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猫 ねこ ネコ  作者: カレー屋きんちゃん
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巫女加奈10

ここから普段の加奈のお仕事(お祓い)編です。


舞台設定が千葉なので、知っている人は知っている場所や事柄が出ますが……フィクションです。

あしからず。




12月某日



「なんで、たまの休みが実家の仕事なのよ~それも除霊~

……普段と変わんないじゃない!」



久々の休日。

実家での仕事を含め、5日ほど千葉に戻ることなった加奈。

仕事内容、実家では珍しいお祓いの依頼。

元々、除霊をメインにやっている神社ではないので、マジもんの除霊の依頼がやってくると加奈に丸投げしていた。



「仕方ないニャ。

まだ人員も揃ってない部署だからニャ。

遠出は無理だし長期休暇は勿論、長期の出張もしばらくないニャ」



「はあ~……

みんなはどこぞの大学のイケメン達と合コンだ~コンパだ~って、学生を謳歌してるのに。

あたしは、猫と一緒に幽霊だ~祟りだ~鬼だ~って……謳歌どころか、嘔吐しちゃうよ……」



「上手い!座布団1枚ニャ!

いつも加奈のギャグやだじゃれのセンスは、おじさんの心にドストライクニャ!」



「……

はあ……で。なんであんたはしれっと本来の姿でいんのよ」



「ニャ?別に今の時期、サンタの格好してればバレやしないニャ。

それにしてもここのビーフシチューは旨いニャサンドイッチも手作りだし……」



「でしょ?結構イケるんだよね~

で、財布が寂しい時は入り口んとこにあるパンの耳。砂糖やきな粉がまぶしてあって結構美味しいよ~」



「……平成生まれニャのに昭和臭い奴だニャ……

でも、まだあったんだニャここ。アルファだっけ?名前」



「えっ?そんなに前からあんの?

……千葉大医学部のお膝元だし、地域密着型って感じだったけど……」


お世辞にも繁盛しているとは言い難い店内……




~…~…




1982年1月18日



夜も明けやらぬ白子温泉近くの海岸。


「……」


1台の車が燃えている。中には1人の女性、椿森 茜44歳。

千葉市内でバーを経営している。


……いや、していた。



彼女はもう息をしていないどころか、体の半分以上が燃えている状態。


死因は絞殺による窒息死。いわゆる殺人である。犯人は車で彼女をこの海岸まで運び、車ごと火を付けて燃やした。



小さいながらも、夏場には海水浴客で賑わうこの海岸で起きた凄惨な事件。


後に連続焼死事件として有名になる事件の1件目。

30年以上たった今も犯人は捕まっていない。


未解決事件。



もし、犯人がいたとしたら時効が成立。

今も殺人による罪悪感に苛まれながら老後を送っていることになる。



そう、犯人が生きていれば……




~…~…




千葉駅から徒歩10分。

加奈のアパートからほど近い、ある喫茶店にて朝食をとる2人。

いつもビジネスマンや若者で賑わっている某チェーン店とは違い、いい意味で落ち着ける店内。

古びた少年雑誌や新聞、更に大型テレビまで置いてある。


「依頼主はDQNの親御さんかニャ?」



「オヤジのクセにそういう言葉は知ってんだよね……あんたは。

そっ、今回のは地元のドキュン系が心霊スポットでヤンチャして大量にお持ち帰り。気が付いたら日常生活にも支障をきたしてたって感じ?

でもさぁ、そいつの家が白子の太陽の里の上の方なんだよね~」



「あ、電車がないニャ」


「そ、あるにはあるけど乗り継ぎと乗り換え、そして死ぬほど退屈な電車とバスの待ち。

耐えらんない!」



「はいはい、加奈は都会に染まった千葉っこだからニャ……」



「染まってません!元々都会の人なんです!」


都会(東京)に憧れつつも、地元から離れられなかった加奈の住まいがここ千葉市。


千葉の県民性の1つ、地・元・完・結。

国際空港もありーの、ディズニーありーの、マリーンズありーので、東京まで行かなくてもなんとかなる土地柄のせいで中途半端にハイセンスになりきれない……


「……なんかスゴくディスられたような気がするけど」



「木の精ニャ。で、ペーパードライバーが車で行こうと?」



「その為のあんたでしょ?東京じゃなきゃ大丈夫だと思うけど……

保険よ、保険。いきなり長時間運転だと事故るかもしんないし」



「……わかったニャ。運転すりゃいいんニャろ?運転すれば……」


結局、ほとんど運転することになるんだろうニャ……




~…~…





1982年4月6日


早朝、3ヶ月前の事件現場の近くで焼け焦げた車が散歩をしていた人に発見される。


中には男の焼死体。


死因は焼身自殺からくる火傷によるショック死。


焼死は死ぬまでに時間が掛かる。その分苦しむ時間が長引き、自殺の方法としてはかなり不人気な方法。


そんな苦痛極まりない死に方をした男。東金出身のバスの運転手、矢作 雅司44歳。


奇しくも3ヶ月前の事件で殺された女性と同じ年齢だった。





同月21日


またも同じ海岸、同じ事件現場近くで焼け焦げたトラックが発見される。

中にいた死体の身元は柏市の会社員、星久喜 悟44歳。


何の因果か同じ44歳。


しかも2件目と同じ焼身自殺。




1月の件とこの4月の2件、この3件を俗に浜宿海岸連続焼死事件と言う。


この3件以外にも44歳の人間が死んでしまう事件がここ浜宿海岸で起こるが、白子役場・茂原警察が把握し、お祓いまでしているものはこの3件。



この3件から連続焼死事件の話が始まる。




「ヒャッホー!やっぱり空いてる126は最高~」



「お前はどこのふなっしーニャ!

たく……ペーパーっていうから、ゆっくり安全運転かと思ったら……法定速度ギリギリの飛ばし屋ニャないか……

道はわかっているのかニャ?」



「んにゃ、全然」



「……

次、東金って表示が見えたら右ニャ……」



「ラジャー!」



「……」

やっぱり、有料道路の標識出たら乗らせるニャ……

このままじゃ、追い抜きや信号無視までしそうな勢いニャ……




朝食後、近くのレンタカー屋で車を借り、一路、東金・茂原方面に向かう2人。

一度海の方まで出て、南下する予定だ。




「ところで、何でDQNはホーンテッドマンションになったんニャ?」



「ホーンテッドマンション?あぁ、お化けだらけってことね。

なんでも、近くの海岸でドキュン仲間と花火してたんだって、この真冬に。

そして、見事に海岸で屯ってた霊を持ち帰ったということらしいよ」



「近くの海岸?浜宿海岸のことかニャ?」



「お?知ってたね。

心霊オカルトでは有名だけど、まさか知っているとは思わなかったよ。

そ、その海岸でドンチャン騒ぎしてたドキュン達が霊を刺激して憑依体質だった依頼主の息子がみんなの分の霊ももらったらしいわ」



「あの噂の海岸でね~」


少し楽しくなりそうだニャ。




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