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ホットゾーン

バラード市街地 中央広場

大日本皇国陸軍 バラード憲兵隊

ゴールド憲兵少尉


《こちらホーネットリーダー!指揮所の側まで暴徒が押し寄せてる!魔法使いもいやがる!今すぐ装甲車の支援が必要だ!》


《こちらアイアンホース2!タイヤが脱輪して身動きが取れない!ブロージ通りの入り口だ!誰か来てくれて!》


《こちらホーネット3-1!ハンヴィーが破壊された!後退する、暴徒が多すぎる!》


《こちらファイヤフライ1、目標到達まで後……》


「ゴールド少尉、聞いた通りだ。進路をブロージ通りに変更、アレクセイ、機銃につけ!ホーネットリーダー、こちらホーネット2-4、ブロージ通りに急行する」


《了解した、付近に迫撃砲を装備した小隊が展開してる、コードネームはハンマー3だ》


「了解した、ホーネット2-4アウト」


「進路をブロージ通りに変更!」

クロウリー中尉の命令を聞き、ハンヴィーのハンドルを握るゴールド少尉は目的地のブロージ通りへの道にハンドルをきった


「アレクセイ、民間人が多い、誤射に注意しろ」


《了解、くそったれ、誰が敵かわからない……》

ゴールド少尉の視界には突然始まった暴動に逃げ惑う市民がうつっていた


子供を抱えて泣き叫ぶ女性や棍棒を持って助けを求める男性、怪我人を介抱する騎士、怪我した仲間を引きずる憲兵、状況は混迷を極めていた


「状況は最悪だな……」

クロウリー中尉はM4に弾が装填されていることを確認し、ホルスターのM29リボルバーに弾丸を込めていく


「中尉、リボルバーなんて使ってるのですか?六発だけじゃ不安ではないですか?」


「なんだ、その胸元のベレッタを俺に売りつけるのか?この六発があれば六人の敵が倒せる。大事なのは撃った弾数じゃねぇ、当てた弾の数だ」

弾を装填したシリンダーを回転させ、そのまま手首のスナップのみでシリンダーを戻した


「市街地での任務が多い我々憲兵隊に必要なのは室内で振り回せる拳銃やサブマシンガンだ、その拳銃もストッピングパワーの強いこの44マグナムなら、敵が鎧だろうが防弾チョッキ着てようが、関係なくあの世行きってわけよ」


