表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
87/180

バトル・オブ・ブリテン

読んでいただいてありがとうございます。

攻撃機の名称変更しました。しんでん→らいでん

 対アンノ防衛軍、イギリス分遣隊―(イギリス空軍)にも母艦の出現は予想されており、対策はなされていた。これは、実質日本で開発されたもので、“しでん”に比べると2倍程度の大型の機体に径150㎜のレールガンを1基積んだものである。  


 機動能力は“しでん”に比べると大幅に低いが、その80㎏の弾頭を秒速7㎞で打ち出した運動量は、いかなる装甲も打ち抜けると信じられていた。この名は、“らいでん”と呼ばれ、数が少ないこともあってイギリスでもそのまま呼ばれている。これは陸上自衛隊で戦車の代替として開発されたものを、主として速度をしでんに近くして攻撃機に改装したものである。


 配備された機数は、現状のところイギリス全土に20機であり、すでにイギリス上空に現れた25機のアンノ母艦に向かって離陸している。実際のところ、これで最後ではなく核爆弾を使ったさらに威力のある兵器も開発されているが、現状では核爆弾による放射能汚染を考えると、最後の手段にしたいと考えられている。

 しかし、“らいでん”が母艦に近づく間にも、アンノ機の放った球体(空中爆弾と呼ばれるようになった)が地上に達して、爆発を始めている。これは魔力で操られていると考えられており、重力で地上に落ちることなく浮遊して、近くに敵が来ると近づいて爆発するという厄介なものだ。


 しかし、地上に達するものもあり、これはいわば爆弾のように相手に被害を負わすために落とすものらしい。幸い、アンノ機母艦は現れた位置は、都市部上空でなく、それらいわゆる外れ弾は農場で爆発するものが多いが、狙ったように工場や集落に落ちるものもある。


 さらに、アンノ機は一斉に都市部に近づいていくという新たな動きを見せ始めている。管制AIからスピットファイア(SF)Ⅱ戦闘機隊に指示が飛ぶ。

「全機、アンノ機の都市上空への移動を防げ、そのためできるだけ早急に撃墜せよ」

 上空から外れ弾の爆発を見ていたSFⅡはアンノ機の放った空中爆弾の脅威に気が付き、全力でアンノ機の排除に取り掛かったが、何しろアンノ機は全部で7千5百機、防衛に当たる戦闘機隊の数の3倍である。


 それらが近づくと、空中爆弾を放ってくるのだ。さらには、その爆弾は魔法で操縦されれているらしくSFⅡが近づくと向きを変え、さらにはこちらが減速して追いつけるとみると、あとを追いかけてくる。幸い、アンノ機の機動能力はSFⅡの機動に追いついていないが、相手の数が多いこともあって、爆発に飲み込まれて撃墜されるものも出てくる。


 現状のところ彼我のキルレシオは4:1程度であり、しかもSFⅡのパイロットは本土上空であることが幸いして、脱出して助かるものが7割を超えている。なお、現在の脱出装置はパラシュートではなく、シートに仕込んだ反重力装置であるので、機体が破損したときは非常脱出すると、座席ごとに打ち出されて反重力で緩やかに降りるのだ。

 このように、SFⅡの奮闘にも関わらず、町に近づくアンノ機を遅らせはしても、食い止めることはできなかった。そのため、まき散らされる空中爆弾による被害は、だんだん都市部に近づくにつれて大幅に増していった。


 ロバートソンは、管制AIの命令によって、母艦の周辺を飛び回っていた。母艦の周辺には遠ざかっていくアンノ機とは違って、母艦の防衛をするように30機ほどのアンノ機が飛び回って、空中爆弾を投げかけてくる。

 さらには、母艦の辺りには空中爆弾は数百が飛び回っており、SFⅡが近づくと近づき爆発するので、気が抜けない。実際に、僚機で相手を追ううちに空中爆弾のそばにおびき寄せられて爆発に巻き込まれたものも数機ある。


 ロバートソンは、1機のアンノ機に狙いを定めて追っている。彼が追っている機は、追われていることに気が付いているようで、マッハ1.5程度のスピードで逃げながら、反転、急降下、急上昇、急旋回と逃げ回って狙いをつけさせない。

