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日本新世紀会創立3周年3

この話はようやく終わりました。

2部完

次から新しい展開が始まります。

 国際関係に関しては長身やせ型の商社出身の立田亮介議員が説明した。

「国際関係は、なんといっても魔法の処方とハヤト会長の資源探査がてこになって、極めて有利に展開しております。

 とりわけ、国連の票が多いアジア・アフリカについては、アジアは伝統的な繋がりの上に、処方がほぼ完了しつつあること、さらにタイ王国の高度成長政策が成功しつつあることを手本に、フィリピン、ベトナム、マレーシア等でも続々追随しつつあります。


 またアフリカは、なんといっても東部の日本自治区の開発に伴う、処方の進展と東部での高度成長の余波で全体が活気づいております。さらには、中南米の非白人国については、処方ができる人材がわが国に豊富なことから、アメリカと共同で処方を進めております。

 また、ハヤト会長が行っている資源探査については、皆さんもご存知の通り、北アメリカ・東南アジア・南アジア・アフリカ・シベリア・オーストラリアについては終了し、次回は南アメリカについて実施することになっています。


 このように、とりわけ処方のために、世界中に日本人を目に見える形で送り込んだことにより、わが国に対する好感度が非常に高まっております。

 そうしたことから、我々の会で挙げていた、国連における日本とドイツを特定したいわゆる『敵国条項』は廃止されました。さらに、日本の常任理事国入りは、処方と資源探査のカヤの外に置かれた常任理事国であるフランス、さらに中国が反対していましたが、近く彼らの国にも実施するというバーターで賛成を取り付けましたので、来月の国連総会で議決の見込みです」


 立田の言う通り、アメリカとの協議で決まった、魔法の処方の日本の責任分担である、アジア・アフリカについては、すでに日本人処方士による各国の処方士養成は終了している。あとは、各国で自分の国民である処方士によって、鋭意国民への処方を進めているところである。


 資源探査については、よほどの理由がなければ、どこかの国については行わない選択肢はないとハヤト自身も思っており、最終的にはヨーロッパや中国もやらざるを得ないとは決めていた。現状で終わったところは、日本・台湾・北朝鮮が最初で、次に世界の未だスーパーパワーであるアメリカを味方につけるための、カナダを含んだ北アメリカの探査を早めに終わらせている。


 さらに日本自治区関連の東アフリカを済ませたあと、さつきの結婚相手のタイ王国を含んだ東南アジアの探査、次いでロシアとの北方領土返還にからみシベリアを行った。その後については、各国の綱引きの中で日本として貴重な資源国であるオーストラリアに探査が行われ、その後東アフリカの結果を見た、各国の要請の大合唱に押されて残りのアフリカを実施した。


 さらにその後は、アメリカの要請の乗る形で、南アメリカ大陸を実施すべく準備しているところである。ちなみに、処方については特に魔力の小さい白人について、補助機器を用いた処方手法を日本と共同開発したアメリカが主導権を握っている。

 彼らは国内の比較的魔力の強い有色人種を、補助機器を併用し処方士として使って処方を進めているが、いまだ国民の半分の処方も済んでいない。


 ヨーロッパについては、イギリスは旧来からの親密な関係の中で、寛容な条件で技術を譲り渡している。しかし、政治的に距離のあるフランス・ドイツなどとは相当に厳しい条件での技術供与であり、いまだエリート階級の40歳以下のものしか処方が進んでいない。


 ロシアについては、指導層は白人であるが、アメリカからは無視された格好であった。しかし、2年前に日ロ平和条約が結ばれ、その中で旧ソビエト連邦に責任を押し付けた格好ではあるが、ロシア政府から北方領土の返還と日本兵のシベリア等へ抑留と強制労働の謝罪が行われた。

 そのうえで、先述のように、とりあえず日本の国益に密接に関係のあるウラル山脈以東のシベリアの資源探査と、日本人処方士を送りこんでのロシア人有色人種の処方士の養成がすでに完了している。また、オーストラリアの処方は、アメリカとの協議の上で余力のある日本が処方士の養成を行った。


「ハヤト会長の資源探査の結果として、地球の金属資源および石油・天然ガス及び石炭について、現在の資源量は、探査前に言われていた量の2倍を超えています。さらに、こうした資源は地域的に偏っていた点が問題でありましたが、ハヤト会長の探査が地中の深めの資源を発見できることから、比較的地域的には普遍的に見つけることができています。

 このことは、資源の人為的なコスト吊り上げを防止することに大きな効果があり、相対的に資源小国である日本にとっては大きな意義があります。


 しかしながら、資源開発については、従来は収奪型の、取った後のことは考えてないというものでありましたが、採取地の自然復旧など、より採取地の環境に配慮することを要求されるようになりました。これは資源のコスト高には繋がりますが、採取地のそうした工事は雇用及びその後の跡地の有効利用にもつながり、よりその地域経済に貢献するものとなります。

