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夜の帳を護りし者達  作者: 苺姫 木苺


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13/20

危機到来



「雪斗、お疲れ」

「はあ、はあ……はい」と雪斗は膝に両手を置いて、息を乱しながら返事をした。

そんな雪斗と違い、双子はケロっとしながらケラケラと笑っている。

「ちゃんと作戦が練られていたけど、スポーツか何かしてたの?」と喜馬が不思議に思い聞く。

「あ、いえ。戦闘系のゲームをやりこんでいた……だけです」

ただのゲームをやりこんでいただけなので雪斗は恥ずかしく思う。高校にも行かず、ただゲームをしていたから。

「なるほど。そのゲームは誰かと連携をしての戦闘は?」

「えと、僕誰かと一緒にゲームをやるのは苦手なので……」

喜馬は雪斗の言葉を聞き、「隊長、会田君はそこそこ戦えるので連携の訓練を優先させたほうがいいと思います」と進言をする。咲間も喜馬と同じ考えだったのか、「そうだな」と言い頷いた。

「はいはーい!連携の事なら、ちなちゃんとちひくんで教えるです!!」

千夏は右手をピーンと伸ばしながら千尋の腕に左腕を絡ませる。双子は阿吽の呼吸で壱盤隊の中で群を抜いて連携が上手い。

千夏が教えたいというのを聞き、「え、……」と雪斗は思わず声が出てしまった。ついさっき知り合ったばかりだが雪斗は双子、特に千夏のことが苦手だ。千尋は千夏より少し大人っぽさがあり、暴走する千夏をよく止める。それを感じ取った雪斗はまだ千尋は平気というわけだ。だが、子どもが苦手なのが変わるわけではない。

「あのなー、連携するのが上手いからといって教えるのが上手いとは限らないから却下だ」

双子はほっぺたをぷっくりと膨らませ「隊長何でですー!!」と地面をダンダンとし抗議をした。今まで双子は誰かに教えたことが無いので、咲間は双子の要求は却下をした。

「却下は却下!さて、宮木と連携の練習だ」

「何でみゃーきなのです!」

千夏は宮木が選ばれたのが気に入らなくてむくれている。

「宮木は誰であろうと連携が上手いからだ。千尋、千夏は先に壱盤館に戻ってろ」

双子は手をつないで渋々暗転結界から出ていった。


「さて、この紐を雪斗は右手首に宮木は左手首に結べ」と咲間は一本の紐を二人に渡した。受け取った宮木は「雪斗君は利き腕のほうだから私が結んであげるね」と、ササッと雪斗の右手首に結ぶ。宮木も自身に結ぶと雪斗とつながれた。

「離れられる距離は50センチだからそれを意識して、俺と喜馬を捕まえろ」

「え?!隊長さすがにそれは厳しいですよ!」

宮木は自身でも出来るかわからないことを言われ反対をした。咲間は八咫烏の中で一番強く、喜馬も強い。それを理解しているからこそ宮木は絶対無理だということを分かっていた。

「手加減はちゃんとする。後はお前次第だ」と咲間はニヤリと笑い宮木に言う。その咲間の笑いを見た宮木はげんなりとした。

「はあ……分かりました。やりますよ。やってやりますよ!!」

喜馬は「隊長と僕は霊力しようのみですか?」と咲間に聞く。質問された咲間は一瞬考え、「そうだ」と返事をした。

「俺達はさきに行っているから好きなタイミングで来い」

咲間と喜馬は音も立てず一瞬でこの場を後にした。地面には沢山の落ち葉が落ちているのに一枚も舞い上がらなかった。

「じゃあ、作戦会議をしよう」

「はい」とキリッと雪斗は返事をした。だが、宮木は「ま、作戦と言っても私が雪斗君の動きに合わせるから自由にしていいよ」とあっけらかんと言う。

作戦をじっくり練りこむとばかり思っていたから、宮木のまさかの発言に雪斗はポカンとなる。

「自由に、ですか??」

「そ。私もまだ雪斗君の戦闘スタイルがどんなか掴めていないし、初心者に合わせるのがベストだから」

「分かりました」

宮木は結ばれている紐を持って「この紐は余り気にしなくていいよ。雪斗君は周り、特に地面と木を気にして」と軽くアドバイスをした。

「え、でも」

「隊長と風虎さんを捕まえに行くよ」と雪斗の手を引っ張る。戸惑いながら雪斗は宮木の背中をジッと見た。さっきまでは頼もしい感じが無かったのに宮木が急に頼もしいと感じ、雪斗はやはり宮木も八咫烏なのだと再認識する。