 しかし、アンノ5と彼が名付けたそのアンノ機のそばで空中爆弾が破裂して、その方向に旋回するつもりだったらしいアンノ5が一瞬長く直線運動をした。結果、レールガンの命中確率が99%を上回り、レールガンの砲が発射されてアンノ5を打ち抜く。


「これで、撃墜5機目だ。ああ!」今日で5機目の撃墜に高揚した気分は一遍で覚めた。

 それは、横目に入ったアンノ母艦の横腹に開いたシャッターから、黒く長いものが飛び出す光景である。ロバートソンはとっさにあれはミサイルだと思った。


 彼らパイロットには、管制AIから、アンノ母艦からミサイルが都市部を狙う可能性があると警告されていたのだ。

「こちら、BM13、警告!母艦8からミサイル発射される、速度は秒速1㎞(マッハ3)、方向はバーミンガム中心地の模様。データを送る。だれか撃墜してくれ!」

 ロバートソンは絶叫する。バーミンガムには彼の父母と妹が住んでいるのだ。あの巨大さからいえば、落ちたら下手をすると100万の人口が全滅する。


 管制AIから、すぐさま、指示が発せられ迎撃可能な位置と姿勢にあった3機のSFⅡ機が追った。追った3機は、幸い速度を同調させるこちとができたので、レールガンでアンノ機に近い大きさのそのミサイルを楽々と撃墜できた。


 殆ど同時に、“しんでん”が4機のSFⅡに護衛されて、ロンドン近郊の基地からやってきた。“らいでん”は、速度マッハ2の速度で近づきながら、10㎞の位置から一発目を放った。

 それをスクリーンで見ていた、ロバートソンが見守る中で、“らいでん”から放たれた赤熱した光の矢は、ほぼ停止していたアンノ母艦の船腹を楽々貫いて反対側から飛び出した。 


 それは、道連れに大量のがれきを噴出させ、一瞬後は火炎が噴き出る。長さ520m、胴体径が55mのずんぐりした機体は、悠々と飛んでいたものがぐらりと傾き、地上に向けて落下していった。

 約5千mの高空から自由落下した母艦は、その25万トンの巨体をもって地上に斜めに落ちた。船体は先端が地下100mも潜ってへし折れ、船体は半ばつぶれたが、その衝撃で発生した大音響は、30㎞離れたバーミンガム近郊まで響きわたった。


 また発生した振動は直近では震度6、70㎞離れたバーミンガムでも震度4の揺れをもたらした。

 結局、アンノ機母機も、“らいでん”のレールガンに耐えられないことは、はっきりしたわけある。

 “らいでん”20機は最終的に、17機の母艦を撃墜することができた。しかし、“らいでん”も無傷とはいかず、決死の攻撃を繰り返すアンノ機によって2機が空中爆弾により、2機がアンノ機の体当たり攻撃で撃墜されている。つまり、8機の母艦は異世界への門を開いて、逃げ帰っていったことになる。


 また、バーミンガムの場合は、非常に射撃が上出来の例であったようで、一発で相手が撃墜された例はまれで、通常2発、2例では撃墜するまで3発を要した。この点、次弾を打つまで15秒強を要する“らいでん”では、母艦の周辺を飛び回る必要があるわけで、そのために撃墜される危険性を増すことになった。


 さらに、撃墜した17機のうちの5機は反重力装置を破壊されて、航空から落下したが、残りの反重力装置は生き残ったために、地上に緩やかに降りている。しかし、船体は生き残っても、自爆装置が仕掛けられていたため、結局内部は爆薬によって破壊されてしまった。


 こうして、イギリスの空からアンノ母艦がいなくなると、残敵掃討になるが、あとは警戒すべきは異世界にいる母艦による異世界への門である。しかし、これの位置は魔力レーダーによって突き止められる。母艦がいなくなった状態では、1600機まで数を減らしたイギリス側のSFⅡと、残り2300機になったアンノ機の戦いになった。


 しかも、アンノ機の多くはすでに空中爆弾の在庫を切らしており、残る武器は機関砲のような武器による銃撃及び熱線銃であった。機関砲は、SFⅡのガトリング砲より射撃速度・射程ともに劣り、熱線砲は5秒ほど照射しないと効果がないため、結局ほぼ牙を抜かれた状態であった。

