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夜の帳を護りし者達  作者: 苺姫 木苺


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思わぬ再会と因縁



相馬は由羅に呼び出されて宗主の間に来ていた。宗主の間は沢山の本棚に囲まれ、机には書類の山が出来ている。宗主の間も夜帳(よとば)の間ほどではないが、ほのかに夜香木(やこうぼく)の匂いがする。

「呼び出されてた理由分かるな?」

由羅は見ていた書類から頭を上げ、ジッと相馬の両目を見た。その眼力は赤子もなくほど怖い。だが、相馬は由羅のそんな顔は見慣れているのであっけらかんとしている。

「何のことでしょうか?」と先ほどのことを起こしておきながら相馬はしらを切る。宗主は自分に甘いと誤った判断をした相馬は後で痛い目をみることになるだろう。

「わしは会田雪斗の監視命令をしただけだ」

「分かっております」

「……そうか。もういい、行け」

由羅は問題行動の多い相馬を側近から外そうか判断しなくてはならないなと去っていく相馬の後ろ姿をジッと見る。相馬家の時期当主だからと側近に選んだが、性格に問題があることは承知していた。だが、それももう我慢も出来ないほどまでにきてしまった。

「はあ……」


相馬は自宅に戻って来た。常闇ノ庭にある自宅ではなく、一般の人々が住む地球にある邸宅だ。

相馬家は八咫烏だけでなく、織物や骨董品といった物を販売している。だから相馬の家は八咫烏だけでなく有名なのだ。

「戻った」

相馬が家に入ると大勢の使用人が「景虎様、お帰りなさいませ」とお辞儀をして出迎える。

「竹杉、喜馬家以外の分家の当主を呼べ」

老執事がお辞儀をしたまま「はい。承知致しました」と返事をした。使用人の間で景虎は怖がられている。少し前まではこの家にいた風虎は使用人全員から愛されていた。景虎と違い風虎は誰に対しても優しい対応をしていたから。

一時間も経たず喜馬家を除いた二十人の当主全員が相馬家に到着した。相馬の一族は八咫烏に入る決まりがある為、分家の当主達は全員八咫烏の隊員である。

相馬は応接間に入るなり、相馬が来るのを待っていた当主達に「お前らの子で今隊員見習いはいるか?」と相馬が聞くと、五人の当主が「うちの子が隊員見習いです」と名乗り上げた。

相馬だけがソファーに座り、立たせられている分家の当主達を気にも留めない。。

「そうか。その者を呼べ。他の者は帰れ」

命令された当主は帰る者と自分の子を相馬家に呼ぶ者に分かれた。この場に残った当主は自分の子が本家の時期当主の側近に選ばれるのでは?!と淡い期待をする。だが、相馬は側近を選ぶ為に分家の隊員見習いを呼んだわけではない。呼んだ理由は来月の正隊員試験で雪斗の邪魔をし不合格にさせる命令をするために呼んだのだ。

少しすると親に呼ばれた十六歳位の五人の子どもが何で自分達が相馬家に呼ばれたのか分からないといった表情をしながら応接間に来た。

「この中で式札の適正がある者は?」と相馬が冷たい眼差しを向けながら聞くと、体格ががっしりした短髪の男の子が自信満々に手を上げる。そして、155㎝位の身長の低い男の子も恐る恐る手を上げた。

相馬はその二人をジッと見比べ、体格の良い男の子に「お前今日から俺の弟子な」と言う。式札使いでも体格が良いに越したことはないから、相馬は体格の良い方を選んだのだ。

「本当ですか?!」

本家のしかも式札使いのエキスパートの弟子になれた浜屋健生は歓喜の声を出し大喜びをした。

本家の時期当主の弟子になれた子の親は、これで本家と綿密な関係になれると勘違いする。相馬景虎は相馬の苗字以外の親族は親族と思っていないので捨て駒と考えていた。だから、どんな命令をしてもいいと思っているクズ野郎だ。

「隊員見習いだけ残れ」

親が応接間から全員出ると相馬が「お前らと同じ隊員見習いの会田雪斗の邪魔をしろ。正隊員試験を不合格にさせろ」と老執事が入れた紅茶を飲みながら日常会話をしているかのように話す。

