表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/180

友人と久闊を楽しむ

掲載を始めた途端、多くの人に読んでいただいて、ランキングにも入ることができました。

ご期待に沿えるように頑張りたいと思います。

 翌日、ハヤトが中学校の自分の部屋に行くと、まもなく山切と深山の他に5人ほどがやってくる。みな、「ハヤトさん。おはようございます」と丁寧に言いきちんと礼をする。


「おお、おはよう。昨日の説明をしておこうか。まあ、座れ」ハヤトは皆に中にある折り畳み椅子を勧めて、昨日の説明をする。


「さすがですね。俺たちではとても組に乗り込んでそんなことはできないです」神妙な顔で説明を聞いたあと、代表して山切が言う。


「さて、今回の話で問題になるのは、お前たちもやったはずの恐喝は犯罪行為ということだ。お前らもやったのか?」7人のうち山切だけが顔を上げたままで前を向いているが、6人がうなだれて頷くのを見てハヤトは続ける。


「フーン、まあ。終わったことではあるが、公になれば処分を受けることになる。俺が気にしているのは、この大掛かりな恐喝が明らかになれば、校長・教頭は責任を取らざるを得なくなることだ。恩師の田郷先生と校長は巻き込まれないようにしたい。恐喝をやった連中には、お前らが誠心誠意謝って許してもらうことだな」ハヤトは淡々と言って最後に付け加える。


「それと、これが公になれば、山菱組は解散に追い込まれる可能性が高いが、はっきり言ってああいう組に属している連中はばらばらにする方が厄介だ。そういう意味では、その連中がもしそういう告発をしたものを知った場合にどういう振る舞いをするか判らないと心配している」

 その言葉にみな頷くが、ハヤトはさらに言う。


「この場合、実際に恐喝をしていないものが必ず立ち会って、一緒に被害者に会ってくれ。無論、田所も謝る中に入るし、俺も別段社会的な立場はないのでどういう事態になっても大差はないので立ち会うよ。段取りは君らが中心になってやってくれ。それから、教師はいずれにせよ巻き込まない方がいいと思う」


 そうは言いながらもハヤトは、これだけ大掛かりな恐喝事件が、公にならない可能性は低いと考えていた。中学校全校で560人の大部分が巻き込まれており、中には随分手荒な手段で金を巻き上げられたものもいるだろうし、その者達は不良グループを深く恨んでいるはずだ。

 一方で、かっての強者の立場から滑りおりた不良グループに対しては、再度被害に遭うリスクは低いのでやり返してやろうと思う者は当然いるだろう。

 一人が告発すればアウトのこの件で、全員を抑えるのは無理だろうと正直に思うし、山菱組にもその懸念は伝えている。最後の手段として、やれることはあるがハヤトはまだ躊躇っている。


 ハヤトは、その後校長室で田郷教頭と山科校長に詳しい話を報告した。2人は想像していたよりずっと深刻な事態に驚愕していたが、脅し取った金を返し、暴力行為を謝るということには大いに安心した様子であった。

「それは良かった。まあ、確かに公になれば、校内でそういうことを許したということで、私としては責任を取らなくてはならんが、そういう結果になったのであれば満足だよ。まあ、定年も近いし懲戒解雇にはならないでしょうからね。田郷先生には降格の可能性があるので気の毒ですが」

 山科校長は淡々と言い、田郷教頭も続いて言う。


「結局、私たちはこうした動きを薄々察していても暴力に怯えて無力だった。君の言ったように、お金を返して謝罪するという動きが出たのは、ハヤト君、君のお陰だよ。

 私に関しては、今の状況からすれば今度のことが公になっても、降格はあっても教職という私の天職は奪われることはないからね。ハヤト君、本当にありがとう」

 田郷教頭と山科校長はハヤトに向かって深々と頭を下げる。


「い、いえ、頭を上げてください。まあ、公にならないように出来るだけやってみますよ」ハヤトは手を差し出して言いながら、やはり考えていた方法をやってみようと決心した。


