日本新世紀会創立3周年
本の出版の話があり、その原稿のため大幅に訂正していました。
今後も当分は週に2回の更新で行くつもりです。
今日は日本新世紀会の創立3周年の成果発表会である。
すでに、日本新世紀会の政策とその進行に伴って、世界が変わっていっているのは世界的に認知されて、発表会は2000人の聴衆を収容できる代々木の国際会議場で開かれた。ちなみに、3年前の震災によって、大きな被害を受けた東京圏であるが、好調な経済にも支えられて、すでにすべての震災の傷跡は癒えている。
最初に、一応会長のハヤトから冒頭のあいさつがあった。
「ハヤトです。皆さん、今日はお忙しい中この発表会においで頂きありがとうございました。今日は、日本新世紀会の3年目の節目ということで、3年前に我々が掲げた政策目標の成果を検証する成果発表会になっております。
55人で旗揚げしたわが会も、今や、党派を超えて集まってきた国会議員による会員102名、地方議員が525人、スタッフ105人によって構成されております。そして、その全員がそれぞれの役割をもって、会の挙げた政策の実現のため、あるいはすでに実現したものはその運用のための活動しております。 ご存知のように、当初は大風呂敷と言われた我々の政策も大方は軌道に乗っており、すでに完成したものもあります。さらに、これらは、国民の皆さんの生活を大きく良い方向に変えており、間違いなくわが国、及びそれに引きずられて世界も良い方向に向かっていると確信しております。
しかし、これらはまだ始まってわずか3年であります。今日の発表の内容は、あくまで中間点として位置づけ、必要があれば政策の方向を変えて、さらにより良き将来を見据えてこの発表会を生かしていただきたいと思います」
会場の拍手に包まれてハヤトが演壇から降り、幹事長の水田が壇に上がる。
「幹事長の水田良治です。今日はお集りいただいた会員の皆さん、また世界の様々な国から来ていただいた皆さんありがとうございます。わが会も、会員とスタッフの数が増えたことはもちろん、会員の皆さんの能力を生かした営利事業も行うことによって、独自の予算をもってその政策の展開及び立案を行う体制を整えることができました。
それに伴い、専任スタッフも抱えて有機的かつ迅速な活動が可能になり。より迅速な政策の立案とその推進を強力に進める体制を整えることができたと思っております。さて、前置きはここまでにして、まずは法律・政治について、重要な施策の展開を主導していただき、すでに大きな成果を上げた瀬川和美議員の発表をお願いします」
演壇に立ち、プロジェクターを操作する35歳になった瀬川は、小柄でぽっちゃりした体つきではあるが、鋭い目のいかにも切れそうな女性である。
「瀬川です。まず、ハヤト会長の選挙時の公約であった、法制度の簡易化については、ご存知のように半年前に完成しました。
その時点で、すでに2千を越えてまだまだ増えそうであった法制度は、AIを駆使して目的・方策・期待する効果等による整理の結果、重複・類似を排除した結果、212に整理されました」
瀬川は、以前の法律からどう変わったかを示す図をプロジェクターで見せる。確かにごちゃごちゃしたリストが、すっきりしたリストに代わっている。そこで、彼女はいくつかの事例を挙げて、どのように法律と関連する規則等がどう変わっていったかを説明していく。またそれを法制度として成立させるための、国会での努力を説明する。
さらに彼女は30㎝角に厚さ15㎝程度の、銀色のボックスとその前のキーボードを映す。
「この法律AIは、そればかりでなく、一つの巨大なソフトウェアとして電子化されて、その運用に関して、キーボードによるインプットまたは音声の問いかけに、必要な質問内容の確認の上で適切な回答することができるようになりました。
これは、民事、刑事上の処罰・量刑の決定までを行うことができますが、現状のところでは裁判官と弁護士の補助役を果たしている段階です。しかし、実際には現状までの運用の結果を検証すると、すでにとってかわりうる存在になると考えられています。
ただ、現在多くの人が従事している裁判官と弁護士という職業をどうするかが問題になっており、このあたりの調整と制度の確立にはなお少なくとも10年はかかるとみられています。しかし、このシステムを運用することによる人々にとっての非常に大きな便益を考えれば、結局これを実用するのは必然であろうと考えています」
彼女は一旦言葉を切り、聴衆を見て続ける。
「またこれは、従うべき法規に関してのガイダンスにも使われ、例えば人々が様々な申請を行う場合、または役所の法律の運用に対しては、すでに本格運用が始まっています」瀬川が会場を見渡すと、会場からオーという歓声と拍手がわく。
日本では、これらのことはすでに知られた事実である。しかし、海外にとってはアメリカ合衆国・台湾では同じ試行が始まっているが、魔法の処方が遅々として進まないヨーロッパでは、まだその技術レベルに達していない。
さらに、瀬川はベージュに塗られた1m程度の立法体を映す。