 また、このコストの増加はありますが、マネーゲームの駒に扱われることが無くなったことから、以前のように短期的に劇的には安くなりませんが、安定したリーゾナブルな価格での調達が可能になっています。さて、次に東アフリカの日本自治区の開発について説明します」


 東アフリカのモザンビーク、ジンバブエ、マラウイ3ヵ国からは、すでに合計10万k㎡の土地を買収し、資源探査の結果も出そろったところから、全体的な施設の配置計画は固まって、すでに開発が超特急で進んでいる。これらの工事を手掛けているのは日本自治区建設団であるが、これは最終的に日本自治区政府に統合されることになっている。


 建設団には民間の投資金も入っており、人材も民間から派遣されているが、自治区政府になった時には、民間資金は10年年賦で返済し、人材も希望するものは元の組織に帰ることになっている。なお、基幹道路および水利用設備については、すでに8割方工事が終わってすでに供用されており、農地は100万haについて、第1回分の収穫が行われたところである。


 自治区にはすでに25万人の日本人と50万人のアフリカ人が働いており、その家族を含めると、すでにその人口は150万人を越えている。農作物については、米作は基本的に現地消費分のみということになっており、穀物は麦とトウモロコシ等が栽培され、さらに大豆などの豆類や様々な野菜が大規模に栽培され始めている。

 

 これらの栽培を手掛ける人々の大部分は、日本の小規模な農業を捨てて、大規模農業を目指してきた人々である。だから、逆に日本でこれらの人々が耕作していた農地を、残った人々が購入して大規模農家になるわけである。

 これらの人々は、一区画の農地20haに農業集落内の倉庫付き4LDKの自宅を、日本の農地を売ったお金を当てて購入するわけである。むろんこのほかに農機具が必要であるが、これは基本的にリースになっている。むろん、移住者の中には自己資金が不足するものも多いが、低利の融資制度を利用できるので、もし当初資金全額の融資を受けても、15年以内には返済は終わると計算されている。


 なお、モザンビークの低湿地及び沿岸では、大規模なエビ、マグロをはじめとした養殖が行われており、さらに漁業基地が作られて近海からの漁獲が行われている。

 これら、農漁業については主な供給先は日本本土であるが、現在ではすでに重力エンジン駆動の航空貨物機が、距離1万5千㎞の距離を1日強の時間で結んでいるのだ。この航空貨物機による荷役は日本自治区の建設に大いに貢献している。


 鉱工業については、自治区内で鉄鉱山と石炭のそれなりの鉱脈が見つかっている。地下資源については、元の所有していた国に譲ることになっている。もっとも、他に見つかった資源の規模に比べると規模は知れており、現状では無視されている。


 モザンビークについては、鉄と石炭の大鉱床が見つかっているので、日本政府の大規模な融資によって同国に製鉄工場が作られた。これは、100万kWのAE発電所の電力で石炭からコークスを低公害で作り、その最高品質のコークス使って最新の炉で銑鉄から鋼を作るものである。

 つまり、モザンビークは鉄鉱石と石炭ではなく鋼鉄塊を輸出するのだ。この鋼材の精錬システムは世界で最大の精錬能力を持つ中国の製鉄所の製品とは、次元が異なる効率と品質のもので、コストはおおむね半分といわれている。


 また、一方でボーキサイトは、モザンビークとジンバブエの国境にまたがって大鉱脈が発見されているので、この近傍に両国の共同出資でアルミニウムの精錬工場が作られた。このためにも大電力が要るので、やはり100万kWのAE発電所が併設されている。

 また、ジンバブエにはその見つかった資源を生かして、マンガン、ニッケル、クロム、コバルト、さらに金や白金など様々な金属の精錬工場が作られている。


 日本自治区は、これらの金属を生かし、多数の日本人が住むという環境にひかれて、数多くの企業が工場を計画して実際に建設し始めている。なにより、日本自治区には今後大発展が可能な、15億の人口が住むアフリカ大陸という巨大な商圏があるのだ。


 立田亮介議員が日本自治区の状況の説明を最後に以下の締めくくりの話をした。

「このように、日本自治区の建設とその実動に伴って、アフリカ東部が経済的に大いに沸き立っております。さらには、ジンバブエの高地に建設された国立アフリカ東大学が、2年前に開校しました。

 ここでは、4千人の学生のうち3千人5百人がアフリカ人になっておりまして、これがアフリカ全土に大きな影響を及ぼしつつあります。ご存知の通り、いち早く処方を行きわたらせた、わが国の学術レベルは世界の水準を抜いております。


