北朝鮮ミサイル発射余波2
この小説は韓国の話にならないなと思っていたら、思いっきりなってしまいました。
導かれているでしょうか。
日本は、北朝鮮が本土を狙ったノドンを発射したことを強烈に非難した。
篠山官房長官の言葉である。
「我が国は、我が本土を狙ってミサイルを発射した北朝鮮に対して、強く非難するとともに、国交断絶の措置を検討しています。まあ、元々国交はありませんが。
この場合、実質的に北朝鮮を代表していた朝鮮総連合会の活動を差し止めることになり、さらにあらゆる交流を止めることになります。なお、今回はEEZ内で撃墜しましたが、今後は北朝鮮のミサイルまたは飛翔物体は日本の国土及び人や財産に危害を与えうるものとして、日本に向かうものは全て撃墜します。また、船舶等に対しても同様な措置を取ることにします」
また、今回の北朝鮮のミサイル撃墜に対して、何でも反対する野党が非難のための会見を開いた。
「前代未聞の暴挙である。今回のミサイル撃墜は明らかな憲法違反であり、わが党は強く抗議する。また防衛省の言う“まもる君”は明らかに憲法違反のものであるので、直ちに廃棄するべきである」
人民党の山下副委員長の言葉であるが、出席したわずか3人の記者のうち一人が流石に反論する。
「日本には自衛権もないということですか?」
「む、む、じ、自衛権はあるでしょう。しかし、害意を示していないものをいきなり破壊するとは許せない」山下が答えるが、記者は開き直ってなおも言う。
「2発目のノドンは、明らかに日本本土を狙っていたということですが?」
「そ、そんな、馬鹿なことを北朝鮮がするわけはない。日本を狙っていたというのは嘘だ」山下がなおも言うのに、記者が冷たく答える。
「ほう、北朝鮮の事をよくご存知なんですね。2発目のミサイルの軌道は公開されています。あきらかに、あのまま飛ぶと秋田県に着弾しています。では、失礼」
記者は冷たく頭を下げて去ったが、この記者会見の内容は、一社が揶揄して載せたものが唯一であった。
翌日の日本政府の午後の閣議である。篠山官房長官が開会の言葉の後に続ける。
「相変わらず、野党には非難するものもいますが、これはマスコミにも相手にもされていません。まもる君というネーム付けは良かったようですね。
とりわけ子供から大きな反響があるようで、大人からも概ねは好意的な反響があっています。また、当然のことながら諸外国からは大きな反響というか問い合わせがあっていまして、ほとんどが技術の公開と移転ですが、これは我が国もその技術は持っていず、移転も分解も出来ないということで拒んでいます。 中国は、平和を乱す行為であったと非難していますが、まあ、かの国にとっては都合の悪い話なので予想された動きですね。また、韓国からは、まもる君の有効範囲内の韓国領土に守備範囲を広げてほしいという要請がありました。これについては、貴国がよく理解されている憲法に抵触する恐れがあるので即答はできないと、保留しています」
「韓国は、我が国が安全保障上の何かをすると、憲法を持ち出して非難するくせに勝手な連中だな」
財務大臣の早山がだみ声で言うが、篠山は頷いて続ける。
「そう、私もそう思いますよ。しかし、ここにきて韓国民も相当焦ってきたようですよ。今朝、韓国大使の三島君から連絡があったのですが、一晩で潮目が完全に変わったようです。
韓国民が、北朝鮮の支配下に入るということはどういうことかと、テレビ新聞で語られ始めたようです。まあ、少しでも頭があれば、そんなことは当たり前に気づくものですが、いままで核の問題はアメリカと日本の問題だと思っていたようです。
おそらく、いま世論調査をすれば、白大統領の支持率は前の50%から半分以下になるでしょう。
そこで、ここで議論したいのは、わが本土にミサイルを撃ってきた北朝鮮とどこまで関係を断つか。それと、先ほどのミサイル防衛を含めて韓国とどう向き合うかです」
それに対して、外務大臣の加藤が話し始める。
