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夜の帳を護りし者達  作者: 苺姫 木苺


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クラオカミの覚醒



起きた雪斗達は木々が折れ大きな水溜りが出来ている目の前の惨状に驚愕した。

雨と風は無く天気はそこまで悪いわけではない。でも、この状況だと今夜の戦闘は困難になることは一目瞭然だ。

「雪斗、どうする?」

宇佐は枝を夜の為に退かすか聞いた。聞いたけど退かすのは決定だろうと思いながら宇佐は聞いている。

「落ちている枝を退かすかってことですか?」

「うん、そう」

雪斗は周りをキョロキョロと見渡し「いえ、このままにしておきましょう。ここで体力消耗は無駄なので」と答えた。その返答に宇佐は納得が出来ずに「体力温存も大事だけどさ、夜の為に戦いやすいようにしといたほうがいいんじゃない?」と言う。

「それでも会田より年上か?」

佐藤は雪斗の考えが分かっていて宇佐に喧嘩を売るように言った。この極限状態の中皆疲れていて苛立ちやすくなっている。普段の佐藤ならこんなことで喧嘩を売るようなことはしない。

「はあ?!太郎何ですってー!」

「喧嘩止めましょうね。もう四日目なんですからくだらないことして、体力消費する馬鹿のことはしないで下さい。折れた枝とかをどかさないのは、もし戻って来た加茂君達の邪魔をする為とどかしている最中に怪我をしてしまうかもだからです」

珍しく雪斗も苛立ちを表に出し仲裁し、宇佐に丁寧に説明をした。雪斗は加茂が絶対に戻ってくることを分かっていた。加茂は雪斗が血を出し怯えているのを笑ってみていたようなサディストだから、怪我だらけの雪斗を直接見ないはずがない。

「取り敢えず、飯食わねえ?」とお腹をグウと鳴らしながら浜屋が提案をする。四人もお腹が空いていたから浜屋の提案に頷く。

五人はそれぞれご飯の準備に取り掛かる。

「会田、お前生米まで持ち込んでいたのか」

雪斗が鍋に水を入れ米を炊いているのを見た佐藤がポカンとしながら呟いた。

「腹が減っては戦はできぬと言いますからね」

ふっと笑いながら四人を見た。ご飯が炊き始めた匂いに四人は自分も雪斗みたいに持ち込めば良かったと後悔をする。

「ねえ、食べ物の持ち込みって咲間隊長のアドバイス?」と浜屋が聞いた。それを雪斗は笑いながら「咲間さんには何でそんな物持ち込むんだ?って言われましたよ」と鍋から水が吹きこぼれないか見ながら言う。辺りには米の炊けてくるいい匂いとグツグツという音が響き渡る。

「そういえば、雪斗って何で八咫烏の隊員見習いになったの?」

「……両親が血だまりを残して……消えたんです。ひとりぼっちになった僕を咲間さんが後見人みたいな感じになってくれて隊員見習いになった感じです」

雪斗の言葉を聞いた四人は気まずそうな顔になりその場がシーンとなりお通夜のようになる。「まだ、両親が死んだわけでもないので大丈夫です」と火の上から鍋を降ろしながら言う。

「……そんな状況の会田を相馬様は妨害するよう命令をするなんて……」

柴田は自分よりも酷い状況の中試験を受けている雪斗を尊敬し始める。自分なら雪斗のようには出来ないと柴田は思う。

この空気を変えるように雪斗は「なんで髪色も変わったんだろう?」と言った。

「え?髪色もってことは他にも変わったの?」

雪斗が話の流れを変えようとしたのに気付いた宇佐はそれに乗る。お通夜のような空気を一番宇佐が気まずかったのだ。しかもその空気を作ったのが自分だから。

「はい。瞳も黒からオレンジ色になったんです」

四人はジッと雪斗の瞳を見た。雪斗の瞳の色はオレンジ色だが、光り輝いているように綺麗で四人は魅了される。ジッと四人に瞳を見られている雪斗は気まずくなって顔を背けた。

「そういえば、太陽神も雪斗と同じ白髪にオレンジ色の瞳っていう俗説があったよね」

「黒髪だっていう俗説もあるがな」

宇佐と佐藤は太陽神の天照大神のことを話し始める。

「夜喰も元は神様だっていう奴もいるしな」と浜屋も話に加わった。

「あと、式神も神様だっていう人もいる」

柴田はハトの式札をジッと見つめながらボソッと言う。まだ、輪の会話に混ざるのは苦手だからか声が小さい。

「へえ。そうなんですね」

雪斗は四人の会話を興味深そうに聞いている。咲間達は噂話はあまりしないから雪斗はこういう話に疎い。

大きめの葉を未開封のペットボトルに入った水で洗い流し、雪斗は四人分のご飯を葉の上に乗せる。それを「どうぞ」四人に渡した。すぐさま鍋で味噌汁も作り、人数分に分け渡すと四人はキラキラとした目で雪斗を見つめる。

