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一本松の公園で  作者: 郁章
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調査

 翌週の土曜日、亘樹と隆太郎は郷土資料館にいた。昔の地図を見たいと館長さんにお願いすると、案内してくれた。室内は古い道具がたくさん展示されていて、かび臭いような臭いがした。市内の古地図は資料室の最後の方の部屋の壁に、額に入れられて展示されていた。亘樹たちの丸浜地区を見ると、いびつな丸い形が虫食いのように描かれていた。この丸いのは何ですか?

隆太郎が館長に聞く。

「それは、池だね。いまでこそ、丸浜地区の池は少ないけれど、昔はため池が多かったんだ。昭和五十年頃に埋め立てられて、住宅地になったり公園になったりしているよ。」

「じゃあ、もしかして大池公園も?」

「そうだよ。よくわかったね。地図を見てごらん。この一番大きな池が、今の大池公園のある場所さ。」

大池公園が昔は大きな池だったとわかって、亘樹は高揚していた。自分達はタイムスリップしていたのだということが、はっきりしたからだ。異世界に入り込んでいたとしたら、それはそれで面白いけれど、タイムスリップだとSFだ。亘樹たちの身に起こったことにも、論理的で科学的な説明が付きそうな気がする。亘樹は漫画や小説を読むのでも、ファンタジーものよりSFとか推理ものが好きだ。なぜ、どうしてそうなったのかがはっきりするからだ。だが、今のところタイムスリップの条件がわからないのだ。偶然なのか、必然なのか。きっかけはなんなのか。それに、亘樹には気になることがひとつあった。

「なあ、一番最初にタイムスリップしたときに助けてくれた舟の人と公平って、すごく似てたよな。」

「そう言われてみると、そうだね。」

「もしかして、同一人物ってことはないかな。顔のほくろの位置が全く同じだったんだ。」

「兄弟とか親戚でもそっくりだったり同じ位置にほくろがある人はいるだろ。そもそも、公平よりも舟の人の方が五、六歳も年上だったじゃないか。」

「そうだよな。でもさ、時間の流れの順番通りタイムスリップするとは限らないだろ。つまり、今に近い方からタイムスリップしてるんじゃないかと思ったんだ。」

「ああ。それはあるかもしれないね。仮に公平が舟の人と同一人物だとして、それがなにかあるの?」

「うん。もし同一人物なら、公平がタイムスリップと関係あるんじゃないかと思ったんだ。」

少し間があって、隆太郎が口を開いた。

「なるほど、それはそうかも。」

賛同を得た亘樹は気を良くして、何度もうなずいて言った。

「そうだろ。そうだろ。なあ、今度タイムスリップしたら、公平の名字も教えてもらって、こっちに戻ったときに調べてみようよ。」

ところが、隆太郎の反応は亘樹が思っていたのと少し違っていた。

「え!亘樹はまたタイムスリップするつもりなの?」

「そうだよ。隆はもうタイムスリップしないと思ってるの?俺は、公園へいけばまたタイムスリップするような気がする。」

「ぼく、もうタイムスリップはいいよ。帰れなくなったら困るし。」

「なんだよ。じゃあ、隆太郎はこの不思議な事件の謎を解明する気はないのか?」

「そういう訳じゃないけど、何か別の方法で調べられないかと思ってさ。」

「じゃあ、来週は俺ひとりで大池公園へ行ってみるよ。」

「でも、危険じゃないかな。」

「いつも、公平と出会って別れたら帰れるだろ。次もきっとそうだと思うんだ。」

「そうは言っても、最初のときなんかは何時間も帰れなかったじゃないか。」

「まあ、そうだけど、なんとかなるだろ!」


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