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スカイフォール作戦

最近、いろんな有名人や芸能人の方が亡くなるニュースを目にしますが、こういうのを見てると自分の病気も案外笑えないなぁ、としみじみ感じます


療養は進んでますが、いかんせん根が深い病ですので、今回も投稿に幅が開いてしまいました、申し訳ありません



空軍整備から数ヶ月後……


ワンダーランド改め"玄武島"南部 未踏破区域

バイパー基地所属 第三偵察ヘリ小隊所属 UH60ブラックホーク "スカイアイ3-1"

ハーパー少尉


今日の玄武島は快晴だった。温暖な気候とあいまり、太陽の日差しが軍服をあぶり、地上を歩く者は暑いほどだった

機内ではハーパー少尉の部下の間切二等兵とメニチョフ二等兵が機内でかける音楽で揉めており、その二人の喧騒を迷惑そうに聞いてるのはガンナーとしてミニガンのグリップを握ったハムザ軍曹だ


「お前ら、いい加減にしろ。遠足で来てるんじゃないぞ」

操縦席の女性パイロットもそろそろ苦情を入れてきそうな雰囲気を察したハーパー少尉は争う二人に蹴りを入れ、CDを取り上げた


「そんなにアニソンが聴きたいなら基地に帰ってから好きなだけ聞け、少なくとも争うな」


「申し訳ありません、少尉殿……」


ハーパー少尉も本気で怒ってるわけではない。彼ら二人は最近やってきた補充兵であり、まだ勝手を知らないだけなのだ


「以後気をつければ良い、それより我々は未踏の領域に偵察に来ているんだ。罰としてハムザと私の見張りを変われ」


「「ハッ!」」

退屈な仕事を体良く二人に押し付け、ヘリの内部の音楽をトラッシュマンに変える


「ヘリでこれを聴くと、ベトナム戦争の雰囲気が味わえますな」


「軍曹は嫌いか?」


「ムードに浸るのは嫌いではありません。むしろ好きですよ」


「今風の曲も好きだが、やはり古い曲が私は好きだな、軍曹の言うムードに浸れるというのも分かる気がする」

胸元のポーチからガムを取り出し噛み始める。気分はまさにベトナム戦争のアメリカ兵だった

ガムを噛みながら別のポーチから今度は地図を取り出す。ここ数日の航空偵察で作られた最新の地図だ


そしてしばらくは穏やかな遊覧飛行が続いたが


「少尉!鳥ではない何かが飛んでます!」

メニチョフ二等兵がそうさけんだ。ただの鳥ではそんな報告はしないだろう。つまり尋常ではない何かが飛んでいるということだ


訝しみながらハーパー少尉は窓から外を見た、見て後悔した


「……バカヤロウ!あれは鳥じゃねぇ!竜だ!クソ!」


《こっちに来ます!捕まって!》

ヘリが退避すると同時にドラゴンがこちらを視認。特大の咆哮を上げてこちらをみた


「デカイ、リバティ基地のやつよりはるかにデカイぞ!」


「う、うらぁぁぁぁぁあああああ!!!」

錯乱したメニチョフ二等兵がミニガンをドラゴンにむけて乱射した


「バカよせ!」

無闇に刺激したのがよくなかったのか、ドラゴンが明らかにこちらをターゲットに変更したようでまっすぐ向かってきた


《こちらスカイアイ3-1!未踏破空域探索中に巨大な竜と遭遇、これと交戦!座標はT7549、W2591!》

その瞬間、接近したドラゴンが爪を振るった。ヘリの横腹を大きく抉り、ドアを吹き飛ばし、もう片方の爪がガンナー席とメニチョフ二等兵を貫いた

吹き飛んだ破片がローターを破壊し、バランスを致命的に崩した


ヘリにしがみつくようにして取り付いた巨大なドラゴン。ドラゴンの生臭い息と墜落のGで頭がどうにかなりそうだ


《メーデー!メーデー!スカイアイ3-1、墜落する!墜落する!座標は》

今度は間に合わなかった。ドラゴンがヘリを蹴って飛び立った為にヘリは弾かれたボールのようにドラゴンとは反対側、地面に向けて弾き飛ばされた為だ


