第1部
2074年…
科学が飛躍的に発展した地球。
地球から最も近い230万光年離れたアンドロメダ銀河の第931惑星『ジュラル星』では、古くから様々な星の文明を滅ぼし、生態系まで操ってきた戦闘民族『ジュラル星人』が住んでいた。
彼らはクジラのような宇宙船に数個の師団と幾万の民間人を乗せ、何万周期もかけ各星を転々として来たのだった。
第1部【危機!!子供宇宙ステーション】
「目の前の計機なんて飾りなんだ、計機盤がなけりゃあ、前か後ろか判らねえからついてんだ!頼りになるのは眼だ!眼ぇ!判るか?眼ェ!…手前らどいつもこいつも、節穴だけの穴ぼこつけやがって、よくもパイロットになろうってもんだ」
丸い卵の様な腹を揺らしながら怒鳴り散らす教育用ロボット「YJ-81O型」(通称バリカン)は陸軍が使用する大型ホバーバイクのパイロット候補生、泉 研と長谷川 洋貴を機械の滑りを良くするための油と体臭の混ざった軍隊独特の悪臭のする格納庫の隅に並ばせた。
彼らは誰1人として彼の話を聞かないで、この空きっ腹をどうにかしてほしいと思う以外何も考えていなかった。
一体いつになったら飯を食わせて貰えるのか。そう思った時だった「おい手前!俺の話を聞いてんのか?あん?歯ぁ食いしばれ!」
バリカンの短い金属製の手が頰を打つのと同時にコンクリートの地面に腰を打った。
離陸、着陸の細かい順序を間違えても話を聞かなくても当然鉄拳は飛んでくるのである。
重力のある地球だから良かったが無重力下の月面基地で格納庫内でそれをされたら浮かぶ工具やらにあたってしばらくはお休みを食らうのである。
「これにて解散!2時間後にここに集合するように!」とバリカンが怒鳴る。
これほどに忙しいのも数年前に発見され観測を続けていた「ジュラル星」に知的生物がいることが分かり、さらに強大な軍隊を保有することが分かったからである。
これにより月との定期便も便数が減り、研の父親からの手紙も少なくなり研のホームシックが増す原因ともなったのだった。
研と洋貴は互いに食堂の同じテーブルに座り、マッシュポテトのような見た目の合成食を食べるのである。
彼らの唯一の楽しみが食事だ。
彼らは基地内で聞いた噂話や家庭の話やウェーブ(女性兵)の話などをするのであった。
「おい研、たまたま聞いたんだが近頃ここで対宇宙人用のスーツを作ってるらしいぜ。まるでスーパーマンみたいなスーツだとか。」洋貴が耳元で囁いた。
「スーパーマン?そんなの一世紀も前の漫画の話だろ?流石の地球の技術でも作れるわけないだろ。」そんなのあるわけ無いと思いながらも半信半疑の研は聞かなかったことにしようと思いながら微笑んだ。