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夜の帳を護りし者達  作者: 苺姫 木苺


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16/20

正隊員試験開始!!


試験当日の朝、任務終わりで疲れ切った顔をした宮木と喜馬が咲間の家に駆けつけていた。

宮木の目は赤く泣いたことが分かる。理由は咲間がもうすぐ昇天してしまうのを知ったから。

「うん!雪斗君、隊服すごく似合ってる」

「ああ、似合ってる」

咲間は雪斗の隊服姿を見て、とても成長したなと思っていた。何か声を掛けようかと咲間は思ったが「頑張って来い」としか出てこない。

「咲間さん、宮木さん、喜馬さん、僕頑張ってきます!必ず合格してきます!」

雪斗は玄関で靴を履き、三人をジッと見てニコリと今までに見せた笑顔より素敵に笑った。前髪も目が見えるくらい切られているから、三人は雪斗の笑った顔がしっかり見える。少し前まで笑うことをしなかった子が、こんな素敵な笑顔をいつの間にかするようになっているのを知り三人は感動した。

「雪斗……行ってらっしゃいと行ってきますの意味は知っているか?」

今この場で質問をされた雪斗は「え?知らないです」とポカンとなった。雪斗はなんでこんなことを今聞いてくるんだろうと思う。

「行ってらっしゃいは生きて無事に帰って来て、行ってきますは生きて無事に帰って来ますなんだ。だから、……行って来い!!」

その話を聞いた雪斗は心がジーンと暖かくなり感動した。「はい!!行ってきます!!」と三人に向け挨拶をする。

「「行ってらっしゃい!」」

宮木と喜馬は合わせて雪斗が無事に帰って来ることを口に出した。試験は生易しいものではないからこそ、ただ願う事しかできない。それが三人は歯がゆく感じた。

「はい!!」と雪斗は笑顔で玄関の扉を開き、元気よく外に出る。



雪斗が集合場所の本館前に行くと……そこには試験を受ける隊員見習い達がうじゃうじゃといた。

「わ、すご……」と雪斗は人数の多さに圧倒されてしまう。その人数は百人をゆうに軽く超えている。

「よし、時間になったな。全員黙れ」と試験官の参盤隊左組(さぐみ)の副組長、沖田昴が話し始める。

「俺は、試験官の沖田だ。若輩ながら左組(さぐみ)の副組長を勤めている。まあ、そんなことはどうでもいい。今から試験のルールを簡単に説明をするからよく聞け」

沖田は試験のルールを淡々と隊員見習い達に始めた。命に関わる怪我を負ったり、試験管が試験続行不可と判断したら試験終了。五日間班員と必ず一緒に行動することと沖田は説明をした。

「試験合格はただ生き残れ。以上」

隊員見習い達は推薦人から試験のルールと合格するには生き残るだけを聞いていたので、ほとんどの隊員見習い達は軽く聞き流した。

周りにいた試験管達が見習い隊員達にアルファベットの書かれた用紙を渡していく。

雪斗は渡された紙を見て「A」と呟やいた。すると隣にいた見習い隊員の女性が「あ!私も!じゃあ、同じ班だね!!」と雪斗に喋りかける。

「あ、はい」

雪斗は同じ班だと言う女性に圧倒されて、五日間大丈夫かなと不安に思った。

「ねえ、イケメン君!名前は?あ、私は宇佐美織!十八歳!」

「い、イケメン君??……会田雪斗、十六です」

雪斗は宇佐の勢いがすごすぎてびっくりとした。宇佐は雪斗より少しだけ背が小さいが、この矢継ぎ早い喋り方のせいか大きく感じる。それに声も周りの注目も集めてしまっていた。

そのおかげかA班となった見習い隊員達が集合。

「うさみと一緒の班とか最悪……」と佐藤太郎がブツブツと言いながら来た。佐藤と宇佐は幼馴染で推薦人が一緒である。

「え?!太郎も一緒なの?嬉しい!!」

「はあ……お前名前は?」

名前を聞かれた雪斗は「会田雪斗です」と答えた。雪斗の名前を聞いた佐藤が「会田雪斗?!」と大声を出して驚愕した。すると周りの見習い隊員達がコソコソと雪斗のことを話し始める。

「え?あの??」

「お前があの会田雪斗……俺は佐藤太郎だ。下の名前では呼ぶな」

にししと笑いながら宇佐が「太郎はね、お手本みたいなフルネームを嫌ってるの」と言った。太郎は宇佐を無視するように、近くにいた見習い隊員に「お前らもA班か?」と聞く。