シェイカーの中身のようにシャッフルされたハーパー少尉達は遺言を考える間も無く山肌に叩きつけられた



















「ーーー以上が八時間前に送信された最後の映像と通信です」

会議室のスクリーンには禍々しいドラゴンの口内の映像が映し出されていた


「……なんてこったい、安住の地にはまだまだ遠いな」


「開拓者の辛いところです、今は辛抱の時かと」

十数名の上級将校達が一堂に会する会議室の中、突然現れた巨大ドラゴンの対策を講じていた


「判明している限りの敵の基本スペックはこちらです」

参加者の手元の端末にドラゴンの予想スペックが反映されていく


「頭から尻尾まで含めれば体長は二十メートル越え、リバティ基地の時と同様、炎のブレスを吐くと思われる、か……」


「現状我々が保有する航空戦力はアパッチ戦闘ヘリとMQ-9リーパー、後は機銃を搭載したヘリのみですから、ドラゴンとドックファイトとなるとかなり厳しい展開が予想されます……」

空軍部門のトップであるソフィア少将が肩口まで垂らした金髪を指でいじりながら呟いた


「戦闘機やパイロットを召喚するのが早いのだが、あいにくポイントの関係上、滑走路か最新の航空機のどちらかしかだせん、何世代か前の航空機を集中投入してもそんな大規模運用にまだ我々の処理能力が追いつかないだろう、つまり現有航空戦力に頑張ってもらうしかないのだ。そこで今出来る撃退案を想定してくれ。敵が空を飛ぶ以上、君達にしかやれないのだ、事態は逼迫している。なるべく早めにドラゴンを撃退してもらいたい」


「閣下、頭をあげてください。とにかく持ち帰ってやってみましょう」

ソフィア少将は頭を下げた大器に若干萎縮しながらも頷いた


「陸軍も協力は惜しみません。最悪翼をへし折って地面に叩き落としてくれれば後は我ら陸軍に任せてもらっても構いません、ソフィア少将」


「あらベルモンド少将、ご親切にどうも。いざという時は頼りにさせてもらいますわ」

ソフィア空軍少将とベルモンド陸軍少将。お互いに新参の組織のリーダーポジションの二人がジリジリと手柄を主張し合う。この点は組織という物である以上仕方のないことなのかもしれない


「諸君、必要が生じた物については逐次報告してくれ。なるべく早めにな」

大器の控えめな一言を皮切りに会議は終了し、関係者は各々対策を練りに散らばっていった


「さて……一難去ってまた一難だな」


「そうですね、ですが相手は一体、乗り越えられない障害ではないと思われます」

ミリア大佐が励ましながら会議の議事録のデータを渡してくる


「ミリア大佐もご苦労様」


「いえ、これくらい。それよりも閣下この間の健康診断、あまり結果がよろしくなかったとか、鞠戸主治医のところへ一度行かれては?」

何故知ってる。大器がストレスのせいか、胃腸の調子が良くない事を言っているのだ


「そうするよ」


「えぇ、どうかご自愛ください」

ミリアが形の良い眉を心配で下げながら書類を纏めて先に会議室を出る。彼女もまだ仕事が残っているのだ


一人になった会議室で大器は椅子の背もたれに身を預け、気怠げに天井を見上げる


(異世界転生しても病気にはなるんだ……無敵の肉体とかそういうのは無いんだな……)

前にネットで見た小説とかでは主人公は病気になるようなシーンは無かったが現実は違うということか


「やっぱここは現実、夢とかでもなさそうだなぁ……」

改めて現実を見せつけられた大器、胃がキリキリと痛み出した

ただの普通の大学生が一年も経たないうちに一軍の総司令官、今では一国の長として活動しているのだ。頭も体もついていかないのは当然だ


「……とりあえず、薬もらってこよ」



















翌日


玄武島南部 未踏破空域

バイパー基地所属 AH-64アパッチ

第1戦闘ヘリ中隊 第1対戦車ヘリ小隊 "カッター1-1"

