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大地震その後、富士山大噴火!

 関東地震が終わった翌朝、篠山首相のテレビによるお見舞いの言葉があった。

「内閣総理大臣の篠山誠司です。今回被災された皆さんには、大変なご苦労をお見舞い申しあげます。皆さんもすでに報道でご存知のように、東海地震、東南海地震、さらに昨日の関東地震と、いずれも大地震と呼べる地震が3回に渡って我が国を襲いました。

 しかし、この大災害には、地震の日時、各地の震度、津波の波高まで予測できていたという面で、今までの災害と大幅に違っている点がありました

 そのため、高い確率で大体いつごろに大地震が起きるという見込みのもとに、様々な準備ができましたし、さらに具体的な予測がでた約1週間前からの準備によってさらに必要な準備ができました。

 この点は、地震学に関わる方々のご努力のお陰であり、これに対して心からの敬意を表します。


 さらに、忘れてはならないのは、過去20年以上に渡る、国を挙げての耐震補強、建て替え、さらに防潮堤の建設などの様々な耐震対策であります。そのことで、人命に関してももちろんですが、皆さんの財産についても大幅に被害を減らせたのではないと思います。

 このように、我々政府及び自治体、消防、警察、自衛隊、さらに皆さん自身が万全の体制を取ったつもりでし。しかし、残念ながら相当な数の方が、倒壊した建物に残っておられて亡くなっているようです。どのくらいの数の方々が亡くなってしまったかは、自主的に建物に残った方々なので、なおも調査中です。

 さらに、やはり相当な数の建物の崩壊、あるいは電気・水道などのインフラの停止によって、東海地方で25万人、関東地方では、何と250万人の方が今現在避難所生活をおくられております。

 しかしながら、東海地方については、数日中に15万人、関東地方については2週間の内には、200万人の方が自宅に帰れる見込みです。

 これは避難対象の場所や建物であっても、壊れず残っている建物、さらにインフラの復旧によって帰れるようになるわけです。従って、最終的に避難所に残られる方は60万人程度になるものと考えています。」

 篠山は、言葉を切ってカメラを見つめる。


 東海地方では、震度7及び6+の非常に強い揺れに襲われた地区が、比較的少なかったこともあって、揺れによる建物の崩壊が2万棟程度と当初の予測より少なかった。

 さらに、何といっても防潮堤によって津波の害を大きく削げたことが功を奏して、家が丸ごと流されたものは、防潮堤に守られていなかった1万棟程度に収まったことが大きかった。


 しかし、関東地方については、東京湾という、沿岸が日本で最も人口密度の高いど真ん中が震源であり、しかもそこが日本有数の軟弱地盤地域ということが災いした。そのため、耐震済みの建物が多かったにも拘わらず、10万棟余が倒壊している。


 中でも、厚い軟弱地盤上に建つ150mを超える超高層ビル62棟の内、11棟が倒壊し、12棟が大きく傾いたのは建築関係者にショックを与えた。

 この点は、耐震基準を満たしていても、軟弱地盤上の長い杭を用いた建物について、避難命令を出した篠山の決断が正しかったことを裏付けるものとなった。


 なお、関東地方の地震による被害の最大の問題点の一つは、地盤の液状化によって道路そのもの及び地下インフラである水道管、ガス管、下水道管が大被害を受けたことである。そのため、その仮復旧に2週間を見込んでいるが怪しいと見られている。

 とりわけ、水道管、ガス管、下水道管は機能を回復しないと家で暮せないのだ。同じく地下インフラの電線、電話・光ケーブルは比較的早く1週間以内に復旧すると見られている。


 篠山首相が続ける。「こうして避難所に残る方は、家を失われているわけですが、賃貸住宅に住まわれていた方は別の住宅を見つけるべく、自治体から斡旋させて頂きます。自宅を失われた方は、まずは公営住宅などの空き家をお考えいただきたいと思います。

 さらに、仮設住宅についても、すでに、10万所帯分の敷地の準備と資材の準備は出来ておりますので、2週間以内には住めるようになります。

 そのような措置を総合して、出来れば2週間、遅くとも3週間以内には皆さんの避難所生活を解消したいと思っています」


 首相は、再度言葉を切って一息置いてカメラを再度正面から見て続ける。

「しかし、残念ながらこれで終わりではないのです。予測では、4日後の22日に富士山の噴火が起きる見込みです。この爆発は、江戸時代に起きた大噴火の規模を超えるのではないかと心配されております。