 その後、ハヤトは一週間をかけて山切等の生徒の協力を得ながら、すでに観念して素直にすべての場で最大限の謝罪をする田所雄一と共に、各生徒への金の返済と謝罪に立ち会った。この際に、謝罪の対象の生徒に人の感情を穏やかにする意識操作をかけていった。

 この操作は、主として魔獣との戦いで使ったもので、魔獣の狂暴さを減じるもので、戦いを容易にするものだ。また、時々、会議等の議論の場があまり激しくなった時に軽くこの操作をかけることで、理性的な論議が可能になったものだ。


 その効果もあってか、結局この大掛かりな恐喝事件は公にならなかった。ハヤトも一ヵ月ほど狭山第2中学校に通い、その中で恐喝事件の後始末と様々な活動を通じて不良グループと一般生徒のしこりをほぼ解いたと自信を持てるようになったあと、毎日通うのはやめ必要に応じて行くということになった。

 彼のその間の報酬は21日間通って、16万8千円であり、税金は後で確定申告を行って払うことになっている。


 ハヤトと母涼子はワールド・ジュエリー(WJ)の千葉店に来ている。岸田専務と店長の吉田佐代子という中年の女性が立ち会って、ハヤトが持ち込んだ宝石と金の鑑定結果の説明をしている。細かい鑑定結果の説明の後で岸田専務が続ける。


「そういう内訳で、私どもの査定額の合計は、1,055億円になります。しかし、実際のところこの世界にない宝石もあり、さらには様々な美しい色付きのダイアモンドなどオークションにかけてうまく売っていけば、場合によっては全体で3倍程度になる可能性もあります。

 この金額は、あくまで今私どもが買うとしてでのもので、一つの方法として、いくつかに分けてオークションにかければ2倍程度になる可能性は高いですよ」

 一見欲のない岸田専務の話だが、ハヤトが当初の話を変えないだろうとの見込んでのことであろう。


「いや、そんな面倒なことをしたくはありませんし、この件で世間の騒ぎになることも望みません。一番目立たない方法として、丸ごとお宅に引き取ってもらって、私どもは500億円をなるべく税が少ない形で受け取れれば結構です。その支払いに要する年数はそれなりにかかっても結構です。今のところ普通の生活費以外に使うあてもないですから」ハヤトが淡々と言うのに対し、岸田専務が丁寧に応じる。


「はい、仮に今約1千億円をお渡ししても、税を取られて多分300億円ほどしか残らないと思います。まあ、それでも莫大な金額ですが。いずれにせよ、私どもはこの莫大な財宝の運用を請け負ったと認識しておりまして、先ほど言われた500億円については、私どもが税を負担した上でお支払いできるのではないかと考えています。

 その具体的な方法は、税理士を交えて検討中ですが、いずれにせよ二宮様には法人を設立して頂くのが有利だろうと思っております。それで、今後とも長い付き合いになるかと思いますが、当面の担当は地元店のこの吉田が致しますので、何かあればご連絡頂きたいのと、こちらからも必要に応じて吉田から連絡させていただきます」


 実際のところ、WJにとってはハヤトの話は非常にありがたい話であった。通常であれば、年商500億円足らずのWJにとっては、ハヤトが持ち込んだような莫大な財宝を扱うことは資金的に無理である。

 この財宝は買値として1000億程度を付けたが、岸田専務の見込みでは売値が3000億円は超すことは間違いない。それも、その希少性からすれば、これをさばくことができることで、WJが世界の一流の宝石商に伍した存在になることは確実である。これを扱うことによる利益の大きさも魅力ではあるが、岸田にとってはこのように自社の存在が大きくなり、世界に伍していける見込みがより大きく映っている。


 それにしても、このとんでもない額のお金の話をしても全く動揺した様子がなく、冷静に最初の約束を貫く、ハヤトという若者については、岸田にとって少なくとも今まで会ったことのない存在である。大変ありがたい取引相手であるが、とてつもなく大きな人物に見えてしょうがない。

 この取引は、売り手が売値の受け取りを全く急いでいないので、WJにとっては物を預かった形で売り払う都度支払うことができ、会社の資金運用上も極めて有難いもので、岸田はハヤトとその一家については最大限の待遇をしようと思うのであった。