「え?」と相馬の言葉に二人だけが動揺をした。三人は「承知致しました」と即座に返事をした。

返事をした三人のうち一人は実は雪斗と知り合いで、雪斗も八咫烏の見習い隊員になったのかとほくそ笑む。

「どんな手を使ってもいいんですか?」と雪斗と知り合いの男の子が相馬に臆することなく聞いた。

「ああ。出来ることなら試験を受けられないようにしろ」

「かしこまりました」と深々とお辞儀をして返事をした。

相馬はどんな手を使ってもいいのかと聞いた男の子は見所があるかもしれないなと思う。五人は応接間を出て行きこの場に残ったのは紅茶の香りと、険しい顔をした相馬と、そして部屋の隅に控えている老執事だけ。



相馬家を出てきた五人は三者三葉の反応をしていた。

弟子に選ばれた浜屋健生と選ばれなかった男の子柴田渚は相馬からの命令をどうするべきか迷い、残りの三人はどう雪斗を邪魔をしようかと悪巧みをする。

「優奈、駿、俺と手を組まないか?」と雪斗と知り合いの加茂淳也が聞いた。

佐々木優奈と和田駿は加茂淳也とは親戚ともありそこそこ仲が良い。

太陽はさんさんと五人を照らしていた。

「いいよ~」

「分かった」

佐々木と和田は手を組んだ方が相馬からの命令に確実にこなせるから手を組んだ。一方で浜屋と柴田は相馬からの命令を守りたくはなかった。本家からの命令は絶対だから叱られない程度に雪斗の邪魔をしようと浜屋は考える。

だが、柴田は小柄で性格も弱々しく誰かを邪魔するなんて出来ない性格だ。親からも柴田はお荷物と思っている。柴田の親は本家に呼びたくはなかったが、もし本家の目に止まれば儲けもんだという掛けで呼んだ。だが、その掛けも無駄にした柴田はもう柴田家に必要無いと判断をした。

「おい、お前ら。俺らの邪魔すんなよ」と加茂は浜屋と柴田を睨む。

「私、もう帰る」

五人はいつまでもここにいてもしょうがないと思い各々家に帰ることに。


相馬は二階の私室の窓から五人が相馬の家の前からいなくなるまで見ていた。

「さて、会田雪斗はどうなるかな」

相馬はにんまりとし咲間のことを考える。雪斗が正隊員試験に受けられないか落ちれば、咲間は恥をかくだろうと相馬は思う。別に雪斗に恨みはないが咲間の弟子だからこそ邪魔をするのだ。相馬が咲間をそこまで恨んでいる理由は、本来ならば相馬が壱盤隊の隊長になるはずだった。相馬と同じく相馬の親が汚い手を使い、相馬が八咫烏になる前から壱盤隊の隊長になることになっていたのを本人は知っていたのだが……咲間が正隊員試験で高得点を出したせいで結果が変わる。

当時の壱盤隊の隊長が咲間の師匠になり、咲間は壱盤隊の時期隊長になった。

このことから俺の邪魔をした咲間は許さないと見当違いの恨みを抱く。

「君には恨みは無いが、咲間の弟子になったのが運の尽きだ」と紅茶を飲みながら呟く。




一方、相馬に蹴られお腹を怪我をした雪斗は検査室に来ていた。喜馬は治療室に連れて行こうとしたのだが、治療室に向かう途中で咲間と田中に出会い検査室で治療することに。

「……雪斗、護ってやれずごめんな」

「い、いえ。大丈夫、です」と雪斗は田中に治療されながら痛いお腹を無理やり我慢し作り笑いを浮かべる。

「大丈夫じゃないでしょー。お腹かなり紫色だよ」

田中は雪斗の痣を見て睨みながら治療をした。田中でも子どもに手を上げるのは異常だと分かるからこそ雪斗の痛々しいお腹を睨んでいる。

「本当に兄がすまない」

「喜馬さん、もう謝らないで下さい。喜馬さんは悪くありません!それより、あの時透明な壁が現れたんですけどあれって……?」

「結界の式札が発動して現れたんだ」と喜馬は結界の式札を雪斗に見せ教える。

喜馬の持っていた結界の式札は赤い色で達筆な旧文字で結界と書かれていた。ある一族が霊力を込め字を書くと式札は作成される。書かれている文字によって効果は様々だ。

「喜馬さんが護ってくれたんですか?」

「違う。あれは会田君自身で結界を発動させたんだ」

雪斗は「え?でも、僕結界の式札なんて持っていないですよ」ときょとんとする。光も充分に光らせることの出来ないのに結界を発動させるのは無理だろうと雪斗は思う。

「ん?雪斗は結界の式札持っているぞ。ほら、トイレ行く前渡したあれ」

「……え!咲間さんが渡したあれ結界の式札だったんですか?!」

「まさか発動するとは思わなかったけどなー」と笑いながら咲間は言う。咲間は式札の適正が無いが、式札は長く持っていると発動させやすくなるのを知っていたからこそ忘れる前に雪斗に式札を渡したのだ。

