北朝鮮ミサイル発射!
ベスト10を確保できてモチベーションがあがっております。そのため、思ったより進んだので連日で投稿します。
ご指摘によって、火星8号の撃墜方法を変更しました。
朝霞駐屯地の体育館で、格闘技班の猛者3人に対して、身体強化を使わず相手をしているハヤトを見守っている安井に、専用の携帯を通じて、その連絡が入ったのは昼前のことである。
丁度、ハヤトの相手の3人が叩き伏せられたところだったので、安井が声をかける。
「ハヤト、どうやら、もうすぐらしい」早朝に、北朝鮮で火星8号と思われるミサイルに燃料注入が行われたと知らせがあり、今日中には発射されるだろうと予告があった。
実際の発射の直前には、発射台の周辺で様々な動きがあるので、それを確認してハヤトは監視室にはいることになっていた。
「おう。じゃ行くわ」ハヤトは声をかけ、今体を起こしている相手をしてくれた3人と、周りで見ていた5人ほどに感謝する。
「ありがとうございました。いい運動になりました」
そこにいる皆は、ややぎごちなく「い。いやこちらこそ、ありがとうな」言う班長の葛城陸曹長に合わせて、班員は口々に感謝の言葉を述べる。
体育館を出ていくハヤトを見送って、葛城はため息をついて傍らの班の補佐役の水野に言う。
「ありゃ、人間じゃないな。いま簡単に転がされた3人だって、そこらの多少格闘技をかじった奴なら10人くらいは楽に相手にできるのに、全く相手が出来ず転がされている。あれで、身体強化をしていないのだからな。あれで、身体強化をしたら、素手では100人いても敵わんな」
「ええ、しかし、あの異世界式の体術ですか。あれは、学ぶ価値はあると思いますよ。我々の自衛隊式の格闘技は空手、柔道、合気道、ボクシングをミックスしたものですから、ハヤト氏の格闘技を組み合わせればさらに強くなります」
水野が応じるのに、葛城はさらにため息をついて答える。「ああ、まあ型として取り入れるべきものはあるが、本質的には人間離れした筋力と素早さだからな。なかなか、真似は出来んよ」
ハヤトたちが監視室に入った時、香川2佐他の7人ほどがすでに集まって、スクリーンを見ているが、彼らが室内に入った直後、まもなく駐屯地司令官の天野も副官と一緒に入ってくる。
「多分、映像の動きから10分以内にはミサイルは発射されると思います。御覧の副スクリーンには、ちょうど北朝鮮上空に来た衛星画像でミサイルの打ち上げ基地が写ってますが、この発射台付近の動きは明らかにそれを示しています」
香川が説明するのに、彼の指定席に座ったハヤトが聞く。
「えーと、その発射台の位置は、あの大地図の白いランプの点いた位置ですね。えーとここから大体1250㎞か」
「そうです。あの白いランプの位置ですが、なにか?」香川2佐が答えるのにハヤトが続ける。
「ええ、マップとしては限度が大体1000kmで届かないのですが、そこまで位置が判っていたら、探知は延ばせるはずです。やってみましょう」
ハヤトは目をつむって集中しながら解説を始める。
「うん。ここだな。発射台、ミサイルもある。では、ミサイルの中を見ましょうか。うーん、見せてもらった想定図とは相当構造は違うな。燃料タンク、酸化剤タンク、混合器とノズルと。
おお、これが1段、2段の切り離し用の炸薬と、ちょっとこれが発火しても混合器までは届かんが、2段目が動いていない時に発火すれば上の段は落下するな。まて!これは自爆爆薬だろう。これに火をつければいいんだ。これは簡単だ。あ!ノズルが動いて噴射が始まった」
ハヤトは目を開いて、息をのんで見守っている皆に「噴射が始まりました」そう言う。しかし、高度490kmで地表に対して高速で移動している、人工衛星のカメラはすでに移動して発射台のある地点は見えない。
「アメリカ軍から連絡です、ミサイルが発射されたそうです」監視についている隊員が告げ、その声にハヤトの言葉が裏付けられたとして皆は頷く。
「では、私のマップの範囲に入って、排他的経済水域(EEZ)の境で、自爆用の爆薬に火をつけますね。切り離しの炸薬に火をつけて、ミサイルが分離するより目立たないでしょうし、自爆だったら、ある程度日本に近づいていても危険性はないでしょうし」
