゲは見たことが無い。

「……会田君、その白いトカゲに名前を付けてあげな」

「はい!……クラオカミって名前にします」

「クラオカミ?変わった名前だな」

咲間は白いトカゲにクラオカミという変わった名前を付ける雪斗のネーミングセンスを不思議に思った。しかも、クラオカミはという名前は……。

「何かこの子は絶対クラオカミとい名前が自然と浮かんだんです」

「そうか。で、喜馬雪斗の得意な系統は何だ?」

喜馬は雪斗をジッと見て、「発動するまでの時間を見て、全て得意という感じですね。まあ、特殊系は色んなのがあるので不得意なのもあるでしょうが」と答えた。雪斗は攻撃系も特殊系の式札も唱えて瞬時に発動していたことから天才とも言える。

「来月試験なのが心配でしたが、隊長これなら大丈夫だと思いますよ」

「なら、体力を増やせば問題ないな」

雪斗は体力を増やせば問題ないと言った咲間の発言を聞き逃げたくなった。あの地獄のマラソンはもう雪斗はしたくないと心底思う。

「じゃ、会田君クラオカミを顕現したまんま、この五キロのダンベルを持ちながら水の球を作り続けよう」

喜馬は雪斗の天才度合いを見て、攻撃系の式札を使いながらクラオカミを顕現しておくのを出来ると判断し指示をした。だが、訓練室にいた他の者は渋い顔をして雪斗を可哀想な目で見つめた。

素人が複数の式札を発動させるのは簡単ではないから。

水球と旧字体で書かれた式札と五キロのダンベルを喜馬は雪斗は渡す。渡された式札とダンベルの重さで雪斗は少し腕を下げた。

「じゃ、始めて」

「あ、はい」

雪斗は「水球」と唱えると拳程の水球が現れる。だが喜馬は水球を見ながら「もうちょい丸くなるイメージと大きく」と厳しく言う。指示を出された雪斗は水球を丸くなるようにと大きくなるようイメージすると、デコボコしていた水球は先ほどより丸くなり大きくなった。

それをそばで見ていた咲間と喜馬は雪斗の天才度合いに再び驚く。雪斗に指示をしたがかなり丸くなったのと、大きさも人の顔の大きさまで出来るとは思わなかったのだ。

「隊長、この子天才じゃなくて超天才ですね」

「ああ。ここまで才能があるやつ初めて見たな」

周りにいた者達も雪斗の天才度合いに驚いている。まさか、喜馬の無理難題を雪斗がこなせると思わなかったから周り者は驚いたのだ。因みに雪斗は超集中しているせいで周りの会話は耳に届いていない。


十分もすると水球は再びデコボコとなり、段々と大きさも小さくなっていく。

雪斗の額には大量の汗が流れている。

「ん?雪斗!何で息止めてんだ?」

「……息止めてないと水球が消え、そうで」と雪斗は息を止めているせいで顔を赤くさせ必死に水球が消えないように頑張っている。その姿を見た咲間と喜馬は何だこの可愛い生物はと思った。

「ほらまた水球の形崩れてるし、小さくなってんぞ」

咲間に注意された雪斗はさっきのようになるようイメージしたが、パシャッと水球は弾け床が水浸しになった。水球が消えると同時にクラオカミも一緒に塵が消えるように消えた。

「はあはあ、も、う無理」

「十分か……まあ、初めて複数発動してなら上出来かな」

咲間は訓練室の壁に掛かっている時計を見て、「今日の訓練は終わりにしよう」と言う。咲間と喜馬はこれから任務の為切り上げないといけない。

「会田君、クラオカミはできるだけ顕現しといて。寝ている間もね」

「分かりました」

クラオカミは可愛いから顕現しておくのは雪斗にとって苦どころか嬉しさしかなかった。

時計の針は十七時を指していたので夜ごはんにすることに。咲間は食堂でご飯を取らないで、雪斗と自宅で食べることにした。咲間が雪斗のことを見ていて分かったのは人を怖がっていることが見て取れたので、今の時間は食堂は人が一番多い時間だから家で二人で食べることを決めたということである。


建物の外に出ると常闇ノ庭には袴姿の人が忙しなくしていた。

八咫烏の任務開始時間は太陽が完全に隠れた時間からなので、季節によって開始時間が異なる。だから、夏の今はこの時間が任務開始時間二時間前だから常闇ノ庭は人が多い。

隠し布をもう着用しているものがちらほらといる為、常闇ノ庭は昼間と違い夜間は怪しい雰囲気が漂っている。

「この時間は人が多いから雪斗はぐれないようにな」

「あ、はい!」

喜馬も任務の準備の為、咲間達と別れ寮へと向かった。

自宅に着いた咲間と雪斗は急いでご飯の準備を始める。雪斗の趣味の一つに料理がある為、咲間の手伝いを積極的にした。

「よし、食うか」

「はい!」

先に夜ごはんを食べ終えた咲間が自室に行き一冊の古書を雪斗に手渡した。それを受け取った雪斗はご飯を食べる手を止め、パラパラと古書を捲り中身を読んだ。古書の内容は旧字体の読み方と意味が書かれている。

「俺はもう任務に行ってくるから先寝てろな」

「気を付けて下さい。行ってらっしゃい、です」

雪斗はクラオカミと玄関で咲間の見送りをした。いくら咲間が強いといっても夜喰と戦うから怪我がしないか雪斗は心配をする。

久しぶりに咲間は見送りをされ任務に向かうなと昔を懐かしんだ。咲間には歳の離れた弟がいたのだが、ある出来事のせいで天国に行ってしまったのだ。


雪斗はリビングに戻りご飯を食べ終え、与えられた部屋に行く。部屋は二階にありクラオカミが階段を登りずらそうだったので、クラオカミを雪斗は自身の肩に乗せ上った。

「よし、少しでも旧字体覚えるぞ」

ベッドに横になりながら古書を雪斗は読み進めていく。気づいたら雪斗は夢の中へ……。


「雪斗……思い出して。貴方の役割を……」

雪斗の夢の中には顔に靄が掛った女性が現れ、切実に雪斗にお願いをした。

この女性は……。




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