「ルネ軍曹はとにかく撃ちまくって神頼みって感じだからな、おっかねぇや」


「聞こえたぞ、ゾラン、この間の訓練だけじゃ足りなかったようだな。帰ったら付き合ってやる」


「嘘だろ……」


「自業自得だ、こちらホーネット2-4ブロージ通りまで後1ブロック、アイアンホース2、状況は?」


《くそっ!西側だ!西側のモーテルから、魔法を撃たれてる!オイゲンがやられた!誰か下がらせろ!》


「アイアンホース、すぐ向かう、待ってろ」


《早くしてくれ!こっちの半分は怪我人だらけだ!このままじゃLAVがもたない!》


「止めろ!ジャクリーヌ、ユージーン!二人は車を降りて先行しモーテルを抑えろ!」


「「了解!」」

ヘルメットの下からもはみ出ているドリルツインテールを振り乱し、ジャクリーヌ伍長とM21狙撃銃を背負ったユージーン曹長の二人が降りる


「モーテル制圧と同時に突っ込む!弾を装填しておけ!」

運転手のゴールド少尉以外の者が自分の持ってる銃に初弾を装填した


《空気がピリピリしてきたぞ……伏兵がどこかにいやがる》

ブローニングにとりつくアレクセイ伍長の声が緊張していた。ゴールド少尉も反射的に二階の窓や路地に視線が行く


「気を付けろ、ここは荒野のウェスタンだぞ……」

ゴールド少尉の額を汗が滴る。ケブラーのヘルメットがやけに重く感じた


ふと、正面の建物の二階。よくある宿屋だろうかその一画のカーテンが動いた

そこには一人の男がおり、こちらにマスケット銃を向けた瞬間だった


「正面!」

ゴールド少尉はそう叫ぶと同時にハンドルを左にきった

直後、マスケット銃が発射され弾丸が機銃席の防弾板にぶつかり、火花をちらせた


「野郎!」

そういうとアレクセイ伍長はすぐさまブローニングM2の照準を発砲の白煙が残る箇所に向けた


直後、M2重機関銃が火蓋を切り、高速で連射される曳航弾が一本の線のように見え、着弾すると宿屋の外壁を粉々に粉砕し大きな穴をぶちあけた


「すまない、借りができたな」


「いいってことよ」

ゴールド少尉も座席の横に立て掛けたM4カービンを手繰り寄せ、そう答えた


「ユージーン、どうだ?」


《現在モーテルに侵入、クリア!》


《モーテルを確保!外は地獄ですよ!》


「よぉし、上から伏兵を見張れ、突っ込むぞ、ロックンロール!」


「了解!」

ゴールド少尉がアクセルを全力で踏み、ブロージ通りに突入する


突如現れたハンヴィーに驚いた暴徒を跳ね飛ばし、暴徒に囲まれているLAV25に向けてハンヴィーを走らせる


アレクセイ伍長は敵が隠れている荷馬車や木箱向けてM2重機関銃を思いっきり掃射する


「くたばりやがれぇ!うぉらぁ!」


「降車しろ!行け行け行け!」

反対側の建物への掃射はアレクセイ伍長に任せ、クロウリー中尉はハンヴィーから降り、LAVに取り付いてる暴徒を背中から撃つ

遠巻きに石を投げたり、まばらなに弓矢を放っていた暴徒達はあっという間に逃げ出す


「ホーネット2-4か!?この野郎、よくきてくれたな!」


「クロウリー憲兵中尉だ!遅れてすまない!」


「陸軍第二機甲大隊、第八小隊のサンダース少佐だ!支援に感謝する!」


「ゾラン、負傷者を見てやれ、他の奴は周囲を警戒だ!奴らまた戻ってくるぞ!」

ゴールド少尉はハンヴィーの荷台からパイルバンカーで固定出来る防弾盾を持ち出し、LAVの側面に設置した

長方形の盾が左右にさらにもうワンサイズ広がり、歩道に寝かされた負傷者を正面から覆い隠した


《隊長、東から来ます!》


「東だ!盾を置け!」

新しい防弾盾を地面に設置し、その後ろに隠れる


《隊長、ユージーンです!西からも来ました!》


「挟み撃ちか、ハンマー3!ブロージ通りに砲撃支援要請、至急頼む!」

防弾盾から身を乗り出し、火炎瓶や魔法を放とうと駆け寄ってくる敵兵を次々と射殺しながら無線に叫んだ


《まったく今夜は忙しいな、マスかいてる暇もねぇ!》


「ムスコ握ってる手を止めて、とっとと仕事しやがれ!ブロージ通り南東、ちょうど交差点になってる所、騎士団の詰所がある、そこが連中が一番固まってやがる、わかるか!?」


