最終攻勢
マッポレア平原
日リ連合軍陣地
「ここなのか……」
大器はマッポレア平原の一角に立っていた
最前線へ物資や兵員を満載したトラックがひっきりなしに走っていく喧騒から少し外れた箇所
「はい、間違いありません。約二年前の今日、トンネルラット作戦の犠牲者が出たのがここです」
脇に控えたミリア大将がそういった。大器は自然と頭に乗せた制帽を脱ぎ、黙祷を捧げた
その場にいた高官全員が帽子を脱いで黙祷を捧げ、やがて大器はWWCの設置オブジェクトの中の石碑を創り出し、鎮魂碑と漢字で彫った
大器は今でも後悔していた。彼らの遺体も回収出来ず、得体の知れない化け物の餌食にしてしまった事を
辛酸を舐めたその日、必ず戻ると決めた場所に戻ってきたのだ
「大器さん、ここが話してくださった人々が眠る……」
「そうです、リビーさん。我々の命の恩人達が眠る場所です」
大器は同行していたリビーにそういった
慰霊碑の建造、そして両軍の士気高揚のため両国の重要人物の視察を兼ねた二人は出来立ての御影石で出来た立派な石碑を前に話し始めた
今回作戦に参加するのは日リ両陸軍合わせて六個師団、空軍からは四個爆撃機大隊、砲兵や機甲戦力に至っては三個師団と過剰とまでの戦力を集結させようとしていた
それほどに大器はこのマッポレア平原の戦いを重要視しているのだ
皇国軍だけでなく、リラビア側からしてもこのマッポレア平原は意図せず苦渋を舐めた因縁ある戦場なので今回の戦いにはかなり力を入れていた
この戦いに完全勝利する。この戦いはターニングポイントたりえるのだ
大器としてはこの戦いに勝てばクルジドと正当な和平交渉につけるのではないかと考えていた
事実、大器が創り出したWWCの工場群もフル稼働させているのだが、いかんせん備蓄物資やWWCのポイントなどの限界が近かったという理由もあり、最初の試算通り、全力での戦闘は二年が限界だった
「二年でここまで来ることができたのは間違いなく貴方方が力を貸してくれたからです、大器さん」
「ですが、貴女の協力も大きな所だと思います。これは我々両国の協力事業なのですから」
慰霊碑を眺め、二人は歩き出した
マッポレア平原にいくつかある丘陵を超えた先、日リ両国の将校が大勢集まり、双眼鏡を覗いては広げた地図を前に議論を交わしていた
「ローズ中佐、戦況を説明してくれるか?」
「はい閣下」
ローズ中佐は双眼鏡を下ろし、敬礼した
「敵の総数は六万から七万、後方に更に召喚獣や調教した軍用の魔獣などが確認されています。その総数も含めると十万程の勢力です」
そういうとローズ中佐は地図を指差した
地図の上にはチェスの駒がいくつか置かれており、大器達がいる後方の司令部には白のキング、最前線の右翼にはルークが、中央にはポーン。左翼にはビショップが置かれていた
「ここ、正面のリバティ基地跡地に敵は最大火力を集めており、ここが敵の主力でしょう」
「そうか、砲兵はどうなってる?」
「村田少将の重砲連隊が既に展開を完了してます。216門の重砲、更に680以上の野砲が展開待機中、砲弾の備蓄も各砲に50発程ではありますが用意できてます」
地図には扇子のような放射状に掘られた砲兵達の陣地が記されており、リアルタイムの映像を投影するドローンの映像を見ると今でも拡張の工事のための重機が忙しく動き回っている
「女神様の準備は大丈夫そうだな」
「はい、ですが輸送能力を砲に集中したため、兵員の輸送に時間が掛かってます。コロモクからの鉄道の敷設が間に合っておらず、陸軍は先行した第67歩兵連隊、第36騎兵連隊、第506野戦工兵大隊のみで、彼らは中央の陣地で命令を待ってます」
「空軍の爆撃機が先手を切ると聞いていたが、到着はいつになる?」
「1450到着予定なので、後三十分程です」
「その間歩兵と砲兵のみで何倍もの敵と渡り合わないとならないのか……」
「その分を、我らリラビア軍の精鋭が埋めております、ご安心ください」
そこで口を挟んだのはリラビア軍の将軍であるタバラ将軍である
