迫りくる選択の時 壱
迫りくる選択の時 壱
ガラガラと崩れ落ちてゆく床下。
頑丈に作ってあるから、まだ大丈夫。
もう少しだけぽかぼかさせてね。
と、あせる自らにそういい聞かせ、ぽかぽかの誘惑から脱け出せずにいた。
瞬く星の下……お風呂に浸かりながら見詰める先、お家の雨樋に結びつけた洗濯物を干したロープが参本、相棒の地面に突き刺した黑龍槍を失い、暴れ蛸のようにうねうねと棚引いている……。
ひらひらひらひらと舞い散ってゆく虎さん、熊さん、龍さん、苺にさくらんぼ……上下お揃いのブラパンにお気に入りの私服たちが漆黒の闇へと舞い消えてゆく……。
それをわたしは静かに、ぽかぼかの誘惑に甘えながら見詰めていました。
ほわんほわんほわんほわんほわん……。
お風呂を沸かす間に、溜めに溜め込んだ衣服の山を片付ける事にした。
これは重大な決意を表する事なのだ。
わたしにとっては!
弐山先に住んでるらしい? お節介焼きの摩耶ちゃんが、最近とんと全然顔を出してくれないから...…どんどんどんどん山が積み上がってしまうのです。
もう! また山にしてえ、駄目だよ! と、わたしを叱責しながらも綺麗に片付けてくれる有難い存在なのです。
「摩耶ちゃん! ヘルプミー!」
ヘルプミー……ヘルプミー……ヘルプミー……木霊するヘルプミー。
ちょっとだけ持つ。少し待って見よう。明日は来てくれるかも?
それから、かれこれ新月から満月を参回ほど見たような気がする。
いや、まだ弐、参日はいけるのではと、わたしの頭の横っかわの奴が囁く。
ぶんぶんと首を振り邪念を振り払う。
聞き分けの無いおつむを黙らせるべく、壱発右の頬っぺたへと熱い血潮の通った壱撃を喰らわしてやる。
稲妻が迸り星がくるくると廻る。わたしが活性化してゆくのがよくわかる。
よし! 覚悟を決めてやるか!
わたしは、腹を括り思い腰を上げた。
背負い式の編み籠にわんさかわんさ、わんさかわんさと放り込み、ぎゅうぎゅうと押し込み押し込み、さらに押し込んでゆく。
漫画盛りになった編み籠を背負い、いつも沐浴している湖畔へと、たったったったったったっと軽やかに、鼻歌何かを口ずさみながらも、少し重たい心持ちで掛け降りてゆく。
暫くして……たったったったったったっと、焦る表情を滲ませ慌てて掛け登ってきた。
「あっぶないとこだった! そこんとこの曲がり角で気が付いてラッキーだったよ!」
本当は何と言う物かは知らないが、わたしは泡の実と呼んでいる。
柴刈りのついでに拾っておいた、あわあわで良い香りのする深緑で縞々実を参つ程掴み、そのまま踵を返してたったったったったったっと掛け降りてゆくのだった……。