「連中撃ってきました!」

マスケットや矢がハンヴィーの装甲に命中し甲高い音が響く


「撃ち返せ、ゴールド少尉!砲撃支援が来るまでLAVの砲塔につけ!」


「了解!」

ちょうど切れたマガジンを捨て、新しいマガジンを装填し、LAVの中に入る


中には既に死んだ兵士や憲兵、そしてもうじき死ぬであろう重傷者が大勢おり、濃密な死臭が鼻をついた


「うっ、晩飯抜いといてよかった……」

乱雑に積み上げられた死体を踏まないように機銃席に進む


「うほぉ!?」

突然、誰かに足首を掴まれ、驚く


「み、水……水を……」

額を自分の血で真っ赤に染めたその兵士は首筋に刺さった矢の部分から噴水のように血を吹き出しながらそう呟いた


「……すまん」

ゴールド少尉は手を振り払い、機銃席に潜り込んだ


このLAVの機銃はRWSシステムを搭載しており、顔を出さなくても機銃が操作出来た

鼻にティッシュを詰め込んで死臭をシャットアウトし、機銃を遠隔操作するジョイスティックを握り、クロスヘアと敵を重ねて引き金を引く


25mm機関砲と7.62mm機関銃を交互に使い分け、東側の敵へ絶え間なく機銃掃射を浴びせていく

東側には露天が多く、敵はその露天を盾にして進んでくるが、戦闘ヘリにも搭載されるような大口径の25mm機関砲を前にしたら露天の壁板や果物なぞ障子の如く簡単に貫通し、砕けちる果物と人間の肉片が辺りに飛散し、サーマルビジョン越しだと白い物体が弾け飛んだようにしか見えなかった


連中は撤退に失敗したクルジド兵が大半であり、征服されたとはいえ大半はもと征服国の軍人、武器こそ粗末な剣や弓、後は投石と魔法がメインだが動きに連携があり、多くの犠牲を積み重ねてはいるが、着実に距離を詰めてきていた

先ほどから敵に弾を撃ち込むと爆発するようになってきた、おそらく敵も火薬袋を背負った自爆攻撃を行なってきてるのだろう


「くっそ、キリがない……」

射撃の火線は維持しつつ、無線機を掴み、スイッチを入れた


「中尉!東側が押さえ切れません!砲撃支援はどうなってます!?」


《さっき砲撃の準備が整ったと連絡が来た、そろそろ観測射撃が来るはずだ、諸元調整を頼む!》


「了解!」

25mm機関砲に冷却のアイコンが出たので7.62mm機関銃に切り替える

その直後、敵側の建物の一部がなんの脈絡もなく爆発し、倒壊した


「ようやくか、ハンマー3!道の真横に落ちた、ほんの少し手前に落とせ、それで通りのど真ん中だ!」


《了解した、第二射がいくぞ!》

そしてまもなく砲弾が着弾。敵の槍衾のど真ん中に落ち、敵が十数人単位で吹き飛んだ。試射が二発で済むとか優秀すぎる、あらかじめ砲撃地図でも作っていたのだろうか


「しゃー!ジャストミート!その調子でぶち込め!」


《よぉし!童貞ども、奴らの腹にたっぷりテメェらのタマ食らわせてやれ、日々のマスかきで鍛えた実力見せてやれ!》

無線の相手が女性であるということを1ミクロンも考慮してない発破の掛け方だが向こうの迫撃砲部隊は男性が多いのだろうか、砲撃の精度も腹立つことに上がっていた


《ゴールド少尉、部隊は全員収容した!お前はそのまま機銃につけ!脱出だ!前線本部に戻るぞ!》


《こちらハンマー3、さっきの砲撃で弾が切れた、今日はもう打ち止めだ!もう一滴も出せん、これより離脱する!》


《了解支援に感謝する、幸運を》


《そっちもな!》

ハンヴィーがLAVを追い越し、修理の完了したLAV25も動き出した


《ゴールド少尉、本日の操縦士のイスメト曹長です。車輪と一緒に40mm擲弾投射機も修理が完了しました、残弾もたっぷりあります、炸裂弾と焼夷弾が二十発ずつです、慎重に使ってください》