オスカー大尉


《カッター1-1、こちらホークアイ。目標のドラゴンは初期地点から現状動きなし、予定通りのコースを行くように、オーバー》


「こちらカッター1-1、了解ポイントチャーリーに接近。カッター1-2、三時方向に転進、我に続け」


《カッター1-2ラジャー》

オスカー大尉は操縦桿を傾け、2機編隊を組んだAH-64は高度五十メートルの低空を飛びながらドラゴンのいる玄武島南部の荒地に向かっていた


《大尉、南部の未踏破区域はどういうわけだか荒地ばかりです。木の一本も生えてません》

その時話しかけてきたのはガンナー席に座るメヒド軍曹である


島の北部、大器たちが上陸した浜辺から島の中央へは腰ぐらいまでの長さの草原と飛び飛びで林や森が点在し、なだらかな丘や低い山がよくある地形だが、その反対側は打って変わって岩石質な荒地と島の中央の火山から連なる山脈が広がっていた


「ほんとだな、下に降りたら日陰を探すのも一苦労しそうだ」


《熱源探知にも生物らしきものは確認できません。仮に墜落しても敵対生物がいないのは僥倖ですね》


「だからってわざわざ落ちてやる気も無いがな」


《救助用に待機してるヘリ部隊にはダチがいます。その隊の部隊長は働くときしか動きたがらないヤツですから全然苦にならないでしょう》


「そりゃあいい事だ。なにより救助ヘリの医療キットは使われる事無く交換するのが一番だからな、今日の作戦でそれに世話になるのはゴメンだ」


《違いない》


「そういや聞いたか、南部を制圧したらいよいよ市街地造成にかかるそうだ」


《てことは、この辺が街になるんですか?》


「そうなるらしい。まだ噂でしかないがな」


《この荒地に住むってなると、先は長いですな》


「閣下の能力があればそれほど時間はかからんかもしれん。それよりそろそろ作戦空域だ、カッター1-2、聞こえるか」


《こちらカッター1-2、そろそろですね》


「ホークアイ、こちらカッター1-1、僚機と共に作戦空域に到達、ターゲットの位置を教えてくれ」


《こちらホークアイ、カッター1-1からみて十一時方向、高度200を約二十キロの速度でゆっくりと飛行中、距離およそ五キロほどあまり速くはないが油断するなよ》


「了解」


《武器の無制限使用許可が降りた、カッター1-1、カッター1-2、任意のタイミングで攻撃を開始せよ》


「ラジャー、カッター1-1攻撃を開始する!1-2、ブリーフィング通り、高度三百だ、我に続け」


《ラジャー、続きます》

カッター1-1、そしてその後方約百メートル程にカッター1-2というフォーメーションで上昇。ゆっくりと翼を広げて空を飛ぶドラゴンへ迫る


そして距離が二キロまで迫った時、ドラゴンがこちらへ気づき、咆哮と共に身体をこちらへ向けた


