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浅井みどりとハヤト

色っぽい浅井みどりを出すべきという話があり、書いてみました。

 浅井みどりは今年37歳の未亡人であり、間もなく2歳になる娘の美和がいる。娘は亡くなった夫の子ではなく、夫が亡くなってから別の男との間にできた子である。

 彼女は大学を出て商社勤めの総合職であったが、激務とぎすぎすした人間関係にいやになって、27歳の時に辞めて自衛隊に入って下士官の幹部候補コースに収まった。自衛隊は、ある程度の訓練があるので体力は必要であるが、総務としての業務は、商社時代に比べると極めて楽であった。


 人間関係も、商社のようにめんどくさい性格のものは殆どおらず気楽なもので、自衛隊の生活は気に入っていたので、29歳の時に2つ下の木村純一3尉に求婚されたときに、そんなものかという感じで結婚した。

 みどりの性欲は強い方で、また純潔にこだわる方でもないので、学生時代から何人かボーイフレンドが居て、それなりにセックスもしていた。しかし、独占しようとする相手とは、距離を取る感じで特定の相手は作らないようにしていた。

 彼女は、色白で、短髪のきつめの美人であり、身長は160cmで体重は52kg、バスト85cm、ウエスト57cmのグラマーな体であり、若いころから体型を保つようにそれなりに努力はしてきている。


 自衛隊に入ってからも何人かとは経験があり、結婚した木村ともその一人であったが彼との体の相性はいい方であり、付き合っても疲れない相手ではあった。それもあって、さらに平凡なサラリーマンの父と専業主婦の母から、結婚をうるさく言われていたことも手伝って結婚にこぎつけたのだ。

 結婚しても仕事は変わらずしているし、ただ夫になった人と一緒に暮らすようになってだけで、別に何が変わる訳でもないなと思っていた。そのような感動もない結婚生活を送るうちに夫が死んだ。


 それはまことに不運な事故であり、朝霞駐屯地から調布基地に移動中の乗用車で交差点を通行中に、高齢者が運転する車が突っ込んできて、運転席の木村を直撃したのだ。

 彼女はその事故に動転はしたが、思ったほどの悲しみは湧いてこず、義理の父母と義妹が泣いているような涙も出てこなかった。勤務中の事故であり、労災としてそれなりの見舞金が出たが、商社時代の貯えもそれなりにあった彼女は、半分を固辞する義理の父母に無理に渡した。


 その代わり、姓を浅井に戻して、また一人で暮らしながらの自衛隊の下士官事務員の仕事に戻った。彼女は、さすがに結婚している間は他の男と浮気をしようとは思っておらず実際にしなかった。しかし、夫と死別してみると、寂しさも性欲もあり、なじみの男との付き合い、また時々チェリーボーイの相手をしていた。


 知り合いの安井2曹に飲みに誘われ、中学時代の友人で、訳あって駐屯地に駐在しているということで最初に二宮ハヤトに会った時、まず思ったのはその存在感の濃さであった。

 聞けば22歳というから自分より10歳年下であるが、魔法能力の処方のためここにいると言う。しかし、それだけではなぜここにいるか不自然であるが、安井がなにも明かさないうえに、迎賓館と隊員に呼ばれている来賓用の宿舎を宿にしているところなど謎めいている。


 それなりに、商社時代に人を見てきた彼女にしても、まったく正体が知れない。それに、聞いてみれば、異世界から帰って来たというとんでもない話であり、その話も嘘やほらとは思えないリアリティがある。なにより、実際に光を灯す魔法を見せられると、魔法を事実として捉えるしかないし、彼の話を信じてみれば彼の存在感もわかる。


 『こんな人、会ったことがない』彼女はハヤトに強く魅かれるのを感じて、酔って来たのも利用して、ぐいぐい絡んで大いに迫った。彼も彼女の誘惑に正直に反応しており、誘う素振りはみせたが、さすがにその夜はそのまま別れた。

 しかし、みどりははっきりした手ごたえを感じており、その夜は自らを慰めて寝たので、翌日ハヤトが声をかけてきたときは、思わずにんまりしてしまった。


 夜、一緒に昨日と同じ食堂という名の酒場に飲みに行き、少し個人的な話もした。その中でハヤトが、中学卒業前に異世界に召喚されたので、母が卒業資格を取っておいてくれたけれど、結局中卒であり、現在大検資格の勉強をしていることが語られた。