 そこで学ぶ、当然処方を受けた社会人のアフリカ人の学生が国に帰って、日本への大きなポジティブな影響を及ぼしつつあります。このように影響を受けた多くのものが、可能なものは日本へあるいは日本自治区へ来て、様々に学ぶようになっています。そうした国々から、自分の国にも日本自治区設立との話が殺到しており、断るのに苦労している状況です。

 以上述べてきたように、結局ハヤト会長が異世界から持ち込んだ、魔法の処方と資源探査が世界を変えつつあり、さらにはそのおかげを最もこうむっている日本が、世界から評価されることにつながっています」


 会では、さらに科学面での最近の成果を、ドクターである水谷恵一議員が説明した。

 その後、会議の終わった午後5時からパーティが開かれ、首相をはじめ自民党の幹部、新進党党首他の幹部も出席して短く挨拶した。


 立食パーティの会場で、篠山首相がハヤトに話しかける。

「ハヤト君、君の妹さんのさつきさんの2人目のお子さんができたそうだね。私も祝辞を送ったよ。なにしろタイ王家のおめでただからね」


「はい。ありがとうございます。今度は、男の子で元気ですよ。姉のリーテェラほどではありませんが、やはりかなりの魔力はもっていますね。どうも、どちらも妹の遺伝子が強いようです」


 ハヤトが応じると、首相はそばに寄って来て小さく言う。「ところで、君も2人の子持ちのようだが、魔力はどうかね?」


「ははは!わが子はかわいいですね。どっちもなかなかのものですよ」

 そう、ハヤトは浅井みどりとの間にできた美和3歳に、森川裕子の間にできた健太郎1歳の子持ちである。浅井みどりは、最初から結婚する気はないが、森川裕子については、その母の瑞枝からハヤトは娘の結婚を迫られている。


 しかも、瑞枝はハヤトの母の涼子ともタッグを組んでおり、ハヤトも裕子を妻にするにあたって不満があるわけでなく年貢の納めどきかとは思っている。

 そこに首相が言う。「ハヤト君も、そろそろあの森川さんの娘さんと結婚したらどうかね?いい娘だと思うけどね」


「そうだよ。ハヤト君、そろそろ、君も年貢の納め時だよ。森川裕子さんは良い娘だよ。美人で賢いし、明るいしね。なかなかあれだけの娘はいないよ」そばに居た日本新世紀会の幹事長の水田も重々しく言う。彼はむろん妻帯者であり、2人の子持ちである。


 ハヤトは、それを聞きながら、妹のさつきの言葉を思い出していた。それをさつきがハヤトに最初に言ったのは、ハヤトが週刊Fがらみのごたごたが片付いて、両親を連れてタイに行った時である。

 ハヤトは、その時はタイと東南アジアの資源探査を行う予定で、まずバンコクに行くので“しらとり01”で両親も一緒に行ったのだ。その途中、“しらとり01”は元軍用機であるため、中国上空は通らず沿岸を迂回した。


 その通過時、たまたま中国の空母2隻が爆発したのだ。その結果、むろん大騒ぎになり、ハヤトが直後“しらとり01”でタイに到着したことを知った中国外務省は、ハヤトが犯人と名指しで非難した。

 むろん、ハヤトはマスコミの取材に、そんなことは自分にとって不可能だと否定しているし、日本政府も中国の言うことを無視した。


 公的には、あの尖閣沖の海空戦の日本の戦果の多くは、“まもる君”によるものとされており、ハヤトは無関係である。むろん知る人は知るであるが、さすがに日本のマスコミも、週刊Fのありさまを見ると、判ってはいてもこの件にはハヤトが犯人とは言えない。

 その結果、日本大使館付きの武官だった郭という武官が馘首くびにされた。そのことは、その後ハヤトは、日本に帰った時に外事警察の木村警部から聞かされている。


 話が逸れたが、ハヤトは、ようやく処方の仕事が終わって、大学での仕事をしているさつきに、バンコクの泊まっているホテルで、両親とともに会ってともに夕食を摂った。

 その時、彼女の結婚の話が出た時、さつきが言ったのだ。


「兄さん、私はミナールと結婚して本当に幸せよ。兄さんはみどりさんと裕子さんの2人がいるわよね。どちらもいい人で、結婚は考えていないと言うけど、裕子さんはちょっと違うと思うな。考えてやった方がいいと思うよ」


 母の涼子がそれに追随した。「そうよ、ハヤト。本当に考えなきゃ」

 さらに、先日さつきが2人の子供を産んだ時に、ネット通信で連絡した時に言われたことだ。

「兄さん、本当に裕子さんのことは考えた方がいいよ」


 結局ハヤトは、みどりと話をして意向を確認したうえで、その後裕子と相談をして結婚する話を決めた。彼らは、派手なことはせずに、まず裕子を籍を入れて、双方の両親と友人を呼んで、会食をすることで結婚式とした。


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