「北朝鮮に対しては、本土に向けてミサイルと撃ったという行為を、今までのような遺憾砲ではいかんでしょう。大使館はないので、総連ですがその大使館としての窓口の閉鎖、さらに人の交流を断つこと、また金の流れも完全に断ちましょう」
それに対して早山が聞く。「しかし、今現在北に行っている日本人がいるのではないかな?」
「はい、5人です。皆ずぶずぶの連中です。勧告を振り切って行ったのですから止むを得んでしょう」
加藤は早山に返事をしてなおも続ける。
「それで、韓国ですが。はっきり言って、私個人としては放っておきたいのですが、北の体制に組み込まれるのも面白くないのは事実です」
それに経済産業大臣の皆川も賛同する。「うん、韓国で我が国は黒字を年2兆円稼いでいますからね。これは、北に呑まれるとしばらくは回復しないでしょう」
「それで、西村防衛大臣にお聞きしたいのは、韓国の防衛を我が国も手助けするとして、どこまで、どんなふうに助力できるかということです」加藤が西村に聞く。
西村は、あらかじめハヤトを含んで制服組とその件の話をしていたので即答する。
「核爆弾は目立つので、1000㎞の範囲を超えるソウルでも撃墜は可能ですが、その落下による被害はあり得ます。しかし、通常弾頭のミサイルは一斉に撃たれると、特に近距離の場合には相当漏れますね。つまり、核ミサイルは対処、撃墜可能です」
西村の答えに、加藤大臣は首相の顔を見て言う。
「かの国は、経済の成長の結果、我が国を侮り始め、我が国を貶めるためだけのために大いに誇張した話である慰安婦を神聖化し、その像を世界中に作ってくると同時に、様々な嫌がらせを現在も行っております。さらには、その過程で執拗に謝罪を要求してきました。
それに対して、我が国も安易に応じてきた面があったため、さまざまな謝罪もして金も払ってきましたが、いまやそのことを根拠として非難の材料にしています。
その結果として、大多数の日本人が韓国人を信用できないと思うに至り、嫌悪感すら抱き始めています。そういう意味では、韓国を助けることは政権としてリスクでしかないのです」
目で問いかける加藤に首相は頷き、彼は続ける。
「しかし、一方で韓国が北朝鮮の支配下に入るということは経済的、政治的デメリットもあります。しかし、北朝鮮の現状から想像すると、核で脅されて併合された場合韓国民の受ける苦しみは計り知れないものがあると思います。
また、我が国は韓国の要請を無視することで、そのようにかの国の国民を追いやったと非難されることもあるでしょう。
したがって、私の提言はこうです。『2015年の慰安婦合意を誠実に順守しなさい。少なくとも、ソウルの大使館、プサンの領事館の前の像を直ちに除去しなさい』」
しばらく閣議の場に沈黙が降りたが、やがて首相の阿山が口を開く。
「うん、加藤外務大臣の意見でいいと思う。それで実行に移したいと思うがどうだろうかな」
その言葉のあと出席者を見渡すと、早山財務大臣が問う。
「しかし、あの白大統領がそれに合意するとは思えないが。なにしろ、彼のよって立つところを覆す話ですからね。さらには、彼にとっては今の状況は彼の悲願である北主導の併合に最大のチャンスですよ」
それに首相が答える。
「いや、白氏は日本・アメリカに対して無力になった核を持つ、北朝鮮主導の併合はよしとしないと私は思いますよ。
また、このことは非公式に韓国政府に打診することなく、私が記者会見の形で発表します。それを、かの国の国民がどう受け取るかです。自分及びその家族の身の安全、自由より慰安婦を取るならそれは国民の選択ということです」
その夕刻、緊急の記者会見を開いた阿山雄三首相は、カメラにしっかり向いて画面で自分を見ている無数の聴衆を感じながら話し始める。
「皆さん、内閣総理大臣の阿川雄三です。皆さんも既にご存知のように、我が国はまもる君という存在に、その国土をミサイルから守ってもらうことになりました。まもる君は、昨日北朝鮮が発射したミサイルを2基、EEZつまり排他的経済水域の境界内にて撃墜しましたが、これも皆さんご存知の通りです。
