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オペレーションドラゴンクエスト〜口実〜

我ながらめんどくさい主人公にしちまったなぁと思っとります

戦闘が始まる少し前……


リラビア魔法国 帝都ガローツクン郊外


ガローツクンを一周するように囲っている城壁をでるとそこには果てまで続くような広い草原が広がっている

牧畜用の牧草と産業道路が延々と続いており、その放牧的な風景はガローツクンに住む人々の癒しでもあった


しかし、そんな穏やかな景色の中、鎧を着た大勢の兵士が行進していた


三つの軍団に分かれた兵士達はそれぞれ装飾のされた旗を掲げており、鎧の意匠も異なっており、それぞれが別々の軍団であることがわかった


その軍団の正体はリラビア魔法国の貴族の私兵であり、あろうかとかリラビア魔法国に反旗を掲げた反乱軍の本隊でもある


剣を咥えた黒い山羊の旗を掲げるのはアシュモンド男爵だ。まだ二代しかない新参の貴族であるが、領民を思い、良策を敷く心優しい領主である

良策を敷くがゆえに、戦争で帰らぬ者となる兵士を憂い、なおかつ平等な社会、というクルジド国の国策に惹かれたのであった


もう一つは空に浮かぶ三日月、そこへリラビア魔法国の象徴とされている植物の花を咥えたミミズクが羽ばたいている旗、これはゼルエル子爵、リラビア魔法国の中でも比較的痩せている荒地として名高い山岳地帯を領地に持つ貴族で、良くも悪くもない平凡な施政をする男で、領民から恨まれはいないが慕われてもいない、そんな印象の男である

彼は大器達がリラビア魔法国に与えた損害をクルジド国の実力であると誤認識しており、その武力に怯えて反乱軍に合流したのだ


そして最後は剣を掲げた全身甲冑の騎士とその背景から登る太陽をモチーフにした旗、これはザーゲリッツ伯爵の旗だ

彼はよくある悪徳領主の類である、領民に重税を課し、自分は贅沢三昧。そういう感じの悪逆な男である、なお反乱軍の立ち上げに関わり、その理由も改めて説明する事もないだろう


「卿らよ、よくぞ呼びかけに応えてくれた」

三つの軍勢が集まった先頭でザーゲリッツ伯爵がそう言った


「ザーゲリッツ殿、もう戦闘は始まっているのですか!?我らが帝都に入ってから始めるのではないのですか!?」


「近衛騎士連中が功を焦ったらしい」


「このままでは我らは蚊帳の外ではないか!早く参りましょうぞ!」


「であるな、参ろうぞ、ゼルエル子爵よ、アシュモンド男爵殿は万が一に備え、後詰めとして待機していてください、万が一、我らが打ち倒され、女王に逃げられるなどあってはならないゆえ、手筈通りにお願い申し上げる」


「……あいわかった」

その言葉にアシュモンド男爵は無意識のうちに歯を食いしばった。国を、ひいては民草を救うためにこの戦いに参加したのに、これでは……


「ゆくぞぉ!大義は我らにあり!圧政をしく王を引きずり下ろすのだぁ!」















北門付近


「ええいくそったれ!クソクソクソクソクソッ!!!」


「弾幕絶やすな!」


「ワッズ!弾薬庫から弾を持ってこい!」


「もうありませんよ!さっきので最後でした!」

北門では現在城にかかる橋を取り合う激戦が繰り広げられていた

ここに来てミゼット達は弾薬不足に悩まされていた。今回持ち込めたのはサウザー曹長率いる城外待機組が持ち込んだ備蓄弾薬はおよそ機関銃や狙撃銃などを除いて約二千発ほどであり、25名のこの部隊だと平均して一人マガジン三から四本ほどしか無い弾数であり、30分ほぼ休みなしに撃ち続ければ弾が枯渇するのはあっという間だった


