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夜の帳を護りし者達  作者: 苺姫 木苺


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20/21

変化




ボオボオと燃えさかる火は、巨大な氷柱のおかげでなんとか火は消えた。雪斗が生きているのか心配で急いで沖田が駆け寄ると、雪斗の姿を見て驚く。

「なんだ……、これは?」

薄いオレンジ色の光の膜が雪斗を優しく包むように守っていた。その光の膜のおかげか、所々に雪斗は火傷や傷が出来ているくらいで済んでいる。役目を終えたとばかりに薄いオレンジ色の光の膜は、段々と光が弱くなり消える。

「雪斗っ!!」

薄いオレンジ色の光の膜は沖田以外は見ていない。水蒸気で隠れてすぐに駆け寄った沖田しか見れなかったというわけである。

宇佐、佐藤、浜屋が雪斗に駆け寄り、雪斗の姿を見て驚いた。「白」と浜屋が雪斗の髪色を見て呟く。

「髪色より、会田の怪我だ!!」

雪斗の変化した髪色を見て驚いている二人を注意し、しゃがみ込み雪斗がまず息をしているか、手を口元に持っていき確認をする。ちゃんとスースーと息をしていて、お腹が動いているのを見て佐藤は安堵した。続いて身体の怪我を確認していると、「う、……っ」と雪斗が意識を戻す。

「雪斗!!分かる?!」

雪斗はスーッと目を開け、「僕、どうして?」と呟く。気付いたら倒れている状況に雪斗は情報が追い付いていない。それを佐藤が「業火の火で焼かれてたんだ」と答える。沖田も片膝を地面に着きしゃがみ、雪斗の状態を診た。診た感じでは今すぐ命に関わる感じではなさそうと判断。

「何で業火なんて危険な式札を持って来た?」

沖田は極めて冷静に冷たい声で雪斗に問いただす。今回助かったのは物凄く運が良かっただけで、普通なら業火に焼かれ何も残らない。

「え?僕、業火の式札なんて持ってきて、いません」

雪斗はそんな危ない式札は喜馬や咲間から渡されていなかった。だから、何で自分が業火の式札を持っていたのか分からない。

佐藤がスッと立ち上がり柴田の方に眉間に皺を寄せ怖い顔をしながら近寄る。そして、「お前だろ?」と佐藤は柴田の目を眉間に皺を寄せながらジッと見つめ聞く。見られて気まずくなったのか柴田は顔を青くさせ、目をキョロキョロと泳がしている。柴田はバレてしまったと焦った。

「あ!あの時だ!雪斗の足元に式札落として、拾わせた時でしょ!」

少し前に雪斗が式札を拾った時を宇佐も思い出し声を上げた。沖田はジッと聞いてたかと思うと、柴田をギロッと睨む。

「おい、お前。今、お前がしたことの大きさ分かっているか?」と沖田は近づきながら話す。

その間もザアザアと風は強く吹いていて、沖田の感情を表しているようだ。

「え、あ、……は、い」

沖田の気迫に圧倒されてブルブルと震え柴田はちゃんと声が出せないでいる。

沖田はそんな柴田の服の襟首を掴み、片手一本で柴田をヒョイと軽々持ち上げた。沖田は身長が195センチある為、155センチしかない柴田は地面に足が付かない。これから何をされるのか分からない柴田の目には恐怖で涙が。

「お前は殺人未遂者だ。いいか?俺達はな、夜喰に殺されるかもしれないと覚悟決めながら戦っている!でもな、誰も味方に殺される覚悟なんかしてないんだよ。で?お前は本当に分かっているのか?!」

怒りで沖田の声は段々と大きくなり、最後の方は怒鳴るように言った。

沖田は怒りながらブンッと柴田を放り投げる。ドサッと音を立て地面に柴田は落ちた。

「……あ、……い、や……そ、の」

雪斗は柴田を見て、今あそこにいるのは過去の自分のようだと思った。一歩間違えばあそこにいたのは柴田ではなく、自分だっただろうと雪斗は思う。自分は運あ良くて、優しい人達に巡り会えた。でも、柴田はそういう人に巡り会えなかったのかもしれないと雪斗は柴田を憐れむ。