さて、まもる君の防御範囲はこれまた、すでに発表したようにまもる君の設置されている東京を中心に半径1000km、高さは3万㎞に達します。
この場合、日本領であっても範囲から外れる部分はわずかにありますが、そこについては自衛隊が守りますのでご安心ください。また、この範囲には韓国の領土も大部分含まれます。ソウル北端はわずかに外れますが、核ミサイルなど目立つ武器は探知可能ですので、撃墜可能であります。
そのことで、韓国政府からその領土も防御範囲に加えてほしいという要請がありました。
一方で、すでに我が国はまもる君の防御範囲を発表しており、それは日本領土及びその上空であります。その意味で韓国領土は明確にその範囲を外れる訳です。従って、韓国領土も守るのであれば、憲法との微妙な関係もあり、国民の皆さんの合意が必要であると考えております。
また、皆さんがこれまたよくご存じのように、我が国と韓国の間には2015年にいわゆる慰安婦合意というものを交わしました。しかし、いまの韓国政府はそれが国民感情に照らして適当でないという立場のようです。
そして、我が国が国庫から出す見舞金を支出までしてその責務を全て果たしたにも拘わらず、韓国側は何らの責務を果たしていないように見えます。たしかに、この問題と安全保障上の問題はその質が違います。しかし、それなりに双方の国が重要と思う問題を、不可逆という言葉を入れた合意を覆すような政府と、安全保障という極めて重要な問題について共同作業はできないと我々は判断しています。
従って、我が日本政府は、韓国を防衛するため国民の皆さんに働きかける条件として、韓国政府が先に述べた合意を誠実に履行することとします。これは、中でも国際法に明確に違反している、ソウルの日本大使館及びプサンの領事館も前にあるいわゆる慰安婦像の撤去も含むものとします。
もっとも、現在はいまだ韓国には米軍が駐留しており、米軍基地のある場所は守る対象としますので、これは将来の話となります」
阿山首相の話はそのように終わったが、予想されたように韓国人の反発はすさまじいものであった。
「日本の阿山首相は、卑劣にも韓国の安全保障を人質にとり、慰安婦像の撤去を求めてきた」それが、マスコミ及びネット民に代表をされる言葉であった。
しかし、同時に北が核で脅迫してきた場合、どうなるかというそれなりに正確なシミュレーションが韓国人の中で一気に広まった。まあ、普通の知性があれば自分で気が付くものだけど。
「考えてみろよ。あの白大統領が、北朝鮮が韓国に併合に応じないと核攻撃すると脅迫してきたとき、拒否できるか?」友人の言葉にパニックになって男は答える。
「できないよ。米軍を追い出そうとしている馬鹿だぞ。米軍が引いたとたんに北は脅迫するぞ」
「そうだよ!北の亡命者を北で奴隷だったと馬鹿にしてたけど、俺たちはその奴隷の奴隷になるよ!冗談じゃない!」
追い打ちとして、その日の内に米軍から発表があった。
「わが軍は、現政権の要請である、朝鮮半島の統制権の移管を1週間以内に行う。それと同時に、韓国からの撤退を行うが、概ね3ヶ月を要する見込みだ。なお、韓国軍から要請のあった、韓国軍指揮官の指揮の下に、わが軍が残るというオプションは拒否する」
これは当然である。朝鮮戦争の時に、韓国兵は大統領と一緒に、北の兵及び中国の兵に対して逃げ惑ったのだから。その指揮のもとに戦いたいと思う米軍兵士は一人も居ない。
この日の、阿山首相と米軍司令官の通告は、韓国内で大ニュースとして駆け巡った。
翌日、ソウルの日本大使館及びプサンの総領事館に北シンパに組織されたデモが掛けられたが、数万のデモ隊で大きく盛り上がると考えられたそのデモは、わずか数百人でわびしいものに終わった。
反日デモとして、いつものように出かけようとした女学生の朴チョンサは、いつもは進んで送り出す父親から怒鳴り付けられて唖然とした。