「装いが変わったと思ったら急に攻撃が激しくなったな!クソどもが!」

ミゼットが装弾不良を直したM4を他の兵に渡し、無線機の送信スイッチを押した


「ゲームマスター、こちらドラクエリーダー!航空支援はまだか!?敵の勢いが増してきてる!装備からして正規軍だ!」


《ドラクエリーダー、もう少しでつく、それまで持ちこたえろ》


「無理だ!もう橋も半分とられてる!城の中に入られたら航空支援の意味が無くなる!わかるだろう!ちくしょうめ!」


《作戦変更の指示はない、なんとか持ちこたえるんだ》


「クソどもが!」

無線機のスイッチを切り、バリケードの机を怒りに任せて殴りつけた


《中尉!ライフルの弾が無くなりそうです!これ以上は無理です!》


「わかった!予定通り中に下がれ!」

ミゼット中尉がP90を持ち上げ、城の入り口の両脇に陣取った機関銃部隊に目をやった


「合図で一斉に撃ちまくれ!連中をズタズタにしてやれ!」

ミゼットの激励に対し、親指を上げて答える機関銃兵達


「中尉!来ます!」

最後の手榴弾で敵を足止めしつつ、ミゼットが隠れるバリケードに駆け込んでくるサウザー曹長


「第2防衛線陥落……なんてこったい」


「司令部に暗号を打電しますか?」


「機関銃でダメなら打電しよう、柴田、無線機を担いで安全なところへ行け、それだけが頼りだ」


「了解しました」

背負子式の無線機を背中に担ぎ、柴田が城内に退避する


《中尉!敵が突撃してきました!》

城壁に潜んで弾の切れた狙撃銃で敵を監視していたシエラ隊から報告が来た


「機関銃よぉーい!」

ミゼットの号令を聞いた機関銃手がM249MINIMIの安全装置を解除。ACOGの照準を手榴弾の爆煙が残る門に向けた


無言。限界まで集中力を門の一点に集約し、何も知らない敵兵が飛び込んでくるのをただひたすらに待っていく


吶喊の叫びが徐々に大きくなり、足音が確実に響き出す


「中尉!」

そこへ、城内に戻ったはずの柴田が戻ってきた


「AC-130が位置についたそうです!いつでもやれると!」


「撃てぇ!」

ミゼット中尉も素人ではない。待ち望んだ報告に喜んで絶好の機会を逃すような人ではなかった


両側から放たれるM249MINIMIの濃密な十字砲火(クロスファイヤ)は突入してきた騎士達をみるも無残な穴ぼこ死体に変えた


「もっと早くに言って欲しかった!上ののんびり屋に伝えろ!こちらはいつでも大丈夫!とっとと名乗りを上げてパーティーに参加しろ!」


「直ちに伝えます!」

二丁の軽機関銃とサブマシンガンやアサルトライフルの射撃音に負けないように二人は怒鳴り合い、やり取りをした。柴田が城内に消え、ミゼット中尉は携帯無線にこう言った


「諸君、龍王は舞い降りた、繰り返す龍王は舞い降りた」


















同時刻

リラビア魔法国 王城 謁見の間


《龍王は舞い降りた。繰り返す龍王は舞い降りた》

マリー上等兵は待ち望んでいた符丁を聞き、密かに安堵のため息を吐くと同時に、背中に背負った超長距離広帯域無線機のボリュームを違和感なく少しずつ上げていたのを一気に上げた。ちょうど今後の進退で激論を繰り広げているリラビア国の上層部の人にわざと聞こえるぐらいの音量に