皆は顔を見合わせるが、香川が天野に提言する。
「司令官、ハヤト氏の言う通りです。自爆すれば、燃料の爆発などいろんな可能性が考えられますから、何が原因か特定しにくいはずです。ハヤト氏の言うとおりにミサイルを破壊してもらおうと思います。また、位置的にはEEZ内の方がはるかに説明しやすいですし、これも本当の能力を隠すのに都合がいいです。彼の言う通りで、よろしいですね?」
天野は頷いて合意して言う。「わかった、私は今から角田統合幕僚長に連絡するが、時間もないのでその方向でいこう」彼は一旦言葉を切って、ハヤトに頼む。
「二宮さん、言われる通り、自爆用の爆薬に火をつける、さらに位置的には日本のEEZ内に入った位置でお願いします」
「了解!」短くハヤトは応じる。
天野司令官は直ちに、角田統幕長に連絡し、統幕長は同様に北のミサイルの探知を告げられて、防衛省で記者会見の準備をしている西村防衛大臣に連絡する。
「角田さん、ありがとう。おかげで記者会見ではいい発表ができます」西村はニッコリ笑って電話を切る。
北朝鮮のミサイルの発射の兆候を受けて、防衛省で開かれた記者会見で、多数集まった記者を前に、事務方の開始の言葉とともに西村が口を開く。
「皆さん。北朝鮮は度重なるわが国並びに国際社会の制止の声も聞かず、本日11時33分北朝鮮のイラチョン基地から火星8号とおもわれるミサイルを発射しました。
現状のところ、ミサイルはロフテッド軌道を描いており、すでに2千㎞の高度に達していますが、これは日本列島を越えて北海道の東北東1000~2000kmに着水すると予想されています。
さらに、最高高度は7000kmに達すると目されていまして、これが成功すれば、間違いなくアメリカ合衆国に届く能力があるとみなされます」
西村は言葉を切って、シャッターの嵐の中で記者たちを見つめ続ける。
「さて、我が国政府は5日前に声明を出しました。それは、我が国の上空を飛ぶミサイルは全て撃墜するというものでしたが、北朝鮮のミサイルは明らかに我が国の宣言の対象に値するものです。
従って、我が国は最近入手したミサイル防御装置を用いて撃墜します。その撃墜地点は、排他的経済水域、すなわちEEZを越えた場所とします。現状の見込みでは、そうあと2分ですね。少しお待ちください。撃墜が成功したらこの携帯が鳴りますので、それまで質問もお控えください」
40人を超える出席者のある記者会見の場は、テレビのクルーがカメラを回している動きがあるくらいで静まりかえっている。やがて、構えた西村の携帯が鳴り、彼がそれを操作して答える。
「はい、西村です。はい、はい、11時49分ですね。ありがとう」彼は携帯の通話スイッチを切り、記者を見渡してマイクに話しかける。
「本日、11時49分、我が国は北朝鮮のミサイルを、我が国の排他的経済水域に入った地点で撃墜しました。当該ミサイルは爆発して四散し、日本海に落ちました」それを聞いた会場は爆発した。叫ぶものもおり、皆が一斉にしゃべろうとして会場は騒音の中に包まれた。
「静粛に、静粛に」司会役が大声で呼びかけた5分ほどの後、ようやくざわめきはあるがそれが可能な状態になって質疑が始まった。質問は、当然どうやって撃墜したか、またどの時点での高度はどのくらいかに集中した。
総括的な西村の答えである。「我が国は、入手先は申せませんが、我が国の東京を中心として半径約1千㎞、高度3万㎞の範囲を飛ぶミサイルを撃墜する装置を入手しました。今回の撃墜はその装置を使ってのものであります。
その装置は、この写真のものでありまして、これを見たものが誰ともなく日本を守るということで“まもる君”と名付けましたことから、防衛省内部では正式に“まもる君”と呼んでおります」
A2版の写真を示しながらの西村の説明の後、彼は質問に答える形で以下の回答をしている。
問:まもる君の有効範囲が事実なら、北朝鮮からアメリカには普通のミサイルでは届かないのでは
答:その通り現状で北朝鮮が開発しているミサイルでは無理
