ねがいごと
「あっ流れ星」
「願い事をしないと」
「ああっ消えちゃった」
「あっという間に消えちゃうから3回も言えないよ」
「今日は、しし座流星群が見える日だから、まだまだ流れ星は見えるよ。ほらまた流れた」
「ママのびょあぁ」
「やっぱり無理だよ」
「ずっと唱えてたら間に合うんじゃないか」
「さすがパパ。天才」
「ママの病気が治りますように。ママの病気が治りますように。ママの病気が治りますように…」
「ほらっパパもお願いしてよ」
「ああそうだね。みんなで一緒にお願いしよう」
「ママの病気が治りますように。ママの病気が治りますように…」
その頃。
「お父さん。おじいちゃんは、もう行っちゃうの?」
「そうだよ。おじいちゃんとはここでお別れだ」
「嫌だよ、おじいちゃんとお別れしたくないよ」
「こらっ。そんなこと言わないの」
「だって、嫌だよ。おじいちゃんともっと遊びたいよ」
「それはできないんだよ」
「なんで?」
「おじいちゃんは流れ星として最後の光を輝かせるんだ。それが星として生まれた私たちの定めなんだよ」
「流れ星になんてならなくていいじゃん。ずっと一緒にいようよ」
「わがままを言うんじゃない」
「だって…だって…お父さんは悲しくないの?」
「お父さんだって悲しいさ。でもそれが定めなんだよ」
「定め定めって、定めってそんなに大事なの?」
「ああ、そうだよ。定めは誰にも避けることはできないことなんだよ」
「嫌だよ…おじいちゃん」
「孫よ。かわいい我が孫よ。泣くんじゃない」
「おじいちゃん…おじいちゃんも、もっと僕と遊びたいよね」
「あぁ遊びたいさ。けれどな、もっともっと大事なことがこの世の中にはあるんだよ」
「おじいちゃんは僕のことが好きじゃなくなったの?」
「好きだよ。誰よりも一番好きだよ。けれどな」
「けれどなじゃないよ。大人はみんな勝手だ。もういい。おじいちゃんなんて大っ嫌い。勝手に行っちゃえばいいんだ」
「こらっなんてことを言うんだ。お父さん、すみません」
「いや、いいんだよ。理解するのは、あの子にはまだ早いさ。けれどな、いつかきっとわかる時が来るさ。では行くとするかな」
「今までありがとうございました。お父さん」
「わしがお前に伝えたように、お前もしっかりとあの子に伝えていくんだよ。星としての使命。星としての運命を」
「はい。わかっています」
「見ておれ。最高の輝きを見せてやろう」
「ママの病気が治りますように…ママの病気が治りますように…はぁはぁもう疲れたよ。すぐに消えちゃって3回唱える時間なんてないよ」
「そうだね。でもこれだけいっぱいお願いしたら叶うんじゃないかな」
「そうかな…」
「きっと、そうだよ。もう帰ろう」
「ちょっと待って。大きい流れ星だ」
「ママの病気が治りますように。ママの病気が治りますように。ママの病気が治りますように。あ、言えた。今の間に合ったよね、パパ」
「あぁ間に合ってたよ。きっと願い事も叶うさ」
「やったー」
「じゃあ明日、ママのところに行って報告しよう」
「うん。喜んでくれるかな」
「あぁきっと喜んでくれるさ」
「わーい。明日が楽しみだ」