 ハヤトは、中学の同級生で仲の良かった、安井公人と清水健司及び、田川欣伍に会うべく、市内の繁華街の丸三デパートの前で待っている。もっと早く会いたかったのだが、自衛隊に入っている安井の都合がなかなかつかずこの日になったものだ。

 土曜日の午後5時集合だが、中背で日に焼けてがっちりした安井はすでに来ていた。

「おお!ハヤト。心配したぞ!本当に久しぶりだ!」

 周りの人がびっくりして見るのも構わず、安井はそう叫び、差し出したハヤトの右手を両手でがっちり握る。


「おお、安井か。本当に久しぶりだ!お前も鍛えているな」

 ハヤトも応じるが、このように、中学時代からハヤトは友人を姓で呼び、友人はハヤトと呼びやすい名を呼ぶ。手を離したあと、安井はハヤトの両肩をつかんで、体中をしげしげ見て感心して言う。


「そういうお前は、鍛えているとかのレベルではないな。迫力が半端ないわ。俺がいる自衛隊にはすごい人がたくさんいるが、お前ほどの迫力がある人はいないぞ。おまえ、自衛隊に入れ。俺は今2曹だがお前だったらすぐにそれ以上になって、おれが抜かれるな」

 などと安井が勝手に言っているうちに、清水と田川がやってくる。


「おお、ハヤト、懐かしい。元気そうだな!」


「ハヤト、また会えて俺は嬉しいぞ!」口々に言う。


「まあ、まあ、どこか入ろうや」

 しばらくガヤガヤやった後、田川が言い、近くにある居酒屋のチェーン店に入る。


 中ジョッキの乾杯の後、友人3人の近況が説明される。安井は、先に少し話があったように、高校卒業後に自衛隊に入り、能力が認められて現在2曹で陸上自衛隊の幹部候補コースに入っている。


「まあ、ミサイル関係が専門だ。今問題になっているだろう?北朝鮮のミサイルの探知と迎撃システムの運営というか操作だな」との安井の弁である。


 色が白く長身・細身の清水は工業専門学校を出て、千葉市の機械メーカーに勤めているが、まだ入社2年目の新米である。

 中肉中背の田川は、地元の国立大学の経済学部の4年生で、かっての氷河期とは様違いの好調な経済の下ですでに東京本社の中堅商社に就職を決めている。


 ハヤトは、異世界に召喚されて勇者となって活躍し帰ってきたことを説明する。

「それで、俺は今、中卒で無職なのよ。1ヵ月は田郷先生がいる中学校の臨時雑用係をやったけどな」

 ハヤトが締めくくると、すこしおっちょこちょいの安井が身を乗り出して聞く。


「おお、異世界なら、魔法は、魔法は使えるのか?」


「ああ、しかし地球はマナの濃度がうんと薄いのであまりたいしたものは使えない。特に、空間魔法が使えないのが大きいな。しかし、知覚系はマナが薄いのが逆に有利な点になって有効範囲・速度共に上がっている」


 ハヤトの答えに、安井はさらに食いつく。「おお、使って。使って見せてくれよ!」


 彼らがいる席は最大6人掛けられるブースで、扉はないがマスになっていて、周りからは見えない。「じゃ、まず光な」ハヤトは指先に光をともすが、薄暗い中では十分まぶしい。


「次に風系な」さらに箸立てを50cmほど持ち上げる。


「おお、すごい、すごい」

 安井は喜んで手を叩いているが、他の2人は驚愕して何も言えず目を見開いている。


「火と水は危なくてちょっとここではやれない。しかし、異世界ではここ地球とは威力が違っていた。もっとも、あっちの科学技術は地球に大幅に劣っていたからなあ。科学の発達しているここでは、魔法なんて見世物になるのがせいぜいでなにも役に立たんと思う」


