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駅のホーム、入学から中間試験を終えるまで

スマートフォンにて失礼します

 駅に到着し、時刻を確認する。見れば前よりも遅くに家を出たというのに登校時間には呆れるほど余裕があった。

 そう言えば妹も何かの部活をしていたのだろうか?同じ屋根の下で暮らしているというのにそんなことも気に掛けなかった自分にまた呆れる。電車を待つ間にこれまでの高校生活を振り返る。


 ◆ ◆ ◆


 進学した先である『私立月ヶ峰(つきがみね)高等学校』は割と自由な校風で、学業に支障を来さない限り、髪型や化粧などに対してとやかく言ってくることは無く、「そんな余裕があるならやってみろ」と言わんばかりの過密なカリキュラムが組まれている。先輩達曰く、これでも最近は新入生達にかなり優しくしている方らしく、「自分達の代は本当に大変だった」と入学直後のオリエンテーションで話すのがお約束となっている。


 そんな中でも私は特に何も変わらなかった。

 入学の場である月校(月ヶ峰高等学校のこと)の敷地に入って簡易なクラス割りを受け取り、会場である講堂への案内に従い、割り当てられたクラス毎の席に座って入学式の開始を待った。


「では長い祝いの言葉の後で申し訳ありませんが、最後にこの言葉を新入生諸君に贈ります」

『己が力は皆の力、皆の力は己が力』

「毎年代々の学校長が最後に必ず贈る言葉です、どう解釈するかは自由ですが、最期には自分達で責任を取りなさい。フォローはいくらでもして上げましょう」


 入学式の最期のプログラム。学校長の挨拶はこの言葉で締められた。よくある『一人は皆のために、皆は一人のために』とはまたニュアンスの異なる言葉だ。正直違いは解らないので、心の片隅に置いておくに留める。


 式が終わると教室移動が始まった。案内に従って割り当てられた教室に入りそこに割り当てられた席に座る。その後は担任とクラスメイトの自己紹介が始まった。そして自分の番になり、妙に注目されていることに気が付いた。


 後になって理解したことなのだが、どうやら私は世間一般で言う『美女・美少女』に分類されていたらしい。見た目は高身長で躰の凹凸はハッキリした美人。その中にある闊達で取っつきやすそうな雰囲気は美少女である。と言うことらしい。らしいらしいと言っているのはあくまでそう聞いたからだと言うことで、実際の所は解らない。そこまで気を遣っていたわけではないし。


 まぁそれはいいんだ。とにかく私は滅茶苦茶目立っていた。


 もともと入学前から色々ウワサはあったらしく注目の的、もとい客寄せ珍獣のようにクラス内外から色々話を聞かれてしまった。

 オリエンテーションも終わり、本格的に授業が始まるとその勢いに驚いた。とにかく覚えることが沢山有り、それらを一々ノートに取ったとしても今度はその応用とか言い出して少し先の分野に片足を突っ込む。そんな中私はその勢いの中で何とか齧り付いていった。

 それから直ぐに部活決めが有り、私は当然のように中学からやっていた陸上部に入部した。ここは中学の時より大分ハードなメニューが組まれており、それまで培ってきた概念が根こそぎ覆された私は正直ついて行くのがやっとだった。それでも結果は出せていたので周りからは特に何も言われなかった。


 そう、ここからだ。私の思い違いはここから始まっていた。


 そもそもの話『何とか齧り付く』『ついて行くのがやっと』の実力はここでは必要とされていなかった。教室でも私の周りはそれぞれ授業の内容を自分なりの解釈でノートを取り、部活でも私の周りはあのメニューの後だというのにほとんど息を切らしていない。


 そんなことは中学で上位にいた私のプライドが許さなかった。


 それからの私はとにかく中学の時以上に勉学に励み、外を走って体作りをした。私はとにかく先頭に居ないと気が済まなかった。そのおかげもあってか、最初の中間試験は上位20位以内に入ることは出来たし、部活も何とか周りと実力が拮抗し出し始めた。

 誇らしかった。『何とか齧り付く』『ついて行くのがやっと』の世界でそれでも()()()()()()()()()()()()()が。次の目標は勉強では私の上にいたヤツ、部活では同輩達。敵は多いし実力も高い。それでも私はやらなければ気が済まなかった。


 そうして我武者羅に勉強に部活にと力を入れていった中、後に私の運命を決定付ける者に出会う。『灰田優人(はいだゆうと)』2年生の先輩でサッカー部キャプテン。ある意味最高の出会い方をし、そして最悪の別れをした私の元彼である。


 ◆ ◆ ◆

 

 電車が到着したようだ。これに乗れば間がそれなりに離れているとは言え、たったの3駅で学校の最寄り駅に着く。どの道乗らなければならない。私の気持ちを反映したのか、心なしか鞄が重たかった。

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