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夜の帳を護りし者達  作者: 苺姫 木苺


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八咫烏との出会い(改稿1月28日)




太陽が寝静まった静かな夜の街が深く黒い霧に覆われていた。

「壱盤隊、到着」

無線越しの声が暗闇に響き、黒い羽根を散らしたように人影が屋根を跳ねた。

彼らは“八咫烏”。

夜喰という化け物を討ち、闇を護りし者達。

夜喰を倒せるのは特別の力を持った八咫烏だけ。


普段なら決して人の目に触れないはずの存在。

だがその夜だけは、街全体がどこか息を潜めているような、不自然な静けさがあった。

窓の隙間から流れ込む闇は、まるで意思を持った生き物のように地面を這い、冷たい指先で世界を撫でていく。

遠くでカラスが一声だけ鳴いたが、それすらもすぐに黒い霧に呑み込まれて消えた。


影のような隊員たちは、屋根の上で一瞬だけ夜喰の気配を探る。

その眼の奥には、夜の闇を見慣れた者にしかない緊張と静かな覚悟が宿っていた。

誰もが淡々と動き、誰もが何かを待っていた。

まるでこの夜、何かが“始まる”ことを予感していたかのように。


だが僕はまだ人知れず夜を護る人達を知らなかった。

八咫烏と出会わなければ、僕が...…だったという真実を知らずに済んだのに。



「雪斗!話聞いているの?!」

リビングで甲高い声で母さんがご飯中に僕を叱ってくるのを横目に、僕はテレビから流れてくるニュースを見る。リビングはハンバーグのソースとみそ汁の良い匂いが充満していた。母さんがいつものように僕にうざったらしく怒ってくる。怒っている母さんを無視するようにテレビを見ると、ニュースは総理直属組織の八咫烏のことを報じられていた。

「母さん、八咫烏ってどんな組織か知ってる?」

「……知らないわ。早くご飯食べちゃいなさい!!」

母さんが何かを飲み込むように言ってくる。

母さんは変な無言の後に、八咫烏というのを聞いてから挙動がおかしくなった。母さんは八咫烏のことを何か知っているのでは?と思ってしまう。まあ、専業主婦の普通の母さんが八咫烏を知っているわけがないか。

「ふーん。父さんは知っている?」

父さんは総理の部下なのに「知らない」とぶっきらぼうに言った。教えられないじゃなくて知らないなんて何でそんな嘘をつくんだ?何だか母さんも父さんも様子がいつもと違い変な感じだ。僕に何かを隠しているのだろうか?でも、それなら何で隠すんだ……。

「雪斗、いつ学校行くんだ?」と父さんが八咫烏の話題を断ち切るように聞いてきた。

僕は箸をギュッと握り締め下を向き、父さんの質問を無視した。学校のことなんて考えたくもない。



僕は高校入学と同時にクラスメイトとなった人達からいじめの標的となった。何で僕がいじめの標的になったのかは分からない。

目を瞑ると僕のことをいじめて、「ギャハハ!」、「アハハ!」と笑っていた声が聞こえてくるような幻聴がする。あいつらのことを思い出すだけで、僕の身体がブルブルと勝手に震えてしまう。

事情を知らない両親は、僕がただだらけていると思っているみたいだ。本当は他の人達と同じように学校に通いたい。でも、外に出るとあいつらと出会うのではないかと思うと足が震え動けなくなる。

「雪斗、母さんも父さんも貴方が心配なのよ?まだ、一年生の始めから不登校なんて、」

「うるさい!!僕のことは放っておいてよ!」

僕はガタッと乱暴に立ち上がった拍子に、黒の前髪が目にかかる。

髪が伸びすぎているせいで、母さんにはいつも“陰気くさい”って言われるんだ。

僕は母さんと父さんがうざったくなり逃げるように玄関に向かって走りだすと「雪斗!!外は駄目!!」、「止まれ!!」と母さんと父さんが手を伸ばし引き止めてくる。

それでも両親を無視して、僕は新月で暗闇の外に出た。夜で誰も人がいないせいか、足が震えたりはしない。

「久しぶりに外出たな」

外はセミが「ミーン!ミンミン!」と鳴いていて夜でも騒がしく感じる。夏もあり汗が次から次にタラッと垂れてくる。

道端にあった石ころを蹴りながら僕は「夜喰なんかいないじゃん」と呟く。

学校とテレビで夜は夜喰という化け物が出るから、夜間の外出は禁止にされている。夜喰に襲われると死ぬらしい。本当に夜喰とかいう化け物が存在しているのか僕は疑問に思った。