 ハヤトが自嘲して言うが、今度は清水がせき込んで反論する。

「いや、絶対何か使える道があるって、例えばさっき言った知覚系というのは何だ?」


「うん、頭の中にマップが浮かんで、その対象のそれぞれに関心を向けるとズームする感じかな。今は半径1000kmくらい知覚することができる。便利と言えば便利だぞ」


 ハヤトの言葉に、清水がさらに食いつく。「1000㎞!それは凄いな。ズームってどういう感じでズームできるんだ?」


「うーん、本当にズームだな。グーとその意識を向けている対象が大きく見えて、必要とあらば中身も見えるよ。具体的に言うと、列車をズームすると乗っている乗客、その持っている荷物まで感知できる」


 ハヤトがさらに説明するのに、田川がすこしおどけて口をはさむ。

「女の子の服が透けて見えたりしてな」


「いやいや、残念ながらそういう器用な見え方はしないのだよな。外見とどこか特定の断面だったら見えるけどな。女の子の腹の断面を見てもしょうがないだろう?」ハヤトもおどけて言う。


 それを黙って聞いていた安井が、真面目な顔になってさらにハヤトに尋ねる。

「1000㎞の範囲で、たとえば、航空機は感知できるか?」


「ああ、現にこの前範囲を広げて見たとき、飛行機もたくさん飛んでいたぜ」


 ハヤトの答えにさらに安井は追及する。「じゃあ、ミサイルでも感知できるかな?」


「うーん。これは言ってみれば鳥観図みたいなものなんだ。半径1000kmの範囲と言えば、まあ壁にかかっている地図を見るようなもので、全体としての形は認識できるが、個々のもの、例えば飛行機だったら、全体の中で動きがあるのでそういう動きに集中すれば注意を引くが、速度の遅い列車だとあそこに走っているという特定の地点を注目しないと知覚できないな。ミサイルか、ミサイルは飛行機の何倍もの速度だな?」


 ハヤトが説明し最後に聞くと、安井が答える。

「ああ、今考えているミサイルの速度は飛行機の最低で3倍、最高で10倍くらいになる」


「だったら、多分簡単に知覚できると思う。おまえらも景色を見ていて、何か動くものがあるとどうしても注意が引かれるだろう?」

 ハヤトの答えと問いに、安井は酔いがさめたような顔でさらに聞く。


「まあ、そうだが。半径1000㎞の範囲なんてのはとんでもないよ。ところで、その相手を見つけたとして、ズームは出来るのだよな。そして、その対象をさっきの箸立てを持ち上げたように何かいじれるのか?」


「ああ、いじれるけど、弱いよ。さっき箸立ての持ち上げた程度だ」ハヤトがさらに答え、安井がそれを聞いてがばっと頭を下げる。


「ハヤト、頼む。協力してくれ。俺の仕事の関係で、日本の安全保障にかかわる件だ」ハヤトはそれを見て少し焦るが、冷静に言う。


「友達じゃないか。そういう恰好はするなよ。ああ、まあどうせ今は大検の勉強くらいしかすることがないからいいけどな。しかし、本人の俺でもとんでもない話だとおもうが、こんな話をお前の部署のものが信じるか?大体自衛隊なんて頭が固い奴ばかりだろう」


「いや、本当に行き詰まっているんだ。何とか説得するよ。俺の上官はかなり柔軟な人だから何となると思う。それから連絡する」安田がそう言ったところで、話題が変わり再度近況の話になったが、その中で清水が大学生の田川に尋ねる。


「ところで、田川は〇〇物産に就職が決まったんだよな?〇〇物産が巨額の損失を出したというニュースを見たけど大丈夫なのか?」


田川がそれを聞いて顔を曇らせる。「ああ、決まった時は嬉しかったのだけどな。実はあまり大丈夫じゃない。担当に聞くとまだ最終決定ではないが、相当なリストラをするようで、来春の新卒も辞退してほしいみたいだ。入れば苦労するのは見えている会社に入ってもなあ。俺も辞退しようと思っている。まあ、1年の就職浪人かな」