リラビア魔法国では侯爵の地位にある貴族であり、王族の末席リビーの遠縁に当たる者である
貴族らしい知的な印象は無いが、権謀術数が飛び交う貴族界隈を生き延びるこの男はただ者では無いということだ
「タバラ将軍、リラビア軍はどういう布陣で?」
「短機関銃や重機関銃を装備した重装歩兵を二万と擲弾翼兵八千が左翼の丘を警戒する形で展開しております。有刺鉄線と地雷。塹壕とトーチカで既に迎撃の準備は出来ております」
「将軍、左翼の森林地帯は?」
リビーがそう尋ねる
「抜かりなく。小銃で武装した三万の軽歩兵を配備しております、こちらには二万人、魔法を使える者を集中配備しております、防衛機構も同じかそれ以上を揃えております、全てリビー殿下の作戦通りの配置です」
「兵の数は五分五分、後は敵の出方ですね」
「既に敵の右翼と左翼で動きが活発になっております。もうじき攻勢が始まると思われます」
ミリア大将が手に持ったタブレットを操作し、偵察ドローンの映像を見せてくるマーキングされた敵の夥しい数が映し出されていた
その直後、端末に通知が入った
「……訂正します、敵の攻勢が始まりました。右翼と左翼です」
「中央は?」
「以前動きなし」
「中央はあくまで待ち構える気のようだ。まずは両翼の敵を殲滅させるのだ」
そういうとタバラ将軍は無線機を手に取り、配下の将校に指示を出し始めた
「戦いが始まるのですね……」
リビーが憂鬱そうに呟く砲兵陣地の喧騒がここまで聞こえてきた
「現地視察はまた今度にしましょう、リビーさん。せっかくです、帰りのヘリが用意されるまで、我らの頼れる兵士たちの戦いを見守りましょう」
左翼
「なぁに、簡単だ。その照準に敵が映ってる限り撃ち続ければ問題ない、そういうもんだ」
古参兵のドワーフの兵士は手にした蒸留酒の瓶をラッパ飲みした
対するMG42の射手をしている人間の若者は顔を真っ青にしながら言った
「ご、伍長殿、ですが……あの数……」
彼の視界には人の壁があった
所狭しと人が並び、手に剣や槍を持ち、こちらを殺す気満々で歩みを進めていた。その数は彼が今いる塹壕の中の兵士達より遥かに多い
「あれだけ敵が視界一杯に広がってれば外す方が難しいさ、だから簡単なのさ」
飲み干した酒瓶を脇に置き、弾薬箱の蓋を開けた
アルコールが回り、虚な目をしながら予備弾薬や手榴弾を並べる手際に迷いはない
「俺たちの役目は砲兵の攻撃を生き延びた運の悪い野郎をミートパテに変えてやること、有刺鉄線で敵は足を止めるはずだ、そこが狙い目さ」
ドワーフの伍長は最後にガバメントに弾が入っているか確認し、懐からスキットルを取り出した
「ほら飲め、落ち着くぞ」
若者の口に無理矢理スキットルを押し付ける
「うっ!うげぇ!な、なんですか!この酒は!?」
「ドワーフに代々伝わる酒さ、ジャガイモが原料なんだ、火がつく程の度数だから火酒ってみんな呼ぶんだ」
「な、なんていう酒だ……」
「ハッハッハッ!そぉら砲撃が来るぞ!」
敵が最初の有刺鉄線に取り付いた辺りで砲弾が空気を切り裂く音と共に降り注いだ
爆発は敵の後方に着弾。被害は皆無だった
「伍長殿、当たってませんよ!」
「今のは試し撃ち、よくみとけ、その内斉射が来るぞ」
その言葉を聞き、耳を済ませると確かに聞こえた。笛の音かそれとも鳥の声のような甲高い音が、それも複数
直後、敵の目の前に複数の爆発が起こった。土煙を吹き上げ、飛び散った無数の破片がクルジド兵に襲いかかった
高精度の観測器や空中着弾観測ドローンなどを複数導入した皇国軍の砲撃はまさに百発百中、有刺鉄線で足を止められている敵を叩きたい放題だった
砲弾の爆発で焦げた真っ黒い土煙が晴れるとその先にいたはずの敵兵はいない、だが新たな敵兵がまた後ろから現れた
「おい!敵が障害を突破した!」
見ると敵は魔法で有刺鉄線の束を破壊したらしく、決壊したダムの水のようにその一点の穴から敵が一斉に溢れてきた
「俺たちの国にようこそ!」