「これは、政策決定に使おうとしている有機電子頭脳ですが、この大きさで10年前のスーパーコンピュータの能力を上回っています。これを活用して、私たちは論理的かつ定量的な現状分析と、方針・ポリシーの決定及び具体的な政策決定を行おうとしています。
この電子頭脳は、膨大な計算能力及びここの検証能力においてはすでに必要な能力に達していますが、まだ基本的ないわば判断において未熟な面があり、その面では実用上のレベルに達していません。いわばまだ幼いのです。ですから、まだ数年はケース・スタディを積む中で、経験を積ませて成長させていく必要性があります。
しかし、物事の判断を除き、ある事象が起きた時にその結果はどういう事象に結び付くかの正確な予測というか演算をすることは可能です。ですから、政策決定の補助というツールには十分使えています。このことから、今は我々の会の政策の妥当性の検証に用いていますし、政府においても各省における政策の策定の補助に使われております。
なお、この電子頭脳については、政府の新技術開発プロジェクトにおいて開発されたものであり、今も様々な改良で世話になっています」
その後瀬川は、具体例について、すこし詳細な話をして彼女の話を終えた。
次に、経済・産業担当の木俣益男が登場する。、33歳細目でメガネのインテリ然とした木俣が、いつものように眼鏡に手をやり、プロジェクターを操作しながらしゃべり始める。
「私は、実用化されたAE技術すなわち原子励起と、重力エンジンを応用した様々な技術の工業展開の現状について説明します。しかし、ここでは軍事的な展開は安全保障担当の瀬崎議員に譲ることとして、私は商業的な応用についてのみ説明します。
まず、この映像をご覧ください。これは重力操作の応用の一つである、中高年者対象の魔法の処方のための補助装置です。これについては、ご存知のようにすでに実用化されて、わが国ではほとんど対象者に対する処方が終わろうとしています」
プロジェクターにより映されたスクリーンには、椅子に腰かけてヘルメットをかぶった人の前に白衣の人が立って処方の補助装置を操作している様子が映っている。
なお、中高年の処方については、とりわけ引退前後の男女に対する処方をどうするかで様々な議論があった。これは、年金生活者が処方を受けて長生きをするようになると、年金制度が崩壊するからである。そのため、優先的に処方を受けた比較的高齢の現役で働いている人々、議員や会社の経営層の人々について処方後の状況がモニターされた。
とりわけ、70代から80代の人々について調査によれば、処方によって人に活力が戻ることは事実であり、頭の働きが良くなり、活力が増して疲れにくくなることは確かであった。つまり、これらの人々はより優秀な働きを示すようになって、その属している組織により貢献するようになった。
しかし、処方によって寿命が延びることはないというのが現状の結論である。それは、特に高齢の者は、処方を受けても年を経て急に衰え、数日で亡くなった人が多い。このことから、老人は魔力によって活力を取り戻すが、魔力にも一定の寿命があって、結局その寿命が来ると魔力は失われ、それによってかさ上げされた体力が失われるというメカニズムが明らかにされた。
そこで、処方を望む者にはすべて一律の料金で実施することになった。これは、社会人の場合には処方士によって普通に処方する場合一人5万円、35歳以上で補助装置付きの処方を受ける人の料金は一人10万円ということになっている。
この結果、とりわけ60歳以上の人々への処方の結果、活力が増して自主的に体を鍛えるものが多く、医療費が著しく減ることになった。実際65歳以上の人々では、年間の平均医療費が50万円を超えていたものが、20万円以下になっている。加えて、年金生活者の処方を受けたものは、70歳以下では現役に復帰するものの割合が50%を越えている。結局処方は国の財政の健全化に大きく貢献したのだ。
木俣は、次に有名なAE発電機が立ち並んでいる発電所の映像を映し説明を続ける。
「これは100万kWのAE発電機を10基設置している、品川沖発電所です。この発電所は、ご存知のように震災のがれきを埋め立てた土地に設置したもので、国内でも最大級の規模です。
AE発電所はこのように規格化された100万kW発電機をすでに198基完成しており、あと1年もすれば目標の3億kW分のAE発電が完成しますので、この時点で発電はすべてAEシステムに置き変わることになっています。さらに、これはAEバッテリーの励起工場であり、すでに国内に50機完成しており、国外にもわが国の資本で25機が完成しております」
そう言って彼はAEバッテリーの励起工場の映像、次いで、AEバッテリーの映像を示して話を続ける。
「これらの励起工場で励起されたAEバッテリー、この映像にあるものですが、すでにあらゆる移動する装置の動力の電源として使われています。これは、乗用車、貨物車・バス等の車、船舶、航空機すべてに及びます。また、車についてはモーターによる推進を行いますが、船舶及び航空機については重力エンジンによる浮揚と推進を採用しております。
