表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/82

守るための武器、倒すための盾

古木市 大日本皇国総統本宅


WWCの能力で作り上げた大器オリジナルのこの総統本宅。この世界に転移する前、リアルで家族と共に住んでいた都内の一個住宅より大きく、なによりも防衛に適した形で作り上げていた


元々軍事施設などの機能的な造形に憧れていた大器は見るもの全てを防衛しやすさ、戦いやすさ、機能美と言った普通とは若干ズレた観点から見る悪癖があるのだ

それゆえ、大器が作り上げる街には必ず陸軍の展開拠点になる公園や運動場、公共施設といった大型の建物や臨時の滑走路に転用可能な高速道路、都市間を繋ぐ鉄道とシェルターとして活用できる地下鉄、空港、もしくは軍港といった施設と併設されていた

ちなみにこの総統本宅も非常時は軍の指揮本部として活躍できるほどの施設が地下に用意されている。大器の机のボタン一つ押せば壁や天井から銃がせり出てきたり屋根からSAMやファランクスがせり出てきたりもする、詰め込めるだけのロマン詰め込んでいた


そんな悪い癖が凝り固まった総統本宅の書斎。主に大器が表に出さないような非公式の作戦の打ち合わせなどをする時に使う場所で頭を悩ませていた


「つまりは、何か?想定していたとはいえ、二正面作戦になるということか?」


「そうです」

大器は椅子に座り、ミリア大将が差し出したムルテウ大陸での作戦推移の報告書を読んでいた


ムルテウ大陸のマブニ国、ハッシェル女王の血縁者との接触は想定より早く行えた


しかし、情報部の分析よりムルテウ大陸の状況は逼迫しており、本来の予定ならムルテウ大陸各国の反光皇派を駆逐して各国に恩を売りつつ、なおかつ海岸のクルジド軍を航空攻撃で釘付けにし、じわじわとクルジド国の物資兵員を浪費させる計画だったのだ


だが、反光皇派がここで光皇を倒してしまうと形勢は一気にクルジド側に傾いてしまう。反光皇派がクルジド国を受け入れるとなるとリビーや大器達がしていることはクルジド国の縄張りを荒らしている事と取られかねない。マブニ国と繋がりを持った以上はなんとしても反光皇派がクルジド本国に、派遣団の武力介入を知らされる前に一刻も早く撃退し、なおかつ光皇派を抱き込み、クルジド国に敵対する味方を増やさねばならないのだ


そこで大器達が取れる行動はいわゆる二正面作戦、クルジド国に出血を強いつつ、反光皇派を撃退する策だ


「現場部隊では既に腹は決まっているようです。ハーレム少将以下、全兵士が作戦に全力で従事しており、反光皇派と海岸のクルジド国陣地に対抗するための防御陣地造成は同時刻に行われるそうです」


「そうか……我々がしてやれることは?」


「次の定期補給の量を増やしてあげるべきかと、嗜好品と弾薬を中心にです。そして現在では弾薬の備蓄が足りておらず、閣下のお手をお借りしたく、参りました」


「ミリア大将、相変わらず君は前置きが長いな」


「申し訳ありません」


「まぁ、報告書を読み込む手間も省けるし、構わんよ、久々に君の顔も観れたし、お茶でもどうかな?」

大器は呆れたように頬を掻きながら立ち上がる。内心とは裏腹にその顔は笑顔だった


「では、お言葉に甘えて、いただきます」

大規模作戦以来、久々の再会に浮かれるのは大器だけではなかった
























ムルテウ大陸派遣艦隊

旗艦神州丸


派遣艦隊は改装された強襲揚陸艦神州丸を旗艦に同じく改装型デモイン型重巡洋艦のデモインとセイラム、駆逐艦は初月、新月、満月、花月の四隻、そして補給物資を出し尽くした輸送船の代わりに一隻の空母が合流していた


神州丸には対地支援用の攻撃ヘリと戦車や戦車を運搬するための輸送ドローンしか搭載しておらず、今回の局面に対し、マスドットリオの第三艦隊から急遽、増援として空母エンタープライズがやってきたのだ


エンタープライズは全長約340m、排水量十万トン、発進滑走路は二つ、と着陸用滑走路が一つ、機関は原子力であり、搭載された機体はF/A18が十二機、3個飛行隊と地上展開用のF16が同じく十二機、それ以外は物資や地上戦力などを満載してここまで来たのだ


そして合流したエンタープライズから今、まさに爆装したF/A18が離陸した


「副長」


「どうしました、少将?」

ハーレム少将が神州丸の艦橋からエンタープライズを観ながら語り出す


「第三艦隊から応援として駆けつけてきた大型原子力正規空母エンタープライズ、我々が必要とする物資のほとんどを積載し、対地、対空攻撃能力に特化した原子力空母が駆けつけてきてくれた」


「……良いことですな」


「考えすぎかな?()()()()()()