《撃ち続けろ!弾幕絶やすな!》


《リロード!誰か弾をくれ!》


《最後の弾倉だ!大事に使え!》


《俺の愛人より数が多いとか反則かよ!宇宙の法則が乱れるわ!》


《黙れ作戦中だぞ!》

無線機のボリュームをいじり、帯域をパブリックからオープンに変える


「マリー殿」

そこへわざわざハッシェル女王が声をかけてきた


「なんでしょう」


「先程から聴こえてくるのだが、苦戦しているようだな」


「そのようです、どうも妙な旗を掲げた連中に手こずっている様子、あいつらはなんなんです?」

マリー上等兵が堂々とそういうとハッシェル女王は苦虫を噛み潰したような顔でこう返した


「我が国の厄介なお荷物どもじゃ……」


「あっ……」


「城内の騎士団を集結させてそちらは向かわすにはまだ時間がかかりそうだ、お恥ずかしい話、裏切り者の人数が多く、判別に時間を有しております」

そう答えたのは軍務卿を名乗る狼の獣人だ。ハッシェル女王から指揮を引き継ぎ、部隊をまとめあげて奪われたもう一つの門を瞬く間に取り返した強者だ


「マリー殿、率直に聞きたい、お主の仲間達はあとどれくらい持ちこたえられそうじゃ?」

ハッシェル女王が聞いてくる。伝来の報告を漏れ聞いていたマリー上等兵にもわかる。他の二箇所の門にも数こそ少ないものの暴徒が押し寄せており、防衛が破られるまで秒読み状態なのだ


どこか一箇所でも破られたらその時点でこちらの負けなのだ、一番戦力が集中している箇所を心配するのは当然だ


「現在奮戦中ですが、矢がなくては弓兵が無力なのと同じように、我々にも弾丸が必要です。それがなくなりつつある今、いつ突破されてもおかしくない、としか……」

マリーの言葉に司令部と化した謁見の間は一段と騒がしくなった。まさか身内に滅ぼされるとは彼らも想定していなかっただろうから


「そうか……願わくば、持ち堪えてくれることを祈っておる……お主らの勇気と献身に感謝じゃな……」


「陛下、こうなっては致し方ありませぬ、腹心の部下が非常用の脱出通路を確認してきました。その先は安全です!」


「偵察をやり過ごしただけかもしれないだろ!伏兵がいたらどうするんだ!殿下!私を交渉の場に出させてください!外務卿の名にかけて、この事態を収束させます!」


「それこそ論外だ!相手は人間以外をことごとく滅ぼしているのだ!既にいくつもの獣人族の集落が根絶やしにされたと思ってる!」

外務卿と軍務卿が言い争い、それがさらに広がっていく。収集が徐々につかなくなってきていた


頃合いだ。そう判断したマリー上等兵は拳銃を引き抜き、天井に向けて二発、撃った


「静かに!」

マリー上等兵は声を荒げ、静まり返った部屋で無線機をいじる


「なんじゃ……どうしたのじゃ?」


「何者かが、無線を発している……我々以外の誰かが」


「そなたら以外の、誰か……とな」

必死に周波数を合わせるマリー、やがてその周波数を割り出し、雑音が消え、クリアなノイズが響いた


《……りかえす。こちら大日本皇国空軍、最南基地所属AC-130ガンシップ"ドラゴンブレス1"だ、地上で戦闘中の武装勢力、所属を明らかにせよ、繰り返す……》


「ガンシップ!?」

マリー上等兵の驚いた大声が謁見の間に響いた


「マリー殿、だれじゃ、そのガンシップ殿というのは……」

女王の問いかけにマリーはドヤ顔で答えた


「この局面をひっくり返せる切り札ですよ」

マリーがミゼット宛に送信機を三回、さりげなく叩いた、合図である


《こちらは大日本皇国陸軍、第28捜索救助隊、ミゼット中尉だ、ドラゴンブレス1聴こえるか、オーバー》


《こちらドラゴンブレス1、地球のニュースじゃあんた達とリバティ基地の事で持ちきりだったぜ、ここは何処なんだとか、色々聞きたいが今は説明出来る状況ではなさそうだな》


