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第21話

GW3


<藤崎隼人Side>


「あ————なぁ、どいてくれないか?」


「やだ」


「お、俺っ……今日は洗濯物当番っ——」


「やーだ」


「じゃ、じゃあ……洗濯物干してくれるのか?」


「それは絶対にやだっ」


 おいおい、なんで俺の仕事の順位がしたなんだよ。


 とまあ、交際三日目の俺と彼女————あぁ今のなしっ。やっぱり彼女呼びは恥ずかしいから葵でいこう。


 というわけで俺と葵は二人、ゴールデンウィークの三日目を満喫していた。満喫、本来こういうことを言うのだろう。結局のところ、休みの日は家でじっとしているのが一番楽なのだ。


 まあ、今日の家事当番なんだけどな。


「——本当にどいてくれないのか?」


「あぁ……うんっ、やだ」


「なんでだよ」


「ここ……」


「なに?」


「ここが……いいっ」


「——っ。そ、そうかよ」


「うん」


 俺とは反対側を向きながら膝枕状態で俺の膝を独占する葵。スマホをポチポチと触っていた。


 いやぁ……それにしても、なんて可愛いんだ。この幼馴染は。

 付き合い始めた次の日からまさかこんなにも変わるなんて……甘え上手と言うか、どこか素直になったというか、ただの幼馴染だった時の対応を忘れただけなのか。しかし、よう分からない。


 とにかく、一つだけ俺に言えることがあるとすれば――――葵が可愛いってことだけだな、うん。


「……はぁ、もう分かったよ」


 俺がため息交じりにそう言うと、葵はコクっと頷いて寝返りをついた。


「すぅ……はぁ……」


「え」


「すぅ……すぅ……はぁ……」


 こ、こいつっ——俺の匂いを嗅いでやがる‼‼

 なんか生暖かいと思ったらそう言うことだったのか。


 って何を納得しているんだ俺は……まったく、あの日の夜から俺自身も少々浮かれている気がする。というか浮かれている。


 ついつい高峰にも連絡入れちまったし、麻由里にも言っちまった。二人とも陽キャの余裕と言うか、おめでと。の一言で終わったが味気ない割にめちゃくちゃ嬉しく感じられた。


 葵はそんな様子を一切見せないが、ちょっと様子がおかしい。


「————お、おいっ、何嗅いでっ——」


「いい匂いだね、隼人って……」


「え——」


「いや……なんかね、昔もぎゅってしたことあった気がするけど……ちょっと違うねっ……」


「そ、それは……もちろん、成長したからなっ」


「そ、そうだねっ。いつの間にか私よりも勉強できるようになってたし、体も

おっきくなってたし……それが分かった時にはちょっと悔しかったけど」


「……あぁ、そんなことあったな」


「お、覚えてるの?」


「いやぁ、まぁな。あの時の葵はワンワン泣いてたし……」


「泣いてないし」


「いやぁ……泣いてたぞ」


「泣いてないっ‼‼」


 ほら、やっぱりこういうところがあるのは葵だしな。

 可愛い以外にも、こんな意地っ張りなところも込みでもちろん好きだけど。


「……いじわるっ」


「べ、別に——いじわるをしたつもりは」


「してるしっ」


「してねぇって……まぁ、いらぬことを言ったのは謝る」


「……うぅ、隼人のばかぁ」


「お、おいっ——痛いって」


 ぼそっと呟き、俺の太もも辺りをぐーで殴るとむすっと頬を膨らませながら顔をあげる。


「ん」


「ん?」


 首をこくっと俺の方に寄せて、その碧眼でこちらを見つめる。

 改めて見ても可愛い顔に俺はごくっと唾を飲んだ。


「……ち、ちゅー」


「え、ちゅー?」


「ん……し、してっ」


「そ、それは——まだっていうか……なんていうか」


「だめ、なの?」


「だ、だめじゃない! でもっ、まだ早いって」


「……そ、そっか。じゃあいい」


 すると、彼女はすぐに元に戻り膝の上でスマホをいじり始める。


「え」


「なに?」


「あ、いや……なんでもないっ」


「ん」


 そうして今日もあっけなく終わったのだった。


 え、それで終わり?


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