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第二話

「やあ、君は誰かな?」

頭上から声が聞こえる。

さっきも聞いた、あの声だ。

顔を上げ、その少女を見上げる。

「名乗るなら自分から、だよね。私はレット。レット・ミラー。ここら辺のモンスターを狩ってる者だよ。君は?」

先程と同じように手を差し伸べてくれる。

僕はその手を掴みながら立ち上がった。

「僕は……オンド・ホワイト。」

1回目の自己紹介と少し違う。

何かが変わってきている予感がする。

レットは苗字まで名乗ったし、僕も、僕自身の名前がわかる。

「オンド……。」

レットは僕の名前を繰り返す。

「君の名前って……やっぱなんでも無い!」

「?」

何か変だろうか。

「そんなことより、この森は早くぬけた方がいいよ。モンスターがウヨウヨいるんだ。」

ほらっ君の後ろにも!、とレットが突然叫ぶ。

驚き後ろを向く。

「伏せて!」

そこには、大きな黒いもやを纏った"何か"がいた。

そいつは口のようなものを大きく広げて僕を食いちぎろうとする。

反射的に僕は伏せる。


ヒュッ


頭上を何かが飛ぶ鋭い音がし、すぐさまドサッと目の前に黒い物体が倒れてきた。

その物体をみると、心臓部分に矢が突き刺さっていた。

「危なかった〜……。まさかこんなに近づかれてたなんて。」

ふい〜っと言いながら額を擦る彼女をみる。

彼女は大きな弓を抱え、万が一に当たらなかった時のための2本目の矢を持っていた。

「ありがとう、助かった。」

しっかりとお礼を言う。

「ん。この森に入ってきた人を守るのも、私の役目だからね!」

誇らしげに言う。なんか、幼い?

「あ、今幼いって思ったでしょ!?」

ぷくー!と頬を膨らませる。やっぱり幼い?

「ふーんだ!もう守ってやらないからね!」

そう言って少し先を歩く。

流石にまずい。

「レット、怒ってる?」

恐る恐る聞いてみる。すると、

「ふふっ、怒ってないよ!」

彼女は僕を振り向いて微笑みながら言う。

内心ホッとしていた。

ここで置いてけぼりをくらうと、死んでしまう。

チラリと殺された時の痛みがよぎった。

……あれだけはもう食らいたくは無い。

「さ、どんどん行こう。止まってるとモンスターが寄ってくる。」

レットの言葉に頷き、先に進む。

その時、誰かが見えたような気がした。

髪の毛しか見えなかったので誰かはわからないが、確かにそこにいた。

「ねぇ、今の人って……。」

「へ?」

話しかけると、レットは気の抜けたような返事をした。

レットがこちらを向く。

「あの人もモンスターを狩ってる人なの?」

「人がいたの?」

尋ねるとレットは、姿を見てないようでそう答えた。

「いた。黒髪で長髪の人が。」

レットは考え始める。

「……わからない。気配が普通だった。気のせいかもしれない?姿を見てなかった。」

独り言のように呟く。

油断してるな……、と真剣な顔をしてポツリと付け足す。

気のせい、なのだろうか……。


一向に森を抜けれずにいた。

今さっきよりも森が大きくなったような、全然終わりが見えないのだ。

「おかしい……。こんなにデカくはないはずなのに。」

レットは周囲を警戒しながらもそう呟く。

その顔は少し焦っているようで、顔を顰めていた。

「レット、何か変だよ。長すぎる。しかも、霧がかってきている。」

もう霧で前がほとんど見えなくなっている。

前に進んではいるが、実際に進めているかどうかはわからない。

「今どこまで来れてるんだろう?」

レットに疑問を投げかける。

……反応がない。

「レット?」

後ろを振り返るが、誰もいない。

「レット?レット!?」

どこに行ったのだろうか。逸れてしまった?

もしかしたら、モンスターに?

どうにかして探さないと心配だ。


けど、強さを持たない僕に何ができる?


ひとりぼっちのままレットを探して、もし、モンスターと出会ってしまったら……。

___死んでしまう。

レットの帰りを待つ方が得策なのではないのか?そう感じる。

少しだけ待ってみよう。少しだけ。

このままレットが戻って来なかったら。不安が頭の中に充満していく。

その不安を追い出すように、僕はゆっくり深呼吸をする。

大丈夫だ。きっと戻ってくるはず。


そして、僕は待った。

1時間が過ぎたが、レットが戻ってくることはなかった。

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