生後62日目②
生時代、俺は教師という生き物が嫌いだった。意味の分からないルールを強要してくるし、それにちょっとでも抵抗すれば顔を真っ赤にして怒る。
得意げに自分の得意な勉強について語っては国から金をもらう。
そんな輩にどうしてそんなに、人生とは何か、いい人間とは何かについて説かれなければならないのか。
それと同時に、俺は不思議でもあった。
どうしてこいつらは、こんな人生を選んだのだろう。
10代アホ真っ盛りの少年少女たちは仕事相手として非常にやりにくいはずだ。教師が必死子いて考えてきた授業をまるっとシカトしてクラスメイトにちょっかいかけたりお菓子を食べたりするのに一生懸命。むなしくならねぇのかな? 俺は常々不思議でならなかった。
しかし、人生の道というのはなにも快楽のためにあるのではない。
たまにしかない、本当の嬉しいこそ、人生を輝かせるスパイスなのだ。
「ひゃっほー!! ありがとう! ありがとう! オッパブサイコー!!!」
ジョセフは俺を胸に抱えたまま飛び跳ねる。
最初は嫌がっていたが、いざオッパブに入り、セクシーな女の胸に顔をうずめるとジョセフはサービスでついてきたビールを飲むのも忘れ、終始ニヤニヤしていた。
つまり、俺は結果的にジョセフにオッパブの楽しさを教えてやったのである。
「……そりゃよかったな」
ちなみに俺についた女はちょっとばかりボディが放漫すぎたせいで可愛がられはしたがあまりテンションは上がらなかった。
「いやぁ、クナイちゃんのおかげだぜ! ぜってー俺一人じゃビビって一生入んなかったもんな? クナイちゃんよー? 俺、仕事探すわ」
労働意欲に目覚めたのは明らかにオッパブに通いたくなったからであろうことは明白だが、それもまた人生であろう。
自分が教えたことで、誰かの人生が前を向く。
これほどうれしいことはない。
もしも神がいるのならば、たった一つ願うこと。
どうか覚えておいて欲しい。
俺が一人の若者を更生に向かわせたことを。