「了解、ありがとうございます」

そういうとゴールド少尉はさっそく窓からクロスボウをこちらに向けている女性目掛けて焼夷弾の擲弾を叩き込む


ナパーム系の焼夷弾が炸裂すると激しく燃え上がりはしないが、窓からは煌々と灯りが漏れやがて窓を突き破るほどの火災に発展した


「パーフェクトだ、軍曹」


《感謝の極み》

二台の車両は未だ混乱収まらない街を駆け抜ける


前を走るハンヴィーの機銃手は相変わらずアレクセイ、忙しげに左右に重機関銃を向ける


《前方に友軍の部隊、暴徒とやり合ってる》

ゴールド少尉のモニターにも道路いっぱいに広がってクルジド兵の大軍と斬り合いを繰り広げるリラビア兵が映った。リラビア兵がかなり劣勢だった


《回り道をしてたら重傷者がヤバイ、アイアンホース、頼めるか?》


《任せてください、少尉殿、つかまってください!》

一気にアクセルが踏まれ、LAVが加速したのが伝わってきた

ゴールド少尉はリラビア兵の鎧が固まってない箇所に擲弾や機銃掃射をひたすら撃ち込み、リラビア兵を援護していった


《全員降車!ぶちのめせ!》

ハンヴィーから降車したクロウリー中尉達もライフルでクルジド兵を射殺していき、やがて暴徒は蜘蛛の子を散らすように逃げていった


《死体を片付けろ!》


《おい、手伝ってくれ!》

リラビア兵と共に散らばったクルジド兵の死体を脇に退ける。死体の血脂はスリップの元なのでなるだけ死体は踏まないのが鉄則なのだ


《三字方向!》

誰かの警告と共にゴールド少尉は砲塔を旋回させた


すると視界に映ったのはこちらへ猛突進してくる馬車だった


「くそったれ!嫌な予感がする!」

幌馬車だが、この戦場の最中、なんの迷いもなくこちらへ突っ込んでくる馬車をみすみす通過させるほどこちらも馬鹿ではない


7.62mm機関銃で馬を射殺し、馬車を横転させた


その直後、馬車は大爆発。燃えた破片や人のかけらが降り注いだ


《指揮所までもうじきなのに、まさか敵がいるとはな!》


「くたばれ!」

続く二台目の馬車にゴールド少尉は炸裂擲弾を叩き込む。先ほど同様、大きな爆発が巻き起こり、後に続いていた暴徒が破片で粉々引き裂かれた


《ここは彼らに任せて、我々は前線本部に戻り補給だ!》

クロウリー中尉がハンヴィーに戻り、リラビア兵達はクルジド兵の死体や辺りの酒場や家から家財道具を持ち出して十字路にバリケードを築いていた。彼らはこの先の前線本部、そしてその奥のバラード城の総司令部を守る任務のためにここを墓場と決めたようだ


十字路の四方にバリケードを築き上げ、そのバリケードの上にMP18やMG34といった銃火器を乗せ、現れるであろう敵兵に警戒し始めた


《ホーネット2-4前進!》

クロウリー中尉の号令と共にハンヴィーが走り出し、その後ろにLAVが続いた


《こんなのがいつまで続くんだ……敵は敗走したんじゃないのか!?》


《敵はこのバスディーグに八十万の軍勢を投入したんだ、軍の公式戦果は訳七十万、つまり国に帰ることも出来なくなったはぐれ者があと十万人も居るんだ、これはまだ始まりにすぎん》

いくら現代兵器で高度に武装した軍隊を用いたとしても八十万人の軍隊を完全に一人残らず殺し尽くすことなぞ不可能であり、とりこぼした敵兵はバラバラに逃げ惑い、魔物に喰われる運の無いものや、ひっそりといつく者、中には闘志を失わず、再び戦い続ける者もいた


「気が滅入ってきた……」


《心配するな、連中はまともな後ろ盾のない敗残兵で、俺たちは最強の武器を持ったクソ強無敵のチート軍隊だ。負ける通りはないさ》

その直後、ハンヴィーの側で爆発が起こった


《RPG!左方向!》


《アレクセイがやられた!》

ゴールド少尉は反射的に砲塔を左に向け、左方向にある建物に片端からチェーンガンで掃射した


「ウラァァァアアアア!!!」


《敵に見つかった!このまま前線本部に突入する!ハンヴィーを放棄、LAVに乗り込め!》

クロウリー中尉がいうがいなや、ハンヴィーに追い討ちの火炎弾(ファイヤーボール)が叩き込まれ、生き延びたクロウリー中尉とユージーン曹長、ジャクリーン伍長とゾラン兵長がLAVに乗り込んできた