《ドラゴンブレス1、説明は後にしてくれ。今は火力支援が必要だ、城に突入している勢力が見えるか?オーバー》


《確認している、オーバー》


《今からビーコンを点滅させる、そこが味方の陣地で、北だ。そこに攻め込む奴は全て敵だ。そいつらを殲滅してほしい、頼めるか?》


《司令部に確認する、少し待て》


《早くしてくれ!機銃の弾が無くなる前に!》


《……確認が取れた。これより支援砲撃を開始する。確認するが、ビーコンがともってる北門に押し寄せる敵でいいんだな?》


《橋の上は私たちで片付ける。民家に当てないように通りを闊歩してるクソどもを焼き払ってやれ!》


《了解した、これより砲撃位置に着く。攻撃開始は2分後だ》

そこまで無線を聞いたマリーは血相を変えて叫んだ


「全員その場で伏せて!砲撃が来る!」



















城外 帝都通りの一角


「ふん、思ったより手強いな」

ザーゲリッツ伯爵は未だに抵抗激しい北門を眺めながら戦の昂りを抑えるため、葡萄酒を口に含んだ

単純なる物量押し。暴徒とかした市民、クルジド国の工作員、そしてトドメにザーゲリッツ伯爵率いる反乱軍主力。この三段構えに倒れないとは


「流石は帝室近衛騎士団、裏切り者の下賎な男を跳ね除け、それでもなお戦うとは……その生き意地の悪さ、亜人にふさわしい」


「部下の報告によると、敵は雇われの冒険者らしい、まったく、厄介この上ないが勢いが落ちてきているように感じる。もうじき我らの勝利ですぞ、ザーゲリッツ伯爵」


「そうであるなゼルエル子爵」


「ときに、あのアシュモンドとかいう若造は?」


「頭数と予備部隊の為に連れてきたが、まぁ奴も必要なかったのぉ、革命が終わり、クルジド本国の軍を受け入れ次第、反乱による犠牲者の責任を取ってもらうことにするよ」

悪徳貴族らしく、邪悪な笑みを浮かべ、葡萄酒を飲み干す


「未来ある若者の将来を散らすのは、心が痛いですな」


「ほぉ、ゼルエル子爵にも人の心があったのか」

魂まで敵国に売り渡した二人同士、ザーゲリッツ伯爵のジョークで高笑いする二人


その直後、二人の至近に40mm機関砲弾三発が着弾。炸裂し、二人と護衛の兵士たちは何が起きたのか理解する前に挽肉に成り果てた


















AC-130ガンシップ "ドラゴンブレス1"


《命中したぞ》


《敵後方集団の無力化を確認、いよいよメインディッシュだ》


《作戦司令部より指令。ドラゴンクエスト計画は最終段階に入った、諸君らの奮戦を持って作戦が完了される。総統閣下も期待しているぞ、以上》


《了解した、これより大通りの掃討に入る》


《交戦規定を再確認する。建物には当てるな。繰り返すぞ建物には弾一発当てるんじゃないぞ、まだ民間人が残っている可能性がある》


《ラジャー》


《ドラゴンブレス1、所定の位置についた》


《ストロボを確認、連中動きがないな》


《さっきの一撃にビビってるのさ、やっちまいな》


《ラジャー、たっぷり食らわせてやるぜ》



















北門 ミゼット中尉


M249の装填の間をカバーするため、残存兵員全員での一斉射撃で懲りずに突撃を敢行する敵兵達を始末している時だった


銃声に紛れて発射された40mm機関砲がはるか遠くの箇所で炸裂した

これまでの爆発とは比べ物にならない。自然界ではまずお目にかかれない大爆発が戦場のすべての音を消し去った

その威力たるや、再度突入しようと槍を構えていた敵兵も唖然とする程であり、皆一様に爆煙が立ち昇る後ろの空を眺めていた


それはミゼット達も例外ではなく。目標を照準に入れて、引き金を引く、そんな単純作の真っ最中に爆音がしたらそちらに意識を持ってかれてしまうのは当然かもしれない


「全員装填急げ、ボヤボヤするな。連中が新しいオモチャを用意してるぞ」

まず正気に戻ったのはミゼット中尉だ。彼女の視線の先には橋の中程まで来た荷車が見えた

荷車の荷台には縄で縛り付けられた木材と油でテカテカに光る藁が縛り付けられており、おそらくそれを勢いよく押し出し、こちらにぶつける気だろう、即席にしては恐ろしいほどに殺意の高い破城槌だ