「カッター1-2、向こうがこちらに気づいた、警戒しろ」


《ラジャー》

最高速度に達したアパッチとドラゴンの距離がみるみるとつまっていき、互いの距離が一キロになった時、ドラゴンが火を吹いた


「左!」

オスカー大尉が叫ぶと同時に右へ回避、カッター1-2が左に回避した


「メヒド、ぶちかませ」


《ラジャー》

メヒド軍曹が30mmチェーンガンを操作するジョイスティックを握り、ドラゴンに機銃を向けた

チェーンガンに目があるように滑らかな動きでドラゴンへ照準し、狙いを定めた


トリガーを引くと30mmチェーンガンが仕返しとばかりに火を噴いた


カッター1-2も同様にチェーンガンを発射し、ドラゴンへ両側から射撃を浴びせる

高速移動のすれ違いざまで命中弾は数発だが、それでも機関砲に分類されるサイズの弾丸をくらい、ドラゴンの身体に大穴が穿たれ、血しぶきと共に絶叫が上がった


「こちらカッター1-1、敵に一撃を加えた」


《カッター1-1、後ろについてるぞ!》

オスカー大尉は反射的に振り向いてしまった、当然後ろから迫るドラゴンが見えるはずもない


《センサーで確認!あの野郎ブチギレてますよ!》


「お怒りはごもっともだ。1-2お客さんは引きつける、会合地点で待機せよ」


《ラジャー待機します》


「さて、踊るぞ」


《了解》

オスカー大尉が操縦桿を引き、上方向へ急制動で停止し、勢いを殺しきれなかったドラゴンがヘリを追い抜いた

すぐさま体制を立て直し、追撃に移る


《月まで吹っ飛べ!》

アパッチに搭載された30mmチェーンガンとハイドラロケットポッドが反撃を開始した


ハイドラは無誘導のロケット弾だが、今回は空中炸裂仕様に改造したハイドラを搭載している空中で炸裂し、内包したフェレシェット弾と衝撃でドラゴンに着実にダメージを与え、位置を誘導し、30mmチェーンガンを放つ


付かず離れずの距離を保ちながらドラゴンを確実に追い込んで行くオスカー大尉とメヒド軍曹


だがドラゴンも追われているだけではなかった。血が滲むような咆哮を上げると尻尾の先に魔法陣が現れ、アパッチに向けて火の玉が発射された


「クソが!」

狙い自体は甘かったので回避は出来た。しかしドラゴンを追撃するという形は崩れてしまった


逆に追われる立場になったオスカー大尉はドラゴンの吐く火炎をジグザグに飛行しながら回避していった

火炎は直撃しなければ大したことはないがそれでも高熱を浴び続けてはいずれヘリ自体に異常がでる恐れがある


《カッター1-2会合点に到達、準備よし》

待ち望んでいた報告がきた


「了解、会合点に向かう」

ドラゴンの首が回らない程の急上昇からの加速で会合点に急ぐ


(炎の発射間隔はおおよそわかった、奴も生き物、炎を連続で吐かない癖のようなものがある)