 その場合の直接の被害は、まず火山弾が飛び散ること、火砕流が噴き出すこと、周辺地区の熱い火山灰と広範囲の火山灰の降灰です。従いまして、富士山頂から5㎞の範囲は火砕流と火山弾の恐れがあり、風向きにもよりますが15〜25kmの範囲は熱い灰が降ります。

 火山灰については、半径30㎞で平均40cm、東京で5cm、仙台で1cm、大阪ですら1cm程度積もる可能性があります。こうした降灰は、無論最初の数日に集中しますが、1週間ほどは続くでしょう。


 ですから、富士山周辺の主として観光用の施設は火山弾が振り、火砕流に巻き込まれる可能性が強いので立ち入り禁止としますし、おおむね半径10㎞の範囲は立ち入り禁止、半径15㎞の範囲は避難勧告を出します。

 また、富士周辺の原生林においては広範囲の山火事になると考えられますので、周辺の消防隊の動員を要請しています。

 さらに、こうした降灰による被害は、成長期を迎えている稲を始めとした、農作物に甚大な被害をもたらします。さらには、近代社会において、最も重要なインフラである通信を大きく妨害するほかに、その灰そのものの莫大な量が大きな問題をもたらします。


 鹿児島市において、たびたび起きる降灰の害に苦しんでいる例を挙げるまでもなく、満遍なく積もる灰は皆さん自身の家にも積りその莫大な量の処分の問題が生じます。いずれにせよ、我が国は、今後1年間は、これらの地震、及び富士山の爆発の後始末に忙殺されるでしょう」


 篠山首相は再度カメラを正面から見て一息いれて続ける。

「しかし、皆さん、皆さんもよくご存知のように、我が国は過去5年余、歴史上かってない発展を遂げてきましたし、それは今後も続きます。それはなぜか。

 我が国は、世界で唯一すでに適性のあるものすべてに魔法の処方を終わらせ、人々は身体強化、知力増強を成し遂げているのです。その結果、今回の震災においても、その体力及び知力をいかんなく発揮して被害を最小限に抑えております。

 今回の、まだ後に続く富士山の噴火という事態があっても、こうした国民で構成されている我が国がめげることは全くないと私は信じています。

 皆さん。今後のおそらく1年間、災害で被害を受けた隣人の皆さんのためにその力を貸してください」篠山首相は頭を下げてその話を終えた。



 ハヤトは、社員とその家族に自分のマンションを使わせて、自分は親と一緒の家に住んでいる。

 震災後、空けられる家のある人は、出来るだけ被災した人に使わせるように呼びかけがあり、特に自分の部屋に住む必要のないハヤトは、社員で一緒に住む親の家が被災した一家に格安で貸しているのだ。

 さらに、会社の処方用の部屋も、当分は海外からの受け入れが中止ということで、間仕切りをして20人ほどを住まわせている。


 日本の東海の空港、羽田及び成田空港は国際・国内線ともに、7月14日の東海地震の予知日から当面半月の予定で運行を停止しているのだ。

 ちなみに、東海道新幹線・東海道線は7月14日の朝から運行を停止し、東名高速は7月14日の午前10時で名古屋から東京まで閉鎖している。


 その後、7月21日現在、これらはまだ開通していないが、仮補修は殆ど終わっているものの富士山の噴火待ちである。これらのインフラは、津波による被害は実質的になかったが、揺れによって架橋3か所が変形し、トンネルの出入口で小規模な崩壊があったものの、仮補修により5日で使えるようにしている。


 7月22日が明けた。前日から地震が起き始め、うっすらと山頂から蒸気が出ており誰の目にも危険な兆候が見えている。すでに、前々日に立ち入り禁止区域からの人は出てしまっており、仮に今爆発が起きても人的被害はないはずだ。


 午前11時33分、富士市において振動がどんどん激しくなり、突然山頂が吹き飛んで、火が見え噴煙が噴き出した。壮大な爆発音はしばらくして聞こえる。

 その吹き飛んだ山頂がばらばらになった大きな塊が山麓に降り積もるなか、噴煙はどんどん高く吹きあがり、何かの赤いものが飛び散っている。さらに、煙のようなものが山麓を滑り下りている。


 あれは火山弾と火砕流だ。火山弾が山麓の樹林に落ちて、赤い火が燃えあがり、さらに煙のような火砕流が樹林に到達して、煙がもうもうと巻き上げてやがて火の帯ができる。

 その中でも噴煙はぐんぐん吹き上がっており、すでに5千mには登っているだろう。一方で、噴煙は水平方向にも広がりだんだん高度を下げつつある。あれが降って来ると火山灰になるのだが、近い位置に降ったものは熱い灰になる。