「馬鹿か、お前は。日本を怒らせて日本の防御から外れてみろ。北朝鮮の奴隷共の奴隷になるんだぞ。慰安婦?ふん!あんな薄汚い元売春婦のことはほおっておけ。
今日のデモだって、北の走狗が組織しているんだ。今後あんなデモなどに参加することは許さん!」
仕方なく学校に行き、仲の良いマヤラにこぼしたところ、当然と彼女も言う。
「当然よ。皆と話してごらんよ。もう、米軍が出ていくのよ。そうしたら、誰が北の核から守ってくれるのよ。あなた、北朝鮮の状況を知っているの?」
「え、ええ。でも……」
チョンサは躊躇いながら答えるが、マヤラは昨晩兄から聞いた話を勢い込んで言う。
「北の狙いは、豊かな私たちの財産と技術よ。私たちは、全ての財産を北の今の奴隷に取られてその奴隷になるのよ。美しい(なかなか自己評価が高いですな)私たちは性奴隷よ。日本人を怒らせるわけにはいかないわ。どうしても、北の核からは守ってもらわなくては。あんな、少女像は壊せばいいのよ」
2日の後の世論調査では、白大統領の支持率はわずか15%にとどまって、実に35%の低下である。
彼は、その結果にショックを受けながらも未だに迷っていた。若い彼の補佐官 麗チョンは、彼よりも過激な北シンパであり、彼に対して提言している。
「大統領、これは絶好のチャンスです。米軍が引けば、もう北朝鮮の核を遮るものはないのです。日本の話は拒絶すればいいのです。あの慰安婦の皆さんを冒涜するようなことは許しません。ちょっぱりは永遠に我々韓国人に謝り続けるべきです」
しかし、白はアメリカと日本に対して、全く効力を失った北の核ミサイルが何の役に立つか判らないし、結局アメリカに見捨てられて単独で北の核に対することに今更ながら恐怖を感じていた。
「いや、北の核に対する日本が提供できる防御は必要だ。いま米軍が引いて北の核に対して無力になった場合、否応でも北の思うがままに併合される。そうなったとき、野蛮な北の者の我が国の国民に対する扱いが心配だ」
白は勉強ができる馬鹿というやつで、物事に判断においてたいてい間違うが悪人ではない。しかし、そういう指導者に導かれる国民は可哀そうではあるが、結局選んだのは自分たちなので自業自得である。
そうやって、大統領とその補佐官は様々に話していたが、彼らの時間はすでに尽きていた。
執務室のドアがバン!と蹴り開けられて、戦闘服の白髪が目立つが引き締まった体の将校と自動小銃を構えた兵が5人入ってくる。
「誰だ!お前たちは!」チョン補佐官が叫ぶが、兵士の一人が小銃の銃掴で殴りつけて昏倒させる。
将校は、執務デスクの後ろで立ち上がった白に向かって見事な敬礼をして口を開く。
「前大統領閣下、陸軍第8師団、第5連隊長の朴パンクツ少将であります。この国の政府は、第8師団金ユッケ中将閣下により組織される愛国臨時政府の指揮下に入ります」
白は、驚きながらも頭に重苦しく乗っていた重荷から解放される思いであった。
韓国に生まれた愛国臨時政府は、慰安婦協議会の主要メンバーを、北シンパとして逮捕し協議会を解散させ、ソウルの日本大使館、プサンの領事館の前の慰安婦像を重機で破壊し、各地の像も破壊していった。並行して、官庁、教育界、マスコミに入り込んだシンパを徹底的に追及して逮捕していき、なかでも無論白政権のメンバーは大部分が逮捕された。
この臨時政府は、やり方が少々手荒いこともあってアメリカ、日本などは正式に認めることはしなかったが、緊急時に鑑み国交は行こととし、臨時大統領金ユッケによる交渉により、米軍の撤退を3年延期するとした。
日本政府は、国民の80%余の賛成もあり、臨時政府が慰安婦合意を行動の伴った順守しているとして、韓国に対してまもる君による防衛を行うことを決した。
結局、韓国国民はクーデターにより成立した、臨時政府の施政を受け入れ、1年後には慰安婦のことは忘れたようになって、海外の像も順次取り壊されていった。良く解らない人々である。