雪斗は周りをキョロキョロしながら前に走る。その様子を見て宮木は雪斗がどっちに進むのか視線で判断し横をピッタリと並走する。雪斗は自身がどっちに曲がるか言ってもいないのに宮木はどうしてわかるのか不思議に思う。

「どうして曲がる方向が分かるか不思議?」と宮木は言う。心を見透かされた雪斗はびっくりしながら「はい」と答えた。

「ふふ、雪斗君の視線の方向で進行方向は分かるよ。だから、例えば右に視線を移して左に曲がったりすれば相手も騙せるよ」

「なるほど」

「後、腰かな。腰は必ず進行方向に向くからわかりやすいんだ」と宮木は並走をしながら雪斗に教える。

「そうなんですね」

雪斗が右に曲がると宮木が「雪斗君!ストップ!!」と走る雪斗を静止を掛ける。でも、静止間に合わず雪斗はズボッと落とし穴に落ちた。目の前が急に土の壁になった雪斗は自身が落とし穴に落ちたことには分かっていなくポカンとなる。

「え?」

「あっははは!雪斗、見事に落ちたな」と気配を消していた咲間が木の上に座りながら大声で笑う。

「隊長!手加減してくれるんじゃなかったんですか?!」

宮木は上半身に霊力を纏わし雪斗の腕をグッと引っ張り落し穴から引き上げた。引き上げられた雪斗は所々土が付いて汚れている。

「手加減しているから落とし穴だけだっつの」

雪斗は「初めて落とし穴に落ちました」と呆然としながらぽつりと、咲間に聞こえるか聞こえないか位の声量で呟いた。自身が一瞬で落とし穴に落ちた感覚は無く、気付いたら目の前が土になっていたから戸惑いしか雪斗は感じなかった。

「初心者に落とし穴って……隊長やりすぎですよ」

「いや、お前がしっかりサポートすればいい話だが?」

宮木は内心咲間を思い切り殴りたいと思ったが、咲間は上官なので殴れば始末書ものなのでそんなことは出来ない。始末書で済めば殴ってもいいかなと考えたが、減給になる可能性と兄に報告をされるから宮木は我慢した。

宮木は「……雪斗君、ちょっとごめんね」と言って雪斗をお姫様抱っこする。

「え?!」

突然宮木にお姫様抱っこをされた雪斗は女性にお姫様抱っこをされた恥ずかしさで顔が真っ赤になった。内心女性に抱っこをされたのと、顔の良い宮木に密着しているから何も考えられず雪斗はテンパっている。

雪斗がテンパっているのを気付かず宮木は足に霊力を纏い、グッと足に力を入れ踏み込み咲間のいるところまで大きくジャンプをした。それに気づいていた咲間はふっと笑い、別の木にジャンプし乗り移る。木の葉が数枚ヒラヒラと地面に落ちる。

「これ雪斗の訓練だがお前が主体でどーすんだ?」

「隊長が私を煽るからですよ!!いつもいつも人を馬鹿にしてー!」

こうして雪斗をお姫様抱っこをした宮木と咲間の追いかけっこが始まった。

状況を余り理解出来ていない雪斗は考えるだけ無駄かもしれないと、考えることを放棄し遠い目になる。

中々自分の所に来ないと不思議に思った喜馬が謎過ぎる追いかけっこを見て、「あの人たち何しているんだ?」と呟いた。


雪斗をお姫様抱っこをしたままの追いかけっこは三十分と続き、喜馬が「あのー、任務の時間になりますよー」と声を掛けたことにより終了。

やっとお姫様抱っこから解放されると雪斗は地面に足が着く感覚に感激した。何度「降ろしてください」と言っても宮木は頭に血が上っているせいで聞いていなかった。

ぐったりしていた雪斗にポンと肩に手を置き「お疲れ様」と色々な意味の労いの言葉を喜馬は掛ける。

「あ、はい」

ヘトヘトになった雪斗は原因の宮木を見て小さくため息をする。ずっとジェットコースターを乗っている気分になっていた雪斗は、もう二度と宮木にお姫様抱っこされたくないと思った。

