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ハヤトのアフリカ東海岸資源探査1

すみません。遅れました。

 2024年7月、ハヤトはアフリカ東海岸モザンビークの首都マプトに来ている。

 彼は日本自治区が建設されるモザンビーク・ジンバブエ・マラウイの3か国の資源探査を行う予定になっている。マラウイについては当初予定に含まれていなかったが、マラウイが土地の提供を申し入れてきたために含めたものだ。

 これは、水資源に困らない地域として日本側がザンベジ川の周辺の地区を確保することで調整していたところ、マラウイもその地区に接しているためだ。


 モザンビークは旧ポルトガルの植民地であり、アフリカ東岸、マダガスカル島の西に位置しており、1975年に独立している。面積は約80万㎢で、大陸の東岸に2000kmに渡って細く伸びており、人口は3000万人弱、GDPは約300億ドルである。

 鉱物資源的には石炭と天然ガス、及び宝石が開発されており、天然ガスについては日本の商社が開発に従事している。国土は大部分が熱帯雨林であり、ジンバブエやマラウイに接する内陸側が標高1000mに近い高原になっている。


 ジンバブエは旧イギリスの植民地であり長く白人支配が続いていたが、黒人政権に代わった後のハイパーインフレーションで有名である。

 そのため、その愚かな経済運営から未開の国という印象があるが、実際にはかっては多く居た白人のお陰もあって、アフリカの最先進国であって教育レベルは高い。位置的には、モザンビークの中央部に隣接している。

 人口は1700万人で、GDPは約280億ドル、面積は39万㎢で日本よりやや大きいが、2000km以上に渡って細く伸びている日本に比べ、国の最長距離が700km足らずで円形に近い形状をしている。国土の多くが1000m以上の高原の国であるため、首都ハラレを始め比較的涼しい場所が多い。

 鉱物資源は石炭、ニッケル、クロム、鉄、銅、バナジウム、金、プラチナ、リチウム、錫、ダイアモンドなど多様である。


 マラウイは旧イギリスの植民地であり、位置的にはモザンビークの北側に食い込む形で接しており、ジンバブエとは直接接していない。人口は1800万人、GDPは80億ドル、面積は12万㎢であり、大湖マラウイ湖に接して南北に細長く伸びている。国土はジンバブエと同様に大部分が標高1000m以上の高原の国であるため、比較的涼しい。鉱物資源についてはめぼしいものはないが、マラウイ湖の莫大な淡水は大きな資源であると言えよう。


 以上の3か国から、モザンビーク6万、ジンバブエ3万及びマラウイ1万㎢を日本自治区として提供するとの協定がほぼ妥結したところである。

 位置的には大河ザンベジ川をはさんだ位置にあって、灌漑設備さえ整えれば水には困らない地域であって、当然3か国にとっては未開の地域である。


 なお、ザンベジ川は延長2750kmで上流には有名なビクトリアの滝があって、年間の水量は豊富であるが、乾季と雨季では極端に水量が変化する川でもある。

 しかし中流域に建設されたカリバダムによって、世界最大のダム湖である1540億㎥もの容量があるカリバ湖がある。カリバダムでは、300万kWもの水力発電がされているので、その発電のために、そのダム湖から常時3億㎥/日もの水が放流されている。


 従って、下流では常時豊かな水が活用できることになる。そういう意味ではザンベジ川の両岸は豊かな土地であるはずだが、川の水を活用するにはその水を取水して配水するシステムが必要であるのに、そのシステムをこれら3国は整えることができなかったのである。

 ちなみにカリバダムは堤長579m、堤高128mであるが、このダムで先述の莫大な容量の貯水ができ、かつ300万㎾もの発電ができるのであるから、1959年に完成したこのダムは、極めて投資効率の良いダムと言える。



 ハヤトはJOGMCのエンジニア3人と本庁からの外務省職員2人を帯同して、C1改/しらとり01に乗ってきている。C1改は自衛隊のC1輸送機の翼を取り外して重力エンジンを積んだもので、その運用のために、パイロット・副パイロットを始めとして自衛隊員5人が乗員として乗り組んでいる。