 しかし、母艦からのミサイルは幸いすべて撃墜されたが、それまでに空中爆弾の落下による爆発はおそらく数千発分は起きており、これら1発の威力は250㎏爆弾相当であった。その爆発も都市で起きたものが1/3程度はあり、そのため、多くの建物が破壊され、死傷者も数多い。


 さらに、アンノ機及び母艦の撃墜による被害も大きなものであり、アンノ機母艦の1艦はある地方の中心都市に落ちて、大爆発が起きたために町がほぼ全壊する被害を受けている。

 まだ、被害の集計は全く進んでいないが、数十万人の犠牲が生じたのは間違いないと推定されている。このため、残ったSFⅡのパイロットは、深く憤っており、アンノ機を逃がすつもりはなかった。そのため、レーダーで異世界の門が開いたことをキャッチされた時は、すぐさまSFⅡがその周辺に陣取るので、アンノ機が逃げ出す術は殆どなかった。


 こうして、どちらも降伏は考えられない状態で、アンノ機はどんどんその数を減らしていき、ついに最後の1機が撃墜されたのは、その出現から3時間の後であった。その間、比較的訓練時間の短いSFⅡの半分ほどは一度着陸して、AE電池の交換と銃弾の補充をしている。


 ロバートソンは、辛うじて戦闘の激戦途中にバッテリーの交換はしなくて済んだが、アンノ機の残り僅かとなったことで着陸したが、実際にバッテリー残量がぎりぎりの状態であった。すでに、へとへとではあったが、アドレナリンを掻き立てて、さあもう一度上がるぞと構えたところに、飛行長のギブソン中佐がやってきた。


「ロバートソン、ご苦労だった。よく戦った。もう上がらなくてもいいぞ。もう、アンノ機は30機足らずだ。こっちに来て皆と最後の戦いを見よう」


 ロバートソンは中佐の声を聞いて、『なるほど、もう必要ないな』と納得して、中佐の後をついて歩く。そこには、30人ほどのパイロット仲間がスクリーンを見ている。


「おお、ロバートソン、降りてきたか。まあここに座れ」顔見知りのファデー少尉が、自分の横のパイプ椅子を指す。疲れはてたロバートソンは素直にそこに座ってスクリーンを見る。


「見ろよ。もう戦いも最後だ」スクリーンはある管制官の乗った機から戦場をとっているものらしい。それは、なぶり殺しに近いもので、すでに10機程度に減ったのアンノ機の周囲を、SFⅡが自由自在に飛び回って、射的のように次々にアンノ機を撃ち落としている。


 最後の3機になったとき、だれともなく叫び始めた。

「3!2!1!終わったあ!俺たちは勝った。バトル・オブ・ブリテンに俺たちは勝ったぞ!」もはや大騒ぎであるが、ギブソン中佐がやってきて手まねで抑えるようしぐさをする。やがて、騒ぎは収まって皆が中佐を見ている。


「皆、本当にご苦労だった。第1ランウンドは勝ちだ。しかし、まだ第1ランウンドだ。アンノの兵力は判っていない。だから、また攻めてくると思っていなくてはならん。今日はだから、バカ騒ぎはできん。寝酒くらいは良いので、早めに休め。明日は今日と同じくらいフレッシュでいてもらわんと困る。まず、いまから帰ってくる仲間を迎えてやろう」


 聞いていた皆は、今日の辛かった働きを思い、やや不満であった。しかし自分たちの働きに、家族の、友人の命と運命がかかっているのだ。実際に今日のみでたぶん十万を超える人々がアンノに殺されたし、もし俺たちがあのミサイルの撃墜に失敗していたら、それが百万を超えたかもしれない。確かに、アンノが明日もまた来ないという保証はないのだ。だから、今晩浮かれるわけにはいかない。


 決心した、男たちと女たちは仲間を迎えようと滑走路に集まる。

 一方で、飛行長のギブソン中佐は、明日からの戦いの準備をしなければならないので、その会議の場に向かっているのだ。彼は最も重要な問題を考えていた。


『今日はなんとか相手を退けたが、犠牲も大きかった。明日からの何とかするには、援軍が必要だ。日本からの援軍は来るのか?』


よろしかったら別に連載している小説も読んでください。

https://ncode.syosetu.com/n8125eu/

ライの物語ー魔法を科学で強化して魔法帝国の侵略を阻止せよ


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