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夜の帳を護りし者達  作者: 苺姫 木苺


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咲間の怒り(改稿1月30日)


由羅は夜帳(よとば)の身体のことを考え、夜帳(よとば)の間を出て宗主の間に移動する。

側近の一人の相馬景虎を呼び、雪斗の監視命令を伝えた。


由羅から雪斗の監視命令を下された相馬は、木の上からバレないように雪斗を監視していた。

「チッ!何で俺があんなガキを監視しなくちゃいけないんだよ」

咲間は相馬が木の上から自分達をいや、雪斗を監視しているのを気付いた。宗主は慎重な人だから側近の誰かしらを雪斗の監視にすると思っていたが、まさか相馬を付けるとは咲間は思いもしなかった。

「ここで休憩してろ」と咲間は雪斗に言い、木の上にいる相馬の所に一瞬で移動した。

「は?!」

相馬は雪斗を監視していることはバレていると思っていたが、雪斗の側を離れ自分の所に来るとは思わず相馬は変な声が出た。

「相馬、分かっているな?俺の弟子に手を出したら、ただじゃすまねぇからな?」

咲間はどすのきいた声で相馬を脅す。相馬は咲間の殺気で身体が強張り、視線を外すことさえ出来ない。いくら相馬が宗主の側近になったからといって、咲間と相馬が戦ったら勝つのは咲間だ。相馬は壱盤隊にいた頃から一回も咲間に勝てたことがない。

咲間は葉を一枚も落とすことなく木の上からスタッと降りた。手をヒラヒラさせ相馬に背を向けて歩き出す。

「クソッ!」

咲間は相馬に背を向けているが、相馬は一切の隙がないと感じている。今隙だらけの雪斗を始末するのは簡単だが、咲間相手に逃げ切ることは出来ないと判断し相馬は監視を続行。



脅しを強く掛けといたから相馬もそんな無茶のことはしないだろうと咲間はこの時相馬を甘く見てしまった。

「雪斗君……いや、俺の弟子になったし雪斗って呼ぶなことにする」

「あ、はい」

雪斗も休憩をしたことで呼吸も元に戻っているので咲間は「ランニング再開だ」と言う。それを聞いた雪斗はまだ続けるのかと落ち込む。

「え、いや。もう、走れないです!」

「じゃあ、式札を光らせるのを一時間だ」と咲間が言ったのを聞き、雪斗は「……走ります……」とポツリと呟く。

式札を一時間光らせるより、自分のペースで走れるランニングの方が楽だと雪斗は選んだ。式札を光らせるのは、体力と霊力が減るだけでなく気力も減るからきつい。

雪斗は重い足をノロノロと動かし本館周りをまた走り始める。

「そのスピードだと歩いてるのと一緒だぞ!」

「え?!は、はいぃ」

雪斗は頑張って今より走るスピードを上げたが、「もっとだ!」と咲間に言われる。咲間は雪斗がまだまだスピードを上げれると思っているが、引きこもっていたのが長い雪斗の体力に筋力からすると今が限界なのだ。でも咲間は八咫烏にいる高校生の体力が普通だと思っているから、雪斗の体力の限界がもうきているとは気付かない。

「も、無理、」と雪斗は倒れるようにへたり込むのを見て咲間は雪斗の体力の無さに心底驚いた。

「雪斗十五歳だよな?何でこんなに体力が無いんだ?!」

「はあ、はあ……引きこも、っていた、はあはあ、ので」

「これは、俺一人では無理だな」とへたり込んでいる雪斗を見て、壱盤隊の隊員にも手伝わせようと決める。

「休憩させて下さいー」

朝から色々あり朝ご飯も食べないで動いていたので雪斗のお腹から「グー、キュルル」と大きく鳴った。

「ん?もう昼か……そうだな昼休憩にしよう」

「やったあ!」

咲間と雪斗は泥を落とし、食堂に向かう。

その後ろから相馬も気配を隠しながら雪斗の後を追う。内心宗主の命令とはいえこんな命令はやりたくないと思っていた。相馬には弟がいて、壱盤隊にいるから出会うかもしれないからこの命令が嫌な理由でもある。



雪斗と咲間はガヤガヤとした食堂に来た。

「あ!咲間隊長ー!雪斗君ー!」とご飯を食べていた宮木が食堂に来た雪斗と咲間を見つけ大声で呼ぶ。ガヤガヤとした食堂の中宮木の大声が響いた。食堂にいた者は大声を出した宮木を見る者と咲間を見る者で分かれた。