ミゼットの指示に正気を取り戻した部隊は再び銃を構え、射撃を再開。その音に気づいた敵兵も慌てて遮蔽物に身を隠した


その直後、空から降り注いだ40mm機関砲の炸裂砲弾が着弾。瓦礫や人間のパーツが空を飛び、連続した爆発が通りを埋め尽くした

爆風に薙ぎ払われ、人だった残骸が吹き飛び、兵士たちはなす術なく吹き飛ばされていった


「いいぞ!そのまま連中を石器時代に戻してやれ!」


「前進よぉーい!銃を確認しろ!」

AC-130の攻撃で敵が浮き足立ってる。今なら前線を橋まで取り返せる。ミゼットはそう判断し、突撃の準備をさせた

M4カービンに銃剣を取り付け、ショットガンやP90に最後の弾倉を取り付け、ミゼットの合図を待つ


やがて空から連続した砲撃が再び降り注ぎ、無数の肉片を量産していった


「突撃ぃー!突っ込めぇー!」

大声を張り上げ、ミゼットを先頭に全員がバリケードから飛び出してまっすぐ走り寄る


突然空から降り注ぐ砲撃に驚き、頭を抱えてうずくまる兵士に容赦のない散弾の雨が降り注ぎ、さらなるサブマシンガンの掃射が追い打ちをかけ、即席の破城槌に取り付いていた兵士達をなぎ倒す


「橋にいた連中は最後だ!機関銃前へ!バリケードを再構築いそげ!」

ミゼットの指示に従い、そこらの死体を積み重ねてその上にM249を乗せた機関銃陣地を作り上げ、砲撃から逃げ惑う敵兵に容赦ない掃射をかける

爆発や20mmバルカンの掃射の合間を縫って逃げる敵兵の背中に弾丸を叩き込み、露天やバリケードの残骸に身を隠そうとも、弾丸は貫通し無慈悲に鎧を貫通し、兜を食い破った弾丸が脳みそをかき混ぜる


《こちらドラゴンブレス1、燃料が限界だ!次の旋回が最後だ!》

無線からの報告と同時に、恐怖からか敵が密集している所へ40mmの強烈な連続射撃が落とされ、爆煙がそそり立つと同時に方陣を構成していた人がバラバラの部品となって空を舞い、餅まきの景品の様に辺り一面に降り注ぐ


《こちらドラゴンブレス1、RTB(帰投する)


「こちらミゼット、支援に感謝する。帰ったら一杯奢りだな」


《期待してるぞ》

ミゼットが血が混ざった泥がついた頬を拭い、弾の切れたP90を捨て、グロックを引き抜いた


「これより残敵を掃討する!着剣出来るものは着剣!」

そういうと、何人かがM4カービンに銃剣を取り付け、腰だめに構えた


「突っ込めぇぇぇええええ!!!」



ウォォォォォオオオオオオオ!!!!



