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ぷりてんだー * I pretended not to notice her. *  作者: 桃川 ゆずり


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7/10

【合図】(晴夏)

 2人の間には特別な合図がある。

<設定>

晴夏と悠真は高校生。

恋人未満で部活内のおなはし。



「終了ー!」


 雲1つない青い空に高い声が響く。

 ホイッスルの音と共に、陸上部の練習終了の合図が聞こえた。

 その言葉に疲労感がどっと襲ってくるが、陸上部も2年目になって体力がついたおかげなのか、疲労感はすぐに心地よい達成感に変わった。


「おつかれ~」


 同じ陸上部の子達とお互い声を掛け合いながら、スポーツタオルやドリンクを置いてある大きな木の方へと歩く。

 初夏の暑さに、皆汗でびっしょりだ。

 私は大きな木の元に入って、自分のカバンからタオルを出して顔を拭くとそれだけで爽快感を感じる。


 腕は日に焼け始めたのか少し赤くい。

 本格的な夏を控えてまた日焼けに悩みそうだと小さく笑った。


 中学の時、私はバスケ部だった。

 バスケは室内での練習だったので日焼けに悩まされることもなかったのに、羽々崎高の陸上部に入ってからこれほど日焼けに悩まされるとは思わず、最初の頃は日焼けしないようにすることばかりを考えていたものだ。

 今年も暑くなるようだし、また日焼け対策に悩まされるのだろう。


「ね、晴夏。見て、水飲み場!」


 隣でドリンクを飲んでいた子が私の肩を叩いて顎をしゃくった。

 視線をそちらに移すと、同じく陸上部の陸上部に所属する後輩の松浦君が視界に入る。

 今年陸上部に入ってきた松浦君は、部の中でも人気が高い。


 くりくりとカールする柔かそうな髪に、睫毛の長い大きな瞳。

 まだ幼さの残る容姿はわりと整っていて、体系は男性特有の骨ばった感じはなく、どちらかと言えばまだ中学生の時の体系を残した柔らかさがあり、それが容姿に良く合っている。

 まさに可愛いとい感じなのに礼儀正しくて人懐っこさから、部の誰もが新入部員の中で松浦君を一番贔屓していた。


 みんなが言うには、松浦君は癒し系のマスコットキャラ的なイメージらしい。


「ああ、本当に、可愛いよね~」

「うん」


 友人の言葉に頷く。


 確かに見た目はすごく可愛いけど、それより私は礼儀正しいところや、エンジェルスマイルと言われているあの笑顔の方がいいなって思う。

 部の友達に囲まれる彼が、時々人の輪にいない時の表情が気になる。

 松浦と話していると、本当は可愛いだけじゃなくて、冷静な子なんじゃないかと思う。

 

 だからこそ、誰にでも礼儀正しく振る舞えて、笑うことが出来るんじゃないかなって?


 私が松浦君をじっと見ていたせいなのか、水飲み場にいる松浦君が私に気づいて視線が合うと、松浦君がぺこりと頭を下げ口だけ動かして「また」と言ってきた。


 実は、松浦君がこんなふうに頭を下げて口だけ動かして「また」と言った時は、必ず松浦君がゲタ箱で待っているのだ。

 どうやら、一緒に帰りましょうという合図らしい。

 私はこくりと首を縦にふって、了承の合図を返す。


 最近、こんなふうに合図を送られると胸がドキドキする。


 1つ年下の可愛い後輩。

 そう思っているはずなのに、それだけじゃないような気もして鼓動が早まる。


 松浦君を異性と意識し始めている自分に気づかない振りをしつつも、私はこうして松浦君からの合図を心待ちにしていたのだ。


 いつか、この合図が違う合図に変わるような予感に私は顔を上げ、雲1つない青空の眩しさに目を細め、小さく笑った……。






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