近くにいたのは、相馬の分家の浜屋と柴田だ。二人は佐藤の問いに首を縦に頷いた。

浜屋と柴田は同じA班の雪斗達に自己紹介をする。柴田の自己紹介が終わると、加茂達も「俺達もAだ」とAと書かれた紙をヒラヒラとさせながら来た。

加茂の顔を見た雪斗は心臓がひゅっとした感覚になり、周りのざわざわとした音も入らないくらい自分の世界に入ってしまう。

その状況を見た加茂がニヤリと笑いながら「会田、よろしくな」と言った。

「何だ?二人は知り合いなのか?」

佐藤は加茂がやけに雪斗に対して親密そうに接するから不思議に思い聞いた。加茂の態度を傍から見ると仲の良い友人同士に見える。でも、雪斗と加茂の関係を知る人達からすると違う。

「まあ、な?」

雪斗は「う、うん」と頷くほかなかった。その後ろで佐々木と和田が柴田に何かを耳打ちをしていたが、それは加茂以外気づいていない。

実は雪斗が浜屋、柴田、加茂、佐々木、和田と同じ班になったのは偶然では無い。相馬が試験管の一人を脅し、自分の分家筋と一緒になるよう画策したのだ。

見習い隊員達達が自分の班ごとになったことを沖矢が確認すると、「全員着いてこい」と言った。



沖矢が見習い隊員達を連れて来たのは、試験会場に繋がる道だ。常闇ノ庭は日本の全てに繋がる道がある。その道を使い、八咫烏は日本を守っていた。

「この道を通ったら試験開始だ」

沖山の話が終わるや否や、自信満々な顔をした見習い隊員達が試験会場に繋がる道を通っていく。

「よし、俺達も行くぞ」と加茂が言い、雪斗達の先頭に立ち歩き始めた。一番後ろにいた雪斗はこれからは気を引き締めないと危険だと心を入れ替える。

真っ暗な道を歩き試験会場に向け、見習い隊員達は緊張した面持ちで道を突き進む。五分も掛からないで試験会場に到着した。到着した場所は樹齢千年以上の杉が多数ある鹿児島の屋久島である。ジメッとしていて苔の匂いもあり秘境感が満載だ。

「え?」

見習い隊員達が全員あっけにとらわれた。例年試験が行われる会場が今年は違うから、全員ここがどこだか分からない。推薦人から試験会場の地理と会場の写真を叩き込まれる。だから、この場にいる見習い隊員達は今年の試験会場が去年とは違うことに気づけたのだ。

それを見ていた沖矢が「いいのか?日の入り時刻まで僅かだが?」と言う。それを聞いた見習い隊員達は、ハッとし各々拠点と地理がどんなか調べるため動き出す。

加茂や佐々木、和田はコソコソと話し合って、「聞いていた話と違う」とテンパっていた。相馬からは今年も試験会場は同じだと言われ、前もって雪斗を落とす為の罠を試験会場に仕掛けていた。でも、それも全て無意味になった。

それを佐藤はしっかり見ていて不思議に思ったが、気にも留める必要ないかと判断する。

「よし!私達も拠点を作るのとここがどういう所か調べよ!」

「ああ、そうだな」と佐藤は宇佐の言葉に同意をした。浜屋が雪斗に近づきこそっと「後で二人で話したことがある」と言う。浜屋は相馬の弟子に選ばれたが、どうにも相馬のやり方は気に食わなかった。実力が無くて試験に落ちるのは当たり前だが、妨害をして落とさせるのは違うと浜屋は思っていた。だからこそ、雪斗に加茂達を気を付けろと言うつもりである。



A班の面々は他の班から距離を置き、屋久島を散策している。

「誰かここがどこか分かるか?」

加茂は自分がA班の班長のような態度をしていた。その加茂の態度にA班で一番の最年長の佐藤がムッとする。佐藤も別に班長になりたいわけではなかったが、どう見ても年下の初対面の奴にあんな態度を取られればああなるだろう。

「何でお前が仕切るんだ?」

「は?この中で俺が一番強いからだが?」

加茂と佐藤が一触即発の中「どう見ても二人には班長無理だね。だってさ、試験の最中に揉めるとかありえないでしょ」と宇佐が空気を読まずズバッと言う。加茂が班長になりたがった理由は、配属される隊で一目置かれる隊員になれるという安易な理由だ。

「まあ、確かにな」

浜屋は宇佐の言葉に同意した。ここで名乗り上げたいと浜屋は思ったが、自分は率いるのが得意では無いのを理解している。ざっと班員を見て、なんと「俺は会田を班長に進める」と衝撃なことを言ったのだ。それを聞いた雪斗は「え?!」と驚愕し、自分の耳がおかしくなったのかと疑う。