「中は死体でいっぱいじゃねえか!」


「くそったれ、ゾラン、ジャクリーンを中で見てやれ、ユージーン、俺と上だ。ゴールド、ケツは俺たちに任せろ!」

先客の死体から弾薬やハーネスを回収しながらそう指示した


「冗談でしょ、帰ったら幼馴染と結婚するって約束したのに!」


「その幼馴染、PCから出てくるのかよ」


「出ますよ、えっ隊長の所は出ないんですか?」


「お前もカウンセリングくるか?」


「人生に絶望したら行きます」

そんなふざけた事言いあいながら二人はLAVの後方に登る。そこには本来荷物などを載せる金網が取り付けられていたが、二人はそこにハーネスを縛りつけ、どうにか身体を固定した


《いいぞ出せ!》

クロウリー中尉の合図を待ってたと言わんばかりにLAVは急発進。肉薄してきたクルジド兵を跳ね飛ばし、軍用タイヤで全身をくまなく轢き潰した


ゴールド少尉はクロウリー中尉の言う通り、後ろは振り向かず、前方の屋根や路地から現れる敵目掛けて機関銃を乱射した

擲弾はとっくに弾切れ、機関砲も残弾が50発を切っていた


「誰か!誰かM4の弾倉はないか!?」


「死体からはぎとれ!彼らにはもう必要ない!」


「サンダース少佐!このままじゃ全滅ですよ!」


「諦めんじゃねぇ!拳銃でもいいから撃ちまくれ!手を止めたら死ぬぞ!」

LAVの車内にも銃眼と呼ばれる兵員室から外へライフルを撃つスリットがある、そこから絶え間なく撃っていた様だが、こちらも弾切れが近い様だ


《ご搭乗の皆様方!まもなく前線本部、前線本部でございます、お忘れ物、落とし物なさいませんよう、ご注意ください、飛ばすぞ!》

その瞬間、身体に急激なGがかかったような気がした。LAVが速度を上げたのだ


《持ち堪えろ!ここが最後の直線だ!》


前線本部に行くには必ず通らねばならない商店街がある。そこを抜ければ前線本部のある中央広場だ


《ゴールド少尉、質問だ》


「なんです、クロウリー中尉」


《道にシカがいたらどうする?》


「アクセル全開!」


《その通りだ!衝撃に備え!》

屋根にいるから見えたのだろう、前方に敵がバリケードとして荷車などを並べているのが

しかしこちらはLAV25、最大速度は毎時100kmを叩き出す鋼鉄のイノシシ。荷車や大八車なんぞが何になる


アリの行列を蹴散らすように簡単に突破したLAV25は若干バランスを崩してスピン仕掛けるも、イスメト曹長の運転技術は確かなものらしく、持ち直した


《前線本部を確認、敵に包囲されてる!》


《包囲網は完璧じゃないし、それほど厚くはない!一角を崩してやれば後は瓦解する!》


《前方のLAV25、所属を明らかにせよ!》


《アイアンホース2です!本部の救援に来ました》


《遅かったな騎兵隊!一頻り包囲されてるが、敵の指揮官が第二ゲート辺りにある、そいつを潰してくれ!》


「お任せください」

ゴールド少尉は自身の記憶を頼りに第二ゲートの方は銃口を向ける


やがて、商店街の最後のバリケードを抜け、敵が乗り込む馬車に体当たりして停止した


その直後、敵の指揮官と思しき派手な飾り甲冑を見たゴールド少尉は迷わずチェーンガンの残弾を全て叩き込んだ


「敵指揮官を排除!」


《LAVを中心に散開!円陣防御!》

兵員室の扉が開き、中にいた全員が飛び出てくる


「中尉、チェーンガンは弾切れです!」


《本部、助けに来といてなんだが、支援なしじゃあまり長く踏みとどまれないぞ!》


《わかっている、航空支援到達まで三分だ。それまで踏ん張れ》


《ラジャー!全員弾を節約しろ!指揮官を失った奴らは烏合の衆だ!》

サンダース少佐の指示の元、全員が積極的に撃たずにしかし敵の侵攻の邪魔になるように射撃を開始し始めた


「くそっ!弾切れ!LAVの機銃は弾切れです!」

ゴールド少尉はそう叫び、機銃席を離れた


銃架に預けてあった自分のM4ライフルを取り出し、戦闘に加わった


「ゴールド!最後の弾倉だ、大事に使え!」

クロウリー中尉が投げたマガジンを受け取り、敵が伏せている箇所へ単発で撃ち込む


「ここが正念場だ!気合入れろ!」


「中尉!なんかデカいのがきました!」

視線の先には巨大な甲冑が歩いていた。四角い角ばった形の全身甲冑で、目のところは細いスリットが空いており、肩には明らかにヤバそうな大剣を担いでいた


「あんなデカいのがどこから湧いてでやがった!?」


「なんか知らんがヤバそうだ!集中射撃!」

サンダース少佐の号令と共に装甲車の乗員2名がMP5の集中射撃を行う

それだけじゃない、ゾラン兵長やジャクリーン伍長も射撃に参加した

しかしその鎧は魔法的力があるのか青白い光と共に弾丸を弾き返したのだ


「嘘だろ!?クソが!」


「任せろ!」

クロウリー中尉がM4カービンの残弾を全てフルオートで叩き込み、腰のホルスターからM29リボルバーを抜き出した

さながら西部劇のガンマンの如く、腰を若干落とし、膝を直角に、体に張り付くようにぴったりと当て構えた

左手でリボルバーのハンマーを上げ、引き金を引く。その動作を6回、寸分違わずに繰り返した

六発の弾丸は甲冑の胸の真ん中に集中して命中。射的で言うならワンホールに近い命中精度で当たったその弾丸達は魔法の付与された甲冑を四発目で貫通、残る二発の44マグナムは甲冑の着用者の肋骨を粉砕し肺や胃袋を引き裂きながら体内を暴れ回った