皆一瞬見たが咲間達を見ることを止めた。八咫烏の者はお昼頃に起きてきて、訓練をする者が多いので忙しいからだ。

「お、宮木。お疲れ」

咲間と雪斗はご飯を選び宮木が座っている席に着いた。

「何で検査室に戻ってこなかったんです?」

「雪斗の訓練を見ていたからだ」と咲間が言うと、食堂にいた咲間達の会話を盗み聞きしていた者達が一斉にシーンとなる。

「え?咲間隊長?何で雪斗君の訓練を見る羽目に?」

宮木は雪斗が八咫烏の隊員見習いになったことを知らないので驚きながらも咲間に何でか聞く。

「雪斗が隊員見習いになったから師匠になっただけだ」

「いやいやいや!!何で雪斗君が隊員見習いになってるんですか?!展開どうなってるんです!」

またも宮木が驚き過ぎて大声が食堂に響く。宮木が騒ぐのはいつも通りなので周りはまたかと思い、宮木を見ることはしなかった。

「雪斗を俺ん家で世話するには隊員見習いにするしかなかったんだ」

「咲間隊長!わかっているんですか?!推薦人の隊で任務をしなきゃならないんですよ!壱盤隊の担当地区は夜喰の出没が多いんですよ!」

「え?!」と事の成り行きを見守っていた雪斗が宮木の言葉を聞き驚きご飯を食べてる手を止めた。雪斗は隊員見習いも任務をしなくてはならないとは知らなかったのだ。

「咲間隊長ー?この雪斗君からの反応からして説明してなかったですね?」

宮木はジトーと咲間を見ながら責めるようにように聞く。

「それは後で説明するつもりだったんだ。それよりも、風虎見なかったか?」

「……風虎さんはもうご飯食べて自主練してますよ」

「僕お手洗い行ってきます」と言い椅子を雪斗は立ち上がると、咲間は「雪斗、これ持っておけ」と一枚の式札を渡す。

雪斗は素直に受け取りお手洗いに向かう。

相馬は雪斗が一人になると分かり、雪斗を殺しまではしなくても大怪我を負えば監視命令も無くなると思い動くことにした。



お手洗いを出た雪斗はのんびりと歩いていると、相馬が後ろから忍び寄って来る。

雪斗はふと後ろを振り向くと、相馬が雪斗を思い切り蹴り飛ばした。

「うっ……!」

雪斗は訳も分からず蹴られたお腹を押さえながら、蹴って来た相馬を見る。

「こんな弱そうなのは八咫烏には要らない」と再度蹴ろうとすると、雪斗の前に透明の壁が現れ相馬から雪斗は護われた。相馬は雪斗が展開した結界にバンッと思い切り蹴る形となった。

「いっ……こ、れは?」

雪斗が展開した結界は食堂を出る際に咲間から渡された式札を雪斗が無意識に発動させた。でも雪斗は自分が結界を展開させたことは理解していない。

「は?何で結界が?こいつ結界まで使えるのか?!」

相馬が再び結界を蹴ると雪斗が展開した結界はバリン!と音を立て割れた。簡単に割れた結界を見た相馬はニタリと笑い、再び雪斗に乱暴なことをしようする。

だが、「兄さん!何をしている!!」と怒声が廊下に響き、雪斗の前に先ほどよりも大きく均一な結界が現れた。

「風虎……邪魔をするな」

「人払いの式札を使ってまで、子どもをいじめて何をしているんだ!」

相馬から雪斗を護ったのは、相馬景虎の弟である喜馬風虎だ。苗字が違うのは相馬が風虎を嵌め相馬家から追い出したのだ。相馬家は八咫烏に長く仕えている一族で権力を持ち合わせている。そんな相馬家に落ちこぼれの風虎が相馬家にいるのが相馬景虎が許せなかった。

