迫りくる選択の時 陸
迫りくる選択の時 陸
ピシャピシャピシャピシャ……。
頬に感じる風に横殴りの水滴が容赦なくぶち当たってくる。
流々華は、集中という静寂の中にあった。
目標に向けて壱途なまでに、ただ純粋に真っ直ぐ突き走る。
背中にむんずと背負った、己れの洗濯物を水柱ねと届ける為に。
「流々華ちゃ~ん! お手伝いしてあげるねえ。うふふふふふ……」
「別に気にしないで良いですからあ!! すぐ持ってきますんでぇ!!」
集中しながらも大声で返事しながら湖上を駆け抜けて行く流々華。
水柱に近づくにつれ乱気流気味の風圧と水飛沫の量がましてゆく。
「お水の華道! ウオーターロード水壁!」
ひた走る流々華を中心に、湖上の水面が水壁へと変わってゆく。
「ちょっ、ちょっと? バ、バランスがゲキヤバですからあ!」
背負う籠の洗濯物たちが上下にバウンドを始めている。
集中集中集中!
流々華の足元の水面がどんどん流れをつくり沈んでいく感覚と、両脇が水壁となりどんどんとせり上がってゆく。
視覚の感覚がばぐっているようだ。
流々華は走りながら目を瞑り、全身の感覚と水柱から溢れだすエネルギーに集中した。
水の流れと気の流れ、己れの流れの矛先を合わせ真っ直ぐに今まで培ってきた己れを信じて。
バウンドする洗濯物が次第に流々華の呼吸とシンクロしていく。
軆から重さが消えたかの様な感覚だった。
ぱしゃーーーーーーーーーーーーん!
ぱしゃーーーーーーーーーーーーん!
ぱしゃーーーーーーーーーーーーん!
と、その姿は飛んでいるかのようだった。
「近い!」
流々華目を開眼し洗濯籠の底へと思いを流し込んでゆく。
「それじゃあ! お願~~~~~あい! 致しま~~~~すう!」
目前の水柱の頂点へと渦の水流の縁に、足裏の水黽走の気を合わせてくるくるくるくるピシュシュシュシュッと駆け登ってゆきます。
その頂点へと達し水柱の天井を蹴り上げて大きくジャンプ。
空中で弧をえが描きムーンサルトし渦の中心を黙視で確認。
洗濯籠が真下を向いたその時。
「よ~し! いっちゃえ~~~え!」