オスカー大尉は全速で、しかしメヒド軍曹からの警告にも気を配りながら会合点に向かう


「会合点まで後三十秒、スタンバイ!」

ドラゴンの火炎を回避し、意図的に速度を落とす


《ハイドラ残弾無し!チェーンガンに異常発生!》

メヒド軍曹がそう報告してくる。しかし会合点までもう一息、油断はできないが武器はもういらない


《こちらカッター1-2、捉えたぞ》


「いくぞぉ!」

会合点にたどり着いた瞬間、オスカー大尉がスイッチを押した

本来は熱追尾ミサイルを回避するためのフレアを全弾放出したのだ


後方と左右に飛び出した二千度を越すマグネシウムの火工品は眩い光と温度が後ろから追いかけるドラゴンの目を焼いた

急激な視界のホワイトアウトを経験したドラゴンはその場で急停止した


《カッター1-2、エンゲージ》

急停止したドラゴンに横合いから襲いかかった


発射されたヘルファイヤ対戦車ミサイルは寸分の狂いもなくドラゴンの胴体に二発、命中した


ミサイルの運動エネルギーは機関砲などで脆くなった皮膚をたやすく引き裂き、肉をかき分けドラゴン体内で起爆した


キャノピー越しにも感じ取れそうなほど生臭くて濃厚な鉄錆の臭い、その直後想定以上の大爆発の衝撃と爆炎がオスカー大尉の乗機を襲った


「くそったれ!」

今までならなかった警告音がガンガン鳴り響き、高度計がグングン地上へと下がっていく


「こちらカッター1-1、墜落する!」

メイン、テールローターに被弾の警告、さらに左エンジンにも深刻な損害が出ている表記を見てオスカー大尉は瞬時に報告をあげる

錐揉みしながら墜落する機内でどうにかバランスを保てるようにするが、度重なる攻撃によりそれは不可能だった


「何かに掴まれ!」

そういうのが精一杯だった





















「カッター1-1、墜落」


「カッター1-2、上空警戒に移行せよ、燃料が続く限りでかまわん」


「閣下、救出部隊の出撃を許可して構いませんか?」

空軍総指揮官のソフィア少将が意見具申してくる


「許可する、必ず連れ帰れ」


「ありがとうございます、ゾディアック隊の指揮官に繋げ!」

礼もそこそこにソフィア少将はすぐに指揮に戻った。冷静沈着のお手本のような彼女だが、その影で仲間思いの熱くなりやすい性格なのだ


「閣下、大丈夫ですか?随分顔色が優れないようですが」

見かねたミリア大佐が大器を心配してくる


「大丈夫だ、水を持ってきてくれるか?」


「わかりました」

大器は今すぐに酒で全てを忘れ去りたい気持ちをぐっとこらえ、作戦状況が表示されるスクリーンに目を写した


(やっぱ俺みたいな小心者には、命のやりとりなんて重すぎんよ……)

キリキリと痛む胃を撫でながらぼんやりとそう考える大器


「ゾディアック4-1、バイパー基地を離陸、墜落現場到達まで二十分!」




















一方その頃……


カッター1-1墜落現場

オスカー大尉


コックピットのガラスを叩かれる音でオスカー大尉は覚醒した


目を開けるとそこには茶色の肌に醜悪な顔を邪悪な笑顔に歪めた小鬼の姿があった


「なんだこいつは!」

その姿はよく聞くゴブリンにそっくりだったが、現状確認できるゴブリンの肌は緑色だが、それに対してこいつらの肌は砂地と一緒の茶色だ

生き物の血を吸ってどす黒くなった棍棒をコックピットに叩きつけている。ヒビが徐々に大きくなっており、まもなく割れそうだ


(カエルみたいに周囲に合わせて肌色を変えるのかコイツらは!)

冷静に考えながら少しずつコックピットのガラスにヒビが入っているのを見つめ、墜落のショックから立ち直った頭がようやく護身用の拳銃の事を思い出し、コルトガバメントをホルスターから引き抜いた


「くたばれ」

照準をゴブリンの頭に据え、引き金を引く。コックピットのガラスをブチ抜き、ゴブリンの頭蓋を粉砕し、中身をぶちまけた


「くそったれ」

コックピットの留め金を外し、歪んだガラスを蹴破って外に這い出た


「メヒド軍曹、生きてるか!?」


「……無事です!」

ガンナー席のメヒド軍曹はNo3リボルバーを手にしており、頭から血を流しているが無事なようだ


《こちら、ホークアイ、カッター1-1、聴こえるか!?》

急に喋り始めた無線機を取り上げたのはメヒド軍曹だ

った


「こちらカッター1-1、メヒド軍曹だ、聴こえるか!?」


《よかった、生きてたか!救助部隊が向かっている、後十分で到達する、それまで生き延びろ!》


「了解した、長い一日になりそうだな」


「ですね、背中側はお任せください」

リボルバーのスピードローダーや弾の入ったポーチを取りやすい位置に並べながらメヒド軍曹はオスカー大尉とは反対方向を睨んだ


「ああ、こっちは任せな」

近くの岩陰に身を隠し、地平線を睨む


動く影は、見えた。岩だと思っていたが、どうやら岩をくり抜いたほら穴らしく、そこから棍棒や棒を持ったゴブリンがゾロゾロ出てきていた


「くそったれめ……」

拳銃の予備弾倉は四つ、無駄撃ちは出来そうにない


その瞬間、カッター1-2がオスカー大尉の頭上をフライパス、ハイドラロケットポッドをゴブリンの群れに叩き込んだ


「よっしゃ!やった!」

こちらのピンチを知ってか知らずか、カッター1-2はゴブリンの群れやほら穴に次々とロケットを叩き込み、サーマルビジョンでゴブリンの茶色の迷彩をことごとく見破り、チェーンガンを撃ち込んでゆく


