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夜の帳を護りし者達  作者: 苺姫 木苺


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式札の適正(改稿1月30日)



咲間は雪斗の手を引っ張りずんずんと訓練室に向かう。

「あ、あの!隊員見習いってどういうことですか?」と雪斗は勇気を振り絞り咲間に質問をした。

「ん?そのままの意味だ。最初は隊員見習いにするつもりなかったんだけど、夜帳(よとば)様が八咫烏ではない者は無理って言ったから隊員見習いにしたってわけ」

「え?僕、八咫烏に入るって言ってない……」

咲間の強引さに雪斗は戸惑いどうすればいいか分からなくなる。父親も母親も強引なところも少しあったが、咲間程の強引さはない。だからこそ、雪斗はこんな大人にどう対応すればいいのか分からなかった。

咲間は立ち止まり「八咫烏じゃないと雪斗君はここから出て行かないといけないから、しょうがなかったんだ」と雪斗の目を見て真剣に答える。

咲間はもう一つの理由で、雪斗を八咫烏の見習い隊員にしないと危険だと判断したから強行突破をしたのだ。その理由は八咫烏の宿敵、獄堕の園(ごくだのその)の気配が、雪斗の家に僅かに残っていたからの強行突破だ。

もしかしたら、獄堕の園(ごくだのその)が雪斗を狙っている可能性もあると咲間は考える。

一緒にいた宮木は獄堕の園(ごくだのその)の気配には気付いていなかった。気配が残っていたといってもほんの僅かな為、咲間や他の隊の隊長格しか気づけないだろう。

獄堕の園(ごくだのその)は夜喰を崇めていて、夜喰を祓う八咫烏とは敵対をしている。獄堕の園(ごくだのその)は一般人も知らない闇の組織だ。八咫烏も世間一般的には闇の組織みたいなものだが、ただ一つ根本的に違うのは夜喰を崇めているかどうかである。夜喰を崇める……すなわち人々の死を望んでいるということだ。

「そう、ですか」

「雪斗君って運動得意?」

「不得意ではないです」

咲間と雪斗は話しているうちに訓練室に到着した。訓練室には数名いて座禅をし精神統一をしている。

訓練室の壁は切り傷やへこみといった傷が所々付いているが、部屋が薄暗いせいか壁にある傷はそんなに目立ちはしない。

「あ、雪斗君ここの訓練室は土足厳禁だから覚えておいてな」

二人は靴を脱ぎ訓練室に入り、人がいない方に行く。

「どんな訓練をするんですか?」

雪斗は不安そうな顔をしながら咲間に聞いた。中学でも高校でも運動をあまりしてこなかったから、雪斗は訓練が不安なのだ。

「まずは、何に適正があるか調べる」

雪斗は「適正?」と言いながら顔をキョトンとした。本来なら隊員見習いになるには適性検査をしてからじゃないとなれないが咲間をそれを吹っ飛ばしてしまった為、隊員見習いになってから適性検査となったのだ。

「夜喰と戦うには武器を使う。刀、銃、槍、弓、式札とそれぞれある」

ここには並べられていないが、他の武器もまだまだある。

雪斗の前に武器を並べて咲間は説明をする。もし雪斗に適正が無かった場合、隊員見習いを辞めなければならない。だから、咲間はどれかしらに適正が合ってくれと切実に願った。

「僕に適正があるかってどうやって調べるんですか?」

「ただ武器に触るだけでいい。やってみろ」

雪斗は恐る恐る順々に刀、銃と武器を触っていくが何も反応が無い。何も反応が無い雪斗はどんどんと不安になっていく。最後に残った式札を触るとパアアと薄暗い訓練室が明るくなった。

「え?え?」

「……式札かぁ……まじか」

ここの訓練室に置いてある武器は全てただ光るだけの能力だ。火が出たり、雷が出たりの能力で適正検査をするのは危険の為光るだけの能力しかない武器が置いてある。

「あ、あの、これどうしたら?」と光っている式札を持って雪斗はどうしたらいいのか分からずオロオロしていた。

「離したら光らなくなる。……でも、式札か……」

「式札だと何か問題あるんですか?」

雪斗に式札の事を教えて悲しませるのは嫌だなと考えながら咲間は少し考え教えることにした。

「式札は使いこなすのがどの武器よりも扱いが難しい」

適正がある者は大体二~三個の武器の適正があるはずなのだが、雪斗は式札しか光らず咲間は困惑した。

雪斗も咲間が考え混んでいるのを見て、何か問題があるのでは?!と不安になっている。

「僕に式札……使いこなせますか?」

「んー……考えるより訓練しよう!俺は式札に適正はないが教えることはできる」

「わ、分かりました!」



訓練室にいる者達は雪斗を可哀想な目で見つめていた。咲間は壱盤隊の隊長だが、誰にでも訓練を付けてくれる気さくな隊長と有名だ。皆自分も強くなりたいと訓練をお願いしてすぐに後悔をする。咲間の訓練は過酷で休憩がそんなにない為皆すぐ逃げ出してしまう。

