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生後81日目

アンタ達は恋はしているか? 




 恋ってのはいいもんだ。




 気になるあの子を見てると心が躍ることはもちろん、




 恋をしている時に見える世界は、普段より輝いて見える。




 そしてなにより、恋をしているときに抱く気持ちってやつは、憧れだって、切なさだって、どれ一つとったってひどくロマンチックなのだ。




 しかし、そんな素敵な恋という感情にも欠点はある。




 あの子がすげぇ魅力的で、見てて嬉しい。




 それだって十分恋だといえる。




 しかし、普通はそれだけじゃ終わらないものだ。




 人間ってのはどうにも欲張りな生き物である。




 何かを手にすると、その先にある物を一度だって想像しちまうと、




 続きってやつが欲しくなるのだ。




 俺たちは悲しいことに、”現在”に恋することは出来ない。




 俺たちはいつだって”未来”ってやつに恋をする。




 あの子と仲良くなった未来。




 あの子を幸せにしてやれる未来の自分。




 そんなのが、そんな未来がどうやったって欲しくなるんだ。




 俺達は、そういうふうにできている。




 それを望む気持ちはもちろんとても素敵で、踊り出したくなるほどにロマンチックだ。




 けれどその分、それが手に入らなくて、強く求めてしまう自分が醜くて、苦しんじまう。




 俺は今、恋をしている。







「クナイちゃん、こないだはごめんね?」




「まあ気にすんな、というよりお前のかわいい息子を泣かしちまっちゃ、怒られるのは当たり前だ」




 俺はレナの豊満かつ放漫[この世界の女はブラジャーをつけない]な胸に抱かれ、町を進んでいる。




「でも、あれはギュスが悪いんじゃん、あーでもしなきゃクナイちゃん怪我しちゃってたじゃん」




「ふっ、自分の身くらい自分で守るからよ? 余計な心配してんじゃねぇ」




 それを聞いたレナは俺を抱く腕にギュッと力を入れる。




 豊満なバストの優しい感触に頭がクラクラする。




「ダメだよ、クナイちゃんはまだ赤ちゃんなんだから、大丈夫、ちゃんと大きくなるまで守ってあげるから」




 俺は今、恋をしているが恋が出来ていない。




 愛らしいレナに抱かれ心は安堵に包まれているし、胸の感触は心のチン●を刺激する。




 しかし、未来に夢想が出来ない。




 俺は来年も、再来年も、このあたたかな女に、好きな女の胸に守られていきていくのだろうか?




 果たしてそんな未来を望んでいるのだろうか?




「ねえ、クナイちゃん、して欲しいことがあるならすぐに言ってね」




 何かをしてもらうばかりで本当にそれは、この女に恋をしてると、胸を張って言えるのであろうか。




「して欲しいことはない。……けどよ」




 そう、して欲しい、それを望んでばかりで男の恋なんて言えないのだ。




「けど?」




「してやりたいことがある」




 男はいつだって、好きな女になにかをしてやりたいのだ。




「一緒に風呂に入って、お前の身体を洗ってやりたい」




「それ、スケベな理由だよね?」




「……わかるか?」




「…………うん」




 もしも神がいるのならば、たった一つ願うこと。




 今すぐ俺をぶん殴ってくれ。

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