 本来のC1の収容人数は60人を超えるが、機の後部には重力エンジンを積んでいるので収容人数は25人に減っている。


 重力エンジン機しらとり01は、日本の調布飛行場を午後1時に飛び立ち、マッハ2で巡航してきたので地球の自転より早く、約1万5千kmの距離のマプトに約6時間かけて12時半には到着した。

 ハヤトの到着の予定は、すでにモザンビークで良く知られており、しかも世界初飛行の重力エンジンの航空機で来るというので、空港及び周辺には数万の人々がその到着を見守っていたという。


 しらとり01は、マッハ2で空港から10㎞まで近づき、その後どんどん減速していって空港の上空千mで一旦停止する。その後、秒速10mで降下して指定されたエプロンに、機体から降ろした6本の足で全くショックなく着陸する。

 各々の足にはタイヤが2本ずつついているため、尚更着地のはショックはない。エプロンから地上の空港ビル入り口までまだ距離があるため、機は重力エンジンの駆動で車輪で走り始めて、目標の入口100m余で停止する。


 この機動自体が、飛行機にはあり得ないものであるため、人々は目を丸くして見守っている。機体運用の自衛隊員を除いた一行は機体の腹から降りてきた階段で2m強の高さを降り、慌ただしく飛行場の入口に向かった。

 その後、外交官用のイミグレーションを通り、ゲートを抜けて到着ロビーに出た。ハヤト一行の到着時刻はすでに知られており、30人ほどの報道陣と10人ほどの警官、さらに数百人の出迎えのものと野次馬が待っていた。


 ハヤトの顔はすでにその著書から有名であり、さらには近年の日本・北朝鮮・台湾及びアメリカ合衆国とカナダの資源探査から、さらに広く知られるようになってきている。

 なお、アフリカに来るには重力エンジン機が便利であるとして、重力エンジン機の完成を待つために、先述の探査を行ったものだ。

 これは、最初から予定していた北朝鮮に続いてハヤトの好みで台湾を終わらせ、さらに政府が強く要望されて断り切れずにハヤトに懇願して先行したアメリカとついでにカナダを終わらせたものである。その頃にようやくAE工場も完成し、戦闘機しでんの他に輸送機のしらとり01が完成したのでそれを用いて来たものだ。


 ハヤトが出てくると、口笛やさらに大声でその名前を呼ぶものが大勢おり騒然としてきた。報道陣はゲートをくぐったハヤトにカメラを向けるもの、さらに我勝ちにハヤトに近づこうとするものがいるが警官に止められている。

 到着した随行の外務省の職員が出迎えていた日本大使館員に近づいて打ち合わせ通り合図をすると、大使館員の誘導によって報道陣は近くの広間に退き、ハヤトと一行はそちらに行く。

 

 30分間に限ったハヤトによる記者会見である。報道陣からマイクを持ちカメラに撮影されている、国営放送の人気キャスターである中年の男性が1人進み出てくる。


 彼はマイクに向かって英語で言う。「ただいま日本から有名なハヤト氏が到着しました。

 話によると、世界初の重力エンジン駆動の輸送機で来られたので、6時間前に出発されて今到着されたそうです。

 その航空機の不可思議な動きは皆さんもご覧になった通りです。ではハヤトさん、まずモザンビークの印象と今回の調査について概要をご説明ください」


「ハロー、ハヤトです。ここはアフリカの低地ということでもっと熱いと思っていましたが、意外に過ごしやすいのは嬉しい驚きでした。また、マプトは流石に100万都市であって、その近代的なことには驚きました。