「うーん、私の感じだと、確かに中学・高校の勉強の中身は社会人としての教養の部分もあるから、大検を受けるというよりその勉強をするのはいいかもしれないわね。でも、君のその頭の回転というか知性は、並みの大学出身者を上回っているから、実際は気にすることもないと思うわ」

 みどりは、すこし偉そうに論評した。


「うん、おれもラーナラでは王とか宰相とか貴族連中とつきあってきたからね。この日本も、世の中の駆け引きとかはそんなにラーナラも変わらないはずだよ」


 ハヤトが応じるが、みどりはもう少し聞きたいことを彼に尋ねてみる。

「あなたの最初の相手はサヤラという娘でしょう。後でなじんだのがロマニーだったわね。この2人はあなたにとって、どういう存在なの?」


 ハヤトは、思いがけないことを聞かれたという風に少し考え込んで答える。

「うーん、どういう存在か。えーとね。サヤラはまあ、初心なころの疑似恋人だったな。そのちょっと前は中学生で、女の子に憧れがあったし、恋人とデートをするというのはまさに憧れだったな。

 それが、段階を経てそこに至るべきセックスが、最初にできてしまったわけだよ。それはそれで、大変な快楽で非常に良かったけどね。なにより、勇者になるための訓練は半端でなく厳しいわけで、当然ストレスも大きいし、体も精神も厳しいトレーニングとさらに魔力を絞り取られて、くたくたなんだけど性欲はあるわけだ。

 そういう意味では、サヤラの存在は助かったし、彼女は優しかったからね、随分癒された。やはり、ラーナラには奴隷制度があることもあるけど、そういう訓練に必要なものを良く把握しているなと思うよ。

 でも、日本での思い出があるから、奴隷の彼女にそれなりの服を買ってやって、いろいろ出歩くのはデートと言う感じでよかったな。だから、2人の時に俺も彼女に優しくしたし、セックスも彼女もできるだけ感じるように優しくしたよ。まさに疑似恋人だったな」


 みどりはさらに聞く。「あとで別れるのは、彼女も解かっていたわよね?」


「解かっていたさ、俺も彼女もね。だから、俺はその後彼女が同じ立場で違う奴に仕えることは我慢できなかったから、奴隷から解放させたし、家も与えて金もやったよ。彼女は、俺と別れたあと小さなレストランを始めて、その客だった男と結婚したよ。幸せにしていると思う」


 ハヤトの答えに、みどりは興味津々で聞く。「ふーん、彼女は奴隷から解放するということを言うと、どういう反応だった?」


「ああ、どういうことか理解できていなかったな。だから不安がっていたけど、世話をしてくれるおばさんを紹介して、家もやるということで安心したようだけど」

 

 ハヤトは答え、今度は自ら言う。

「そういう意味ではロマニーは全く違ったな。国賓レベルを相手にする接待婦だから、貴族の娘がなることもあるそれなりのエリートなんだよ。美人でもあるし、セックスについては、古くから伝わる正式な訓練を受けていた。

 極上の快楽を得るためには、男の側もそれなりのテクニックが要るということで、かなりいろいろ教えてもらった。この点は、他の国でも接待所はあって、使わせてもらったから別のテクニックも教わったな。ロマニーもそうだけど、そういう接待婦はなかなか得られない快楽を与えてくれる女性で、相手をして安らぐ場ではないな」


 その言葉の通り、その後少し酔って彼の部屋でのベッドで、彼の言うテクニックを思い知らされた。何度絶頂に昇らされたか、思わず叫びをあげた自分を意識して後で顔を赤らめる彼女であった。


 そのようにハヤトは、みどりにとって最初は自分の性欲を完全に満たしてくれる存在であり、それだけと思おうとしていた。しかし、同時にハヤトは自分を含めて、駐屯地の隊員に魔法の処方をしてくれた存在でもあり、他の人に処方を施せる処方士としての彼女の能力を開花させてくれた存在でもある。