風はどんどん強くなり、太い枝も少し揺れ葉がガサガサと大きく音を立てている。

雪斗は起き上がろうとしたら、浜屋が起き上がるのを手伝ってくれた。浜屋に「ありがとう」と小さくお礼を言う。

「ねえ、柴田君。君は悪意を持って僕を殺そうとしたんですか?」

「……い、……そ、の」

一瞬目を閉じ雪斗は「柴田君は過去の僕とそっくりです。ふう……加茂君にいじめられていた過去の僕のようだ」と息を深く吐き話す。加茂にいじめられていたことを大人数に話すのは緊張がした。ここにいる皆が雪斗の話を静かに聞いている。

「いつまでも加茂君に怯えていていいんですか?これは君の計画じゃないでしょ?」

柴田は何でこんな自分なんかを救おうとしてくれるのか理解不能だった。殺しかけたのに手を差し伸べてくれるなんてありえないと。

「おい、お前。何でこの殺人未遂者を助けようとする?」と沖田は割って雪斗に質問をする。それに雪斗は沖田の方を向き「柴田君も悪いです。でも……元凶は加茂君と相馬景虎です」とはっきりと言う。

沖田と試験官はまさか隊員見習いの口から、相馬景虎という名前がここで出るとは思わず驚く。

「柴田君は命令に従う道しかなかったんです。だから、沖田副組長一度だけ柴田君にもチャンスをあげてください」

雪斗はジッと隠し布越しの沖田の目を見つめ訴えかける。

「……またこいつは、お前が死ぬようなことをしでかすかもだぞ?それでもか?」

頭を下げ雪斗は「はい、それでもお願いします!」と真剣に言う。柴田はここまで自分に真剣に関わろうとしてくれた人は初めてだと思った。何でこんな自分なんかの為に頭を下げるのか柴田は分からない。

「はあ……被害に合った奴がここまで言うから今回だけはお咎め無しにしてやる」

沖田はやれやれといった顔をしながら、柴田にもう一度やり直すチャンスを上げることに。

「ありがとうございます!」

ニパッと笑う雪斗を見た沖田は面食らった。まさか雪斗がここまで喜ぶとは思わなかったから。

沖田は「で?お前は試験続けられるのか?」と雪斗の怪我を見ながら聞く。

「続けます」と雪斗は真剣な顔をして沖田に言った。雪斗は必ず咲間に試験に合格したことを報告しなくてはならない。そう約束を咲間と雪斗はしたから。

「そうか。おい、行くぞ」と沖田は試験管を連れてこの場を去る。



「柴田を許して本当に良かったのか?」

浜屋は雪斗が何を考えているのか分からなかった。普通自分を殺そうとした奴を許す奴はいない。

「自分のじゃない式札に気付かなかった僕も悪いので」

「なんで……僕を、責めないんだ?」

雪斗は立ち上がり「さっきも言ったでしょう?君の気持が分かるからだと。さ、まだまだ朝は来ないので夜喰の警戒しましょう!」と空気を変えるように言う。

「え?何で誰も雪斗の髪ツッコまないの?!」

「え?髪?」

「髪の色が白に変わってるの!」と宇佐は我慢ならず大声を上げて言った。それを佐藤に「うるさい」と言われ頭を叩かれる。

髪色が変わったと言われた雪斗は水溜りで確認をした。

「本当だ」

目の色だけでなく髪色まで変わった雪斗は自分の身に何が起こっているんだ?と不安になる。さっきまでの身体のだるさもなくなっているのは、髪色が変化したのに理由があるのだろうかと。

「夜喰が近づいて来てるぞ!」と浜屋の声により、雪斗は現実に引き戻される。

「私が殺す(やる)!」

「この風じゃ鞭は、」と佐藤が喋っている途中に宇佐は鞭を振る。鞭はやはり暴風のせいで夜喰には届かず、違う所に鞭がいってしまった。

「え、ちょ!何でー?!」

それを見た浜屋が「俺が殺す(やる)!」と拳銃でバンッと撃ち、夜喰は塵のようになってサーッと消えていく。

「どう考えてもこの暴風の中鞭はああなるのは誰でもわかるだろう!」

「う、……はい」

注意をされた宇佐はしょんぼりとした。でも宇佐はすぐに切り替え夜喰の警戒にあたる。

「渚もちゃんと夜喰の警戒しろよな」と浜屋は言った。やっぱり柴田は親戚ともあり浜屋は気を掛けてしまう。

「分かってる」

柴田は「ハト」と式神を顕現させて空から警戒をさせようと思ったが、ハトはこの暴風雨のせいで飛ぶのが困難のようだ。

「柴田君、鳩はあそこの木までなら飛べますか?」と五本先にある木を指差し雪斗は聞く。

「あそこ、なら。ギリギリ」

柴田はギクシャクしながら雪斗に返事をした。やはりさっきまでのことを考えると普通に接することはまだ出来ない。

「じゃあ、お願いします」

指示をされた柴田は五本先の木までハトに飛ぶように命令をした。ハトは苦戦しながらもバタバタと翼をはためかせ、フラフラしながらも五本先の木まで飛ぶことがなんとか成功。

