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夜の帳を護りし者達  作者: 苺姫 木苺
第1章

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22/23

試験合格



「クラオカミ、なのか?」

雪斗は目の前にいるクラオカミが本当にクラオカミなのかが分からなくなった。今のクラオカミは蜥蜴サイズから鳩程の大きさになっていて角らしいものも生えてきている。一瞬でこの変化が起きたせいで雪斗はクラオカミなのか疑った。でも自分の霊力で顕現させたから理解はしていた。今までと違い霊力の消費する速さが早くなり一瞬雪斗はクラッとなる。

「雪斗?!」

側にいた宇佐が後ろにいないのに気付き焦った顔をして雪斗の側に戻って来た。「何があったか知らないけど、早く行くよ!」と腕を引っ張り宇佐は急かす。宇佐の声のおかげで雪斗は頭が冴えた。

「あ、うん」

クラオカミは雪斗の方をチラッと見て、フヨフヨと浮きながら巨大な特殊個体目掛けて飛んでいく。そのことを気付いた雪斗は「クラオカミ!戻って来い!!」と命令をした。でも、クラオカミは雪斗の命令を無視して進んでいく。式神は札が破れたり、顕現された状態で致命傷を受けると破壊されてしまう。雪斗はあの巨大な特殊個体にクラオカミが敵わないと思っているから焦っている。

「式神が大事なのは分かるけど逃げなきゃ!」

「……すみません」

宇佐は雪斗が小声で謝って来たのを不思議に思い「え?」と聞き返した。それを雪斗は宇佐の手をバッと振り払い、後ろに振り向きクラオカミの元へ。

「雪斗!!」

宇佐が大声で雪斗の名前を呼んだことにより前にいた三人も後ろで何かが起こっていることに気付く。佐藤が立ち止まり「うさみ!何をしているんだ!会田と早く来い!!」と怒った。

「分かってる!でも、雪斗がっ……え?……何、あれ」

宇佐は佐藤の方を見てすぐに雪斗の方を見て驚いた。巨大な特殊個体の上に透き通った巨大な水の球体が浮かんでいる。それは人が出来ないことを分かっていた宇佐は目の前の状況を信じられない。

クラオカミの側に来た雪斗もこの有り得ない状況に追いつけていない。クラオカミには水を出したり操ったりする能力なんてないはず。

「これは、クラオカミがやっている、んだよな?」

クラオカミは雪斗の目をジッと見つめコクリと頷いた。それを見た雪斗は以前より意思疎通がスムーズになっているし、命令を無視したクラオカミに驚くことしか出来ない。

クラオカミが「ピイイ」と高音の声を発すると、巨大な特殊個体の上にあった水の球体が夜喰を飲み込んだ。夜喰を飲み込んだ水はシュワアと泡となり夜喰を溶かしていく。でも、水は黒くもならず透き通ったままのきれいな状態。でも霊力がどんどん消費され、式神の金魚達の倍雪斗の霊力は消費されたことにより冷や汗が出てくる。今雪斗はクラオカミの顕現を解かないようにするのに精一杯だ。

簡単に倒されていく夜喰を呆然と見ていた雪斗の隣に四人が駆け寄ってきた。

「会田!あれどうなってんだ?!」と浜屋が泡となり消えていく巨大な特殊個体を指さしながら興奮しながら聞く。

「さ、さあ?」

自身の霊力がかなり減っているのを雪斗は気付いているが、クラオカミが何をしたのか分からないから正確に答えられない。

「あの蜥蜴ってあんなに大きくなかったよね?」と柴田が珍しく質問をした。

「うん。さっき飛んできた矢から僕を守ってくれた時に大きくなったっぽい」

矢が飛んできたと聞いた四人は、そんなことに気付かなかったから驚いていた。

佐藤が「怪我は?!」と雪斗の肩を掴みながら言う。狼狽えながら雪斗は「どこも怪我していないよ」と答えた。

雪斗達が話している間に巨大な特殊個体は全て泡となり消える。巨大な特殊個体が消えたから水もパシャンと割れた。水球が消えたことにより霊力があまり減らなくなったことに雪斗はホッとした。