「宮木、雪斗を送り届けるのよろしく」

「はい」

時間的に咲間と喜馬は急ぎ夜ご飯を食べ任務の準備をしないといけない。だから、雪斗を宮木に頼んだのだ。雪斗もそんな幼いことはないから付き添いは本来ならば要らない。でも、襲われかけた前科があるから雪斗一人にするわけにもいかないのだ。雪斗も咲間の考えを分かっているから、宮木の付き添いを断らない。

「じゃあ、頼んだ」

「会田君、ゆっくり休んでね」

喜馬は暗転結界を解き、咲間と共に急ぎ足でこの場を去る。



宮木は雪斗を送るとすぐに自分の家に戻って行った。

咲間の家に一人になった雪斗はリビングでのんびりとしている。疲れすぎていてご飯を作る気になれずゴロゴロとしていた。すると「ピンポーン」とインターホンが鳴る。

雪斗は起き上がり「はい」とインターホンに出ると、加茂に和田、佐々木が映っていた。

「おい、出て来いよ」と加茂がインターホン越しに凄む。加茂の声を聞いた雪斗は身体が強張った。声を出したくても雪斗は恐怖で声を出せない。訓練をし自信がついても加茂には逆らえないと雪斗は思い込んでしまっている。

「あ、……」

「早くしろよ。家の中にいれば安全だとでも思ってんのか?」

玄関の鍵が開いてるのを気付いた雪斗は急ぎ閉めに行ったがそれは間に合わなかった。加茂達は雪斗が出て来ないのにしびれを切らし、他人の家の玄関を勝手に開け中にズカズカと入って来る。

ドアが目の前で開き加茂達が見えた雪斗は顔から血の気がサーと引いていく。またあの地獄の時間が始まると思った。そんなことはなく加茂達は一枚の式札を「これ持ってろ」を言い、三人は咲間の家からニマニマと嫌な笑いを浮かべながら出ていく。

「え?」

状況に着いていけてない雪斗は戸惑う。渡された式札を触ると違和感を雪斗は感じたが、気にするほどではないと判断をした。



その頃任務に出ていた咲間は「今日も夜喰は大量だな」と目の前の夜喰の多さにへきえきとしていた。朝と違い夜はザアザアと雨が降り視界が悪い。

喜馬から「咲間隊長、阿組(あぐみ)伊組(いぐみ)配置に着きました」と咲間の無線に入る。

「掃討せよ」

咲間は四階建てのマンションの屋上から阿組(あぐみ)伊組(いぐみ)に指示を出した。

阿組(あぐみ)伊組(いぐみ)は夜喰を囲うように配置されている。普段は格組散らばり掃討するのだが、今日は普段より夜喰が固まっているためこの作戦というわけだ。

「視界も悪い中固まりやがって」

咲間はキョロキョロと夜喰がいないか見ていると驚きの光景を目にする。

そこにはこの場にいるはずのない雪斗がずぶ濡れの状態で地面に座っているのだ。「は??」と咲間は状況を理解出来ていない。

雪斗の存在に気付いたのは咲間だけでなく、最悪のことに夜喰も気づいてしまった。ハッとし咲間は急ぎ雪斗の所に向かう。

「雪斗ー!!逃げろ!」

咲間の声は無惨にもザアザアと振る雨の音でかき消され、雪斗には咲間の必死な声は届いていなかった。雪斗があの時の弟に重なり咲間は無我夢中で走る。

何で外にいるのか雪斗も理解していない。座っていてもしょうがないので立ち上がると、雪斗はゾワッと嫌な予感がし後ろを振り向く。目の前には……。





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