伍長のがなり声と共に機関銃手が一斉に射撃を開始した
複数方向から同時に撃たれ、クルジド兵は状況を把握する前に血を吹き出しながら死んでいった
「落ち着いてよく狙え!前だけ見てるんだ!」
伍長が拳銃片手に怒鳴りながら替えの弾帯を取り出す
「ご、伍長、俺……」
「人を撃つのは初めてか?なぁに誰だって最初はそうだ、辛かったら代われ」
「……大丈夫です!」
そういうとMG42のレバーをコッキング。今度は狙いを定めながら走ってくる敵を撃ち続けた
「いい調子だ!撃て撃てぇ!」
その瞬間、伍長の視界に影が入った。上を通り過ぎたのはM79グレネードランチャーやMP40を抱えたリラビア軍の擲弾翼兵の一団だ
クルジド兵の集団に擲弾を投射。後列の銃兵が薙ぎ払うように銃撃を浴びせていく
「撃っても撃っても!キリがありません!」
「ぼやくな!手を動かせ!」
ドワーフの伍長が最後の弾帯を渡し、ライフルを手にした
「予備の弾を持ってくる!それまで持たせろ!」
「ちくしょう!了解!」
人がギリギリすれ違える狭さの塹壕を足早に駆け、弾薬集積所の機銃弾の箱を両手に掴む
距離的には100mも無い、近場。同じ目的の兵士と押し合いしながら走る
足早に塹壕を駆け、滑り込むように元の銃座に戻る
「生きてるか!?」
「なんとか!」
置いてきた手榴弾は既になく、ライフルに弾を装填していた
「早く装填しろ!」
弾帯を素早く装填し、間近まで来ていた敵に弾丸の雨をくらわせた
「翼兵だけじゃどうにもならんか!」
あっという間に撃ち切った弾帯を交換し、ついでに真っ赤になった銃身も交換した
《左翼防衛隊、第二線陣地へ後退せよ》
「後退命令だ!急げ!」
「はい!」
残った弾薬をばら撒くように撃ち切り、機関銃の台座と銃を分離させる
「急げ急げ!」
ドワーフの怪力を生かして二人がかりで運ぶ台座を一人で持ち上げ、塹壕を走った
撤収が完了すると同時に、砲兵隊の全力射撃が第一線陣地に降り注いだ
右翼
「撃てぇ!」
草木で隠蔽した歩兵砲が一斉に発射され、接近するクルジド兵を吹き飛ばした
森林地帯の一部を切り開いて作られた中間地帯。クルジド兵は切り株や残された岩、僅かな窪みに身を隠し、前進していた
対するリラビア軍は一直線に塹壕を掘り、木材で補強したトーチカや掩蔽壕から機銃や歩兵砲を突き出し、迫りくるクルジド兵に猛射撃を浴びせていた
「誰か弾薬ないかッ!?」
「迫撃砲による支援射撃要請!座標はH2-1-9、R4-7-2!急いでくれ!」
遮蔽物が少ない左翼と違いこちらは遮蔽物の多い森林地帯、結果的に敵の接近を許していた
「クソが!なんで数だ!」
リラビア軍指揮官のマルビク少佐は双眼鏡を覗きながら忌々しく敵の軍勢を眺める
敵は召喚獣を前衛に立て、貴重な魔法使いを惜しみなく投入して障害物を難なく粉砕し、地雷原を人の波で突破しようとしていた
マルビク少佐は上級司令部への直通回線を取り、電話し始めた
「そうですッ!はい!なんとか持ち堪えてますが、重砲の支援がないことには防衛は困難です!」
《わかった、砲兵隊と繋ぐ、少し待て》
その言葉が聞こえると同時に電話が切れ、指揮官のマルビク少佐は受話器を戻した
「早くしろ早くしろ……」
やがて電話が鳴り、ワンコールしないうちに少佐は電話を取った
「こちら右翼防衛隊のマルビク少佐だ、大至急砲撃支援を要請したい、座標はH2-2-9からJ3-5-4一帯だ!急いでくれ!」
《少佐、お言葉ですが味方防衛線から50m圏内ですよ!?》
「今やらないと防衛線が突破される!やれ!」
《……了解!待機せよ》
無線が切れ、マルビク少佐は再び双眼鏡を覗き込む
「少佐伏せてください!流れ弾に当たります!」
マルビク少佐の位置は砲撃要請した位置から僅か90m程下がった観測陣地である、十分流れ弾も当たる位置だった
「心配いらん、俺は生まれつきついてるんだ」
直後、右翼担当砲兵隊の全力斉射が降り注ぎ、最前線が巨大な爆発に包まれた