「分家が本家に逆らう気か?」

「兄さん、いつまでも俺が落ちこぼれだとでも?」

相馬は「……チッ!」と舌打ちをしてこの場からさることを決断した。喜馬風虎は相馬家にいた頃より実力を付け、相馬景虎といい勝負まで出来るほどに。

相馬は咲間が来る前にこの場をサッと一瞬で離れた。

「君!!大丈夫か?」

「え?あ、はい」と雪斗は蹴られたお腹を押さえながら、急展開に追いつけず困惑しながら返事をする。

「……兄がすまないね。君どこの所属の子?」

「えっと、「あれ?喜馬?何で雪斗と一緒にいるんだ?」」と雪斗が答える前に、咲間がいつまでも戻って来ない雪斗を心配して探しに来た。

「あ、隊長……兄が……この子に暴力を振るっているところに遭遇しまして……」

「あ”?相馬が?」と咲間は今までに見たこともないような怖い顔と冷たい声を出した。この場の空気が咲間によってピンと張る。

雪斗はそんな咲間の顔を見て、咲間にはこんな怖い面もあるんだと思う。

「兄がすみません!!」

「喜馬が謝ることじゃない。雪斗と一緒にいろ」

咲間は雪斗を喜馬に任せて、相馬を探しに雪斗と喜馬の前を去って行く。咲間の後ろ姿からも咲間が本気で怒っているのが分かる。

「えーと、俺は喜馬風虎。さっき君を襲った奴の弟だ」

「……会田……雪斗、です」

「その、兄がごめん!」

喜馬は腰を曲げ、雪斗にしっかりと謝る。いくら自分がしたことではないが、兄がしたことは自分にも関係あると喜馬は思った。

「喜馬さんが、悪いわけ……ではないので気にしないでください」

雪斗は歯切れ悪く返事をした。目の前にいる喜馬は護ってくれたのだが、雪斗はいじめられていた頃を思い出してしまいいつものように答えられなくなっていた。



その頃咲間は怖い顔をして、相馬を探し回っている。

「おい、そこのお前」と咲間は近くにいた隊員に怖い顔をしたまま話し掛けその隊員を怯えさせた。

「えっと、咲間壱盤隊隊長?」

「相馬を見なかったか?」

咲間に話し掛けられた隊員は首が取れるのではないかという位に横に振り、「み、見てないです!!」と怯えながら返事をした。

「そうか」

咲間は怖い顔をしているせいで隊員達が咲間に怯えて離れていく。

全集中をし咲間は相馬の居場所を探ると、常闇ノ庭の端っこにいるのを探り当てた。

「……あそこか」

霊力を足に纏い筋力を底上げし全力で相馬のいる所に向かう。八咫烏の隊員は霊力を身体の部位に霊力をまとわせ、夜喰と戦っている。普通の人間の筋力では夜喰には敵わないので、足りない分を霊力で補う。

音も立てることも無く咲間は廊下を走り相馬の所へ。



相馬はここまでくれば流石に咲間にも見つけられないと侮った。

「あのガキが俺と同じ式札の使い手か……。隊員見習いになったばっかの奴が結界を展開するな、「おい、相馬俺言ったよな?」は?!咲間?!どうしてここが分かった!!」

咲間は相馬の言葉を無視し、足に霊力をまとったまま相馬の腹を回し蹴りをする。

「グハッ!」と相馬は咲間の回し蹴りに反応が取れず、もろに回し蹴りを鳩尾にくらった。

お腹を押さえながら前屈みになった相馬の頭を咲間は足でガンッ!と押し付ける。地面に顔面を押し付けられた相馬は土で顔が汚れる。

サーッとどこからか吹く風が木々の葉っぱを落とす。ヒラヒラと落ちる葉っぱが相馬の上にも落ちる。

「なあ?俺言ったよな?弟子に手を出すなって……なあ?」

「……う、っ」

咲間は相馬を踏んでいる足に力を込め「昨日まで普通の子どもだった子をいじめて楽しかったか?なあ、相馬」と相馬に聞くが、咲間は喉にも霊力をまとっているから相馬は威圧のせいで喋れもしない。

霊力は纏う部位によって色々のことができる。喉に霊力を纏うと相手に威圧し場合によっては動けないようにすることも可能だ。

「お、れは……」

相馬は手をギュッとし土を握りこんだ。どうしたら俺をこんな目にあわした咲間に痛い目を見せられるかと相馬は悪巧みを考える。

「宗主からの監視命令は分かっている。これが最後の警告だ……俺の弟子に手を出すな」

相馬は霊力を身体全体に纏い咲間の威圧を解く。身体が動かせるようになった瞬間に相馬は握りこんでいた土を咲間の目に目掛けて土を投げる。

飛んできた土を首を右に傾け咲間は土を避けた。咲間が土を避けた瞬間、その隙を見逃さず相馬は懐から式札を取り出し「爆!」と唱える。その瞬間ドカーン!!とこの場が爆発した。

咲間は相馬が式札を取り出したのが見えた瞬間、後ろに飛びのいていたから爆発には巻き込まれなかった。この場には煤の匂いと土煙しか残っておらず、相馬は爆発に乗じて逃げたようだ。咲間はこの件を宗主に報告し、文句を言ってやろうと考える。

「雪斗が大人を怖がらないといいんだが……相馬にもうちょっと強く警告すべきだったか?」

足音がし咲間が振り返るとそこにいたのは田中だった。

「派手に暴れたみたいだねー」

「……この爆発は俺じゃない」

「ふーん。ねえ、会田君って本当に八咫烏に親戚いないのー?」と田中がいつになく真剣に咲間に聞く。

「何でだ?」

「実は相馬が会田君に蹴ろうとした瞬間に結界が張られたのを見たんだよ」

田中の結界が張られたとの発言聞き、雪斗が結界を張れたのを嬉しさと驚きが混じり「まじか」と呟く。

「結界を張れる式札の使い手は少ない。だから、あれは絶対会田君だよー」

「そうか」

結界の式札を渡しといて展開出来るとは一ミリも思っていなかった咲間は、雪斗は式札使いの中で一番強くなれるかもしれないと思った。

少ない霊力でしかも今日式札を初めて触った雪斗が結界を張れたのがとても凄いことなのだ。




田中と咲間から遠く離れた場所から相馬は「咲間、覚えていろよ」と呟いた。






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