引き継がれる重荷 弐
引き継がれる重荷 弐
「わしはまだ逝かんぞ!」
「無理なさらなくても良いですよ」
ハア……ハア……ハア……。
「ほら! 何時もみたくカッカされるからですよ。後の事はわたしに任せて、早々に土へとお還り下さいませ」
そう言ってアイリスは、大袈裟に傅くのでした。
ドキドキドキドキドキドキドキドキ……。
んん……心の臓が収まらんぞ!
落ち着け落ち着くのだワシよ!
ふう! ふう! ふう!
「どうやらワシの勘違いであったようだな」
「あの聡明な曇りなき眼も、何かにつけて面倒事をわたしに押し付けたりなんかなさるから。楽な道へ楽な道へと長い間スボラかまされておられましたから、蜘蛛の巣でも張っていらっしゃるんでしゃうね」
「ほざけ! 言わせておけば、否定はせんが、曇ってはいても断じて蜘蛛の巣は張ってはおらぬからな!」
「否定ははされないんだ。失礼いさせていただいても宜しいですね」
「どうやら、心の臓のドキドキドキドキも治まったようじゃしな。頭でも打ってあいたたたして、気が変われば何時でもウエルカムじゃからな。己れと云う小さな世界から抜け出し、まだ見ぬ世界の扉を開きたくばな」
「そんな、大袈裟な大風呂敷広がられましてもね? ドン引きですけど……まういい加減わたしに執着するの止めてくださいね! 失礼致します」
「執着などしとらんわ!」
「はあ? どの口がおっしゃられてるんですかね?」
「わしは認めておるんじゃぞ! 執着などではないのだ! いい加減に御前の使命に気づきなさい! この世界の行く末もな! もう良い……行きなさい。もう引き留めたりはしないからな! しっかりと時を見定めよ! 後悔のないようにな……わしからはもうなにもない」
「心配されなくても、後悔なんかしませんから。失礼致します」
なによ! なんか向かっ腹たつんだけど!
ダッ! ダッ! ダッ! ダッ!
アイリスは振り返る事なく、プンプンと去ってゆきました。
「おい! 開けっ放しだぞ!」
コンコン!
「無用心ですねえ? わたしがここまで来てても誰も気付かないなんて」
「何奴? 気を緩めておった……う、動けぬ……」
「紅い炎にお焼かれなさい! あはははは……」