木々をなぎ倒し、敷設した障害物なども粉砕し、塹壕に伏せたリラビア兵達はただただ直撃しないことばかり祈っていた
砲撃の最中、ずっと立ち上がり、最前線を睨んでいたマルビク少佐だが、自分の双眼鏡に突き刺さった砲弾の破片を見て
「ほらな、ついてるだろ?」
「……そうですね」
飛んできた破片が頬を掠めた副官は息も絶え絶えな感じで返すのが精一杯だった
「予備兵力を投入し、残敵を掃討。同時に工兵隊と治療隊を向かわせろ!」
「ハッ!」
「第一波は凌いだ。だが思ったよりもやるな、増援の要請をしないとな」
「左翼、右翼両陣地ともに敵の第一波攻撃を粉砕、現在陣地と部隊の再編成に移ってます」
「かなり損害が出ましたね」
「想定の範囲だな」
一昔前の大器なら心を痛めていた数の犠牲者だが、今ではすっかり動じなくなり、むしろこの程度の損害に収めたリラビア軍の指揮官の辣腕に感心していた
「見通しの利く左翼平原に擲弾翼兵を集中配備するリディアビーズ皇女の策のおかげですな」
「皇国軍の航空機運用を真似しただけですが、十分通用することがこれで証明されました」
リビーが胸に手を当てながらため息を吐く。大日本皇国に武官として来ていた際の模擬戦闘や前線視察同行と言った経験から裏付けられた航空戦力と重火器の集中投入。それも見通しの利かない森林ではなく平地での運用である
対して森林地帯では遮蔽物となる森林を意図的に撤去した戦闘地帯の構築と無線機や魔法使いと言った重量に縛られない機動火力と連絡手段を用いた防衛線を築くことに成功していた
「さて、次はこちらの攻撃の番ですかな?」
「はい、爆撃隊も既にポジションについたと報告がありました」
ミリア大将がタブレットを操作しながらそう言った
大日本皇国空軍の爆撃機はクルジド軍の後方地帯と前線を行き来するクルジド軍輜重部隊を爆撃し兵站を麻痺させるのが主な仕事になりつつあるので、久々の実戦投入に空軍はかなり張り切っていた
「爆撃機と護衛戦闘機あわせて総勢200機以上、こんなに投入したのか?」
「無傷の中央陣地に100機、両翼の敵陣地に50機ずつ投入される予定です」
「この爆撃で、チェックメイトだな」
マッポレア平原上空6000m
大日本皇国空軍 B-29
第24爆撃機大隊
「こちらオーロラリーダー、投下予定時間だ」
ウィルソン大佐は操縦席から無線で投弾手に伝えた
《ラジャー、腹一杯食わせてやりますよ!》
「こちらオーロラリーダー、予定通り南東方面よりアプローチする」
《こちらドンフェンリーダー、北西より接近》
「投弾よーい、よし、今ッ!」
ウィルソン大佐の指示と同時にB-29の編隊24機が爆弾槽に吊された爆弾を一斉に投下し始めた
爆弾は中央陣地を満遍なく爆撃していき塹壕にうずくまるクルジド兵に無差別の死を与えていった
「やはり低空飛行で集弾率を上げる判断は正しかったですね」
「うむ、制空権があるときはこれで行こう」
副操縦士と話しながら手元の端末に転送されてくるガンカメラの映像を眺める。クルジド軍の陣地は爆煙に包まれていた
《ヒィッハァーッ!燃えろ燃えろぉ!》
《オーロラ2-1より報告、目標へ全弾命中!》
「よぉし、オーロラリーダーよりアイアンフェイス、爆撃の効果大とみとむ」
《了解した、ドラゴンブレスを前進させ、地上部隊にも連絡する。オーロラ隊とドンフェン隊は基地へ帰投せよ》
「ラジャー」
地上
クルジド軍 中央陣地
「ファイヤッ!」
グーリッヒ大尉が無線に向かってそう叫ぶと一列に横並びになったⅣ号戦車の75mm砲が一斉に砲撃した
「砲弾の穴に注意!敵がいたら真っ直ぐ突っ込め!」
戦車の砲撃は敵が伏せる塹壕や穴の周りに着弾する。対する敵は果敢にマスケット銃で反撃するがそもそも戦車相手だと勝負にならなかった
同軸機銃で駆け寄ってくる敵の自爆兵を薙ぎ倒し、予定のラインまで到達した
「全車速度を落とせ!微速前進!歩兵達の援護だ!」
やがて戦車は全ての隊が速度を落とし、横一列に並んで前進し始めた。その様はまさに戦車の壁。その壁の後ろから出てきたのはサブマシンガンやショットガンなどを抱えた皇国軍の兵士達だった