「そこで、夜喰の警戒。……気になったのですが、あの式神の名前ハトなんですか?」

「え?そうだけど」

鳩の名前を聞いた柴田以外の者が鳩にハトって安直過ぎるだろうと心の中で思う。鳩にハトと付けて何か不思議だろうかと柴田は考えた。

「渚、式神の名前もっと他の名前なかったのか?」

「鳩にハトって付けて何が悪いんだ?」

ハトも内心はもっと違うなまえが良かっただろうなと浜屋はハトを可哀想にと思った。

雨や風はザアザアやゴオゴオと音が酷く視界不良だが、夜喰が出てくるのは落ち着き始める。

「日の出まで後一時間か」と佐藤は腕時計を見て呟く。

全員あと一時間気合い入れ直さないとと思った。



一方その頃加茂達は雪斗達からかなり離れた所にいた。

雪斗が爆発したのを確認したと同時に離れた所に移動したから。だから雪斗が薄いオレンジ色の光の膜に包まれていたことは沖田以外知らない。もう雪斗は死んで任務は成功だと加茂達喜んでいる。

「これで後は試験を生き残るだけね!」

「そうだな!」

急に加茂達の後ろから「お前らのやったことは知っているぞ」と言った。急に現れた沖田に加茂達は一斉に振り向く。

「沖田副組長?」

加茂がなんでここにと思い名前を呼ぶ。「加茂、佐々木、和田、お前らが試験官を買収したことも含めて全部知っている。考えて行動したほうがいい」と沖田は忠告だけして瞬時にこの場から消えた。

「ね、ねえ、淳也、」

「ちっ!柴田か浜屋が試験官にチクったのか?」

三人は黙り雨と風のゴウゴウという音と葉同士がガサガサと擦れ合う音だけが聴こえる。

「淳也、これからどうする?」と和田が加茂に聞いた。どうすることもできないのは分かっていたが少しでも安心したいが為に加茂に聞いたのだ。

「このまま試験を終える。証拠は何も残っていないから俺達は裁けないだろう」

加茂はこれまでより一番真剣に考えて答えた。雪斗も死んでいるはずだし、業火の式札も灰になって分からなくなっているはずだから大丈夫と。でも、そんなことはない。雪斗は生きていて業火の式札もちゃんと残っており、本部で業火の入手経路も簡単に調べられてしまうので加茂達はかなりまずい状況である。

実は沖田はここを去ったフリをしただけで、加茂達を監視していた。他の試験官を監視に当たらせようかととも考えたが、加茂に買収されるかもしれないと沖田自身が監視をすることに。

「こんな簡単な手に引っ掛かるとはあいつらも詰めが甘いな。……まさか相馬さんが絡んでいるとは」

沖田はここにいない相馬のことを考えた。今回の試験が例年と違うのには色々と理由がある。匿名の手紙で、試験会場に罠を張って他の隊員見習いを落とそうとしている者がいると書かれた物が沖田に届いた。

だから、沖田は正隊員試験の責任者として色々と考え会場を変えたのだ。変えたことを知っていたのは由羅だけである。どこから情報が洩れるか不明だったから。


加茂達が真剣に考えていると、夜喰が加茂達に近づいていた。

「駿と優奈は俺のサポートをしろ!」

加茂は長刀を抜刀し夜喰に向かっていく。周りに出てき始めた夜喰は和田と佐々木は手分けして倒した。

一時間も加茂達が葉や泥が付着しながらがむしゃらに戦っていると、夜喰達がどこかに消えていく。それを見た加茂が「やっと日の出か」と呟いた。

試験中大変なことは全て柴田に任せていた三人これがあと二日間も続くのかと絶望する。空中からの警戒する奴がいないと森の中では大変なのだ。

加茂達はご飯も食べる余裕も無く気絶するようにフラフラとテントの中に入り眠りに落ちる。


お昼になり加茂や雪斗達は森の惨状を見て驚いた。

枝や小さな木が倒れていて、地面が歩きにくくなっていたから。これでは夜の試験は困難になるのは

目に見えている。



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