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魔王に一目惚れされたので、ついでに世界征服を目指します!!<運命の選択編>  作者: ここば


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術者を求めて、地下への道

冷たい石の階段を降りていくと、湿った空気が肌にまとわりつく。

最下層は薄暗く、壁の苔がわずかな光を吸い込んでいた。囚われから解き放たれた魔族たちは、息を潜めながら一つひとつの部屋を開けていく。しかし、いくら探しても、印らしきものは見当たらなかった。


「……どこにもないな。」

低い声が響き、重苦しい沈黙が広がる。


やがて、一人の魔族が振り返った。

「まだ奥が残っている。……先祖を祀る間だ。」


その言葉に周囲の空気が張りつめる。祀堂は、外の者どころか同族ですら滅多に立ち入らない神聖な場所だったからだ。


重い扉を押し開けると、冷気が頬をかすめた。

石造りの大広間には古びた祭壇があり、黒い布で覆われた像が並んでいる。香の匂いがほのかに残っており、ここだけ時が止まったような静けさが漂っていた。


「……っ!」

誰かが息を呑む。


祭壇の前に、一人の人影が立っていた。

フードを深くかぶり、全身を長いローブで覆っている。顔は影に沈み、表情は一切窺えない。


「誰だ……?」

魔族の一人が低く唸り声をあげると、その影はゆっくりと振り返った。


光の乏しい最下層で、その瞳だけが異様にぎらりと光った。


「お前たちこそ誰だ。」


低く湿った声が、祀堂に不気味な余韻を残した。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~


塔の外、広場の片隅で、レナトスは仲間たちと密かに集まっていた。

蓮とソラが塔の中で印の位置を探っている間、外では術者を見つける作戦が急務だった。


「……誰か、この辺に人間の術者について知ってる者はいないか、何か情報は?」

レナトスは低く問いかける。広場の魔族たちが口々に首を振った。


「……誰も知らぬ、か。」

ヴァルクが肩をすくめる。

レナトスは奥歯を噛み締めた。時間だけが過ぎていく。魔族避けを破らねば仲間を救えないのに、肝心の術者の手掛かりが一つも得られない。


そのとき、広場の外れから兵の声がした。

「交代の時間だ! 持ち場につけ!」


見張りの兵士たちが整列を始め、広場から人が引いていく。レナトスたちも目立たぬよう陰に退いた。そのときだった。


「……あれは。」


セリカが低く息を呑んだ。彼女の視線の先、隊を率いている男がいた。

濃い紺の軍服を纏い、堂々とした足取りで兵を指揮する上官――レナトスにも見覚えがある。


 ――蓮に塔行きを命じた張本人。


あの時、冷酷に言い放った姿を、彼は忘れていなかった。

「なるほど……」レナトスの目が鋭く細められる。

「あの男なら、術者の情報を知っている可能性があるな。」


「地位が高そうだし、本部にも出入りしてるはずだ。」

ヴァルクが頷く。


セリカは唇に微笑を浮かべる。

「じゃあ、私に任せて。ああいう男は女の誘いに弱いのよ。」

彼女は足音を殺しながら、上官の背へと歩み寄っていく。


「――失礼、少しよろしいかしら?」

甘やかな声が背後から響いた。上官は眉をひそめ、振り返る。そこには艶やかに微笑むセリカの姿。


「なんだ、女。こんな所で何を――」

言いかけた瞬間、ヴァルクの大きな腕が背後から回り込んだ。


がっしりとした腕が上官の喉を押さえ、抵抗する暇もなく口を塞ぐ。

「悪いな。少しお喋りしてもらうぜ。」


レナトスは短剣を抜き、男の首筋に突きつけた。

「声を出せば命はない。……お前に聞きたいことがある。」

上官は苦しげに目を見開いたが、ヴァルクの力に抗えず、やがて観念したように肩を落とした。

人気のない裏路地に引きずり込み、縄で縛りつける。


セリカはその前にしゃがみ込み、氷のような笑みを浮かべた。

「ねえ、教えてちょうだい。魔族避けの術者は、どこにいるの?」


「……ふざけるな……貴様ら、魔族の手先か……!」

吐き捨てるように答える上官の頬を、ヴァルクが軽く拳で殴った。

乾いた音が響き、男の口端から血がにじむ。

「俺たちは急いでるんだ。死にたくなけりゃ素直に吐け。」


レナトスはじっと上官の目を覗き込む。

「お前は本部に出入りしているだろう。術者の居場所を知っているはずだ。言え。」


男の瞳がわずかに揺れる。だが意地を張るように、口を閉ざした。

セリカがため息をつき、耳元に顔を近づける。

「答えないと……もう少し痛い目を見るわよ?」


彼女の指先が男の傷口に触れる。男は呻き声をあげ、とうとう口を割った。

「……術者は……本部の地下に……匿われている……! 誰も近づけないよう、厳重に守られているんだ……!」

「地下、ね。」

レナトスはうなずいた。

「十分だ。」


上官を縄でさらに強く縛り、物陰へと隠す。その姿を確認し、レナトスは深く息を吐いた。

「ここからが本番だ。――俺がこいつに化ける。」

レナトスの身体を淡い光が包む。姿が揺らぎ、次の瞬間には、捕らえた上官の顔立ちと軍服を纏った姿がそこにあった。


「おお……本当にそっくりだな。」

ヴァルクが感嘆の声を漏らす。


「声も仕草も完璧に真似てみせる。あとはお前たちの動きにかかっている。」


彼らは四人で歩調を合わせ、本部の建物へと向かう。

重厚な門に兵士が立っていたが、上官に化けたレナトスの姿を見て直ちに敬礼し、道を開けた。


建物の中は冷たい石壁に囲まれ、幾つもの松明が静かに灯っている。

兵士の気配が多く、監視も厳しい。

しかし、上官の顔をしたレナトスが堂々と歩けば、誰一人として怪しまない。


「ここからは二手に分かれる。」

レナトスは低く告げる。

「俺とセリカは地下の資料庫を探る。ヴァルク、お前とガロンは念のため別の階を洗って情報収集を。」


「了解だ。何かあれば合図を送れ。」

二組に分かれ、各々暗い回廊を進んでいった。


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