家に帰らないであてもなくふらふらと街灯に照らされている道を石を蹴りながら歩いていると、急にセミの鳴き声が聴こえなくなりシンとなった。この場の気温も少しだけ下がったように感じる。

一人になるとあの時のことを思い出す……。いじめに合っているのに助けてくれない教師。大人は外側しか見ないで、内側なんて知ったこっちゃないと思っているんだろう。

僕はこの広い世界で、僕なんかを誰も守ってくれる人なんかいないんだと思った。

「ん?」

僕は急にセミの鳴き声がなくなり静かになったから変に思い周りをキョロキョロと見回すと、見たこともない黒い霧のような生き物……いや、化け物がいた。きっと、あれが夜喰というやつなのかもしれない。

逃げなきゃいけないのに、あの赤い両目と目が合ってから足が何故か動かない。赤い目は血の色のようにどす黒い色をしている。

「な、何で足が動かないんだよ!!動けよ!」

夜喰は「ウゴオォォ」と変な鳴き声と共に僕に近づいてくる。気のせいかこの場の気温が急激に下がったように感じ、僕の体がガタガタと震える。いや、恐怖から来る震えかもしれない。

「はっはっ……だ、だれか……と、うさん……かあ、さん」

無情にも僕の助けは誰にも届かず、夜喰は僕に腕のようなものを伸ばし僕の首をギュッと握り締めてくる。首を絞められ持ち上げられているせいで、首に僕の全体重が掛かる。

「はっ……し、……に……たくっ……な」

何とかしようと足をバタつかせたり、腕を掴もうとするがスルッとすり抜けてしまう。

脳に酸素がいかなくてどんどん苦しくなり意識が薄れていく……僕はここで死ぬのか?父さんと母さんと喧嘩をして家を飛び出してきたから二人共心配しているはず。死にたくない!こんなところで一人寂しく死ぬのなんて……嫌だ。なのに、こんな最後なんて……。僕は恐怖で目からポロポロと涙が出てくる。

「だ、れ……か」

もう駄目かと諦めた瞬間、キラッと輝いた漆黒の刀がズバッと夜喰を横に切り裂いた。

夜喰が倒され、夜喰の手から解放された僕はドサっと地面に落ちた。周りにいた夜喰もズバズバと斬られ消えていく。不審者のような恰好をしているのに、化け物を倒しながら剣舞をしているように見え綺麗で力強くかっこよく見えた。

「ゲホッゲホッ!!」

戦いに見とれていたら、「少年!大丈夫か?!」と頭上から男の人が聞こえた。

僕は何が起こっているのか答えを求めるように再び上を向くと、漆黒の刀を右手で持ち黒い袴に黒い帽子、黒い布で顔を覆っているいかにも不審者が僕を心配している。そこまで街灯が明るいわけではないのに、僕を助けてくれた人に後光が見えた気がした。

「ゲホッゲホッ!!は、い」

「……本当に大丈夫なのか?」と顔が変な布で隠されていて分からないが、助けてくれた人はしゃがみ込みながら何か考え聞いてくる。その声はとても柔らかく、目の前のこの人が見ず知らずの僕を心配してくれているのが分かった。

「ゲホッ!あ、はい」

首をさすりながら返事をすると、僕を助けてくれた人は急に無言になった。

顔が見えないからこの人がなにを考えているか分からなくて不安になってくると、「確認することがある」と急に僕が着ているシャツを捲ってきた。だが僕はすぐにバシッ!と手を払いのけた。背中だけは誰にも見られたくない……。