ハーレム少将が顎のホクロを触りながら呟いた。御厨副長も糸目を若干開き、ハーレム少将を見る


「まぁ、仮にここまでが上層部の思惑通りだったのなら、今のところ想定内と言えるのではないですか?」


「そうとも言えるな、せめて現場に青写真ぐらい教えてくれないと、こちとら冷や冷やしっぱなしだぜ……」

ハーレム少将はそういうとタバコをくわえ、ポケットからジッポーを取り出した


「禁煙区画です」

御厨副長が隣からタバコを奪い取り、ハーレム少将は手にしたジッポーを手持ちぶたさに閉じた


「そうだったな、じゃ私はCICで指揮を取る、御厨副長、ここは任せたぞ」


「お任せください」

御厨副長はタバコをハーレム少将に返し、甲板に向き直った


《ハニービー小隊、離陸する》

ハイドラやヘルファイヤやTOWミサイルなどを満載したハヴォックが四機、プロペラの回転数を上げていく

ハヴォック四機が離陸し、菱形のフォーメーションを描いて神州丸の周囲を旋回する


《パラソース隊離陸する》

続いて更に四機のハヴォックが離陸する

こちらのハヴォックのパイロンには250kg焼夷爆弾が6発とヘルファイヤ4発、搭載されており、兵員室には兵士が大勢乗せられている


《ハニービー全機異常なし、これより作戦空域へ向かう》


《パラソース隊、全機異常なし、ハニービーに追従する》


「ハニービー、パラソース両隊とも、幸運を。良い狩りを、次は戦車だ、ドローンを上げろ」

御厨が指示を出すと輸送エレベーターが動き出し、ティーガーⅠが現れた

そのティーガーには四枚羽の巨大なドローンが両側から挟み込むように取り付けられており、プロペラが回転数を上げ、やがてフワリと浮き上がった

戦車や重量がある物資を運搬するための大型ドローンで、多くのⅣ号戦車や支援車輌を吊り下げてハヴォックの後を追うように飛んで行った


「……うまくいってくれよ」

御厨が顎を撫で、そう呟いた



























モロビ国 平野部


決戦の舞台は田園地帯。刈り入れが終わり、積み上げられた藁と黒い地面、そして正方形に区切られた畑と僅かな丘陵しかない


「戦車隊の展開は完了しました」


「ごくろう」

マドリーヌ中佐はチョコバーを齧りながら双眼鏡を覗く


双眼鏡の先にはムルテウ大陸のあちこちから集結した光皇派の軍勢が布陣しており、槍衾の煌めきがここからでも見えた


「今回は、後ろから撃つだけでいいんだ、楽勝だな」


「個人的には物足りないのですがね」

ハンケイル大尉も同じようにチョコバーを齧り、双眼鏡を覗く


戦車は36輌光皇派の軍勢の布陣から600m後方に一列横隊で並んでいる


そして反光皇派の軍勢は既に1kmの距離にまで迫ってきており、いつ衝突が起こってもおかしくなかった


「航空支援到着まで、後5分ですね」


「我々の出番はその後だ、いくぞ」

チョコバーの包みをポケットに突っ込み、マドリーヌ中佐は自身が操縦するティーガーⅡに乗り込んだ


ハンケイル大尉もそれに倣い、自分のティーガーⅠに近寄って行った

その直後、低空を飛行して行ったハヴォックがハンケイル大尉の頭の上をフライパス。チョコバーの包みを吹き飛ばして行った


「始まったか」




















反光皇派、本人たちは革新護国党と名乗り、多くの国を落としてきた


革新護国党は内外に多くの同志を抱え、彼らの密偵による諜報活動により、攻め立てられた国は内外の敵、両方と戦い、敗れて行ったのだ


そして革新護国党はこの戦争に蹴りをつける為、自分たちが圧政の象徴として憎む、光皇本人を討ち倒すため、光皇が座す光都、モロビ国へと進軍した


「敵勢は二万ほど、槍衾を構え、後ろには謎の鉄塊を置いております!」


「ふむ、二万か」


「光都の常駐戦力のほぼ全てを出し切ったと見える。光皇め、万策尽きおったか」

革新護国党の陣幕の中、田園地帯の地図を前に話をするのは二人の武将


一人はジグルド、革新護国党の参謀にしてここまで革新護国党六万の軍勢を纏めた知将である


もう一人はセタント。革新護国党六万を率いる武将であり、槍の名手だ


彼ら二人の武勇と知略。この二人がいなければ革新護国党はムルテウ大陸の半分を占めれなかったと言われるほどの重要人物である

彼ら二人は地図を改めて見る。伝令が新たに地図に置いた敵の配置図を眺め、ジグルドは目を細めた


「ふむ、外つ国(クルジド)から手に入れた鉄砲、これさえあればかような二万の軍勢、大した障害ではない」


「クフフフ、時代はもはや鉄砲の時代、血湧き肉躍るあの闘争の時代はおしまいかのぉ」

セタントが寂しそうに呟く


「今までの地方領主の手勢は多くて六千、芸もなく突っ込んできただけゆえ、鉄砲と大筒の連射で片が付いた。だが此度は数が多い。故に肉薄される恐れがある」


「であらば、我の槍の冴えの見せ所ということか、ガッハッハッ!腕がなるのぉ!」

セタントが大口を開けて笑い、立て掛けられた自身の愛槍を見る

薙刀よりも分厚い刀身と刃渡り、自身の身長より長い槍であり、刃と持ち柄の接合部にはセタントのトレードマークである馬の尻尾の毛が装飾として付けられている

現代人が見たらそれは三国志の青龍偃月刀に類した武器であると気づくだろう


「大砲と鉄砲の準備も万端こちらの手勢は五万、負ける理由はなしだな」


「だが、敵もそれはわかるはず。向こうの将はおそらくタモノが指揮をとっているに違いない。奴が何の策もなく戦に赴くとは思えぬ。何か奇策を用いるに違いない」

ジグルドが眉を潜め、地図を睨み付ける。対するセタントは気楽だった


「なぁに、二倍以上の戦力がこちらにあるのだ。一万はマブニに向かわせているとは言え、五万人、鉄砲も三万ほどはある、単純計算なら一斉射で全滅だ」


「思い込みは重大なミスを招く。軍を念のため二つに分け、先鋒三万と後衛二万の軍勢に分ける。セタント、前衛は任せたぞ」


「おうとも」

ご意見ご感想お待ちしてます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