「突っ込めぇ!皆殺しだぁ!」
ソアラ大尉の号令とともに歩兵達は雄叫びを上げ、駆け出した
敵の塹壕までの距離はおよそ50m。戦車の砲撃や機銃掃射は相変わらず継続されており、なかなか敵は頭を出すことが出来なかった
だが、敵はそれらも織り込み済みで、立ち上がり、マスケット銃を撃った
クルジド軍のマスケット銃の火薬は黒色火薬、燃焼すると凄まじい煙が出る
そしてその煙は意外と馬鹿にならない。三斉射もするとたちまち人工的な濃霧が戦場に形成された
その間に皇国軍兵士も何名かが弾に当たって脱落。クルジド軍もさながら長篠の戦いの信長のように数人体制で発射と装填を分業して連射速度を上げていた
だが、それでも自動小銃の連射には遠く及ばない。たちまち弾幕に絡めとられ、次々とクルジド兵が倒れていった
やがて塹壕の目の前にたどり着いた皇国兵は手榴弾を投擲。爆発と同時に塹壕内に突入した
爆発で平衡感覚を失ったクルジド兵を蹴り倒し、頭や胸にトドメに銃弾を叩き込む
至近距離でのマスケットの銃撃や刺突に注意すれば敵も大したことはない
「塹壕から敵を叩き出せッ!容赦するな!」
塹壕こら飛び出して逃げる敵兵の背中に銃弾を叩き込む
《地上部隊へ通達。追加の支援砲撃を行う、現地点で待機せよ》
「敵の煙幕に注意!深追いはするな!」
黒色火薬が発した煙幕は想像以上に濃く、数m先が見通せないほどだった
そこへ着弾する支援砲撃。直後、忍び寄ってきた敵兵が襲いかかってきた
「クソッ!こいつら死ぬのが怖くないのかッ!」
砲撃の合間を縫って突入してきたクルジド兵に銃撃を浴びせ、槍の刺突をライフルで強引にいなし膝をストックで殴り付け、崩れ落ちた敵兵の顔面に銃弾を叩き込む
「ソアラ大尉!敵の勢いが止まりません!」
「知ってるわ!とにかく殺し続けろ!この位置を死守だ!」
ソアラ大尉は剣の振り下ろし攻撃相手の手首を掴み、そのまま器用に払い腰のように敵を地面に叩き付け、引き抜いたグロック19を頭に二発撃ち込んだ
「ニック軍曹!」
「大尉!」
ソアラ大尉が呼んだニック軍曹は敵からぶんどったメイスで襲ってくる敵をなぎ倒しながら現れた
大柄な身体に濃い無精髭、冬眠から覚めた熊のような荒々しい大男だ
「確かAC-130が待機してたよな!奴らの砲撃が今こそ必要だと思わんか!」
「賛成です!派手にやってもらいましょう!」
メイスを投げ捨て、側で蹲っていた兵士の無線をもぎ取る
「こちら第一中隊のニック軍曹だ!AC-130による航空支援を要請する!」
《こちらドラゴンブレス2、要請を確認した、これより砲撃にうつる》
「塹壕には撃つな!敵味方が入り乱れてる!」
《了解、2番と3番のみで対処する》
そのやりとりの後、AC-130が旋回し始める
《塹壕線を確認。攻撃開始》
角度を傾け、砲撃を開始。2番が塹壕に殺到するクルジド兵の集団に着弾した
《いいぞ、そのペースだ》
《塹壕ぞいに飛んでくれ、一列に並んだ奴らを月までぶっ飛ばしてやる》
《ラジャー》
皇国軍が籠る塹壕目掛けて殺到する敵の集団目掛けて砲撃を繰り返し25mm機銃を放つ
《折り返し地点だ、揺れるぞ》
攻勢の端まで到達し、機体が傾いて元の方向へ戻る
《アイアンフェイス、こちらドラゴンブレス2、敵は後退しているようだ》
《了解した、残敵を掃討せよ》
《ラジャー》
「部隊は第一線陣地を制圧。中央は突出する形で橋頭堡の確率に成功しました」
「後二時間もしたら日が暮れる。補給を怠るな。中央陣地を最優先にしろ!」
ミリア大将は忙しく指示を出し、紅茶をすすりチョコを口に含んだ
「大将殿、少しお休みになられては?」
「ローズ中佐か。私はまだやれるさ、右翼陣地はどうだった?」
「現場指揮官の英断が功を奏しました。現在は防御陣地の再構築中です」
「後は攻撃ヘリの進出を待つのみだな」
ミリア大将は息を吐いた。まだまだ終結には遠そうだった