 ハヤトはニノミヤ・カンパニーのオフィスのテレビで、浅井みどりや森川裕子他のスタッフとそれを見ている。

「富士樹海はこのままだと全滅ね。あの噴煙が結局全部降ってくるのね。だけど、幸い風向きが海を向いているようだから、このまま風が続くといいのだけど」


 みどりが画面を見ながら言うのに、ハヤトが応じる。

「まあ、そううまくはいかんだろうね。しかし、この灰は薄くはなるが、日本の半分をも覆うようになって電波を遮るから、灰が舞っている間、電波による携帯網は使えなくなるな。しかし、昨日光ファイバー網が復活したということなので、それを通じて通信は一応できるだろうな。

 ただ、その膨大な量の灰の始末を考えると、ぞっとするな。仮に1000k㎡に降ったら5千万㎥か、東京湾をまた埋め立てられるな」


 それに対して、裕子がハヤトに向かって指を立ててそれを振って言う。

「ち、ち、ち、ハヤトさん、わかっていないわね。そんな簡単なものじゃないわ。東京湾に限らず海には漁業権というものがあってね。すべからく、漁協と交渉してその海域の漁業権を買い取らなくてはいけないのよ。まあ、少なくとも10年仕事ね」


「ああ、そういうのもあったな。でも、埋め立て中のものもあるだろうし。何とかなるのじゃないか。それでも、結構大変だな」ハヤトはなるほどという顔で言う。

 少なくとも、予測できている火山の爆発では死者はでないので、のんきなものだが、数十㎝の灰に埋まる地域を考えると冗談ごとではない。


 結局、富士山の爆発によっては、ほぼ山頂から5㎞の範囲の樹海が燃え上がったが、麓の各自治体の消防の奮闘と、自衛隊のヘリによる消火剤の投下の効果もあり、麓の街に広がることはなかった。しかし、その範囲にあった100軒ほどの観光施設などが焼け落ちた。

 火山灰は5日間降り続き、富士市で35cm、甲府で20cm、東京には3cm降り積もったが、3日目頃から折よく降り始めた雨に叩かれて、全国に広がることはなかった。


 なお、富士市については、膨大な降灰は東海地震とのダブルパンチになった。

 このように、降り積もって処分が必要な火山灰は、合計で2億㎥にもなり、処理に要した期間は5年間であった。大部分は一旦様々な場所に仮置きされて、最終的には海面埋め立てに使われた。

 こうして、この火山灰によりできた土地は20k㎡にもなり、その売却益によって、最終的には処分費をペイできた。


 また、富士山は最初の爆発で、山頂の高さ50mほどが吹き飛ばされて、その形がいびつになり心配されたが、大量に噴出した溶岩がそのあとを埋めた結果、高さは却って10mほど高くなり、形も殆どもとの均整のとれた形を取り戻した。これは、日本国内のみならず世界の富士山ファンを大いに安心させることになった。


 最終的に、東海道の新幹線、在来線、東名高速道路、国道は火山灰の処理もあって約1ヵ月の後に順次開通した。しかし、第2東名自動車道、中央自動車道、富士山の噴火から6日後に開通したリニア新幹線等が、不通になっている路線も代替を十分こなすことになった。


 手ひどく被害を受けた、都心の地下インフラの仮復旧には約20日を要した。

 しかし、あくまでこれは仮復旧であって、人々を住むことができるようにするためであった。東京を始めとした都市が、壊れた建物などの瓦礫を処分して、さらに道路等が復旧して、もともとの整然とした姿を取り戻すには1年を要した。


 そして、そこでは大量のビルの復旧のための建設が始まっている。なお、深い軟弱層上の超高層ビルについては、杭の打ち込みに周辺地盤の地盤改良を加えることで安全になることが確認されて、その工法で建設が進んでいる。


 2023年の日本のGDPは、これらの大災害によって大きく落ち込むと諸外国に予想されたが、実際は臨時予算による20兆円の国費投入もあって、建設投資が前年度の98兆円から120兆円にも膨らんで殆ど前年と変わらない成長率12%を記録した。


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― 新着の感想 ―
[一言] 2割目で関東では10万棟が倒壊とありますが、その後の富士山の大噴火も含めて死傷者が全く描かれていません。 今後でてくるのかな。
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