大半の兵士は五体満足とは行かず、ほとんどが虫の息であり、ほっといても死ぬ様な調子だった


両手足が付いているものでも腹わたが溢れていたり、顔面が血まみれで壊れたおもちゃの様に激痛から来る絶叫を上げるだけだったりと、軍としての体裁をなしていなかった

ミゼット達はそう言った半分死んでるような連中には目もくれず、その奥へ奥へと走っていった


血と煙が立ち込める地獄を抜けた先には生き残りの兵士たちが集まり、若干崩れた方陣が組まれていた

剣を咥えた動物の絵が描かれた揃いの大盾を一列に並べ、ジリジリと距離を詰めてきていた


「撃て撃てぇ!」

もはや隠れるなどせず、その場で片膝をついて射撃。拳銃弾が盾を貫通し後ろで構えていた敵兵の身体を穿つ


他の兵士達も立射体制をとり、射程を生かして攻撃を続ける


「射線を開けろ!」

そこへ追いついた機関銃が二脚を展開し、射手は地面にうつ伏せになり、首からネックレスのようにぶら下げていた弾帯を装填する


その瞬間、戦場に突撃ラッパの音が響き渡った


その直後、方陣が崩れ敵の兵士達が一斉に襲いかかってきた


「近寄らせるな!」

M249が休みなく右へ左へ乱射され、先頭を走っていた槍兵が不可視の銃弾に命を刈り取られ、地面を転がっていく

弾帯があっという間に吸い込まれていき、やがて全てを撃ち切り、真っ赤になった銃身から煙を上げながら止まった


「このカスやろうどもが!近寄るんじゃねぇ!」

ミゼットが最後の拳銃の弾倉を銃に叩き込み、大雑把な狙いで敵に射撃を見舞う


部下のほとんども弾を使いきり、銃をひっくり返して即席の棍棒にしたりナイフや落ちていた槍や剣を拾い上げる者もいた


「総統閣下万歳!大日本皇国万歳!」


「万歳!総統閣下万歳!」


「いくぞてめぇらぁ!」

ありったけの勇気を振り絞り、甲冑の兵士の軍勢に正面から突っ込んでいく


突き出された槍より長い射程の拳銃やショットガンで開幕の号砲を鳴らし、駒のように回転しながらぶっ飛んだ敵兵の死体に目もくれず、次の兵士に銃剣付きのM4を突き立てる

ミゼットも拾った剣で振り下ろされた剣を受け流し、グロックの銃尻で敵の側頭部を殴る、革でできた軽くて斬撃を防いでくれる鎧だが、ポリマーフレームの殴打は防いでくれなかったようで、激痛に悶えながら地面を転がり、ミゼットが鉄板の入ったブーツで首を踏みつけ、脊髄を無慈悲にへし折った


「畜生!キリがねぇ!」

雄叫びと共に突っ込んできた敵兵の眉間に一発、銃弾を叩き込み、次に狙いをつける


「中尉ィ!」

誰かの呼びかけに反応し、反射的にその場で横に飛ぶ。すると後ろから振り下ろされた大剣が地面に突き刺さった


「助かった!」

口では礼を言い、グロックの弾丸を大剣を振り下ろした奴に叩き込む、グロックの弾はそこで切れた


ミゼットは諦めず、敵の死体からメイスをもぎ取り目が合い、雄叫びと共に剣を振りかざしてきた敵兵にグロックを投げつけた

敵は左腕につけた丸盾でグロックを防御、視界が塞がれた一瞬をつき、ミゼットが全力の飛び蹴りを食らわせる


「ラァアアッ!」

飛び蹴りでバランスを崩した相手にメイスを振りかぶる。咄嗟に丸盾を掲げ頭を守ろうとするも、ミゼットは最初から頭ではなく無防備な横腹にメイスをクリーンヒットさせた

菱形を三つ重ねたような形のメイスは鎖骨を砕き、肉にめり込んだ


ミゼットはすかさず蹴りを加え、そいつを弾き飛ばし、振り向きざまに振り下ろされた剣にメイスをぶつける

打撃武器であるメイスの力に負け、持ち主の手を離れる剣、しかし持ち主は諦めることなく、ミゼットにタックルを決め、地面に押し倒した


「この変態が!」


「死ねぇ!」

がむしゃらにミゼットにのしかかる敵兵に対し、ミゼットはメイスを逆手に持ち、先端の棘をそいつの背中に突き刺した


「ぐぅああああああああ!!!」


「死ね!死ねぇ!」

前面のみを守るような形の鎧が災いし、ミゼットにより心臓を串刺しにされ、そのまま緩やかに力を失い、死にゆく敵を押しのけ、ミゼットは立ち上がった


最初は二倍以上の戦力差があったのに、銃というアドバンテージによってどうにか互角の打撃戦を繰り広げている部下達を眺め、ミゼットは伏射の体勢のままスリーブガンを取り出し、敵の旗を持ってる旗手に銃撃を加える

敵の士気を少なからず鼓舞していた旗手が倒され、倒れるが、再び別の旗手が現れる


「させるかぁ!」

ミゼットが再びスリーブガンを撃ち、旗手を撃ちたおす。自分達の旗が倒れただけで若干の統率が揺らぐ、その隙を見逃すほどミゼット達は甘くはない


弾の切れたライフルで敵を殴り、壊れるのも厭わずに敵に突き込む。喉やみぞおちを突かれ、怯んだ敵に銃尻による一撃を食らわせ、そのまま喉や心臓といった人体の弱点にナイフを突き立てる

