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臭い物には爆撃を

北部防衛線


「魔法兵、放てぇ!」

ミカズ中尉の号令の元、魔法兵がKar98kに先端に取り付けた魔法の杖から火球の魔法を放ち、有刺鉄線に引っかかっていた猪の魔獣を焼き払った


「キリが無い!中尉!砲撃支援はまだですか!?」


「砲身冷却だとよ!ちくしょう!」

ミカズ中尉は足元の弾薬箱からMP40のマガジンを取り出し、自分のMP40に差し込み、怒鳴る

シュタールメットから飛び出た猫耳を威嚇するように明後日の方角に向け、焦燥と疲労に忙殺された亡者のような顔色の悪さでMP40を銃眼から覗かせる。胴に吊るしたマガジンポーチがひどく重そうである


「空挺兵の航空支援はどうなってるんです!?」


「俺が知るかッ!」

やけくそ気味に怒鳴り散らし、次のマガジンを箱から取り出した


ミカズ中尉が篭る塹壕から700m後方ではバレンタイン戦車のキューポラから頭を出したグーリッヒ大尉が双眼鏡で前線の様子を見ていた


「うむぅ、航空支援無しではもって一時間かそこらか……弾種榴弾、左へ2度のデカイやつにぶち込め、ファイヤッ!」

バレンタイン戦車の6ポンド砲から発射された榴弾は有刺鉄線のバリケードに自身の角を絡ませて暴れる鹿のような魔獣に直撃。粉々に粉砕した


《地上部隊へ、こちらカッター1-1!敵の飛行型魔獣の存在を確認!そちらへの対処は不可能!繰り返す、地上への援護射撃は、不可能!》

グーリッヒ大尉が空を見上げると軽自動車並みのサイズをしたスズメバチがアパッチ二機に追いかけ回されていた

それだけじゃない。そこら中に同サイズのスズメバチが飛び交い、へりや戦闘機に攻撃を仕掛けている


「クソォ!落ちろぉ!キモいんだよ!虫やろう!」

メヒド軍曹が嫌悪感丸出しで30mm機関砲をスズメバチに向けて撃ちまくる


「捕まれ!」

オスカー大尉がアパッチを左に傾け、バックミラーに写ったスズメバチの刺突を回避、全速で離脱していく


《メーデー!メーデー!カッター2-1墜落する!墜落する!ちくしょう!》

オスカー大尉のアパッチを追い越したスズメバチが前を行くアパッチのテールローターに直撃し煙を吐きながら墜落した


「くそぉ!こんなのアパッチの戦場じゃねぇ!」

目眩しでフレアを放出し、スズメバチを追い払う


「一撃だ!一撃でハイドラを撃ち尽くすッ!メヒド、かませッ!」


「ラジャーッ!」

機体を前のめりに傾け、高度を下げつつ、塹壕に駆け寄る狼の群れにハイドラとヘルファイヤを照準もつけずに乱射する

突撃する敵の魔獣の横合いから薙ぎ払うように撃ち込まれたロケット弾は奇跡的に味方塹壕に当たることは無かったが、敵の勢いを一時的に収めた


《カッター1-1、助かった!お仲間のパイロットはこっちで保護した!》


「すまない、助かる!」


《こっちも防衛線の立て直しに目処がついた!あんた達のおかげだよ!》

そう言われると無理した甲斐があった。あれだけ追いかけてきたスズメバチも爆発に怯えたのか、居なくなっていた






















同時刻


ダンジョンと化した森に足を踏み入れた突入部隊は事前砲撃と爆撃によって薙ぎ払われ、炭化した森の跡地を進んでいた


焼け焦げた森林の中に一本、青々と葉を茂らせた木が一本


「トレントだ、やれ」

するとM202ロケットランチャーを持った工兵が現れ、木に擬態したトレントに焼夷弾を発射した

着弾と同時にナパームが撒き散らされ、トレントが暴れ出した


「所詮は魔物。いくら擬態出来るとはいえ、奴らに出来るのは普通の木だけ、周りに合わせて擬態する知能が無い以上辺りが焼け野原なら簡単に見分けがつく」

劉少尉はM202を背負った工兵のヘルメットを軽く叩き、部隊に前進を合図した


「こちらアルファ6、定時連絡。順調に進軍中。焼夷弾、並びに火炎放射器にはまだ余裕あり、送れ」


《こちら中隊本部(ブラボーリーダー)了解した、アルファ6はもうじき捜索範囲に差し掛かる。注意されたし》


「了解した、この先は爆撃されてない、原生林だ!誤射に注意!」

そろそろ化学兵器が隠匿されると思われる地点に辿り着く

その予想エリアは砲爆撃されていない。肝心の化学兵器に当たってそれらが撒き散らされたらそれこそ元の木阿弥だからだ

よって劉少尉達の目の前には来るものを拒むような緑の要塞が現れた


「工兵、前へ」

すると火炎放射器のタンクを背負った工兵が現れた


「小隊、これからが本番だ!お互いバディを見失うな!工兵を援護しろ!いくぞぉ!」

ネルソン大尉の号令とともに兵士たちは草木をかき分けて森に入っていった


トレントを見分けるために近くの木に手当たり次第に弾を撃ち込み、撃たれて暴れ出した木には工兵が群がり、火炎放射で焼き払う


《アルファ6、前方より多数の熱源反応、ブラックウルフと思われる》


「小隊、前方へ一斉射撃、撃てぇ!」

密林の隙間、茂みの影から駆け寄る大型バイクか軽自動車並みの大きさをした狼に対し、兵士達は手にした火力を叩き込む


半狂乱になった工兵の一人が絶叫と共に火炎放射で目の前をなぎ払う。燃え盛る木々と共に火達磨になった狼がのたちうまわる

その中の一匹、真正面から炎をくらうも、その走りは止まらず、火を纏いながら工兵にくらいついた