問:日本は日本の領土の上空を通らずアメリカを目指すミサイルを撃墜するつもりはあるか
答:それは非常に狭い範囲であるがアラスカを狙えばそういう可能性があるので、今後の協議による
問:ミサイルを撃墜できるということは民間の飛行機も可能ではないか
答:無論可能であるが、その点は現在の各国の防空システムは全てそうである
問:韓国を防御できるのか
答:南半分程度は可能だが、ソウルなど北は範囲外であり、さらに日本に着弾または越すもの以外は現状では考えていない
問:いま言われた通りなら、米軍が日本海に居る必要はないのでは
答:それは、米軍の問題である
問:撃墜したミサイルの高度と速度は
答:高度は5000㎞で速度は秒速5㎞程度であった
問:中国やロシアに向いたものは対処できるのか
答:先に言った範囲外の迎撃はできない
問:他国へその技術を供与の予定はあるのか
答:この装置は与えられたものであり、分解等は禁じられて、さらにその動作原理は全く承知していないので技術移転は不可能
問:その装置を他国が入手することは可能か
答:わからないがネガティブ
問:日本だけがそのような装置を入手することは不公平では
答:答えられない
そのニュースは日本では夕刊の一面トップを飾ったのは無論、あらゆるニュース媒体のトップを飾ったが、世界中にもトップニュースとして報道された。
無論、北朝鮮は怒り狂ったし、アメリカ合衆国からは、その日の内に報道官からの以下のような談話があった。
「合衆国としては、今回日本がそのような能力を持ったことを歓迎する。
なにより、その能力は防御のためのものであり、他国を侵略または傷つけるものでないことは歓迎すべきことであると考える。また、日本がその上空を通過するミサイルは今後も全て撃墜すると宣言したことから、彼らが示した範囲を超えて我が国をミサイルあるいは大陸間弾道弾で攻撃することは著しく困難になったことは明らかである。
従って、我が国はこれまで口汚い言葉で挑発を繰り返してきた、北朝鮮が開発しているミサイルの脅威は我が国、及び重要な同盟国である日本に対しては去ったと判断している。これを受けて、現在日本海に展開している我が国の艦隊は引き上げることにする。
なお、我が国は北朝鮮に対し、いままでと変わらず北朝鮮に核兵器の廃棄を強く求める。また、同盟国である韓国は依然として北朝鮮のミサイルの脅威のもとにあるが、彼ら尊敬すべき国家は、北朝鮮との友好的な関係構築に努力されているので、その努力の中で朝鮮半島の非核化を実現することを強く期待する」
その言葉の通りに、大規模な米艦隊は直ちに進路を変え、対馬海峡を目指した。
極めて大きな期待を込めた火星8号が撃墜され、かつそれを日本に発表されたと聞いた、北朝鮮の金傍訓の怒りは極めて激しいものであり、かれは狂乱して室内のものを破壊しつくそうとして誰も近づけない状態になった。
1時間以上もして、ようやく静まったことを確認して、側近の朴がそっと巨大なドアを少し開いて覗く。壊れたものが散乱する室内に独裁者が疲れ果てて座り込んでいる。
「偉大なる総書記様」朴がそっと声をかけると、金は顔をあげ、血走った目で彼をみる。その眼光に朴は思わず逃げだろそうとしたが、金がしゃべり始めたその声音が思ったより冷静なので、かろうじて踏みとどまった。
「日本海に直ちに打ち込めるノドンはあるか?」
「はい、偉大なる首領様、ノドンは固体燃料ですし、日本海に向かって撃てるものは相当あります」
朴が答えると金は言う。「日本の言うことは信じられん。そう簡単にあの高度のミサイルを撃ち落とせるとは思えん。もう一度、ノドンを日本の本土めがけて撃て」
朴は驚いて躊躇いつつ言う。「し、しかし、万が一日本に着弾したら……」
それに対して、金は鼻を鳴らして吐き捨てる。「絶対的な防御システムを持っているなら見せてもらおうじゃないか」
別の2つの完結済作品と、途中で止まっている2作品も、よろしかったら読んでください。
完結作品のUCLは以下です。
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