巨大な甲冑はスリットの部分から血を吹き出しながら、崩れ落ちた


「やったぜ!」

ガッツポーズを決めた直後、マスケットの集中射撃が当たりの石壁を削り、クロウリー中尉は地面に張り付くように伏せた


「くそっ!しまらなねぇ!」


「でもお見事ですよ中尉!オリンピックなら金メダルですよ!」


「こんなことなら兵士じゃなくてメダリスト目指せばよかった!」

リボルバーのシリンダーに弾を一発一発こめながらクロウリー中尉は怒鳴り返した、そしてそこへ


《聞こえますか、こちらハニービー。支援の要請を受けてそちらへ急行中、後一分程で到着できる》


「天使のお出ましだ!ハニービー、声が聞けて嬉しいよ!広場の真ん中にLAVがある、そこと本部以外は敵だ、遠慮なく潰せ!」


《ラジャーハイドラで攻撃を開始する》

いうがいなや、東の空で小さな光が上がった。ハイドラの発射炎だ


焼夷弾頭のハイドラが敵のど真ん中に着弾し、大勢の敵兵が全身に火を纏いながらフラフラと死のダンスを踊る

やがてヘリのローターが空を切る音すら聞こえてくる程の距離まで来た時、ヘリが上空をフライパスした


機体上部に二対のエンジン、側面のパイロンには蜂の巣のように穴があいたハイドラの発射機がぶら下がっており、


機体の形はAH1ヴァイパーに似てるが離着陸に使う脚はヴァイパーと違い、前部二箇所と後部一箇所のタイヤが剥き出しで出ていた


Mi-28、ロシアが生み出した最新鋭戦闘ヘリ。大混乱や災害を意味するハヴォックの名で呼ばれる戦闘ヘリである


敵にとっての災害を意味するその機体の登場にクロウリー中尉やサンダース少佐は歓声を上げ、クルジド兵達は恐怖の悲鳴を上げた


機首から伸びた30mm機関砲が火を噴き、兵士に命中した砲弾は人体組織を粉々に粉砕し、有り余る破壊力で地上のレンガで整備された街道を壊していく

突然現れた空からの刺客を前になすすべなく駆られていくクルジド兵達は建物や路地の中へと駆け込んでいき、包囲網は完璧に崩壊した


「ハニービー、支援に感謝する」


《構いません、リハビリにはちょうどよかった》


「あれでリハビリならますます頼もしい、また頼むよ」


《構いませんよ、仕事ですから》


飛び去っていくハヴォックを眺めながらゴールド少尉はLAVにもたれかかった

やがて増援として憲兵隊本部から急遽集められたのだろう、BTR90とLAV25、それに大勢の歩兵がやってきた


「よう、クロウリー、俺たちは何を見逃したんだ?」

そこへやってきたのはクロウリー中尉と同じ憲兵隊の中尉だった


「とびっきりの天使の笑顔を見逃してたぜ、遅かったじゃねぇか」


「すまない、要人の護衛に装甲車を何台が引き抜かれてな、そのゴタゴタで揉めてた」


「そうか、なら仕方ないなぁ……」


「それよりもお前らは英雄だぜ。前線は俺たちと交代、お前らは後方に下がって補給と12時間の休息だとよ」


「せいぜい働いてこい、税金ドロボー」


