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【初恋】(悠真)

 年上のお姉さんは好き?

 短いお話。

<設定>

晴夏&悠真は高校生。

片思い中。

 前に先輩と散歩していて、自分の初恋を思い出したことがあった。

 初恋の人も年上だった。

 

 自分が年上好みなのかと気づいて恥かしくなってしまったのだけど、考えたら先輩は年齢上は1つ年上だってだけで精神年齢は幼い。

 見た目も全然年上ぽくないし、可愛いし愛らしいし無邪気だ。

 そう考えると僕が年上好みって言うのはちょっと違うような気がする。


 恋愛対象として先輩以外の女子先輩はを考えてみるけど、どの先輩も年上って感じが強くて近づきにくい。

 でも今、中庭の芝生の上で僕と一緒に日向ぼっこをしながら楽しそうに編物をしている先輩は、かけらも年上らしさが感じられない。


「あ、また。毛玉にちょっかいだしちゃダメだってば、網目がきつくなっちゃうでしょ!」

「編物なんていいじゃん。先輩こっち見てよ」

「だめ。編物しているところに来たのは悠真くんの方でしょ。明日までに後ろ身ごろを作っておきたいんだから邪魔しないで」

「邪魔ってなんだよ」


 せっかくの昼休みだっていうのに先輩は編物ばかりだ。

 だから気を引こうとしてちょっかいかけてしまったんだけど、先輩に邪険にされて面白くない。


「だって今週中には完成させたいんだもん」

「今週? なに、そんなに急がなきゃならない理由でもあるわけ? 例えば家庭科の課題とか」

「ううん。課題じゃないよ。だって寒いって言ってたから」


 先輩の言葉に、誰かの為に作っているのかと思って嫉妬心が沸き起こる。


「はあ? 誰が?」


 そう聞くと先輩はやっと手を止め僕と視線を合わせてくれた。


「悠真くん、グレーが一番好きな色なんでしょ?」

「え……」


 先輩の言葉に声をなくす。


 目の前にある毛糸の色はグレーだ。

 先週一緒に帰る時、先輩に新しいベストが欲しいって言ったことを思い出した。


 先輩の優しく温かな笑みに、僕はそっぽを向いて5センチだけ先輩の方に近づくように座りなおす。


「……イニシャルは入る?」

「もちろん、ちゃんと入れるよ」

「……先輩、ありがと」

「うん、頑張るね」


 先輩はにっこりと微笑むとまた編物に視線を戻し、リズム良く編んでいく。

 そんな先輩の姿を見ているだけで、くすぐったい気分なってしまう。


 僕よりほんの少しだけ上手な先輩。

 こんな時だけは先輩が年上だと感じる。


 また5センチ近づくように座りなおしてから僕は芝生に寝転び、先輩の姿を視界端に捕らえるてこっそりと微笑む。


 やっぱり年上好みなのは先輩にがぎり有効のようだ。


 可愛くて、

 優しくて、

 明るくて、

 先輩の全部が僕の好み。


 年下でも年上でも、

 先輩ならいい。


 初恋がたまたま年上だっただけ。

 先輩がたまたま年上だっただけ。


 僕にとって先輩が好みそのもの……。





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