 さらに、安井と共に一緒にいることも多いことから、徐々に彼が魔法の処方をするのみでないその正体に気がついていった。

 その時期に彼女は、駐屯地の副指令官である矢野1佐に呼ばれている。会ったこともないお偉いさんの呼び出しに緊張する彼女に矢野が言う。


「浅井2曹。話は、二宮ハヤト氏のことだが、別に君の彼との関係をどうこう言うつもりはない」

 一旦、言葉を切る矢野にみどりはその目を見返すことで答える。矢野は言葉を続ける。


「君も、彼が魔法の処方を行うだけにここにいるわけではないと、気づいていると思うが、それは最高度の防衛機密だ。絶対に外部に漏らしてはならない。その旨は誓約書に署名をしてもらいたい。これを漏らした場合、自衛隊法〇〇〇条によって罰せられる」


 それで、みどりが自分の推測が正しいことを確信した。

『ハヤトがすなわち“まもる君”なのだ。あれは単なる飾りなのだ。それは確かに、国家の根幹にかかわる秘密だ』そのように思った彼女は、矢野に敬礼して答える。


「はい、了解しました。署名致しますし、絶対に他には漏らしません」

 彼女が矢野の目の前でサインをして、一息入れた時、矢野が話しかける。


「これは、政府筋の依頼で、無論命令ではないが聞いて欲しい」


「はい?」戸惑いながら答える彼女に、矢野は気が進まない風に話し始める。


「君と二宮君の関係は承知している。そして、彼も君も独身であるわけだ。その依頼というのは、出来れば彼との間に子供を作って欲しいというものだ」


「ええ!」彼女は驚いたが、『なるほど』と思った。

『彼は、見つかる限り唯一無二の存在であり、今後現れる見込みも非常に少ない。どういう子になるかはわからないものの、政府としては彼の遺伝子を持った子は欲しいだろう』


 考えているみどりに矢野は言葉を続ける。

「もし、それがこの駐屯地でのことでも、問題にならないように処理できる。さらにもし生まれれば、経済的、さらにベビーシッターなどの人手も万全の手配をするそうだ。あと、君の意に反してその子を取り上げたりはしないともね」

 それを聞いている間は一瞬怒りに包まれたが、それはすぐに収まり悪い話ではないなと思った。


「ええ、矢野1佐殿わかりました。今はその気持ちになれませんが、将来はわかりません。お言葉はありがとうございました」そう言って彼女は副司令官のオフィスを去った。



 ハヤトは彼女にとって、だんだん重い存在になっていったが、それは一緒に食事を共にして、一晩のベッドを共にする若い愛人としてのもので、かって木村と共にしたような家庭を築くつもりにはなれなかった。魔法の処方を受けたせいか、肌のつやなどむしろ若返った感じでまったく衰えは感じなかったが、35歳に近くなると、街で見かける無邪気に遊ぶ子供たちが気になるようになった。


 矢野からの話を思い出すことも多くなり、ハヤトから、魔法処方事業の話を聞いて除隊を決心したとき、ようやく子供を作ろうという気になった。

 やはり、駐屯地で子供ができましたというのは躊躇いがあったのだ。言い出した時ハヤトがどう反応するか怖かったが、彼もあっさり受けて拍子抜けしたものだ。


 子供がおなかにいて、動くようになると仕事の邪魔にはなったが、自分のものだとたまらない愛情を感じた。苦痛の中で生まれた我が子を抱いたときの感激、最初に乳をあげたときの感動、間もなく2歳になる我が子は自分の本当の宝だと思うのだ。

 彼女は、今はニノミヤ・カンパニーの魔法処方事業部の処方部の部長であり、それなりに忙しいが、政府は約束を守った。月々の手当てを受け取ることは、十分な報酬を得ている彼女が断ったが、ベビーシッターを要求して、最高の人材を付けてくれているのでその点は有難いと思っている。


 なお、ハヤトはもちろん美和を認知したし、しばしば彼女のマンションを訪れて美和をあやしている。最近は美和もだいぶ話すようになっているが、「ぱぱ、またね」と一緒にいる存在でないことに割り切っているようなので、ハヤトは少しへこんでいる。


 ちなみに、みどりはハヤトが子供のためにと共に暮らすことは断っている。これは、結婚という形式を取らない以上は一緒にいるべきでないし、かえって美和のためにもマイナスであると思うからである。

 みどりは、彼との関係は、職場での関係に加え、週に一度ベッドを共にして、美和に会いに週に2回来るという関係でいいと思っている。


完結済の既作も良かったら読んでください。

https://ncode.syosetu.com/n9292dl/

https://ncode.syosetu.com/n4880ds/


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