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桃太郎は、異世界でも歴史に名を刻みます

 ガストン邸の広間へと足を踏み入れた瞬間、なぜか少し狭く感じた。

 きっと、領主邸のあの広大さに慣れてしまったせいだろう。慣れとは怖いもんだな……。


 俺は、アントニーさんのことを話をして、屋台街への出店の進捗が、また一歩前進したことをみんなに報告した。

 それを聞いたアテナが、笑顔で応える。


「桃太郎さん……本当にありがとうございます。ふふっ。最近わたし、お礼ばかり言ってる気がします」

「いや、礼を言いたいのは俺のほうです。みなさんの助けがなければ、ここまで来られませんでしたから」


 そう言った瞬間——

(バチンッ!)

 いきなり、ララが俺の背中を平手で叩いてきた。


「痛ってぇ~! なにすんだよ、ララ⁉」

「大将が頑張ったんです! 全部、大将のおかげです! もっと胸を張ってくださいです!」


「そうっすよ、旦那。おいらたちが、街に堂々と入れるようになったのは、紛れもなく旦那のおかげっす!」

 ティガまで熱く語り出す。アビフも続いた。


「そうじゃ。桃太郎くんがいなければ、わしらは今も、味気ないスープをすすって生きていたじゃろうな。森の資源は乏しく、いつか限界が来て……静かに滅びていく運命だったやもしれん。君は、命の恩人といっても差し支えない」


 ガストンも、照れ隠し気味に言葉を添える。

「命の恩人って話なら、俺もだな。友人の仇を討ってくれたアビフ殿たちと会えたのも、桃くんのおかげだ。……桃くんがいなきゃ、俺はなにも知らないままぽっくり逝って、レイエスとあの世で再会してたかもしれん。感謝してるぜ!」


「みなさん……」

 その言葉のひとつひとつが、胸に染み渡った。気づけば、頬に涙がつたっていた。

 鬼に敗れてこの異世界に来た俺は、イーリス様の加護を受け、人生をやり直す機会をもらった。


 何をすればいいのか分からず、手探りで進んできたけれど、今——確かに感じている。この道でよかったんだ、と。

 人生に、正解も不正解もない。ただ、自分が信じた道を進むだけ。うまくいく日もあれば、そうじゃない日もある。でも、どんな経験だって糧になる。


 それを積み重ねて、自分の足で、また次の一歩を探していく——そうやって、俺たちは生きていくんだ。

 運命には、抗えないかもしれない。けれど、その運命を『良いもの』に変えていけるかどうかは、自分次第だ。


 この一度きりの人生——まあ、俺の場合は何度目か分からないけど……それは置いといて——後悔のないように、生きていきたい。これからも、運命を少しでも明るいものに変えていくために!


「……すみません。なんか、急に涙が——」

「大将。あの時みたいに、ララの胸の中でお泣き……」

「ララ……って、《《あの時》》ってなんだよ⁉」


 途端に、全員の冷ややかな視線が集まる。

「ち、違いますよ? 俺、ララの胸の中で泣いたりなんてしてませんからっ! ララ、どういう時だよ、あの時って⁉」


「大将が赤ちゃんの時、ママさんにヨシヨシしてもらったですよね? それをしてあげるってことです!」

 うーん、それもあんまフォローにならない気がするけど……。


「……き、気持ちだけ受け取っておくよ、ありがとう」

 やっぱ早いとこ学校を作ってもらって、ララの教育を急がねば……俺の精神が持たんっ!




 新しい朝が来た。まぶしい光に満ちた、希望の朝だ!

 コボルト族たちは、移住の準備のために早朝から森の集落へ戻っていった。

 ララとアテナさんは、チャットさんの手伝いをしながら、朝から料理の手ほどきを受けているらしい。


 俺はというと、ガストンさんと一緒に、領主邸の敷地内にある議事堂へ向かっていた。今日から街の整備計画について、本格的な話し合いが始まる。

 これから、きっと忙しい日々が始まる。目まぐるしく変化し、あっという間に過ぎ去っていくの毎日……。


 今はまだ始まったばかりの朝だ。これから迎える、楽しい昼や、騒がしい夜がたくさん訪れる。その一日一日が、たくさんの笑顔で満たされるよう、俺のできることを一所懸命にやっていこう!


 晴天の空に、高らかに宣言する。

「父ちゃん、母ちゃん。そして、イーリス様! 俺はこれからも、この世界の歴史に、名を刻み続けます‼」


~ 第一章 完 ~

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