「え?私、こんな弱そうな奴が班長とか嫌なんだけど!」

「確かに。噂では見習い隊員になったばかりが班長?」

佐々木は全力で拒否し、和田はフッと鼻で笑い雪斗を馬鹿にし遠まわしに拒否。柴田はオロオロするばかりで何も意見を言わない。何か言うべきか迷い、言えない優柔不断なのが柴田だ。

「……俺は会田が班長なら賛成だ」と佐藤は答える。実は佐藤は雪斗に会ったことは無かったが、雪斗のことをよく知っていた。佐藤の兄が喜馬と仲が良く、その関係で佐藤は雪斗のことを知る。雪斗は並外れた才能の持ち主で、ここぞという時の決断力が凄いと。

「え?」


「私も雪斗がいいと思う。そこのなんか悪巧み考えてそうな三人や、ずっとびくついてる人や、大雑把そうな人よりもね!!」と凸凹とした森の中を歩きながら宇佐はにっこりと笑い言った。佐藤だけでなく、宇佐も加茂達がなんか変だと感じている。だから、何としても加茂達の三人だけは班長にしてはいけないと感じていた。

森の中にザアと強い風が吹き、木々がざわざわと葉同士がぶつかり合う。一瞬の沈黙の後、加茂が「会田がね……まあ、いいぜ」と雪斗が班長なのを賛成した。それを聞いた佐々木と和田がびっくりし、二人が加茂の顔をジッと見る。だが加茂の口元がニヤリと笑っているのを見た二人は、加茂が何か考えているのにすぐに気付く。

「淳也が賛成なら俺も賛成だ」

「じゃ、私もー」

宇佐がオドオドとして何も意見を言わない柴田に「オドオド君は?」と聞いた。柴田は自分が聞かれると「あ、はい」と返事にもなっていない返事をする。それを宇佐は雪斗が班長でいいと捉えて、雪斗の肩に手をポンと置きニコリと笑い「決定!」と言った。

「はい?」

雪斗はまさか勝手に自分が班長にされるとは思わずテンパる。班長になりたいとも言っていないし、了承もしていないのに班長にされるとは思わなかった。

「で?班長さん、俺達何すればいいだ?」と加茂はニヤニヤしながら聞く。

「え、えと……」

佐々木は「早くしてよ!」と雪斗がテンパるように急かす。加茂は昔の雪斗のまま変わっていないと思っているので、その場限りのめちゃくちゃな指示をすると思っている。その指示で誰かが怪我をすれば、雪斗が故意に傷を付けたと試験官に報告すれば落ちると加茂は考えた。でも、雪斗は昔とは違いちゃんと周りを見れるようになっている。

「え、えと……二組になって、拠点を決める、のと周辺を、探るのを別けま、しょう」と加茂の恐怖と戦いながら雪斗は班員に指示を出す。自分が班長になることには納得はしていなかったが、日の入りまでそんなに時間もそんなに残されていないから仕方なく班長になることに。

「じゃあ、俺、佐々木、和田、柴田で周辺を見てくる。日の入りまでに戻って来るわー」

加茂は勝手にチームを決め、止める好きも無く雪斗達から離れていく。


時間もあまりないので、雪斗、宇佐、佐藤、浜屋達も拠点を決めるため周辺を散策。

加茂達が離れ少し経って、「話がある」と浜屋が話を切り出す。

「どうしたんですか?」

雪斗はやっぱり自分が班長なのは嫌だったのかなと不安に思った。

「会田……お前は加茂達に狙われているから気を付けろ。あいつらの目的は、お前を試験に合格させないことなんだ」

浜屋の言葉を聞き、雪斗はやっぱりと思った。加茂達の顔を見れば、なんとなく分かる。

「なんでそれをお前は知っている?」

「俺も相馬様から同じ命令をされた。でも、俺はそんなズルいことは嫌いだからお前らに伝えた」

命令を受けたのを浜屋は雪斗だけでなく、宇佐と佐藤にも伝えるべきだと判断した。同じ班でもあるから宇佐と佐藤にも迷惑を掛けるかもしれないからと。

「浜屋君はそれで、いいの?……命令を受けなくてさ」

「まあ、怒られるだろうな。でも、俺はそんなズルいことはしたくねぇ」

一連の話を聞いた宇佐は「やっぱりねー」と呟く。

話ながら周辺を見ていたら、急に空模様が悪くなってきた。それを雪斗達は瞬時に察知。

「これは大雨がきそうですね」

「ああ。それに日の入り時間も早まるぞこれは」

急ぎ雨にも濡れない所を探し、巨大な木が絡まっている所を見つけた。ここならテントも張れると雪斗は判断し、五日間の拠点が決定。

テントも張り終え、加茂達を待った。


日の入りもしたというのに加茂達は戻ってこない……。もう、夜喰の出始める時間だというのに。






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