クラオカミは水が割れるのを見て、雪斗の方に飛んでいき肩に着地する。クワッと欠伸をしたクラオカミは自分の役目は終えたようにスースーと寝息を立て始めた。雪斗は内心こいつ好き勝手してあげくに寝るとかってマイペース過ぎると思っている。

「その蜥蜴……角生えてた?」と柴田がクラオカミに近づきじっくり見ながら言う。

「いや、生えてなかった」

浜屋が柴田に近づき「渚あの式神どう思う?」と質問をする。質問をされた柴田はクラオカミを見て一瞬躊躇したかのように、「いや……でも、あり得る……。多分、会田の式神は全て特別なのかもしれない」と答えた。

「式神って進化ってするの?」

「いや、しない。それより、この話より試験だ」と佐藤が宇佐の質問に答えつつ空気を仕切り直す。

「確かに。あ、あの洞窟に行こう」

雪斗は微かに見えた洞窟を指さした。本来なら逃げづらい洞窟を選ぶのは悪手だが、もう日の出まで残り僅かなので身を隠すのは洞窟が最善である。それを分かっていたから雪斗は洞窟を選んだ。それに洞窟なら四方八方からの攻撃が出来ない。

五人は夜喰に見つからないように木々を静かに飛び移りながら洞窟を目指した。

一部始終を見ていた試験官はA班の雪斗と佐藤は今回の試験の中で群を抜いて優秀だと判断を下す。でも、試験官もクラオカミが変化したのを見て気になり、上官にすぐさま無線で先程の出来事を報告をした。


洞窟の中に移動して来た五人はゆっくり奥に進みながらすぐに止まる。奥に行き過ぎると逃げる際に行き止まりに行ってしまうかもしれないから。

一瞬その場がシンとなり急に柴田が不安そうに雪斗を見た。

「僕はさっきの事を知らない!!」

「大丈夫。ちゃんと分かっている」と雪斗は不安そうな顔をしている柴田の目をジッと見つめる。

それを見ていた宇佐は「雪斗って簡単に人を信じすぎじゃない?何で柴田を信じられるのか分かんない」と不思議そうに聞いた。

「柴田君は昔の僕にそっくりなんだ。どうにかしようともがいてもがいて……身動きが出来ない。弱い自分が許せなくて周りを見れないんだ。手を伸ばしてくれている人がいても、ね」

柴田は雪斗の言葉を聞き、過去に助けてくれようとした人がいたのかもしれないと思った。自分とそっくりと言った雪斗はどのように今のように成長することができたのか柴田は興味が出てくる。

「……どうやって変わったんだ?」

「変わったか、か……僕は自分自身で何も変わったとは思ってない。ただ、過去の僕の頑張りを卑下するのを止めただけ」

雪斗の話を聞いた四人はどうしたらこの歳でこのように達観できるのか、雪斗の過去が気になった。少し無言が続きが「さて、試験に集中しよう」と流れを変える。

洞窟内に風が入って来てヒュウと音が響く。外と違い洞窟の中は虫の鳴き声や葉が擦れ合う音が聴こえない。そのせいか風の音が響くと大きく聴こえる。

「あと、一時間か~」

宇佐は小さく呟いたつもりが、その声は洞窟の中のせいで響く。

入口の方から来る風で松明の火がユラユラと揺れ、五人の影が生き物のようにユラユラと動いている。

「夜喰来ないな」

雪斗は一体も夜喰が洞窟の中に来ないのを疑問に思う。一体くらいは夜喰が来ると思っていたのに来ないのはおかしい。

「ねえ、私達はさどこに配属されるんだろうね」

「もう合格したつもりか?」と佐藤は刀を握りながら宇佐を見た。まだ、試験は後一日残っている。でも、四日目をのりきった受験者は大多数が合格していた。だから宇佐はもう合格した気分になっている。

「だってもうほぼ合格したようなもんじゃん!配属先も気になるでしょ普通!」

「配属先も何も推薦人がいる所以外あるか?」と浜屋は何を当たり前のことを言っているのか分からないといった表情をした。

「え?浜屋知らないの?」

「え?何がだ?」

宇佐は「もし推薦人が超優秀で壱盤隊の隊員だとするじゃん?でも推薦した人の実力が足らないと壱盤隊には配属されないの。その逆に推薦者が優秀だと強い所に配属されるってわけ」とペラペラと説明する。