「あ、あの!「あー!!咲間隊長が少年を襲ってるー!!」」

僕が声を掛けようとしたら、助けてくれた人と同じ格好の女性の大きな声が静寂を割った。

「アホ言うな!襲ってねぇよ!!夜喰に襲われていたから、炭化の確認をしようとしただけだわ!」

「あ、そうなんですねー」と女性は棒読みで僕を助けてくれた人に返事をした。

「ねえ、君。夜喰に触られたよな?」

「あ、はい」

先ほどのことを思い出してしまい、心臓がドクドクと早く鼓動するのを感じる。僕を助けてくれた人は僕の異変に気付いてか何か呟き頭を撫でてくれた。そのおかげか恐怖心が無くなり、不思議と僕は落ち着いた。いつもなら触られると身構えてしまうのに。

「嫌な事思い出させてごめんな。でも、君の為に聞かなければならないことがあってな」

「……はい」

「体が熱くなっていたりしないか?どこも痛くないか?」と僕を助けてくれた人が矢継ぎ早に聞いてくる。何でそんなことを聞いてくるのだろうか?どこも怪我なんかしていないのに。こんなにも心配をされたのはいつぶりだろう……。

「熱くもなっていないし、痛くもないです」と、質問の意図が分からず僕は首を傾げながら答えた。

「本当に言っているのか?!」

僕を助けてくれた人は大声を出し驚いたかと思ったら、急に立ち上がり女性と僕から少し離れた所で話し始める。これから僕はどうなるのだろう……牢屋に捕まったりするのかな……。

声が大きくないから何を話しているか分からないが、二人の顔がチラチラと向くのできっと僕のことを話しているんだろう。夜間外出禁止なのに外に出ていたからそのことを話しているのか?

静寂のせいかどんどんいやな思考回路になってしまう。



二人は話終えたのかこちらに近づいてきた。

「君、名前は?」と僕を助けてくれた人が優しく聞いてきた。

「会田雪斗、です」

「雪斗君、俺は八咫烏の咲間未来(さくまみらい)な。これから八咫烏の本部に来てもらう」

僕は「八咫烏?!」と驚いて目を大きく開いた。まさか八咫烏と出会い、会話をするなんて思いもしないから驚くのも仕方ないだろう。

「じゃ、行くか」と僕を助けてくれた人は僕の腕を軽く引っ張り歩く。僕はこれからどうなるか分からない恐怖で無言になる。警察に捕まったりするのかな……。

「雪斗君、夜喰が出るから夜間外出禁止なの知っているだろ?何で破ったんだ?」

そう一部の地域を除いて夜間外出禁止なのを知っていて、僕はそれを破ってしまった。

「……親、と喧嘩をして……」

「なるほどー。それで家を飛び出しちゃったのか」

僕を助けてくれた人は行き止まりで足を止め「解」と唱えた。すると急に行き止まりだった壁がスッと左右に無くなり前に道が出来た。僕を助けてくれた人はその道に歩き出す。僕は腕を掴まれているから強制的に歩かされる。僕の後ろにはさっきの女性がついてきている。後ろに人がいるせいで逃げることも出来ない。


真っ暗でじめッとした道を歩いていると、突如赤い鳥居がスッと現れた。

鳥居を潜ると、江戸時代のような街並みが僕の目の前にザアッと拡がる。

僕は「……異世界、みたいだ」とボソリと呟くと、僕を助けてくれた人は聞こえていたのか「あながち間違っていないな」と返してきた。

街にはこの二人のような恰好をしている人達が歩いている。ライオンや馬といった普通なら街の中にいない動物達もいて賑やかだ。

「さて!あの一番大きい建物に行くぞ」

人差し指で指された方には、他の建物と違い漆黒で巨大な建物が見える。

僕は腕を引かれどんどんあの建物に近づく。

「……これからどうなるんだろう」

建物が近づくにつれどんどん心臓が圧迫されるように感じる。でも、それよりも目が少しチリッとし違和感を覚えた。多分さっき泣いたせいで目が腫れているせいだと僕は思った。

「その目……」

「え?何ですか?」と咲間さんの声が聞き取れず僕は聞き返した。

「いや、何でもない」

漆黒の建物の前に着くと、何かよく分からない存在がいると感じる。でも、それが何か分からない……。

夜喰のような存在ではなくて、もっと他の……不思議な心が落ち着くような存在を感じた。どこか……懐かしさも。

きっと僕は八咫烏と出会い、ここに導かれる運命だったのかもしれない……。




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