また、これらのものは莫大な数の既存のものが存在します。ですから、既存のものの有効利用という面では、最初から機体を作り直したものを使うのは、社会的にコストが大きすぎると判断がされました。
ですから大型車両、船舶、航空機については、動力部のみを交換して使っているものが現状では大部分です」
彼は、トラックやバスをモーターとAEバッテリーの組み合わせに換装したもの、バスを船舶及び旅客機を重力エンジンとAEバッテリーの組み合わせに換装したもの等数々の映像を見せる。
「これらの換装は、あと半年ほどで終わるとみられております。しかし、乗用車については、エンジンをモーターに換装することは費用対効果が悪いということで、換装が容易なハイブリッド車と電動車を除いては最初からこのシステムとして作られたものに急速に入れ替わっています。
しかし、6千万台におよぶこれらの入れ替えにはまだ3年以上を要する見られています」
さらに彼は、様々な小型の電気自動車の映像を見せ、さらに話を続ける。
「また、船舶、さらに航空機に重力エンジンを積み替えて運用するというのはあくまで一時的な措置であります。まず、重力エンジンを積んだ船舶は水上を航行するより、明らかに浮揚して航行した方が有利であることは、その運航に要する時間の面から明らかであります。
すなわち浮揚して、航行することでその速度は5倍以上になります。必要とする従来の重油の費用と、AEバッテリーの交換費用を比べると同じ距離を移動する場合には大体半分になります。加えて、荷揚げ・荷下ろしの時間を考えても積み荷は1/3以下の時間で運べ、運用する人員の拘束時間も、1/3以下になります。あらゆる船の持ち主が、競って換装を進めるのも無理はありません。
しかしながら、皆さんもご覧になったことと思いますが、もともと水の中を航行する船が空中を進む様は異様なものです」
彼はいくつもの下部が赤く塗られた船が海の上に浮かんでいる映像を見せる。
「さらに、これらは能力としては陸上のいかなるところにも直接移動することができますが、その形状から依然として荷揚げの設備のある港につける必要があり、この場合はその後の陸上輸送が必要になります。ですから、船舶は最初からこのような航空貨物機として作られるべきなのです」
木俣は比較できる人のサイズから、巨大であるとわかる、前後がとがった形の角ばった細長い機体の映像を示す。
「これは、貨物部容量1万㎥の航空貨物機です。サイズは縦横各約15m、全長さは100mであり、巡行速度は通常高度1万mを時速500㎞で飛び、最大積載重量は3万トンです。最大航続距離は3万㎞ですが、最大の特徴は、大体平らな地面ならどこにも降りることが可能であり、荷揚げ荷下ろしに重力エンジンによる浮揚と移動が使えます。
これは、むろん安価な鋼製であり、自重は約5千トンです。従って、最大総重量は3万5千トンにもなり着陸する場所にも制限があると思われるでしょうが、これは重力エンジン機なのでその重量は調節できます。要は長さ150m幅50m程度の広場があれば自由に降りることができます。
この機は『フソウ』という名称で呼ばれており、1機150億円ですからエアバスの250億円に比べれば大幅に安い価格で作ることができます。すでに800機が完成して運用されておりますが、なおも7千機の予約が入っております。ですから、全力で生産体制の拡充と量産にかかっており、1年後には年間2千機の生産体制を整えることになります」
さらに彼は翼を取りはずした航空機に、重力エンジンを換装した機の映像を見せ、話を続ける。
「旅客航空機の場合も、既存の航空機の翼を外してエンジンを換装して、着陸装置を固定式にして胴体に取り付けていますが、これもまた異様なものです。
ただこの場合は船舶に比べれば、使う場所に違いはなく速度も同等ということで、特にオリジナルの重力エンジン機と比べても経済的なデメリットはありません。しかし、これについても圧倒的に燃料費が少なくなることから、需要が大きく膨らむ傾向にあり、やはり重力エンジンがオリジナルのもの、このような機体が求められています」
そう言って、彼はやはり先ほどの貨物機のようなシルエットで少しずんぐりした機体を映す。
「これが、重力エンジンの旅客機タイプの航空機であり、縦横10mで全長は60m、乗客1000人が収容可能です。速度は高度2万mで巡航速度時速2千㎞ですから地球の自転速度を上回り、航続距離は4万㎞ですから地球を1周できます。これも同じく鋼製で自重が2千トンあります。
価格は100億円ですから、エアバスに比べその収容人数、速度の面から圧倒的に有利です。これもすでに、300機が運用されており、これまた5千機の予約が入っていて、全力で生産体制の構築に入っています。ただし、こちらについては、既存の航空機メーカーのことがあるので、日本における生産体制の増強はしないことになっています」
ここで、木俣益男議員は聴衆を見渡して締めくくる。「以上、AE技術と重力エンジンの技術によって、大きく変貌してきたわが国及び世界の産業について主要な点を説明しました」