「まじ、俺……会田と同じ班で運が良かった」と紙コップに入ったみそ汁を飲みながらしんみりと浜屋は言った。それを三人は同意をするように頷く。

「あははっ!ただの味噌汁にお米ですよ?」

「いやいやいや!雪斗!五日間このまずい乾パンはキツイんだよ!だからこれはマジで助かるの!」

辺りには味噌汁の匂いが充満している。雪斗達を監視していた試験官は空腹で羨ましそうに眺めていた。

「なら、良かったです」

味噌汁を一口飲んだ柴田が「美味しい」と呟く。

「食べながらでいいんで耳だけ貸してください。今日の作戦は極力明日の為体力消費を抑えての戦闘をしたいと思います」

ご飯を口いっぱいに入れながら「それで?」と浜屋が口をもぐもぐさせ聞く。

「日付が変わるまでは普通に夜喰を警戒で日付が変わったら全員の霊力を借りて気配消しを使おうと思います」

「確かに。それなら全員の負担は少ないな」

佐藤はみそ汁を置き、顎に手を当てながら考えた。雪斗は負担もそうだが加茂達が来ても気配消しをしていれば見つけることは困難だろうと考える。

「でもさ、本当にこのビビリ君を信じるの?また昨日みたいなことしてくんじゃないの?」

宇佐の言葉がグサッと刺さった柴田は黙って地面を見た。それを雪斗は「僕は柴田君を信じます」と力強く言う。

「俺が言うのもあれだが、よく渚を信じることが出来るな」

「うーん……浜屋君も今の柴田君も信じて大丈夫って直感したからですかね。いじめられていたからなのか人の見る目はありますよ」

佐藤は雪斗の言葉を聞き「やっぱり会田を班長にして正解だったな」と軽く笑いながら言う。

「会田、俺達同い年なんだしタメ語でいいんだぜ?」

「え?あ、うん」

雪斗はまさかタメ語でいいと言われるとは思わず、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をした。他の者達もタメ語で話してと言われた雪斗は戸惑いながら了承する。



談笑しながら作戦会議を終えのんびりと過ごした雪斗達五人は、周りが暗くなっていくにつれ顔が怖くなっていく。

「もう日の入りだ」と雪斗が重々しく呟いた。それを四人は軽く頷き各々の位置に付く。

「クラオカミ、クロ」

雪斗が蜥蜴とデメキンの式神を顕現させ、空と木の上から周りを警戒するよう命令をした。もう夜だからかデメキンであるクロは暗闇に溶け込み直ぐには見つけられない。でも、クラオカミは白色だから灯りを向ければすぐに見つけられる。

「ねえ、雪斗?」

「何?」

夜喰に見つからないように宇佐は小声で「加茂の奴来ると思う?」と前を向きながら言った。それを雪斗は「絶対来る」ときっぱりと言い切る。

夜喰がうようよと徘徊しているが木の上にいる雪斗達には気づかず、右に行ったり左に行ったりとしていた。

「さっき言っていた、夜喰が神様かもしれないはそうかもしれない」

雪斗は下でうようよしている夜喰を見ながら風のヒューという音に負けそうな位の小声で言った。そばにいた佐藤だけが聞き取れ「何でそう思った?」と聞き返す。

「んー、人にも強さは違うように神様にもそれぞれ強さは違うと思うんだ。特殊な夜喰はそれだけ他の神様と違って強かったのかもしれないって僕は思う」

「なるほど……そう考えるとあり得るな」

強い風がビュウと吹き雪斗達を隠してくれていた葉が大きく揺れた。夜喰達の血のような色の瞳が隠れていた雪斗達を見つけてしまう。

「まずい!戦闘しつつ後退し隠れれる場所を探そう」と雪斗は早口で四人に指示を出した。四人は臨戦態勢になりながら全員頷く。

多くの夜喰達が五人に襲い掛かっていく中で、一体の夜喰だけが微動だにせずただぽつんとしていた。でも、五人は多くの夜喰の対応に追われその夜喰には気付いていない。

すると突然ぽつんとしていた夜喰が耳をつんざくような奇声を上げ雪斗達が身を隠していた大きな木よりも巨大化した。

五人は奇声に顔を眉を寄せしかめながらも奇声を発しながら巨大化している夜喰に目を向ける。

「は?」と浜屋は間抜けな声を出し目の前の状況に追いつけずポカンとした。いや、浜屋だけでなく四人も状況に付いていけていない。

「あれ、どう考えても私達が倒せなくない?!」

宇佐は鞭を振り回しながら大声を上げ焦りを口にする。佐藤も倒せないと分かりつつも「どうする会田?」と雪斗に指示を仰ぐ。

「全員戦闘止め。あの巨大な特殊個体から全力で距離を取ります」

全員が「了解」と返事をし足に霊力を纏わせた。この時実は加茂達も側にいて雪斗達を監視していた。雪斗が生きていたことの驚きと髪色の変化を三人は状況に追いつけない。それにあの巨大な特殊個体のせいもあって。

佐藤を先頭に巨大な特殊個体から全力で距離を取るように木を乗り移っていく。雪斗は最後尾で四人を護るように式札を使っていた。

「佐藤さん!もっとスピード上げて!!あれに追いつかれる!」

雪斗は大声で指示を出す。でも佐藤は「これが全力だ!」と汗をかきながら後ろを振り向くことなく言った。五人が木々を乗り移っていくせいで、枝が揺れ葉がこすれ合いガサガサと鳴っている。

「雪斗!あれどうにかならないの?!」

「流石に僕だってあれは倒せない!」

五人は必死で距離を取るように巨大な特殊個体から逃げているが、中々距離が広がらない。

この時加茂は今がチャンスだと思い「優奈、やれ」と雪斗を射るように指示をした。

「りょーかいっ!」

佐々木はにんまりと笑いながらヒュンと矢を放った。雪斗が枝に着地をする瞬間に矢が横から来たせいで、雪斗はまさかここで来るとは思わず油断をした。

「やばっ」

矢が当たると思い反射的にギュッと目を瞑った雪斗はここまでかと諦め掛けた。でもいつまで経っても矢が当たらないのに不思議に思い目を開けると、そこに宙に浮いたクラオカミが矢から雪斗を護るように雪斗の前にいた。

「え?クラ、オカミ?」



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