 頭を振る田川を見て、ハヤトが尋ねる。「ワールド・ジュエリー(WJ)て知っているか?」


「うん、東京本社だけど千葉にも大きな店があるし、堅実な会社だけど殆ど募集はしていないよ。なんで?」田川が答え最後に怪訝そうに聞く。


「うん、ちょっと関係があってな。多分近く業容を拡大するはずだから、話せば何となるかも」ハヤトは、先日会って契約を交わしたWJの岸田専務の顔を思い出しながら言った。


「うん、WJでかつ今後業容を拡大するのだったら大変ありがたい。何とかなるのだったら是非頼むよ」表情を明るくする田川に、ハヤトは応じる。


「請け合うまでいかないけど。強く推薦してみるよ」


 この件については、翌日ハヤトから岸田専務に電話した結果、その週のうちに田川の面接が実施され、面接の場で採用が告げられた。

 WJとしても、採用を増やすことは既決事項であったし、田川は普通に試験をしても採用されるレベルで、かつハヤトの仲のよい友人という条件は非常に欲しい人材だったのだ。

 結局、田川は千葉店に配属されて、N案件すなわち二宮家のハヤトが持ち込んだ財宝関連の仕事を主にこなすことになった。


 WJとの契約後、WJはハヤトが頼んでいた二宮家の引っ越し先の家を見つけてきた。

 いまの家から3㎞ほどの距離の住宅地に建てられた建売住宅で、土地面積550㎡、建物250㎡2階建てのまあ豪邸と呼べる物件である。

 ハヤトを除く二宮家の者は、こんな立派な家でいいのだろうかとしり込みしたが、無論皆気には入っているので、ハヤトが「問題ない」と言って、早速引っ越した。


 当面、所有はWJにするが、そのうち二宮家の所有にすることになっている。ハヤトは4畳半の古い和室から8畳の部屋に、妹のさつきは同様に6畳から8畳のいずれも日当たりのよい部屋を確保できたうえ、大きな居間に加えハヤトは父と兼用の書斎を確保した。

 母は15畳ほどもある夫婦の寝室と最新のシステムキッチンが備えられた台所にごきげんである。無論客室も2部屋とれているし、使用人用の部屋もある。

 屋敷には2台駐車可能なガレージとさらに2台可能な駐車スペースがあるので、以前から使っていたセダンは母専用になり、父はバス通勤から新車による通勤になった。妹も第一志望の地元の大学に合格すれば車を買うことになっている。


 ハヤトも車はほしいが、当然今のところは運転免許を持たないので、自動車免許を取ろうと思い最短で取れる方法を探して近場の教習所を訪ねた。

「3日くらいで、運転免許はとれませんか?」


 ハヤトは窓口で相談したが、窓口の女性は呆れたような顔で返事をする。

「合宿で2週間が最短ですね。普通は1ヵ月以上かかりますよ」


 しかし、ハヤトはさらに聞く。「講習を受けるしか方法はないのですか?」


「いえ、前に免許を持っていた人など、試験場で試験を受けて合格すればすぐに取れます。ただ路上の試験もあるので、仮免と仮免を使った本試験があります。だから、どっちにしても3日は無理です。また、運転したことのない人は、結局教習を受けた方が早いし得ですよ」この回答にハヤトは考えた。


 運転神経については勇者であった自分に問題はないだろう。また、学科については見せられたテキストを覚えるくらいは大検の勉強の進み具合から考えれば、集中して1日あれば十分だろう。


「どう?3日の練習で試験場の実地試験を通してくれれば100万円、それ以上の日数なら50万円では?所長に話してくれない?」このハヤトの申し出に受付の女性は戸惑っていたが、中に入って相談に行き、ハヤトと所長が話した結果、その条件で翌日から練習が始まった。


 朝9時から午後5時まで。昼休みの他は練習を繰り返して、2日目の夕刻には運転試験場の試験官の経験もあるベテランの指導者から仮免許の実地試験合格間違いなしのお墨付きを得ることができた。

 さらに、翌日の試験場での試験で首尾よく合格し、翌日路上試験の練習をしその結果も大丈夫ということで、本試験をさらにその翌日合格して、その日の学科試験でも合格した。結局5日で運転免許を取得したことになる。さすがの運動神経と記憶力である。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