お互い背中合わせのような体勢で戦うが、いかんせん数はまだまだ向こうの方が多く、弾をほぼ使い果たしたミゼット達は苦戦を強いられていた


やがて敵も徒党を組み、大勢が一斉に槍を突き出し、全方向から串刺しにしてくるようになってきた


「くそっ!賢い戦い方をするようになったじゃないか!」


《中尉!お待たせしました!マリー上等兵、戦場に戻りました!》


「撤退だ!」

その無線を聞いた瞬間、ミゼットが声を上げ、一目散に城門に向けて走る


城門の前にはここにきてからまだ一回も銃を撃ってないマリー上等兵がおり、P90を構え、待ち構えていた


マリー上等兵が狙いを定め、逃げるミゼット達を追いかける敵兵を狙撃していく

狙撃した敵兵が地面を転がり、それにつまづいた奴が渋滞を巻き起こす。その時間稼ぎにより、ミゼット達は這々の体で逃げることに成功した


「軍曹!何人やられたか、点呼を、とれ……」


「りょ、了解……生きてるやつは、返事ぃ!」

束の間の休息で息を整えつつ、ミゼットはマリーが射撃する相手を見る


敵の層はだいぶ薄くなっており、残すところ20名弱といったところだ


「これが最後の仕事だな」

マリー上等兵のグロックを引き抜き、未だに息のある敵兵にとどめを刺していく


「グレネード!」

残った手榴弾を投げ、最後の敵集団を壊滅させ、駄目押しの射撃を浴びせ、完全に敵の息の根を止めた


やがてこちらは突撃してくる者はいなくなり、辺りには死体と破壊された道路のみが残った


「マリー、作戦司令部へ打電。目標を達成」


「了解です」


















玄武島 最南市


「閣下、朗報です。リラビア魔法国におけるドラゴンクエスト作戦が完遂されました。敵の反乱勢力を鎮圧したと」


「そうかぁ、被害は?」


「六名が死亡。三名が重症です」


「これで我々の存在もリラビア魔法国に伝わっただろう。ちょいと回りくどいけど我々が戦争に参加するには十分な理由付けになったな、オマケに反乱を防ぎ、女王の命を救った命の恩人と来た。最高だね」

大器が焼酎のハイボールにレモンを絞りながらそう呟く。既に取り皿には絞りきったレモンの皮でいっぱいだった


「四杯だけの約束では?」


「……レモンをいっぱい絞って入れてるから、見た目ほど飲んでないよ、まだ二杯目だ」

これは渡さん。と言わんばかりにハイボールを飲み干し、自称三杯目を作り出す

そんな大器を見てため息を吐き、ミリアは報告書を出した


「とにかく我々が今戦争に参加するいい理由が出来ました。リラビア魔法国には所定通り、シャングリラ基地の実効支配工作を進めさせます」


「頼むよ、必要な人員があったら言ってくれ。召喚しとくから」


「それでは失礼します」

大器の机から焼酎の瓶を取り上げ、ミリアは部屋を出て行った


「……死んじゃったか」

大器はこの世界に来てからずっと考えていた。自分が召喚した人は果たしてどこから来てどこへいくのか、と


召喚した兵士は皆自我があり、呼吸をして物を食べクソをする。撃たれれば血が出るし、致命傷を追えば当然死ぬ

そのような存在を自由に召喚出来る自分という存在は何なのだろうか、神さまかそういう類なのだろうか


召喚した兵士がロボットみたいな無感情の塊だったらもっと気が楽だっかもしれない。しかし彼らをロボットというにはあまりに人間らしすぎる


その人間が六名、死んでしまった


「…………足らないな」

酒に溺れて楽になりたい。戦地に送り出しときながらなんてだらしなくて無責任の塊なのだろう


自己嫌悪に陥りながら大器はウイスキーをグラスに注ぎ始めた

私の悪い癖なんですけど、ちょいちょい予告なしで編集を入れることがよくあるんですよ


具体的にはキャラの階級を上げたり下げたり、フォネティックコードを変えたり、物語の理由付けを少し変えたりするので、暇だったり、「あれ?こここうじゃなかったっけ?」と思う箇所がいくつかあるかもしれません、ご容赦ください

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