「まずは、一時間光らせる」

「はい!」

雪斗は式札を持ちながら光っているのが不思議で「これってどうやって光っているんですか?」と聞いた。ただ持っただけで紙が光るなんて普通ではあり得ないことだ。

「この式札はね、ある一族の者しか制作できない物なんだ。光らせるのには霊力がないと光らないんだ」

「じゃあ、僕にもその霊力というものがあるんですね」

雪斗は自分の両手をジッと見て、霊力という不思議なものがあると知り少しワクワクした。

霊力はみんながみんな持っているわけではない。

「そう。あ、光弱くなっているぞ!集中!」と咲間に言われ、雪斗は光るように集中をするが光は強くなるどころか豆電球位の明るさになってしまう。

雪斗の額には訓練室は暑くないのに汗がダラダラと出始めて「はあはあ」と息が上がる。豆電球程の光はパッと消えてしまい訓練室が元の薄暗さに戻った。

「んー、十分も持たないか。よし、もう一回やってみよう」

「え?!は、はい」と雪斗は返事をして光るように挑戦したが、今度は少しも光りはしなかった。

「え?!雪斗君体力無さ過ぎ!」

「う”……あんま、運動しないので」

雪斗は不登校になってからあまり家から出ない為、同年代の子達よりも体力が無い。それに運動をするより、室内でのんびり過ごすのが雪斗は好きなのだ。

「まじか……体力増やすことから始めるか」

「え?!い、いや」と雪斗は拒否しようとしたが、咲間は雪斗の腕を引っ張り訓練室から出る。

咲間が雪斗の腕を引っ張り連れてきたのは本館の外だ。咲間は「まずは、本館を十周だ」と雪斗に言った。だがすぐに雪斗の恰好がランニングに不向きな恰好と気付き「着替えてからにするか!」と伝えなおす。


雪斗は咲間に渡された黒い運動着に着替え、これから大きい本館を十周しなくてはならないのにげんなりとした。

「あの、十周なんて出来ないです」

「まずはやってみよう」

にっこり笑う咲間を見て、「……はい……」とげんなりした表情をしながら雪斗は咲間に返事をした。

雪斗は咲間と共に本館周りを嫌々ながらランニングを始める。

外にいた者達は雪斗がどれくらいもつのかと話していた。だれも壱盤隊の隊長に訓練を付けて貰っているのを羨ましいとは思っていない。咲間は「まだやれる!」、「限界はまだだろ?」と訓練をし続けるといった熱血指導をする。

「はあ、はあ、」

「大丈夫か?」

「はあ、は、い。はあ、はあ」と雪斗は返事をすることに出さえ必死になっている。そんな雪斗を見て、まだ一周もできていないのにこんなに体力が無い子なんて初めて見たと思った。



雪斗と咲間がランニングをしている時、由羅と夜帳(よとば)は窓の外を見て雪斗の話をしていた。

夜帳(よとば)様、何故あの子を隊員見習いに許可なされたのですか?」

「あの子に懐かしい気配に似た物を感じたからじゃ」

夜帳(よとば)は息をはあはとさせている雪斗を見て、ニッコリと笑って保護者のように見守っている。夜帳(よとば)は懐かしい気配に似た雪斗を不思議と気に入ってしまった。雪斗には不思議な魅力があると夜帳(よとば)は思う。

そんな夜帳(よとば)の様子を見た由羅はめんどくさいことが増えそうだと分かり早く宗主を引退しのんびりと過ごしたいと考えた。宗主の仕事は夜帳(よとば)の世話に、八咫烏の幹部達との会議に総理への報告と由羅のやる事は大量なのだ。

獄堕の園(ごくだのその)の動きは変わらずか?」

「はい。ですが、あの者の家に獄堕の園(ごくだのその)の気配が合ったそうです」

「そうか……いつも通り警戒は怠るなよ」

「はい」と由羅は返事をしながら窓の外にいる雪斗を見る。由羅は雪斗が獄堕の園(ごくだのその)の者なのではないかと疑っていた。最近、獄堕の園(ごくだのその)が怪しい動きをしていると報告を受けていたからこその疑いである。

由羅は宗主だからこそどんなことにも疑いを持たねばならない。あんな小動物の雪斗が獄堕の園(ごくだのその)の者だとは可能性が低いが万が一があってはならないから。もし雪斗が獄堕の園(ごくだのその)だった場合、八咫烏の情報が獄堕の園(ごくだのその)に流れてしまうからまずい。

「由羅よ、雪斗は正隊員試験に合格出来ると思うか?」

「……あの様子では無理でしょうな」

本館の前で雪斗はゼーハーゼーハーと息を乱し両ひざに手を置いて疲れ切っている。十周し終えた様な疲れ具合をしているが、雪斗が走った距離はたった一周だ。こんな様子の雪斗を見れば、夜帳(よとば)も由羅も雪斗が合格するのは難しいだろうと判断する。

「だが、咲間の訓練を続けれれば合格するかもの」

「まあ……あの訓練を終えられたら、でしょうな」

由羅はこれからの雪斗を不憫に思った。正隊員試験は一か月みっちり訓練をしたからと簡単に受かるものではないから。正隊員試験は死者も出るほど過酷なもので、大多数が試験落ちをする。

「由羅よあの雪斗をどう思うた?」

「ただの子ども……としか感じませんでしたが?」

一瞬の無言の後夜帳(よとば)が「雪斗に僅かじゃが姉じゃの気配に似たものを感じたのだ」と真剣に言った。

「それは、確かなのですか?」

「はっきりと言えるものではないのぉ。ただ、似ていると感じたのだ」

それを聞いた由羅は難しい顔をして、雪斗には他の者と違う特別な力があるのかもしれないと思った。それを獄堕の園(ごくだのその)は狙い雪斗の家に押し掛けたのかもしれない。

「会田雪斗を監視致しますか?」

「ああ。会田雪斗の監視を命ずる」

「はっ!」と由羅は礼をして、夜帳(よとば)の間から退出をした。


由羅は自分の側近に雪斗の監視を命令させようとある者を呼んだ。その者のせいで大問題が起こってしまうのをこの時の由羅はまだ知らない。

過去に戻れるなら由羅はこの時に戻りたいと思うだろう……。



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