【ファジーな空間】(悠真)
世界は曖昧に出来ていて……。
短いお話。
<設定>
二人共高校生、まだ友達関係。
僕は本当の自分を隠して、自分を演じている。
なぜそんな事をしているのかと言うと、僕の見た目が関係していた。
男子高校生になっても可愛らしいと言われる容姿。
それに反比例して心は「漢」らしさを求めている。
3人の姉に人形のようにいじられ可愛がられてきた僕は、自分の身を守るために相手の望みの通りに演じることを覚えた。
そしてその結果、無邪気に振る舞い可愛らしい外見を利用した方が得だと理解した。
演じる僕を好きになってくれる子もいる。
けれど、本当の自分を知らない人間を好きになることは不可能だ。
あくまで好かれているのは僕の演じる僕なのだから、本当の僕を知らないのなら好きになったのかこちらはわからない。
演じることをやめられないのだから断るしかなくて、僕は男女から愛される自分を演じ続ける。
でもある日、些細な運命のいたずらで本当の僕を知られてしまった。
それなのに態度は変わらないどころか、奥に隠れていた本当の僕にあの人は気づいたのだ。
櫻井 晴夏。
隠していた本当の僕を見つけた人。
「確かに見た目は可愛いけど、悠真君は男らしいからそれが魅力だよね」
なんて、簡単に笑う。
家族にすら本当の姿を見せない僕が、先輩にだけ素の僕になる。
安心して本当の僕になれることは、僕の演じるストレスを軽減してくれた。
僕が本当の自分を頑なに隠してきたのは、人に失望されるのが嫌だったからだ。
たぶん、それ以上に周りを取り囲む環境が変化してしまうのが嫌だったのだろう。
演じている僕と本当の僕が違いすぎて戸惑わられ、最悪、騙したと視線で見られるのは耐えられない。
だから僕は創り上げた自分で押し通してきたのだ。
本当の僕は無邪気なんてかけらもなくて、意外と計算高く冷めているみたいで、時々回りの皆の行動が理解出来ない時がある。
すべての物事は単純明快。
シンプルに出来ているのに、皆はそれを複雑にしているとしか思えない。
好きか嫌いか。
白か黒か。
それを決めるのはけして難しいことではないのに、皆はわざわざファジーなものを作る。
だから僕は皆は馬鹿なんだと思っていた。
実際学力的なことで言えば、僕の成績は上位だったし、ちょっとの努力で何でも解決してきた。
物事をそつなくこなし、無駄は一切ない。
ただ、人間関係を円滑にする為、面白くもないのに笑ってしたくもないことをする。
無駄なことをしなきゃならない。
だが、それが生きていくこと。
そう思っていた。
先輩に出会うまでは……。
先輩は無駄なことが大好きだ。
笑顔は垂れ流し。
親切心も過剰に振り撒き。
無駄に動いて必要以上に頑張る。
そんな先輩がまったく理解出来なくて、逆に僕は余計に気になってしまったのだ。
そうして見ているうちに、いつの間にか僕は違う目で先輩を追うようになった。
花の蕾が綻ぶような笑顔。
優しい気づかい。
誰かの為に一生懸命に頑張る。
先輩をそう思うようになってしまったのだ。
ただ無意味な人々の行動が、温かさを持ち出す。
煌びやかなだけのネオンが電気の無駄使いなどではなく、時に犯罪を未然に防ぐ役割にもなっていることを知った。
些細な親切が、人の人生を大きく変えることもあるのだと知った。
僕が変わっていく。
白にも黒にも区別できなくなってしまった僕の心。
人生はままならず、複雑だからこそファジーな面が必要なのだ。
先輩と歩く下校の道が、通るだけの道だったはずなのに、どうしてこんなに綺麗に見えるんだ?
先輩が側にいるだけでドキドキと心臓がありえない速度で鼓動する。
戸惑いと羞恥。
僕は恋をしているのだ。
シンプルな世の中をわざわざ複雑にして……。
先輩が好きだと、僕の心が呟いている。
データーでは次が最終回です。
年下の男の子萌は悠真君から始まったのでいつか、この二人の物語をちゃんと書いてみたい気もします。
今は仕事とプライベートと持病の病気管理とかで色々忙しすぎて、思うように創作出来ないため、かけるとしてもいつになるかわからないので、とりあえず次で最終回にします。
時間が取れるようになればまた完結表示を外して連載するかもしれませんけどね^^;