 さらに、皆さんからこのように歓迎して頂いているのは大変嬉しく思います。

 私の本は読んだ方もおられると思いますが、本にも書いているように、私はある程度魔法が使えますので、その能力を生かして今回資源探査ということでここに来ました。

 そのために、このモザンビーク、ジンバブエとマラウイの上空を飛んで、まず鉱物資源の在りかを探り、規模の大きいと感じたものを詳細に調べます。

 大体調査には1ヵ月を予定していますが、あなた達の国に価値あるものが見つかることを期待しています」


 ハヤトの答えにキャスターは続いて質問する。「すでに準備に入っている日本自治区はハヤトさんたちのグループの提案らしいですね。我が国でも、人々はその建設でいろんないい影響があるとして大きな期待を抱いています。

 ですから、ハヤトさんたちはどういう理由でこの提案をしたか、日本にとってどういうメリットがあるか、また我が国にとってどういうメリットがあるかについて教えて頂けませんか」


「はい。これは確かに私どもの若手国会議員のグループの提案が、日本自治区として実現しようとしています。

 しかし、これはもともと我が国の民間の人々がこちらでそういう動きを働きかけて、それにモザンビークとジンバブエの政府の方も含めた人々が賛同されたということから始まった話です。 

 日本側のメリットとしては、現在の極めて低い食料の自給率を上げることで、食料面の安全保障を高めることがまずあります。それと極めて規模の小さい日本人の農家の規模を大きくして、農業の生産性を高めることがあります。加えて、どちらかというと閉じこもりがちな日本人の眼を、外に向けて視界を広めるということも一つです。


 あなた達モザンビークのメリットとしては、まず魔法能力の処方の機会がずっと増すということが最も大きいでしょう。ご存知のように魔法の処方によって、身体能力と知力が増強されますが、その処方ができるのは今の所ほぼ日本人に限られています。

 数十万人オーダーで日本人が来れば、その中には多くの処方ができるものが入っています。従って、あなた達は短期で自治区に働きに来て、処方とその使い方を習って帰ることができます。


 また私どもは、自治区には最新のAE工場及びAE発電所を建設しますし、主としてザンベジ川からの取水及び大規模な灌漑システムを構築します。

 これらは、必要量を50%以上上回った施設を建設しますので、当然周辺の貴国やジンバブエあるいはマラウイにも電力や水を供給できます。


 さらに、おそらく貴国とジンバブエからは多くの資源が見つかると思いますが、日本自治区及び周辺にはそれらの精錬や加工の大規模な工場ができます。それらの技術は当然周辺に急速に広がっていきますし、多くの働き口ができていくでしょう。

 最後に、自治区には日本の国立の東アフリカ大学が建設されます。この大学は自治区の学生の受け入れは無論ですが、アフリカ全土から2千人程度の学生を格安で受け入れる予定にしています。

 私は自治区建設のこうした効果で、この東アフリカが全アフリカの経済・文化・技術の中心になっていくのではないかと思っています」


 ハヤトのこの話に、キャスターは感嘆してさらに聞く。

「おお、それは素晴らしい将来だ。ところで、日本自治区の建設にはどの程度の時間をおかけになるつもりですか?」

「最新のスケジュールでは全体の基本構想はすでにできていますので、基本計画にあと2ヵ月ほど、さらに1年次工事の詳細設計に今年の暮れまでを要します。

 従って、来年から空港・港湾・取水及び上水・灌漑設備さらに道路網と都市建設に加えて圃場整備が始まります。工事のなかの主な仕事は自動運転の重機によって24時間運転で行いますので、工事の進行は極めて早くなります。

 その1年次の工事の時点で、日本人が2万人、現地の雇用は10万人に達すると見られています。全部の工事を終えるのは、来年初めをスタートとして7年間ですね。

 7年後には、日本人は80万人から100万人、現地の方の雇用はその2倍に達すると見られています」


 ハヤトはさらに続ける。「できるだけこのように進むように今精いっぱいの準備をしているところです。貴国の皆さんの全面的な協力をお願いしたいと思います。この後大統領府に訪問しますので、今日はこれで失礼します」

 とハヤトはマイクをキャスターに返し、さらに彼の感謝に応える。ハヤトも英語は既に問題ないレベルになっているので、これらの弁舌は全て英語である。


次のアップは明後日です。

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