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密室の先の杖
映像ではラボのような場所が映されていた。なるほどドラマ仕立てなんだな、と私は合点する。
まもなく、白衣を着た男が扉から現れた。顔は皺だらけで頭は白髪。背はあまり高くない。
男は不敵な笑顔を浮かべ、テーブルに両手をついた。そのテーブルにはキテレツな形をした機械が乗っていた。
「ようやく完成した……夢にまで見た機械……。これを使えばどんな温度も変幻自在……そうだ……これを『変温自在』と名付けよう」
どんなネーミングセンスしてんだ。
とそこで、女性の声と思しきナレーションが入る。
「男の名前は小野寺。彼は対象物の温度を自由自在に操る機械『変温自在』を発明した。もちろん実在する機械ではないが、温度調整については一様かつ正確に行えるものとしてよい。それでは健闘を祈る!」
特殊設定――というわけか。
私は少し鼻白んだ。
特殊設定を持ち込んだら何でもアリになりかねない。「ご都合主義性」なる項目は減点せざるを得ないだろう。トリックを成立させるために未知の機械を持ち込むなど、ご都合主義の極みだ。