そして弾薬を使い果たしたカッター1-2はあらかたのゴブリンを掃除すると、基地の方向へ飛び去っていった


「生きて帰ったら一杯奢りだな」


「やったぜ、なら生き残らないとな」


「誰がお前に奢るんだよ」

カッター1-2がいなくなった事により最初の勢いを取り戻したゴブリン達は声を張り上げてこちらは突進してくる


「よりにもよってこっちかよ!」

ミサイル攻撃により出来たクレーターを這い上がるゴブリンをガバメントの引き金を引き、一体一体確実に処理していく


「こんな事ならM4カービンでも積んだくんだった!」


「そいつぁいい!ついでに冷えたビールとフライドチキンも積んでください!」

回り込んできたゴブリンに銃撃を繰り返すメヒド軍曹が叫んだ


「それは最高だ!」

最後の弾倉が空になり、駆け寄ってきたゴブリンにガバメントを投げつけ、怯んだところに飛び膝蹴り、トドメにヘリの金属片に布を巻いた即席のナイフを喉に突き立てた


「大尉ぃ!」

メヒド軍曹が投げたリボルバーをキャッチし、振り向きざまに一発。棍棒を振り下ろそうとしたゴブリンの脳天を吹き飛ばした


「メヒド!弾は!?」


「さっきのでカンバンです!」

ゴブリンから奪った棍棒を渡し、サバイバルキットの中に入ってるナイフを構えた

その時、地面が揺れた


現れたのは周りのゴブリンより更に巨大なゴブリンのような何か、四メートルは軽く越してる巨大、枯れた巨木をそのまま武器にしており、更に足元には何十匹ものゴブリンがいる


「万事休すか……」


「ここでラスボスは卑怯だぜ……」

この光景を前にして流石に心が折れそうになる


だが、次の瞬間ゴブリンの群れが爆発と共に吹き飛んだ


「うおおお!!?」


「なんだぁ!?」

二人には何が何だかわからなかった。空から降り注ぐミサイルが巨大なゴブリンはおろかゴブリンの群れを跡形もなく消しとばしたのだ


ミサイル四発が着弾したのち、ターボプロップエンジンの轟音と共にMQ-9リーパーが飛び去っていった


「やったぜぇぇぇえええええ!!!」


「最高だぜ!総統閣下万歳!」

二人は喜びから抱き合い、勝利の雄叫びをあげた


リーパーが飛び去っていった方角から満を辞して現れたのはMV-22オスプレイだ


《こちらゾディアック4-1、お二人さん、待たせたな》


「ホントだぜ、あやうく俺たち二人で全部片付けちまうとこだったぜ」


《パーティに間に合ったようで何よりだ》

ガンナー席から機銃手が手を振ってるのに二人も手を振り返し、クレーターを避けて平地に降り立ったオスプレイの後部ハッチから出てきたのは第一次大戦時のドイツ陸軍の軍服を着た陸軍の兵士たちだ


「お二人さん、よく頑張ったな!」


「来てくれてありがとう!」


「上空にはマーベリックを積んだ無人機が控えている!もう安心だ!」

MP18を持った兵士たちがオスカー大尉とメヒド軍曹の二人をオスプレイまで護衛して、全員が乗り込むとオスプレイが離陸を開始した


「助かったぁ……」



















「ゾディアック4-1現場空域を離脱」


「キラー1-1、ゾディアック4-1を基地まで援護せよ、武装は任意で使用するように」


「ゾディアック4-1、ホットゾーン離脱まで三分、上空に脅威なし」


オペレーターの報告を逐次聞きつつ、大器は胃薬が効いてきたのを実感しながら安堵のため息を吐いた


「お疲れさまです、閣下」


「ミリア大佐、こういうのは辛いな、幸い死人は出なかったからよかったけど」


「ええ、ですがこれで我々は完全に制空権を得ました。これからはもっと精力的に動くことができます。しばらくはこのような事態は起こらないでしょう」


「そうだといいがなぁ……」


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[気になる点] > ミサイル四発が着弾したのち、レシプロエンジンの音を響かせながらMQ-9リーパーが飛び去っていった --- リーパーはプレデターと異なり、エンジンはターボプロップです。
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