肩から上を喪失した工兵は火炎放射器のトリガーを引いたまま崩れ落ち、逆流した燃料はやがて熱をタンクに伝え、大爆発した


「工兵は下がれ!機関銃班は援護しろ!」

ドラムマガジンをブラックウルフの死体に投げつけ、ネルソン大尉は怒鳴った


「劉少尉!」


「何ですか!?」


「航空支援を要請しろ、CASだ、何でもいい!」


「了解!こちらアルファ6!航空支援を要請する!大至急だ!」


《こちらブラボーリーダー、少し待て》


「早くしてくれ!」

弾が切れたG36を置き、拳銃を引き抜いて牽制射撃を繰り返す


《こちらファイヤーアロー1、支援が必要だと聞いてきた》

その無線の直後、二機のA-10がフライパスしていった


「ファイヤーアロー1、こちらアルファ6、今から紫のスモークで位置を伝える。そこに思いっきりぶちかましてやれ!」


《ラジャー紫のスモークだな》

劉少尉は腰のポーチから紫色に塗ったスモークグレネードを取り出し、安全ピンを引き抜くと力一杯投げた


「小隊各員、紫のスモークに航空支援がいくぞ!」

脇に置いたG36を再び拾い上げ、新しいマガジンを取り付ける。紫色の煙がブラックウルフの群れの真ん中から立ち上っていた


《紫のスモークを確認、ファイヤーアロー1、エンゲージ》

その直後、GUA-8毎分3000発近い大口径ガトリングがブラックウルフの群れを文字通り引き裂いていった


劣化ウランの弾頭の雨がブラックウルフに突き刺さり、粉々に引き裂いていく。魔獣の群れはあっという間に血煙と化し、後に残されたのは耕され、無残に破壊された木々と肉片のみだった


「イカれてやがる、くそったれ」

メキメキと音を立てて倒れる大木と胴体を真っ二つにされても僅かに息があるブラックウルフを目の当たりにして劉少尉は思わず呟いた


「ファイヤーアロー、こちらアルファ6、支援に感謝する」

肩に落ちてきた木の破片を振り払い、部隊を集結させる


「劉少尉、状況は?」


「4名死亡、6名軽症です。負傷者に護衛をつけて遺体と共に後退させるとすると15名の損失です」


「そうか、設楽(したら)軍曹!負傷者後退の指揮を取れ!」


「了解!」


「ネズチフ伍長、ドローンでこの先を偵察しろ!」


「わかりました!」

ネズチフ伍長が背中のバックパックから取り出した6輪の大型ラジコンのようなドローンを起動させる。左腕に装着したデバイスにジョイスティックを取り付け、ドローンを軽快に走らせる


「弾薬を再分配しろ!武器の故障があるものは直ちに報告!三分後には出発する!」


「大尉、他の隊からいい知らせは届いてますか?」


「今のところ無いな。誰でもいいから早く目的のブツを見つけて欲しいものだね」


「大尉!見つけました、ダンジョンコアです!」

ネズチフ伍長の報告にネルソン大尉は苦虫を噛み潰したような顔になった


「よりにもよってそっちか!ネズチフ伍長、他には!?」


「投棄されたドラム缶が大量に、間違いない、化学兵器です!」


「了解した、ネズチフ、映像を広域ネットワークにアップロード!そのドローンにビーコンは積んでるか?」


「勿論です!もう起動しました!」


「上出来だ!帰ったら俺が奢ってやる!こちらアルファ6、ジャックポッドだ!お目当のブツはここにある!」


《こちらブラボーリーダー、映像とビーコンを確認した。爆撃機がそちらに向かってる。目的は達成した。突入部隊は直ちに離脱》


「撤収だ!急げ!」


「グズグズするな!」

次の魔獣が湧き出す前に少しでも早く離脱する。汚染浄化剤の散布とはいえ、爆撃機から投下されるのだ、至近弾でも食らおうものならただでは済まないからだ























作戦は無事に完了した


化学兵器の中和剤は散布され、全ての兵器が無力化されたのが確認された


中和剤は水脈や土壌の汚染にも効き始めており、ゆっくりだが疫病騒動も治まっていった


群狼の森のダンジョン化は止められなかったがそれでもダンジョンコアは確保され、大日本皇国の管理下に移った


作戦は完遂されたのだ


「ったく、冗談じゃねーッスよ」

一人の男が馬車の行者席でボヤいていた


目深にローブを羽織り月明かりが影になり顔は見えない


「まったく、こっちがフラティーズぶっ殺してる間に自分達はちゃっかり物をゲットとか、してやられたッス」

物言わぬ馬に愚痴を言うその男は大きなため息を一つ吐く


「お陰で、高い買い物になったッス……チクショウ、オマケに騙されたのがムカつくッス」

男が操る馬車の荷台にはハザードマークが書かれたドラム缶がいくつも積み込まれている


そう中身はレッドバルーンと呼ばれる化学兵器である


「たまたま爆撃の範囲外にほんの少し残されてたカスみたいな残りに、あれだけの大金とか、ムカつくッス、皇国軍だかなんだか知らないッスけど、こっちを舐めやがって、足元みやがって……」

そして再び溜息。だが顔を上げると


「まっ、いいや過ぎたことは、目標は達成したし、日本軍にも協力者がいるってわかったし、なんとでもなるッス!」

男は明るくそういうと鼻歌を歌いながら馬車を走らせた



まさかドイツ軍がH&Kとの取引にまったをかけるとは、デザインや評判がいいからドイツ製の武器が大好きな私としてはかなりショックでした

盛者必衰ってやつですかね

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