「隊長って本当に先見の明があるのか無いのか分かんないですよね」

「咲間は運がいいだけだよー」

喜馬と田中の馬鹿にしたような言葉を咲間は聞き「うっせ。結果良ければ全て良しって言うだろ」と二人を睨みながら言う。咲間は親しみのある壱盤隊の隊長である。

「あはは」と二人が笑っているのを見た雪斗は咲間さんは本当に良い人なんだなと思った。雪斗はこの和やかな空気は学校の空気と違うと知る。

「よし、治療完了。幸い臓器は傷付いてないから大丈夫。だけど、もし便に血が混じっていたらすぐ言うんだよー?」

「はい。分かりました」

田中は研究を主にしているが、海外で医師免許を取っている為一応医者でもある。だから雪斗の治療もできた。

「……怪我がよくなってから訓練を再開する、と言いたいんだが……」

「それは、無理でしょうね。兄は隊長を恨んでいますから、正隊員試験で会田君を百パー邪魔してくるでしょうから」

「え?!」と雪斗は喜馬の言葉に驚く。怪我が治ってからのあのきつい訓練再開かと思ったのに、怪我をしたまま訓練をすると知り愕然とする。

「試験は来月だからねー。他の隊員見習いは見習いになる前からある程度訓練をしてからなるから、会田君は大変だねー」

「そうなんですか?」

「そうだよー。隊員見習いの期間が一か月しか無いんだから、その前に訓練してないと試験に受かるわけないじゃん」

雪斗の身体はギギギと音がしそうな動きをしながら咲間の顔を見た。そう、田中の言う通り見習い隊員になる者は隊員見習いになる前に訓練をしてからなるのが当たり前となっている。一か月の訓練をしただけで試験を通れるほど甘くはない。

「だから、訓練頑張ろうな!」

雪斗はこのグッと親指を立て笑っている脳筋のような咲間の弟子になったことは、選択ミスだったのではないかと朝の自分を恨む。最初は咲間のことを大人でしっかりしていると思ったが、雪斗は脳筋で大雑把だと咲間のことを知る。

「でも、会田君は式札の天才かもね」

「え?!そんなことあり得ないですよ!!」

「式札使いでも結界を張れる人ってかなり少ないんだ。それを今日初めて式札を知った会田君が展開したのは天才以外あり得ない」とニッコリと笑って雪斗に言う。

そう、雪斗は自覚していないが雪斗は式札の適正が多いにある。これからしっかり訓練をすれば、相馬に勝てるかも知れないほどだ。式札使いは大体他の武器にも適正があり式札を選ぶ。式札は使うのがとても難しい、式札を使いこなすとどの武器よりも強力なのだ。

「隊長、良かったら式札の使い方は俺が会田君に教えましょうか?」

「頼む」

田中は哀れみの目で雪斗を見て、「会田君……運が良いのか悪いのか分かんないなー」と雪斗に聞こえるか聞こえないかくらいの声量で喋った。喜馬も咲間ほどではないが訓練が過酷なのだ。いや、壱盤隊の者が付ける訓練全てが過酷なのだ。群を抜いて過酷と有名なのが咲間というわけだ。

突然「プルルル」と研究室に電話がなり響く。

「はーい、田中です。……分かりました……え??俺もですかー?……はあ……分かりましたー」と眉を寄せながら田中はガチャッと受話器を置いた。

「宗主が咲間と喜馬君を呼んでるー。何故か俺もなんだよねー……はあ、」

「何で呼ばれているか分からないが行くか」

咲間はそう呟き田中と喜馬を連れて研究室を出る。研究室を出る前に咲間は雪斗に「すぐ戻って来るからここで待っていろ。宮木をここに寄こすからさっきみたいに合いはしない」と言い残し宗主の間に三人は向かう。

研究室に一人ぼっちになった雪斗は色々考え、やっと自分が八咫烏の隊員見習いになったんだと理解をする。静かに一人で考える時間は今までなかったから今やっと理解したのだ。

ガラッと研究室の引き戸が思い切り開かれ、雪斗は宮木が来たんだと思い扉を見る。

「へえ。マジで会田いんじゃん」とニタニタ笑いながら加茂が研究室の中に入り、ゆっくりと加茂は雪斗に近づく。

「……か、も君……な、なんでここに?」

雪斗は常闇ノ庭に思わぬ人物である加茂に出会い驚く。

加茂は雪斗に……をした人物だ。






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