「へっお前もな。よく戦ったよ、後は任せな」

そういうと憲兵中尉は隊列に戻った


「こりゃ休憩から上がる頃には全部カタが着いてそうだな……」


「ですね」

投入された部隊の規模は軽く見ても三個大隊規模ありそうだ、おまけにそこへ陸軍と憲兵隊が保有する装甲車や戦闘車が投入されるのだ。市街地に潜伏したとしても対戦車装備が魔法しかない相手が生き延びれるとはとても思えなかった


「しかしあのハヴォック、いきなりきてリハビリって言ってましたね」


「ああ、元パイロットって余程の腕前なんだろうな、味方でよかったよ……」























バラード郊外

大日本皇国空軍 臨時基地


誘導ビーコンに従いMi28ハヴォックはヘリポートに着陸した


ヘリのローターが止まり、操縦席から小柄な女性が飛び降りた


「ふぅースッキリ楽しかったです!」

桃色の明るい髪に左目を覆う無骨な黒い眼帯、右の頬を歪めたような歪な笑みを浮かべた少女だった


「バーガー中尉、久々の空はどうでした?」


「最高でありました、ソフィア大将!」

そこへ現れたのは皇国空軍を統べる女王、ソフィア大将である


「ゲッ姉ちゃん!」

そんな声をあげたのはハヴォックのガンナー席から降りてきた女性である


「バーガー中尉、妹のベーラ少尉はどうですか?」


「申し分ありません!私より胸と身長が大きくて羨ましいです!」


「そうね、姉より大きな乳ぶら下げて、私も腹ただしいわ、現場で私のことを大将殿と呼べないような失礼な愚妹だけど、どうかよろしく頼みます」


「お任せください!」


「それよりも二人にはこの後補給と整備が完了しだい出撃してもらいます、一時間後です」


「嘘でしょ!?」


「ひゃっほー!」

ベーラ少尉とバーガー中尉でこのリアクションの差である

自分の預かり知らぬところで散々ディスられ、オマケに激務の後にまた激務が課せられるのだ

バーガー中尉の操縦に間違いはない、しかしワーカーボリックの気がある彼女の操縦と労働量は同乗者の精神を著しくすり減らす物であるのは確かであった


「中尉殿はよほどヘリで飛ぶのが好きなんですね……」


「当然です。というより空を飛んでいるのが好きなのかもしれません」

ソフィア大将が去り、ハヴォックが急ピッチで整備される中、二人は食事をとりながら話していた


ベーラ少尉は初出撃、バーガー中尉も長いことブランクがあったにもかかわらず、四時間近く戦場をあちこち飛びまわったのだ、燃料も弾薬も空だったのにバーガー中尉のこの満ち足りた顔


(こりゃ好きというよりは空に取り憑かれてるな……)

ベーラ少尉は遠い目になりながらポーチから胃薬を取り出した



今まで出してた伏線をようやく回収しました、これからハヴォック無双が始まるかもしれません

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