それを浜屋は「へえ」と聞いていた。

「私壱盤隊に配属されたいんだよね~」

佐藤はフッと鼻で笑い宇佐のことを馬鹿にした。雪斗は宇佐が佐藤に突っかかろうとしたのを気付き「さっきも言ったように今試験中なの忘れないで下さいね」と二人にくぎを刺す。くぎを刺された佐藤に宇佐はウッとばつの悪そうな表情に。

「会田の怒り方こえー」と敬語で怒る雪斗を浜屋は恐れる。それを柴田はこいつら何してんだ?という目で呆れていた。

「あ、そうこうしているうちに日の出時間だ」

雪斗は腕時計を確認しホッと胸をなでおろす。夜喰も加茂達が来ず体力温存出来た状態で四日目を終えられたから。

「ねえ、さっきの場所に戻る?」

「止めておこう。加茂君達が何かしている可能性が高いので」

すると浜屋が突然「え?!じゃあ、飯はどうすんだ?」と大声を上げた。その大声は洞窟内に大きく響き渡る。

「一日くらい飯を食べなくても死なない。我慢しろ」

佐藤も空腹だったが拠点に戻るのは得策ではないと分かっていたから浜屋にああ言った。これが二日目とかであれば食料の為に戻ってはいた。

「もう寝よう。ギリギリまで寝て作戦を練るってことで」と雪斗は言い地面に横になる。四人も地面に横になり各々寝始めた。

でも、雪斗だけは寝れていない。後一日で帰れると分かり考えないようにしていたことを嫌でも考えてしまう。咲間の死について……。

ボソッと「咲間さん」と雪斗は呟くが、四人はスウスウと寝息を立て寝ていて雪斗の呟きは誰にも届かなかった。


雪斗は中々寝付けず静かに起き上がり洞窟の中を足音を立てずに入口の方へ。

「今日も雨か」

雪斗は地面に座って雨をボーっと見ていた。すると後ろから足音が聴こえ振り向くと、そこにいたのは眠そうな顔をした柴田だった。

「会田、起きるの早いな。まだ十時だけど」

「んー、なんか起きちゃったんだよね」とシトシトと降る雨を見ながら雪斗は答える。それをジッと柴田は見つめる。

「何かあった?」

「……ふあぁ、もう一回寝ようかな」

柴田の質問をスルーするようにあくびをして雪斗は立ち上がった。雪斗はスタスタとさっきいた場所に向かって歩いて行く。その後ろから柴田も歩き始めた。

三人は雪斗と柴田が別の所にいたのを気づかずスヤスヤと寝ている。二人は他の者達を起こさないように再び寝始めた。


日の入り時間となり五人はいままでのように戦い最終日を無事に乗り切ることができた。加茂の妨害も無く雪斗達は試験を合格した。

加茂達が妨害出来なかったのは試験官がわざと加茂達の視界に入るように監視をしていたから。沖田も雪斗の実力を認めていて、合格する者を落とす行為を認められずあのような策を講じた。

雪斗達を監視していた試験官が「着いてこい」と言い歩き始める。それを雪斗達は慌てて着いていく。

試験官が向かった先は五日前に来た場所だった。周りには雪斗達同様に疲れ切ったボロボロの合格者達。でも、五日前よりも人は少なくなっていた。四割が五日間を乗り切れずに棄権をした。

合格者の中になんと加茂、佐々木、和田もいる。加茂は雪斗のことをギロリと強く睨んでいた。でも雪斗は過酷な五日間を乗り切れたからか、加茂への恐怖は一ミリも感じていない。

「静かにしろ。ここから初日に集まった所に行くから黙って着いて来い」と沖田がピシャリと言う。

試験を合格した面々は常闇ノ庭に帰って来た。

常闇ノ庭に着いて合格者たちは合格したと今実感し周りの者達と喜びを分かち合う。

雪斗も佐藤達と無事に合格できたことを喜んでいた。


そこに遠くから「雪斗君っ!!」と必死な顔をした宮木が合格者たちを押しのけ雪斗のもとへ。

その目に涙を貯めた宮木の顔を見た瞬間、雪斗の頭に嫌な……したくない予感がした。


咲間の死……という予感が。








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