そろそろお暇させていただきます。
『自殺』に関する物語です。
思うところのある方は、読まないでください。
世の中には一度も「死にたい」なんてことを考えたことがない人もいるそうで。
この奥さん。ため息ついては「あーあ、早く死にたい」が口癖で。
半世紀以上生きてるんだから、もう半世紀も我慢すりゃあお迎えも来るってのになんだかせっかち。
やる気のないせっかち。
まず朝目が覚めて「死にたい……」
布団から出たくなくて「死んでりゃよかった……」
それでもなんとか起き上がって「早く死ななきゃ……」
朝ごはん作って、家族に食べさせて、みんな送り出して、洗濯して掃除しながら。
「死ぬか」
なかなか死なないんですけどね、これが。
だから今日も悩んでる。
奥さん的には、もう子供も大きくなったしそろそろ死んでも良い頃じゃあないかなあと見切りをつけてるわけですが。
なかなかあなた、身近な人が自殺すると家族は動揺するし、もし万が一生き残っちゃった場合、植物人間にでもなろうもんなら大変なことになる。
だってもう自分じゃ死ねなくなっちゃいますからね。
家族にも迷惑かかるし。
だから徹底して自分が死にたい理由もしくは死ななきゃいけない理由を家族のために書き残し、
なおかつ、絶対成功する自殺術を編み出さなければならない。
理由は奥さん、自筆でなんぼでも書けると思ったんですが、書いてるうちになんかこう、興が乗って来ちゃって、あれこれちょっと盛りすぎてない?感極まりすぎでない?なんて推敲に推敲を重ねてるうちに10年以上経っちゃって今に至ります。
しょうがないから自殺の方法でも考えるかと、あれこれ検索してみると。
なんですね、今どきは「自殺」とか「死にたい」とか検索すると、真っ先に「ここにご相談ください」って優しくて親切な案内が出てくるんですね。
中には詐欺のサイトとかも出てくるんですけど。
気をつけてくださいよ。
間違っても変なアドレスとか、珍しい文言とかクリックしちゃいけません。
昔っからある有名な相談ダイヤルがあるんですけど、
奥さん。ネットもスマホも無い時代からたまーにそこに電話をかけてたんですが、繋がった試しがない。
まあ、そんだけぎりぎりの人が多いってことなんでしょうけども、いや、こっちもぎりぎりなんだけどもなんて思いつつ、奥さん、ここまでなんとか生き延びてきたわけです。
無駄だとは思いつつも、奥さん、久しぶりにそこに電話をかけてみることにしまして。
トゥルルルトゥルルル、
『こちらは、電話相談室です。ただいま大変電話が混みあっています』
ほーらね。
何十年と掛けてますけど、ここに。1回も取ってもらったことがない。
なに、そんなに世の中ぎりぎりで生きてる人だらけなの?てか、この何十年でちょっとオペレーターさん増やそうって気にならなかったのかしら。
とかなんとか思っていると。
『順番にお繋ぎいたしますので、案内に従って、ご希望の番号をご入力ください』